資料5 明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画 改定のポイント 明石市は「明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画」(以下「明石市UD計画」という。)を誰ひとり取り残されることのない共生社会を実現することを目的とし、 バリアフリー法に基づく計画として2020年3月に策定しました。明石市UD計画は、2019年度(令和元年度)から2024年度(令和6年度)を計画期間としており、現在、計画を策定してから2年が経過しました。 この間、バリアフリー法の改正や市の関連施策の拡充等が行われ、また、鉄道駅を中心とした特定の地区で事業熟度が高まりつつあります。 さらには、新たな社会的要請や時代の潮流への対応が求められるようになっています。これらの内外の変化を踏まえ、明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画の改定の背景とポイントを整理しました。 法改正や関連施策への対応 改定の背景1: 「あかしインクルーシブ条例」の施行 「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」、通称「あかしインクルーシブ条例」は、すべての人が大切にされ、誰一人取り残されることのないインクルーシブ社会を実現することを目的として、2022年4月1日に施行しました。 明石市UD計画の基本的な考え方を、本条例を反映した内容に更新します。 改定のポイント1:理念・目標の充実 明石市UD計画P7、P8に反映 「あかしインクルーシブ条例」を受け、基本理念や基本目標を更新します。 (実行計画への反映例) ・条例が目指す「インクルーシブ社会の実現」を到達点とした基本理念に更新する。 ・「障害者等の参画」「情報の確保及び利用」「市、市民、事業者及び関係機関の連携協力」等の条例の基本方針を受けたソフト施策の一層の推進を基本目標等に位置付ける。 改定の背景2:バリアフリー化の底上げ 令和2 年10 月公布(令和3 年4 月施行)のバリアフリー法改正により、公立小中学校が建築物移動等円滑化基準適合義務の対象に追加されたことを受け、公立小中学校のバリアフリー化への対応が必要となりました。 インクルーシブな社会の実現は、公立の小中学校に限らず、私立の小中学校や高校、大学等においても同様であり、誰もが支障なく学校生活を送ることができるよう環境を整備していく必要があります。 また、小中学校は、災害時においては、避難所として、高齢者、障害者等も含め、不特定多数の方々が利用することが想定されることから、バリアフリー化を強化していく必要があります。 改定のポイント2:学校施設等のバリアフリー化の拡充 明石市UD計画P17、P30に反映 小中学校のバリアフリー化の視点を新たに追加し、バリアフリー環境の底上げを目指します。 (実行計画への反映例) ・本市においては、すでに小中学校のバリアフリー化を進めています。 ・小学校は、「避難所」として生活関連施設に位置付けていますが、 「学校」として位置付け直すことや通学路等のバリアフリー化の考え方などを整理します。 改定の背景3:ソフト施策の一層の推進 令和2 年6月のバリアフリー法改正において、以下の事項が追加されました。 ・市町村による移動等円滑化促進方針(マスタープラン)の記載事項に高齢者、障害者等の理解を深めるための「心のバリアフリー」に関する事項を追加 ・基本構想に記載する事業メニューの1つに心のバリアフリーに関する「教育啓発特定事業」を追加 移動等円滑化に関する国民の理解と協力を得ることが当たり前の社会となるような環境を実現するため、ソフトの取組推進の重要性が改めて示されています。 改定のポイント3:心のバリアフリーの充実 明石市UD計画P19、P20に反映/基本構想編を新規作成 本市では心のバリアフリーに関する取組をすでに進めており、さらに「教育啓発特定事業」を積極的に位置づけ、具体的な取組を継続的に実践していきます。 (実行計画への反映例) ・「障害」はその人のからだやこころにある「機能の障害」と、社会につくられているバリアの両方でつくり出されているもの (障害の社会モデル)であり、社会にあるバリアを取り除くのは社会の責務であることを市民が理解し、具体的な行動につなげていくための心のバリアフリーに関わる基本目標や基本方針の内容を充実させる。 ・新たに基本構想の事業メニューに「教育啓発特定事業」を記載する。 改定の背景4:移動円滑化ガイドラインの改正 バリアフリー法の改正にあわせて、道路や都市公園等の公共施設の個別のガイドラインが作成・改定されました。 例えば、都市公園の出入口に設置される車止めは、車やバイク、自転車の侵入を防ぎ、子ども等の道路への飛び出しを防止するものである一方、車椅子利用者の通行が困難な場合があります。 この課題を受けて、改定されたガイドラインでは、公園出入口の車止めの形状・配置に関する記述が見直されました。施設管理者は、これらのガイドラインに沿って施設の整備を行っていくことが求められます。 改定のポイント4:ガイドラインに基づく施設整備の推進 明石市UD計画P15(2)道路/交通安全、P18DUDに配慮した公園整備の推進に反映 移動円滑化ガイドラインに沿って施設の整備が進められるよう、施設管理者が施設のバリアフリー化を行う際の具体的な指針としてガイドラインを活用していくことを示します。 (実行計画への反映例) ・基本構想を作成する際には、バリアフリー化の対象とする重点整備地区内の道路や都市公園の現状をガイドラインと照合して検証し、問題のある個所の改善策を事業メニューに記載する。 ・道路や公園の新設 ・改修時には、公園出入口の車止めなどの個別の施設の仕様を計画 ・設計する段階において、当事者の意見を反映する過程を経ることを示します。 事業熟度への対応 改定の背景5:藤江駅周辺地区の地域発意の反映 山陽電鉄藤江駅の周辺は、バリアフリー化の優先的な促進が必要な地区(「移動等円滑化促進地区」)に位置付けられていませんが、地域から駅周辺地区のバリアフリー化を求める声が挙がっています。 藤江小学校区まちづくり協議会や地区の障害者の方を含め、地区の住民が主体となって市と協力しながら対象区域や経路を検討する意向も確認されています。地域の意向を考慮してバリアフリー化を優先的に促進する地区として設定することが望まれます。 改定のポイント5:バリアフリー化を優先的に促進する地区の拡充 明石市UD計画P33に反映、P57ページ以降に新規作成 現在、バリアフリー化の優先的な促進が必要な地区として、駅周辺を主体とした市内12地区が位置付けられていますが、藤江駅周辺地区を新たに追加し、当該地区の面的なバリアフリー化を図っていくものとします。 (実行計画への反映例) ・バリアフリー化を図る対象区域や地区目標、取組方針、対象施設や経路等を検討し、「移動等円滑化促進地区の方針」に追加する。 改定の背景6:JR西明石駅周辺地区のまちづくり事業 バリアフリー化の優先的な促進が必要な地区の一つに位置付けられているJR西明石駅周辺地区においては、市とJR西日本が協定を締結し、共同でのまちづくりを計画しています。 具体的には、南口改札の新設や駅ビルの整備、駅前広場や周辺道路の整備、市有施設のサンライフ明石(中高年齢労働者福祉センター)の建替え等を検討しているところです。今後実施が見込まれるまちづくり事業の時期を適切に捉え、地区のバリアフリー化を一体的に推進していく必要があります。 改定のポイント6:JR西明石駅周辺地区のバリアフリー事業計画化(基本構想の策定) 明石市UD計画基本構想編を新規作成 新たなまちづくりの熟度が高まっているJR西明石駅周辺地区を対象とし、関連するまちづくり事業と連携して地区の面的なユニバーサルデザイン・バリアフリー化を推進するために、具体的な事業計画を定めた「基本構想」を策定します。 (実行計画への反映例) ・バリアフリー化が特に必要な地区で、事業を重点的・一体的に実施することが必要な 「重点整備地区」にJR西明石駅周辺地区を設定し、具体的な事業内容等を定める。 ・実行計画の第3編に「事業を重点的・一体的に実施することが必要な地区の方針(基本構想)」として新たに記載する。 <参考1>基本構想の概要 ・駅を中心とした地区や、高齢者・障害者などが利用する施設が集まった地区(「重点整備地区」と言います)において、駅・道路・建物などのバリアフリー化を重点的かつ一体的に推進するため、市町村が、その地区におけるバリアフリー化のための方針、事業等を記載します。 ・関係する事業者・建築主などは、基本構想に基づき、具体的な事業計画を作成し、事業を実施していくことになります。 <参考2>JR西明石駅周辺地区を対象とした基本構想の構成案 特定の地区のバリアフリーの具体的な事業計画を定める基本構想は、バリアフリー法に基づく法定計画とする観点から、法第25 条等に定められた記載事項を満たす必要があります。 また、バリアフリー法の要件を満たしつつ、本市が目指す「SDGs未来安心都市・明石」の実現に向け、まちづくりの側から貢献できる計画にする必要があります。 このため、JR西明石駅周辺地区を対象とした基本構想は、バリアフリー法に規定される基本構想の必須事項に加え、心のバリアフリーなどの任意事項を包含する下表の右側の記載内容を基本とし、ハードとソフトを両輪とした内容で作成します。 社会的要請・時代の潮流への対応 改定の背景7:様々なニーズを持つ人々を包摂する環境づくり SDGs(持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals))は、2015 年9月に国連サミットで採択された誰一人取り残さない持続可能でよりよい社会の実現を目指す2030 年までの世界共通の目標です。本市のまちづくりの基本方針となる第6次長期総合計画として2022年3月に策定したあかしSDGs推進計画では、2030年のあるべき姿を「SDGs未来安心都市・明石〜いつまでもすべての人にやさしいまちをみんなで〜」と定めています。 2022年4月1日に市が施行した「あかしインクルーシブ条例」は、すべての人が安心して暮らせる、誰一人取り残されることのないインクルーシブ社会を実現することを目指すものです。また、大阪・関西万博のUDガイドラインが2022年3月に発表されています。大阪・関西万博におけるユニバーサルデザインの基本的な考え方として、「誰一人取り残さないインクルーシブな社会」を基本原則にしています。 本ガイドラインの中では、配慮が必要となる利用者として、知的や精神、発達などの障害者や性的マイノリティ(LGBTQ+)を示しています。以上のような時代の潮流や社会的要請に鑑み、様々なニーズを持つ人々を包摂する環境づくりが求められます。 改定のポイント7:多様な対象者への対応 明石市UD計画第2編に新規作成 身体・知的・精神・発達障害者、性的マイノリティ(LGBTQ+)へのさらなる配慮など、多様な人々に配慮したバリアフリー推進を位置づけます。 (実行計画への反映例) ・関連するハード・ソフト施策の一層の推進を基本方針に記載する。 ・今後事業計画を定める基本構想では、以下に例示するような具体的なハード施策の位置付けを検討する。 ・性的マイノリティ(LGBTQ+)等に配慮したみんなが選べるトイレの設置(対応ピクトグラムの表示を含む)を基本構想の事業メニューに記載 ・知的障害、精神障害、発達障害などの障害者が、外部の音や視線を遮断し気持ちを落ち着かせて、パニックを防ぐためのスペース「カームダウン・クールダウン施設」の公共施設内への設置等を基本構想の事業メニューに記載 改定の背景8:情報発信のバリアフリー化 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の施行や今後のバリアフリー環境の充実に伴い、バリアフリー設備等に関する情報提供の充実が一層必要になってきます。 道路や施設のバリアフリー化が進んでも、必要な設備や機能がどこにあるのかがわからなければ、利用することができません。全ての人が外出時に必要な情報を入手できるように、適切に情報発信をしていく必要があります。近年はスマートフォンの普及により、情報収集の考え方が大きく変わり、多くの人が自分の端末を使ってインターネット上から外出時や施設利用の情報収集を行うようになりました。高齢者や、障害者等をはじめとした全ての人が、WEB などによってバリアフリー情報を入手できることが重要です。 改定のポイント8:技術革新を踏まえた情報発信の充実 今後、各施設管理者の取組により、市内施設におけるバリアフリー設備等の整備が着実に進んでいくことになります。進化するICT 技術の活用等を含めて、バリアフリー情報を適切に提供・発信していく方法を検討し、全ての人が外出時に必要なバリアフリーに関する情報を入手できるようにします。 (実行計画への反映例) ・基本方針の一つの柱にしている情報提供に関する内容を拡充する(下記例示等)。 ・視覚障害のある人等が携帯するスマートフォン等に対して歩行者用信号情報を音声で提供することなどを可能とするシステム (高度化PICS)の導入 (警視庁等) ・通れない道に関する道路表示(豊中市) 改定の背景9:基本構想の策定スケジュールの変更 現行の明石市UD計画では、地区ごとの基本構想策定スケジュールを定めています。2020年度と2021年度にそれぞれ3地区、計6地区を基本構想策定の予定地区としており(2020年度の基本構想予定地区は、JR明石駅・山陽電鉄山陽明石駅周辺地区、JR西明石駅周辺地区、山陽電鉄林崎松江海岸駅周辺地区の3地区、2021年度の予定地区として、JR大久保駅周辺地区、JR魚住駅周辺地区、山陽電鉄中八木駅周辺地区の3地区)、他の地区についても、核となるハード事業の実施の目途が立った段階で、順次策定することとしています。しかし、現状としては、2020年度と2021年度に基本構想の策定が予定されていた6地区において、基本構想の策定に着手するまでに至っていません。今年度より協議会を再開し、JR西明石駅周辺地区で基本構想を策定することや、藤江駅周辺地区での地域発意等を踏まえ、基本構想の策定スケジュールを見直す必要があります。 改定のポイント9:基本構想策定の優先順位を整理 明石市UD計画P58〜P60に反映 現時点における核となる公共施設の整備や地区の面的なまちづくり事業の見込みやスケジュール、地域の発意等を再整理し、面的なバリアフリー化を推進する地区の優先順位を再検討して基本構想の策定スケジュールを見直します。 (実行計画への反映例) ・基本方針の策定方針において、地区ごとの基本構想策定スケジュールを見直し。