第1回明石市ジェンダー平等の実現に関する検討会 議事概要                    日時:2022年1月28日(金)14:00〜16:00                    場所:市役所議会棟大会議室 1 開会 2 委員委嘱 3 市長挨拶  お忙しい立場、また大変な状況の中でこの検討会の委員をお受けいただき、かつ、本日ご参加いただいたことに感謝申し上げる。  市長としては、この検討会に先立って「SDGs」と「インクルーシブ」という2つのキーワードを大切に考えてきた。明石市は「SDGs未来安心都市」を掲げ、県下初のSDGs未来都市として国から認定を受け、長期総合計画づくりにおいてもこのキーワードを大切にして進めている。市民の皆さまには「いつまでもすべての人にやさしいまちをみんなで」という表現で伝えている。「いつまでも」というのは持続可能性。「すべての人にやさしいまち」というのはいわゆるインクルーシブ。誰一人取り残さないということである。「みんなで」というのはパートナーシップ。これらによってまちづくりを進めてきた。とりわけインクルーシブ、誰一人取り残さない観点からは人数の多少ではなく、すべての人に目配り気配りするまちにしていきたい。そのためには当事者参画が大切。人はそれぞれ顔が違うように立場や事情も違い、様々な立場の者が意見交換する中でより望ましい政策決断ができると考えている。そういった観点から、これまでSDGsやインクルーシブのキーワードで力添えいただいた方も数多く委員として入っていただいている。  ジェンダー平等については、国際目標であるSDGsの17のうちの5番目の目標であるにとどまらず、その前提としてそもそも必要な考え方だと理解しているが、明石市においてはこのテーマに係る取組が十分に進んでいるとまでは言えないと思っている。既に庁内でもプロジェクトチームを作り、検討を進めているが、大事なテーマであるため改めて専門性や多面的な経験値を元に議論いただきたく、今日の検討会に至った。自分自身も強い思いがあるが、市長としては皆さんの自由闊達な議論に期待している。 4 委員挨拶 5 会長・副会長選出 6 会長挨拶  SDGsの実践において日本の最先端を走っている明石市のジェンダー平等の実現について考える検討会に参加でき、大変ワクワクしている。冒頭に市長から強い思いの発言があった。「いつまでもすべての人にやさしい当事者参画と多様性を実現する未来安心都市」。こういった言葉を聞くだけで心が温かくなる。また、具体的に中身を詰めていく必要性を深く実感する。  これまで、ジェンダー平等に関する様々な場で施策に携わることが多かったが、やはりトップのリーダーシップはとても重要。様々な人が様々なところから声を上げても、トップが動かないと全く進まないということを経験してきた。ところが明石市はこの状況を完全にクリアしている。トップが自ら方向性を示している。そして市長の掲げる理念に多くの市職員、住民や我々も共鳴しながら心を1つにして進んでいけるという点で非常に恵まれている。  今の現実と私たちが望んでいる社会との間には大きなギャップがある。我々には具体的な進路を設計することが求められていると理解している。委員の皆さまの深い専門性に基づいた知見と多様な経験が反映されなくては、効果のある施策が見えてこないと思っている。ジェンダーに対する意識は、ここ数年全国的に驚くべきスピードで上がってきた。ジェンダー平等を達成するという方向性ができ、政策もできてきている。しかしながらほとんど実態は変わっていない。「ジェンダー平等」は、「女性活躍」や「男女共同参画」という言葉で何十年も表現され続けてきたが、ほとんど変わってこなかったというのが実態だと思う。この検討会でやらなければならないことは、具体的に効果の出る「決め手」を示し、実現につながる進路を描くことだと考えている。皆さまの多様な意見や深い知見に頼る場面も多いと思うが、よろしくお願いします。 7 議事 (1) 事務局報告 (2) 委員報告@  明石女性活躍推進会議の会長として様々な提言をさせていただいた。その中で、まだ取り組まれていない分野について意見を述べたい。  提言を取りまとめたのは2016年。それから5年経っているにもかかわらず、まだ実現できていない分野があるのは非常に残念。その1つが女性の副市長の実現である。提言の中では、内部に人材がいなければ、外部登用も視野に入れて検討してほしいと述べた。しかしながらまだ実現されておらず、道筋すら示せていないのではないか。それは甚だ遺憾であり、提言した立場として非常に残念なことだと思っている。重要な政策決定の場に女性が参画することは非常に重要なことである。女性は、社会に約半数いる。明石市の重要な政策決定の場である、市長や副市長の会議の場に女性が参画することは欠かせない。その意味においても、ぜひ女性副市長の登用を検討していただきたい。外部登用でも難しければ、公募も検討の視野に入れてほしい。  先ほど会長から、トップが動くことは非常に大切であると話があった。市長は様々な分野で先進的な取組をしている。トップが動くことの重要性を踏まえて、ぜひ進めてもらいたい。 (会長)  市の管理職における女性比率は、当時約13%と提言書に書いている。現在は18.4%なので、ここは改善されている。ところが女性副市長については、5年間進んでいなかった。「特に外部登用、全国公募を含め検討」という提案を重く受け止めたい。 (3) 委員報告A  当事者参画というテーマは、障害分野では古くて新しい問題である。政治を含めたあらゆる意思決定過程における当事者参画の重要性を、歴史をひもときながら説明したい。私が所属しているDPI日本会議とは障害者インターナショナルという国際組織の日本支部だが、1981年、障害者インターナショナルの結成時に採択された声明の中でこう書かれている。「障害者政策は極めて多くの場合、社会における資源の配分に関わっており、大抵の場合、それらは政治の問題である」と。本来、障害者団体は障害者政策だけでなく、様々な政策に関して決定的影響力を及ぼさなければならない。あらゆる政策は障害者の参加を保障するものでなければならないのだが、実際に障害者が政治的決定過程に十分参加するためには多くの障壁が存在してきた。  DPIには「我ら自身の声」、すなわち「当事者自身の声を大事にしていこう」という世界共通のスローガンがある。それがクローズアップされたのが障害者権利条約である。2006年に国連で採択され、日本も2014年に批准をした。自分たちも特別委員会という検討の場に参加をしたが、決まって言うのが「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という言葉。その結果、当事者の声がしっかり反映されてできあがった。同条約には主要な条文として33の条文があるが、「参加」という言葉が30カ所でてくる。障害者権利条約の原則は、参加ということである。また、検討会のテーマに関連する部分でいうと、障害者権利条約第30条に「政治的及び公的活動への参加」という条文があるが、これは選挙権だけではなくて被選挙権についても言及されているということを強調しておきたい。  後、私たちDPI日本会議では、約20年前から毎年アフリカ地域の障害者リーダー研修事業を実施してきた。7,8年前にルワンダから来た障害女性からの報告で、様々な分野の障害者の参画、特に政治の分野、公的活動の参画が日本よりもかなり進んでいることがわかり、ショックだった。特に驚いたことが2つあり、1つ目は障害者団体をはじめ各種市民団体役員のジェンダー平等が規約で定められているということ、2つ目は議員の選出に当たってジェンダー平等に加えて障害者枠が設定されているということ。調べてみると、ルワンダ憲法第76条に下院議員のうち1名は障害者枠として定められている。さらに地方議会にも障害者枠が設けられて障害者委員会に属する障害者が選出される仕組みになっている。つまりジェンダー平等に加えて障害者枠とポジティブアクションが制度化されているのである。  最後になるが、障害者権利条約の成立に至るまでの障害当事者の参画をめぐる歴史を踏まえて、今回検討された結果を世界に発信できると良い。日本はジェンダー平等を含め様々な分野で遅れているが、キラッと光る自治体があるということを世界にもわかってほしい。 (会長)  障害者運動の「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というフレーズは、自分も大切にしており、民主主義について授業するときには必ず紹介をしている。あらゆる属性の人について当てはまる民主主義に係る基本的な考え方と思っている。明石市がキラリと光るように頑張っていきたい。 (4) 委員報告B  私からは、ジェンダー平等を達成するために、まず意思決定の場への参画が大事だということを改めて確認した上で、特に市民の代表である議会の重要性について触れたい。  まず、あらゆる意思決定の場においてジェンダー平等を実現することの重要性についてである。各委員からも指摘されているが、私からもなぜ必要なのかということを確認したい。  私は、ジェンダー平等の前提として多様な人材が意思決定の場に参加することが必須条件であると考えている。日本では政治や経済の分野におけるジェンダーギャップすなわち男女格差が非常に大きく、国際的にも国内的にも問題であると指摘されてきた。多様な人材が意思決定に参加することがなぜ重要なのかというと、多角的な視点から政策課題を検討することができ、同質のグループによる議論によって意思決定に至る場合に生じ得る偏りやリスクが解消されることが期待できる。また様々な意見が出されることで、新しいアイデアが生まれ、より良いイノベーションが起きるということも指摘されている。意思決定の場に多様性を反映させるためには、性別はもちろんだが、年齢、国籍、また性的マイノリティー、障害の有無なども含めて、社会の中で異なる経験をしてきた当事者としての視点が必要である。そして、これまで様々な壁があったことを踏まえると、その壁を取り除くための仕組みが必要であるという流れになってくる。明石における意思決定の場としては、行政機関の管理職、特別職、審議会、市議会、企業、まちづくり地域団体などがあるだろう。  議会については、市民の代表者たちが集まる場であり、また議会で決められる様々な政策は市民への影響が大きい。特に様々な人材が参画できる仕組みが大切である。  まず明石市議会の現状だが、すでに女性議員が3割くらいで比較的良い状況ということが確認できる。具体的には兵庫県の第5位であり、30名中9名が女性議員である。さらに、より多様な構成をめざすことが目的であれば、積極的な選挙制度を導入するなどの取組が必要である。諸外国の地方選挙制度を検討しながら、既に男女平等に近くなっている国々の中ではどのような取組がされてきたのか紹介し、話をまとめたい。  最初に、独特な制度を設けているフランスの事例を紹介する。フランスは男女が半分ずつ意思決定に参画するパリテの原則が憲法に定められており、この原則に基づいて特に県議会では「男女ペア制度」を設けている。個人が立候補して一番得票数が多い方が当選するというのが一般的な方法だと思うが、そうすると上位に男性が多くなるという現象が生じる。そのため男女がペアを組んで1つの単位として立候補するという制度が「男女ペア制度」である。有権者はペアに1票を投じるため、結果も2人ペアとして当選する形になる。この方法は候補者の選定方法そのものに法的拘束力を設け、結果も必ず男女半々になるという利点があり、1999年には男性が9割だった県議会においては、今は男女半々の完全パリテ議会が実現されている。次に韓国の事例について説明する。韓国も国及び地方の選挙にクオータ制やパリテ制度を設けており、市町村議会に比例代表制度を設けている。比例代表制度においては、名簿登載者の50%以上を女性にするとともに、奇数順位に女性を入れることで女性の当選率を高めている。その結果、女性議員は全国平均で3割に達している。3番目に台湾だが、地方選挙制度において女性の議席を確保する制度を設けている。中選挙区制の中でいわゆる4分の1ルールがあり、定数が4名以上の選挙区においては当選者4名ごとに1人は必ず女性にしなければならない。定数が3名以下の場合はこのルールは適用されず、例えば定数が7名の場合も3名に関してはこのルールが適用されない。ただし得票数が上位4人目までの者の中で女性が1人もいなかった場合、4番目の当選者は女性の中で最も得票数が多かった者に入れ替わるという、繰り上げ当選のような形を認めている。その結果、県と市の女性議員割合は直近の選挙で31.1%となっており、6大都市では35.8%となっている。最後にルワンダの制度だが、ルワンダも台湾と同じく多様な社会グループの議席確保制度を設けている。女性議員は最低3割確保ということが憲法で定められており、障害者枠があり、若者の議席も確保されている。比例代表制で地域や各業界からの推薦により、国会議員が選ばれる方式をとっており、日本とは異なる選挙制度になる。若者枠、障害者枠、推薦枠などを踏まえて、結果的に女性議員が61.3%と、世界の中でも女性議員の割合が最も多くなっている。  これらのように、様々な制度を設けることで、多様な人たちが議会に参加できている事例があるのが確認できる。選挙制度が異なるなど状況が異なるので、どの制度が良いとまでは言えないが、これらの事例を踏まえて考えられる選挙制度についてまとめてみた。参照いただければと思う。 (会長)  我々は日本でしか選挙権を行使しないので、1人1票で中選挙区、小選挙区、比例といった経験しかしないが、世界には本当に様々な選挙制度がある。世界に学びながら地方議会にふさわしい多様性を実現するための議論ができると新しい突破口が見えてくるのではないか。 (5) 意見交換(資料1 明石市ジェンダー平等プロジェクト) (A委員)  防災におけるジェンダー平等施策というテーマだが、このテーマは、災害が起きたときに命、生活を守り、さらに被害にあった方が早く立ち直るというところまでを見据えたものでなければならない。また、数々の災害の教訓として、普段から社会的に弱い立場にある方が大きな被害を受け、取り残されるという原則がある。さらに、被災するまではハンディキャップを感じていなかった方が被災によって突然様々な問題を抱えることもある。結局、すべての人が救われるようにしなければ意味がないのだが、今行われている施策は、避難行動要支援者など法律上の要件に当てはまらない方は切り捨てられる。  解決につなげるには、生活者の視点など身近な問題からスタートするのが良い。資料でもジェンダー平等の観点から女性の参画を推進するがことが提案されているが、とてもいいポイントである。昨年ごろから、予め個別避難計画を作り、避難行動要支援者を支援していくスキームができている。計画の策定に当たっては生活者目線がとても大事であり、実際に計画策定に携わっているメンバーには女性の支援者が非常に多い。女性が多く参画している状況なのだから、ジェンダー平等の要素も入れるべきだと思う。災害時からの立ち直りの観点からも女性の視点は欠かせない。  自分の経験だが、東日本大震災の時、気仙沼のある地域の復興の場面で感じたことがある。そこは漁師町という特殊性もあったのかもしれないが、まちづくりの寄り合いに男性ばかりでいろいろと進めようとしており、うまくいかないことが多かった。生活者の視点が欠けているので、なんとなく「かっこよくスムーズに進む方が良い」という思いで進め、失敗していたように思う。このような事態を避けるためには、男女ともに様々な世代のみんなが参加することが大切。実際に、代表ではなくて、みんなが集まるやり方に変えたところ、進行がスムーズになり、合意形成も早くなって、まちづくりが上手くいった例もあった。  これは地域における意思決定の一場面だが、通常は世帯代表が一票を投じて、「高台移転しよう」「かさ上げしよう」などと決め、結局うまくいかない方が多い。復興や防災の場面に、最初から多様な属性の人が参画して話し合う視点を盛り込んでおくことで失敗を防げると思うし、これからは必要なことだと思う。資料に記載のような具体例を増やしていただきたい。 (会長)  避難行動要支援者は、避難することが第一にあるが、その後、避難所での生活があり、さらには日常生活に戻ってからの復興がある。この3つの場面に分けて、ジェンダーや多様性の視点を入れていく仕組みが必要だと思う。  私は、委員のご意見に加えて、防災の中で性暴力の防止について特記する必要があると思った。ジェンダーの視点から問題になっているのが、避難所をはじめ被災した状況下で性暴力が発生しやすいということ。教育のテーマではジェンダー平等教育で性教育にしっかりと取り組んでいくことが示されており、防災のテーマにも性暴力防止の視点が必要である。 (B委員)  私も防災分野に関連して発言させていただく。専門委員を設置し、女性や障害者、高齢者の視点を反映させる仕組みについて書かれているが、このような取組がもっと広がれば良い。当事者の声を活かすことの大切さはよく謳われているが、専門委員という形で意見を反映させる仕組みを作ることに明石市らしさを感じる。実際に阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の際も、避難所にすら行けず、倒壊の危険がある家でも自宅避難をせざるを得ない、あるいは車の中で過ごすしかないという方がいた。  様々な取組を検討するときにヒアリング先として障害者団体の紹介を依頼される事はあるが、委員になることはあまりなかった。近年、直接障害者に関わりが深い障害福祉分野の委員として障害者団体の代表などが入るようになってきた。しかし、障害者が24時間障害福祉の枠の中だけで生きているわけではなく、電車を使ったり、買い物でコンビニを使ったりするなど、障害のない人と同じように社会資源を使って生活している。にもかかわらず、障害福祉分野以外でなかなか障害者の声が届かないという現状がある。このことに関して、国際的な分野では段々と認知されてきており、例えば「障害者問題の主流化」あるいは「インクルーシブな開発」という言葉が使われ始めている。国際開発などでは「後から障害者向けに付け足す」ではなくて、「最初の段階からすべての政策分野に障害者の視点を入れる」という考え方になりつつある。  今までの「マイノリティーの声をヒアリングで聞いてあげよう」というレベルではなくて、むしろその問題を主流化する、またはインクルーシブ化していくという視点がとても大切。その点で、専門委員の設置は、とても面白い取組だと思った。 (会長)  1度ヒアリングで意見を聞くだけではなく、意思決定にダイレクトに参画することが重要というご指摘だと思う。防災会議などは、性質上法律で決まっており、充て職にならざるを得ない部分もあると思うが、委員を増やしたり、専門委員会や避難所運営委員会などの分科会等を作ったりすることによって、ダイレクトに参画してもらう仕組みづくりは可能だと思う。資料では女性・障害者・高齢者等とあるが、この「等」には、外国人など日本語を母語としない方を含めて様々な方を組み込みながら、門戸を開いていくことだと思っている。 (C委員)  「教育におけるジェンダー平等」についてコメントする。ジェンダー教育推進校については、なかなか学校から手が挙がりにくいと思うが、様々な切り口から取り組んでいくという面では大事なところ。  意識改革の必要性については頭で理解していても、なかなか踏み出しにくい。そのような中で子どもたちや教師たちがいろいろなことを考え、気づくことは大事なことだと思う。  例えば道徳の教科書の挿絵で、いじわるをしている子どもは男の子であり、泣いているのは女の子というような傾向がある。気づかないまま、ごく当たり前に捉えられている部分も多く、今一度正しい目で見直していくことは大切。そもそも、必要以上に「男の子、女の子」という登場のさせ方は、どこかで不協和を生み出すということに気づく必要がある。  小さなことから見つめ直し、新たな一石を投じる意味でもジェンダー教育推進校を設けるということは大事だと思う。  繰り返しになるが、学校から自発的に手が挙がるのを期待することは難しい。丁寧に学校現場と議論しながら進めていくことが必要である。 (会長)  隠れたカリキュラムの問題なども最近取り沙汰されている中、推進校を設置することは画期的な取組だと思う。先ほど台湾の話があったが、台湾にはジェンダー平等教育法があり、年齢に合わせて「年間につき何時間ジェンダー平等教育をしなければならない」と決まっている。明石市でも「年間これだけの時間を割いてジェンダー平等教育をすると推進校に指定できる」などといった取組をしていくと、さらに具体化できる気がする。 (D委員)  「職場におけるジェンダー平等」の説明を聞いて、いろいろなことが考えられていて、明石市は社会の先頭を切って努力していると感じた。  近年は大企業で管理職への女性登用が進んでいる。「いきなりの登用で困った」という女性もいるが、大企業で女性管理職の登用が進んでいく理由としては、積極的な女性の登用が企業評価の一指標となってきているという側面もある。  しかし、日本の企業は大体が中小企業であり、就業人口も中小企業の方が多いことを考えると、やはりトップの感覚が重要である。例えば明石市と商工会議所とが協働して、まず中小企業の経営者の意識改革や、女性登用の重要性のアピールから始めないと難しい。もちろん、アワードなどインセンティブに係る取組を実施するのも良いと思うし、やりがいもあると思うが、まず今の社会の動きについて、明石市から経営者に訴えかけて欲しいと思った。そして、同時に自分たちも勉強していかなければいけない。 (会長)  中小企業の立場からすると、表彰やアワードだけではなかなか動きにくく、同時に経営者に向けた意識改革を勧めた方がいいというご意見であった。 (D委員)  経営者は代替わりして若くなってきているが、まだまだ50〜70代の経営者が多くいる。そういった方々に理解をしていただくのは時間がかかると思う。また、中小企業は経営に余裕のない企業も多く、育休をはじめ様々な取組について理想はあっても一歩踏み出せない企業は多い。しかしながら「一歩進めていかなければ」「何かできるのでは」というところから、ヒントを与え続けていくことが大切だと感じた。 (会長)  意見を聴いて、地域の経営者団体と連携しながら、世界の先進的な取組事例などを紹介していくことや、公共調達をはじめとする金銭的なインセンティブも使いながら、いろいろなことを総動員して進めていく必要性が見えてきたような気がする。 (E委員)  「ジェンダー教育推進校」は、非常に先進的な取組で面白い。私はジェンダー教育が必須だと思っている。もちろん推進校でジェンダー教育をすることは良いことだが、推進校以外の各学校でも一定の時間をジェンダー教育に充てる取組は必要だと思っている。  もう一つ、審議会等の女性割合に関して、行政委員会については資料に記載がなかった。行政委員会で女性比率がどうなっているかは非常に重要だと思う。その辺りの資料も示していただきたい。それをもとに次回以降、行政委員会の女性比率について検討していきたい。 (会長)  行政委員会は、重要なポイントになる。次回、行政委員会の女性割合について、事務局資料を出してほしい。 (F委員)  企業としては、女性が働きやすい制度が整備されていると思う。しかしながら、組織の風土として落としきれていないので、働いている女性が制度を知らない場合がある。会社の管理職の女性割合は26%だが、女性管理職が一気に増えたときがあった。ただそのときには、やりがいを持っている女性社員がいる一方で、仕事と家庭を両立しづらい環境であることを理由として管理職の登用を望んでない女性社員も多くいた。  先ほど教育の話があったが、私も「女は女らしく」「男は泣いたらダメ」という文化のもとで育った。「家事は女性がするもの」のような風土も日本にまだまだあり、そのような家庭も多いと感じる。やはり教育の中でジェンダー平等について教えていかないといけない。特に家庭で男性が何もできないことが非常に問題。女性が男性と同じように働くということは、男性も女性と同じように家事ができなければならない。しかしながら、今の教育ではなかなか男性が家事をできるようにはならないのではないかと思う。未来を考えると、今の子どもたちが大人になったときに男性も普通に家事ができれば、女性が本当に働きやすい世の中になると思う。繰り返しになるが、あまり家事ができない男性が多い世の中では、女性は活躍しづらいと思う。 (会長)  意思決定における女性の参画を増やすことは女性の労働の可能性を広げることになる。女性が社会参加を諦めてしまうのは、働く女性のロールモデルが少ないことも原因ではないか。  男性についても育児や家事などに関わる男性のロールモデルが社会的に発信されることによって、可能性が広がっていくと思う。そのような意味でも教育の必要性を感じる。 (A委員)  資料によると、「テレワークが広がった」「オンラインの会議が有用であった」「SNSが良い」などの内容が点在しているが、ICTやDXが取組の柱として、位置付けられていない。ICTやDXの利用は男女参画を進める大切な要素であるが、これらの技術進歩の中心を担っているのは圧倒的に男性が多い。  デジタルエンパワーメント教育の観点から「男女問わずデジタル力を高めよう」という考え方があるが、プロジェクトではあまり触れられていない。まだ、熟していない議論ならば、無理に入れる必要はないが、例えばもう1テーマ設ける方向で検討するのはどうか。 (会長)  女性の理系分野への進学が少ない背景にはアンコンシャスバイアスや隠れたカリキュラムが影響しており、そこに対する1つの支援になる。また、教育分野では、オンライン上の性暴力があるなどDX・ICT化に伴う新たな社会問題もある。  DX・ICT化の問題は各テーマに点在しており、これらに横串を刺してジェンダー視点を入れながら、女性や配慮が必要な人たちが不利にならないようにDX・ICT化を進めていくことは、多様性の観点から重要な視点だと思う。これはジェンダープロジェクトの問題なのか、それとも明石市全体としての問題なのかどちらか。 (事務局)  デジタル化の推進については明石市としても進めていく必要があると認識している。よって、市全体としては、専門的な部署の設置検討も進めているところである。ジェンダーの観点だけでなく、市全体としてデジタル化を進めていく考えだが、同時にご意見のようにジェンダー平等推進の取組の中にも、DX・ICT化というものを位置づけてもよいとも思う。  ただし、ジェンダー平等プロジェクトは、現在報告書をまとめる段階まで検討が進んできている。デジタル化やDX・ICT化の考え方については、今後プロジェクトを進める中で活かしていきたい。 (会長)  資料3ページにジェンダーの定義がある。先ほど障害者主流化の話があったが「ジェンダー主流化」という言葉を入れてはどうか。そうすることで、「ジェンダー平等プロジェクトを軸に明石市のすべての取組を横串を刺して、点検していく」という関係性がより明確になる。「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」の考え方と併せるのも良いと思う。  また、「ジェンダーの視点とは」という部分の説明文について、やや拡大解釈ではないかという懸念がある。ここは、性別、性自認、性的指向というジェンダーの視点にとどめ、多様性とインクルーシブの概念については、ジェンダーと交差させるといった二段構えで定義した方が良い。多様性までジェンダーの中に含んでしまうと、ジェンダーの捉え方がぼやけてしまい、市民に伝わりにくいと思う。 (副会長)  「制度か?意識か?」という議論は政治学で必ずある。政治学者の立場としては、いつも両方だと言っている。制度だけ整っていても人は動かない。しかしながら、まずは制度が整ってないと活用されないのも事実である。先日、地方政治についてあるマスコミが調査した際も、人の意識が高まらないと制度は動かないが、そもそも制度がないために新しい多様な人たちが参画できないという問題があった。いわゆる「卵が先か?鶏が先か?」の論点はあると思うが、私はまず制度がなければならないと思っている。  明石市では育児休業取得促進の先導的取組として「育休100%宣言」があるが、実際の男性取得率は16%しかない。このように制度があっても活用されていないケースも多い。活用されるためには、何らかの誘導的な取組が必要。制度化して教育をはじめとしたテーマを動かすことが必要である。  加えて、今の時代DX・ICTの観点を抜きにした社会の議論は不可能。当然、多様性やジェンダーのテーマについてもDX・ICTの視点を入れながら考える必要がある。育児・介護などにより会場での会議参加が難しくても、オンラインで参加できるなど、DX・ICTを活用するメリットも大きい。ただし、負の側面も忘れてはいけない。例えばICTの活用によって格差が拡大していくこともある。負の側面にも充分注意しながら対応しつつ、DX・ICT化について考えることが必要だと思う。 (G委員)  資料3ページの「ジェンダーの視点とは」という表現は、おそらく多様性や交差性、メインストリーミングといった観点から書かれたものではないか。  学術的にはジェンダーという考え方が交差性、つまり様々な差別の解消と関連する概念であり、これを具体的な施策にも導入するのが最先端の考え方となっている。資料はその考え方が反映されていると理解したが、そうであれば「交差性に基づいたジェンダーの視点」や「ジェンダー交差性主流化視点」のような表現が正確だと思う。どこまで明確にするかどうかは検討事項だが、資料の表現だと多少言葉と中身にずれが生じているように感じる。  プロジェクト案は、全体的にすごく具体的でどれも素晴らしく、非常に感心した。今後は、どのように進めるかが課題になると思う。そのときに「どこまで、どのように達成したか」ということを評価する方法について、記載があればより具体性が出ると思う。  例えば、ジェンダー教育推進校の取組は非常に良いが、「何校ぐらい求めているのか」「どのような役割を求めているのか」「何項目くらい達成できれば成功したものとするのか」などの評価指標も大切である。例えば「男性の育児休暇率何%以上」などの数値目標も大切だが、数値にこだわりすぎると質の評価ができない面もある。「企業文化がどのように変わったか」「昔より働きやすい環境になっているか」などを、従業員の言葉や意識から評価できるようなシステムがあれば良いと思う。 (会長)  推進体制については、資料には記載がない。委員から「5年経った提言がまだ実現されていない」という話もあったが、素晴らしい政策提言が出た後の推進体制が記載されていない。この点について、どのような推進体制や進捗状況の管理を考えているのか、事務局から次回報告してほしい。 (5) 意見交換(資料2、3 委員提出資料1〜3 意思決定過程におけるジェンダー平等) (市長)  先ほど委員から委員提出資料1で厳しいご指摘をいただいた。率直に申し訳ないと感じている。まだまだ不十分であることを改めて実感している。市長として単独でできることと周りの理解を得ながらできることがある中で、女性部長の登用などについて、思いを込めて対応しようとしてきた。ただ、一定程度大きな組織として経験の蓄積などが関連する部分もある。明石市役所としても主任級は男女比が半分半分だが、これが監督職(係長級)になると2割台に下がってしまう。計画的、段階的に取り組む必要があると受け止めている。  後は議会の同意を伴う人事のテーマについても、厳しくご指摘いただいた。改めてしっかり検討していきたい。しかし、「市長としてどのように対応していくのか」という点は議会との関係もあり、苦慮しているのが正直なところである。次回くらいまでに知恵を出していきたい。 (会長)  女性副市長の登用などはとても重要なテーマ。この検討会でも何か道筋を作りたいと思う。 (副会長)  意思決定におけるジェンダー平等について、管理職や審議会などはある程度の基準を決めれば進められると思うが、特別職とりわけ行政委員会や副市長などの議会同意が必要な人事の基準はある程度明確にする必要がある。  企業やまちづくり団体については、例えば公契約条例などで新たなルールを作る方法もある。公契約条例の中に男女平等の条項を盛り込み、公契約をしていく方法である。  やはり、最も難しいのは市議会。今回のテーマであれば、憲法上の平等の原則からは、選挙権と被選挙権の内容になる。実効性をもたせるには法律の範囲内である程度やるべきだと思うが、様々な海外事例、今日の委員の議論を聞きながら、どのような法的根拠で実現できるのか、公職選挙法36条における1人1票の規定や憲法上の観点から改めて考えさせていただきたいと思った。 (会長)  我々が理想的とする民主的な議会、つまりジェンダー平等でインクルーシブで、さらに多様性のある議会と、日本の法律の立て付けに齟齬があるのだとすれば精査していかなければならない。法律の解釈も柔軟になされることもある。法的にどのような課題があるか次回資料を提出してほしい。 (副会長)  できる範囲で何とか頑張っていきたい。難しい論点であるため、ぜひ他の委員も資料等を提出してもらえると良い。 (B委員)  委員提出資料3で、目指すべき議会のあり方が挙げられているが、「社会の鏡のような代表制」という部分に関連して感想を述べたい。  社会の鏡のような代表、障害当事者からするとロールモデルとなる存在が議会の中にいることは非常に大きなことである。韓国の比例代表選挙には女性候補のクオータ制があるが、障害者女性を政党の候補者名簿に搭載することで、障害女性の議員も複数いる。韓国では障害者女性のエンパワーメントが大きく、障害者女性のグループ活動が活発である。障害者権利条約第6条では、障害者女性の複合差別、交差性差別の問題を取り上げているが、障害者女性についての条文を提起したのは韓国の障害者女性グループである。委員提出資料3を見て、障害者女性グループがパワフルな理由は、政治的にエンパワーメントする仕組みが背景にあるということがわかった。 (G委員)  韓国の比例代表拘束名簿の上位1、3、5位は女性議員枠だが、そこにエリート女性を当てることはほとんど許されていない。と言うより、政党として多様性を重んじるということをアピールする目的もあり、必ず社会のマイノリティーを比例代表拘束名簿の中で安定的に当選できる位置に配置するのが現在の慣習となっている。名簿順位の1位や3位に障害者女性がおり、また移民で国籍取得した女性などマイノリティー女性の顔が並ぶとその社会グループが非常に多様性をもった組織になるという効果があり、政策もその方向で動いているように思う。 (A委員)  先ほど公職選挙法36条の話が出た。私も同条については、乗り越えなければならない壁であると思っている。ただ、憲法的には1人1票の原則という観点とは矛盾せず、むしろ他国の進んだ制度について参考にできるものもあるのではないかと思っている。憲法上に「普通選挙をすること」という条文があるが、具体的な内容は公職選挙法に委ねている。もう一つ、憲法第14条では平等権が定められているが、これは「性別等によって差別をしてはならない」という条文であり、むしろ差別的な状況があるならばそれを合理的な方法で改善していくことを求められていると解釈するのが正しいのではないか。つまり、「形式的に1人1票にするように」というより、「形式的に実施した結果、生じる不平等を正すように」という意味が込められていると理解している。地方自治法では「法律の範囲内で条例を定めることができる」と定めがあるので、この「法律の範囲内」をどう解釈するのかが問題である。一般的な自治体であれば異論の生じない運用をし、終わってしまうが、明石市は時代のニーズをいち早くキャッチし、今まで様々な前例のない施策にチャレンジし、乗り越えてきた。期待したいところである。  「法律の範囲内」の「法律」とは公職選挙法を指すと思うが、大きな憲法の枠組みとして、むしろ不平等な状況を解消するために憲法13条の「一人ひとりの個人を尊重していくように」という命題のもとに進めるならば、法律の解釈も柔軟にできるのではないか。緩やかにも厳格にも解釈はできると思うので、その辺を副会長にまた教えていただきたい。私も次回までに考えてみたい。 (会長)  私も法律を作るときは、この点につき憲法学者からなかなかお墨付きを得られず、苦労しているが、実は柔軟に解釈できるという説もある。憲法的にも問題がないということを次回研究成果として発表していただきたい。 (D委員)  法的なことや行政のことはわからないが、多くの良い事例を教えていただいた。明石市として市長と議会の皆さまが共に手を携えて、「こうやろう!」という理想を掲げることができれば、段階的に目標を設定し、それに伴い人材も育成されると考える。今日は傍聴席に男性の議員が1人もいないので、次回は男性議員の皆さまにも参加していただけると嬉しい。 (泉市長)  市役所でも様々な検討を始めているものの、いかんせん市役所は頭が固い。私自身も頭が固いのかもしれない。  これまでの当たり前を変えていくのは「言うは易く行うは難し」。特に管理職の女性比率のテーマについてはいろいろな場面で指摘されながらもなかなか上がっていない。この検討会でご意見をいただきながら内部から変えたいと思っているが、壁があり簡単にはいかない。1〜2年では無理でも、5〜10年をかけてしっかりやっていくイメージを持つことも大事だと思っている。逆にすぐできることもある。例えば、防災会議は充て職で男性ばかりだったので、専門委員を設置し、実務的な部分で女性の意見を取り入れる。すぐにできることは積極的にやっていこうと考えている。  委員の皆さまには「すぐにできるテーマ」と「すぐには難しいかもしれないが将来にわたってしっかりとやり遂げるテーマ」、それぞれについて、ご提言いただければありがたい。 8 会長総括  具体的な制度設計については、次回以降の会議で深めていくということになると思う。  委員からも提案があったように、ルワンダ議会にあるような障害者枠を明石市で実現しようとするとどうなるのかといった内容も議題に入れていきたい。  また、例えばフランスのようなペア制度や、台湾の制度をもう少しひねりながら、男女それぞれの議席をあらかじめ確保するような方式の実現可能性などにも議論を広げていけると良い。  同時にこういった議題は、いろいろ思考実験を繰り返しながら可能性を広げていくが、進めるに当たっては必要性について市民の理解を得て呼吸を合わせないと実現できない。進め方が重要だと思う。  また、韓国の選挙制度では単に女性を奇数に配置することしか定められていないにも関わらず、そこに社会的マイノリティーを入れる慣習があるということであった。つまり、「社会的マイノリティーの方が代表されるべき」という社会的な規範が成立しているので、そのような運用になっているということ。明石市は、これまでのSDGsの取組を進める中で社会的な規範がかなり浸透している自治体だと思う。社会的な規範を前提としながら、どこまで制度化できるのか、また運用面でさらに上乗せしていくのか、いろいろなことを段階的に考えていけると良い。  次回は今言ったような内容の話を深めていきたい。同時に当事者参画の観点について、この検討会としても、障害者や性的マイノリティーの方の声なども反映させながら、必要な仕組みを検討していくのが良いと思う。事務局に日程調整してもらい、ヒアリングの機会を設け、それを挟みながら議論を深めていく方向で進めたい。 9 今後のスケジュール  ・第2回検討会は、3月11日金曜日 14:00〜16:00  ・第3回検討会を4月、第4回検討会を5月に開催し、最終検討会で意見の取りまとめ  ・当事者参画については、内容検討の上、日程調整