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ページ番号 : 39496
更新日:2026年1月15日
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兵庫県宝塚市出身、明石市在住。芥川賞作家、小説家、建築士。
2023年に書いた小説『あるもの』が、第29回三田文學新人賞で小説家いしいしんじらの高い評価を得て受賞し、小説家としてデビュー。
妻と共に自ら設計した自宅を明石に建て、その経験を元に書いた小説『時の家』(講談社刊)が、第174回芥川龍之介賞を受賞。また、同作は第47回野間文芸新人賞を受賞し、高い評価と注目を集めた。その他に「辿る街の青い模様」(『駅と旅』掲載)、「アウトライン」(『群像』掲載)、「欲求アレルギー」(『三田文學』掲載)などの小説を発表。主に建築をテーマにした小説やエッセイを執筆している。
私も妻も建築士で、自分たちで設計した家を建てたいと思い、土地探しのために神戸周辺の様々な駅で降りて街歩きをしていた時期がありました。その中で明石駅にも足を運び街に降り立ったのですが、駅の北側に広がる立派な石垣と木々の茂る公園の豊かさに驚き、こんな街は他にないと感銘を受けたことを今でも覚えています。
街を歩き回ると海岸公園に広がる海の景色にも心奪われ、魚の棚商店街の賑わいに心が躍りました。妻と私の土地探しの大きなポイントの一つが「文化を感じられる街」であり、明石は街を知れば知るほど豊かな文化を味わうことができ、ここに住みたいと強く感じ、移住を決めました。ちなみにこうして移り住むことを決め、明石で設計して建てた家が自作の『時の家』という小説の元になっています。明石に住む皆さんにこそ、ぜひ読んで頂きたい作品です。

毎日歩きたくなる街だということです。明石に住んで散歩が日課になりました。明石公園、大蔵海岸公園、柿本神社、魚の棚商店街と、お気に入りの散歩コースがいくつもあり、それぞれの場所で秋は紅葉していたり、春には桜が咲いていたり、夏の日差しが海で煌めいていたり、とにかく歩いていて景色の素晴らしさにいつも感銘を受け、それが何度繰り返しても飽きないのだから凄いと思います。家で作ったサンドイッチや、街で買ったテイクアウトのコーヒーなんかを味わえる場所が数えきれないほどあるのが素晴らしい。
明石公園の「剛の池」です。私は散歩でよく明石公園に訪れるのですが、季節ごとに変化する池周りの木々や、池の周囲に住む青鷺や鴨などの野鳥の姿を眺めている時間がとても好きです。時々、池の周りに並ぶベンチの一つに腰掛けて、池を風景を言葉でスケッチします。いわゆる写生というものです。水面が風に煽られて波立ち煌めく様子や、鴨が列をなして散策路を慌ただしく横断してゆく様子、ベビーカーを押してゆっくりと池周りを歩く母親やベンチに座ったまま弁当を食べる工事現場の作業員、走りすぎてゆくランナーの姿やその細かな仕草や表情を書いていると、池の周辺の環境が日々に溶け込んでいて、私もその中で暮らしているのだという、街の住人である感覚が強く感じられるのです。その瞬間がとても好きで、これからも変わらないことが幸せに思えるのです。


明石は自然も文化も本当に豊かで、だからこそ街には活気があるし、人が集まってくるのだと思います。そんな街のことをもっと色々知りたいと思います。そして、いつか明石という街を小説を通して書きたいと思います。私にとって小説を書くということはまだ知らないことに書くことで近づくということでもあるので、小説を書くことで明石の本当の魅力に迫りたいと思っています。そう思わせてくれる街を素直に凄いと思います。そしてそう思える街に住んでいることがとても幸せだと感じます。
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