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更新日:2019年10月7日

記者会見 2019年(令和元年)9月25日

報道担当課長

 ただいまから市長記者会見を始めたいと思います。本日はトピックスを1つ用意しております。「養育費と損害賠償金の不払いによる泣き寝入りを救済します」ということで、泉市長から説明をお願いします。

養育費と損害賠償金の不払いによる泣き寝入りを救済します!

資料 養育費と損害賠償金の不払いによる泣き寝入りを救済します(PDF:123KB)

資料 諸外国の養育費確保制度(PDF:173KB)

資料 情報開示イメージ図(PDF:195KB)

資料 こども養育支援事業の取り組み(PDF:189KB)

 

市長

 今日のテーマですが、「養育費と損害賠償金の不払いによる泣き寝入りを救済します」というタイトルを付けさせていただいております。まず大前提として、我が社会の子どもの貧困、また子どもに対する虐待というものは、本当にさまざま報道され続けておりますが、子どもの近くで行政、市長をしている立場としては、本当にこの問題、もっともっとしっかりしなければいけないという強い思いを持っております。大前提は、子どもの貧困や一人親家庭のおかれた窮状であります。加えて、犯罪被害者につきましても、泣き寝入り状態がいまだに続いているというような、まさにその前提がございます。

 そういった中で、明石市につきましては、この養育費のテーマや犯罪被害者のテーマにつきましても、この間取り組みをしてまいったところでございます。お配りしている最後の資料にもこの間の経過を記載していますが、例えば犯罪被害者についても、明石市においては被害者支援の条例をつくり、さらに改正をし、その際には立替支援金制度、被害者の泣き寝入りを放置することなく行政が加害者になり代わって立て替えて支払い、それを加害者から求償する、そういった制度を2014年に創設しています。加えて2018年には、再提訴の支援の内容なども盛り込んだ改正もしているところでございます。もっとも現状は、犯罪の被害者が判決を得たとしても、しっかりと加害者から支払いを得られている状況にはないのは、皆さんご案内のとおりでありまして、明石市として被害者のテーマにこの間取り組んでまいりましたが、実際被害者の手元にしっかりと賠償金が届くところまで責任を持つのが行政の責任だと私は考えており、制度を作って終わりではなく、しっかり被害者のお手元に本来得られて然るべき賠償金をお届けする、そこまで責任を果たしたいという強い思いがございます。

 裏面には、こども養育支援の取り組みも記載しています。これもいろいろ報道していただいているところですが、2014年4月に明石市では、離婚の際には子どもさんのこともお考えいただき、養育費や面会交流などについて、ぜひ離婚前にお話いただき、書面にしていただきたいとの思いで、参考書式を配り始めたのが5年前のことでございます。その後明石市としてはさまざまな取り組みを進めてまいり、特に2016年には面会交流につきましても明石市の職員がコーディネートをし、しばらく会えていなかったお子さんと別居親の間を取り持つ形で、面会交流支援を実際にやり続けています。改めてお伝えしたいのは、昨日今日、急に今回の施策をするわけではありません。犯罪被害者支援につきましても、この間取り組みをしてまいりました。子ども養育支援につきましても、準備をしたうえで立ち上げたのが、5年以上前であります。明石市の養育費の取り決め率につきましては、法務省の発表で6割~7割という形で上がっていることは言われていますが、これも大事なのは、取り決めする率を上げることではありません。実際に子どもの手元にしっかりと愛情のこもった養育費が届けられ、子どものために使われ、子どもの貧困状況が少しは助かっていく、誤解なきように、養育費だけでことが足りるわけではないことは重々理解をしていますが、少なくとも養育費くらいについては、しっかりと行政が手立てをすべきだと私は強く思っているところであります。

 そういった中で、2018年の11月から明石市では養育費につきましても、犯罪被害者の立替えに続きまして、立替制度を民間の会社の協力を得る形で、18人の枠の中ではございますが、モデル事業としてスタートしました。実際上すでに全ての申し込みは終わっており、実際に立替払いも始まっております。そして現に、立替払いをすることによって、お伝えするだけでも支払う方も出てきています。実際、立て替えた後に求償、つまり払ってくださいと言ったことによって、その後払う方も出てきているところであり、効果は高いということは明らかであります。いわゆる元夫婦の問題を、元夫婦だけに任せていて何かが進むわけではありません。第三者、特に行政が関わることによって、お子さんのもとに養育費が支払われるようになることは明らかだと私は思っております。そういったことを受けて、国の方も、民事執行法の改正という形で一定の方向付けをしていただいたところですが、これも有識者、専門家からご意見があるように、一定の改正ではありますが、それだけではまさに、絵に描いた餅が少し近づく程度にすぎません。子どもたちの食べられる餅になっているとは到底考えられません。そういった中で、国の民事執行法の改正を半年後に控える中で、明石市としては絵に描いた餅の民事執行法の改正を、実際子どもが食べられるような餅にする思いで、取り組みをしていきたいという思いを持っております。なお、今お伝えしていることは、残念ながら我が日本においては、珍しいと思われる方が多いのが残念であります。諸外国ではすでに、こういったことをほとんどの国がやっております。例えばアメリカでは、1975年、今から44年も前に法制度を作り、改正を重ねながら何とか養育費を子どものもとに届ける形の法改正を続けております。ヨーロッパも同様でありまして、日本以外の国は30~40年前からこのテーマ、すなわち、子どもの貧困や離婚後の子どもの生活の安全のテーマに取り組んでいまして、逆に言えば、取り組んでいないのは日本ぐらいな状況だということは、改めてお伝え申し上げたいと思います。

 そういった中で、今回の検討内容につきましては、基本的には日本以外の諸外国でされている制度を何とか日本の中で出来ないか、特に条例という限界はあるにしても、明石市において出来ることをしっかり検討し、明石市としてまずは出来ることを国を待つことなく制度化し、思いとしてはしっかりと国が受け止めていただいて、日本も当たり前のように養育費が子どもに払われる、損害賠償金が被害者に届けられる、そういった対応をとっていただきたいという思いがございます。

 そういった中で改めて強い思いを持って、明石市につきましては、養育費の受取率につきましては、現状は24.3%、4人に1人以下の子どもしか養育費を受け取れておりません。こんなひどい国は世界を探しても、本当に先進国では日本ぐらいでありまして、声を大にして言いたいわけですが、子どもの貧困対策、国を挙げてというのであれば、まず養育費について、4人に1人も受け取っていない現状を改善するのが、私は本当に待ったなしの状況だと思っております。そういった中で、まずは5年以内に、明石市としては養育費を受け取っている子どもを50%以上、今の状況を倍増以上させ、少なくとも半分以上の子どもたちのもとに、養育費が届けられている状況を作りたいと思っております。明石市長としては、私が国のことを決定できる権限はありませんが、明石市のことにつきましては、市議会にご相談申し上げながら、条例を待つことなく出来ることは、条例を待つことなくやりたいですし、条例を作れば出来ることは、条例を作ったうえでやっていきたい。そして結論的には、少なくとも中間目標として、5年以内には半分以上の子どものもとに養育費が届けられる、そういった状況を、現に明石市において出来ることを証明し、そして国の制度化につなげていきたいと思っております。改めてこのテーマにつきましては、実際やれば出来ると私は強く思っておりますので、その旨お伝え申し上げたいと思います。

 続いて資料に沿いまして、総論部分をかいつまんでご説明します。繰り返しになりますが、5年以内に養育費の受取率をまずは50%、5割以上にすることを目標にした施策を検討していきたいと思っています。条例を作らなくても出来ることもあります。条例を作れば出来ることもあります。条例を作っても悩ましいテーマも、もちろんあるに決まっていますので、それをきっちり整理したうえで、出来ることを精一杯やっていきたいという思いでございます。そういった中では、すでにお伝えしたように、明石市は取り決め率の向上に向けて、参考書式を配ったり、説明会をやったり、相談申し上げたり、さまざまなことをすでにやっておりますが、それに加えまして、新たに検討している施策としては、まずは手続き支援です。民事執行法の改正により、より情報が得られやすくなります。しかし、何もしなければ、一般の方がわざわざ裁判所に行くわけでも、お金を出して手続きをするわけでもなかろうかと思います。その点につきまして、明石市には、私以外にもすでに10名の弁護士資格のある職員もおりますので、しっかりと相談に対応することのみならず、手続きにつきましても、書類の作成代行なども含めまして、しっかりと絵に描いた餅で終わらせないように、民事執行法の改正を実効性有らしめる手続きの支援をしてまいりたいと考えています。

 加えて、情報開示につきましては、国の法改正によってやれる手続きもありますが、実際上の手続きにつきましては、裁判所に手続きを行い、裁判所が例えば明石市に照会を行い、明石市が裁判所にそれを戻し、そして裁判所からご本人のもとに届けるスキームでありますが、そうであれば、ある意味、明石市が条例を作ることによって、裁判所を経過せずに同様のことをすることも可能だと思っています。そうすると裁判所の手続きを経ずして、より迅速に、より身近な形で寄り添う形で情報開示ができ、その情報開示に基づいて、

例えば、勤務先に養育費の差押えなどをすることも可能になろうかと思っております。繰り返し申し上げますが、私としては形ばかりの制度を作るということではありません。子どものもとに本当に養育費を届けるんだということが、あくまでも大事なことだと思っています。それに加えまして、支払い確保につきましても、諸外国の例を参考にしながら、出来ることを検討してまいりたいと思います。すでに一部報道いただいているところですが、改めてお伝え申しあげますが、氏名公表が特に重要だと思っているわけではもちろんありません。それも他の国では、アメリカでも韓国でもドイツでもしている制度でありますので、検討から外す必要はないと思っていますが、それがメインではありません。まず、家庭裁判所がやっている手続きの中で、履行の勧告や履行命令、これを明石市がいわゆる義務者に行うことは、可能だと私は考えています。そして、差押えにつきましても、すでに法律上規程されている差押え手続きを、市の職員が事実上手伝う形の差押えも可能だと思いますし、諸外国では直接的な行政による差押えということも、すでに制度化されております。明石市の場合、例えば市税の滞納につきましては、裁判所を経過せずに明石市が差押え出来ることになっています。もっとも、市営住宅などの滞納につきましては、裁判所を経過してはじめて差押えが可能ですので、明石市のする差押えも2種類ございます。養育費の差押えにつきまして、まず現行法上、可能な差押えのお手伝いは当然しますが、それに加えて、諸外国でやっているような直接的な差押えが可能かどうかということも検討してまいりたいと思っております。

 続きまして、給料の天引き、諸外国ではこれがメインであります。アメリカの場合でもたくさんの手続きがありますが、基本的にはアメリカも7割が給料天引きでありまして、ヨーロッパを見ても、給料天引きが最も安定的な養育費確保であることが明らかであり、明石市としてもぜひ給料天引きを制度化していきたいと考えています。給料天引きも大きく2種類あります。あくまでも義務者の同意に基づいてすることは可能であります。例えば明石市役所の場合、明石市役所で働く職員が義務者の場合、明石市の給料明細の中には労働組合の組合費が天引きされています。それを天引きした上で、給料を振り込んでいる状況ですので、本人の同意が得られれば、明石市が本人に払う給料からまず養育費を天引きして、それを子どもの口座に振り込むことは可能だと考えており、これは実際やりたいと考えています。給料天引きを具体化したいという強い思いがございます。もっとも、本人が同意しないときに、給料天引き出来るかどうかについては、大変大きな議論があります。例えば明石市の場合でも、介護保険料とか国民健康保険料とかは給料天引き、民間の企業から天引きして徴収を現にしていますが、これは法律の規定に基づきますので、法律の規程なくして果たして条例でそこまでやっていいのかどうかについては、おそらく否定的な意見も多かろうとは重々理解していますので、そう容易だとは考えていません。しかし、繰り返しお伝えしたいのは、他の国では給料天引きが当たり前なんです。これを制度化すれば、基本的にサラリーマンで給料をもらっている人の給料から、介護保険料や国民健康保険料の天引きと同じように、養育費の天引きをすれば子どものところにお金がいくことは、ある意味出来ることでありまして、一気に日本における養育費のいわゆる受取率も私は高まると考えており、明石市としては限界がありますが、少なくとも本人同意に基づき、義務者の同意に基づいた給料天引きにつきましては制度化したいと思っており、基本的にはどれか1つ選べと言われれば、この給料天引きが最も実効性が高い、子どものもとにお金が届く仕組みだと考えており、これに対してしっかり有識者の意見も踏まえて対応していきたいと考えております。

 続いて、過料であります。これもすでに家庭裁判所におきましては、過料という制度がありますが、ほとんど使われておりません。過料で一定程度の金額を払えといったところで、払わないときにその後の手続きがなければ、実際上過料の制裁といっても、どの程度効果があるのか疑問な人は出来ません。

 続いて、行政サービスの一部制限です。他の国を見ますと、パスポートの発行停止とか、国外に出てはいけないとか、運転免許証の停止などをしている国もあります。例えば、州ごとに認めている専門資格について剥奪する州もありますので、明石市についてどこまで出来るかでありますが、例えばするしないは別として、明石市の行っているサービスは幅広いです。論点はずれますが、市民図書館の図書カードを発行しないと本は借りられません。これも行政サービスの1つであります。もちろん、それをするしないではありませんが、あらゆる行政サービスがありますので、その中でどういったサービスの一部制限があり得るのか、他の国ではやっております。ここも議論が割れるのは明らかであります。実際上、水道料金を払わないと水道を停止しています。水道法の第15条では、正当理由があれば、水道の給水停止も予定されています。もちろん、水道料金を払わないときの水道の休止については、世の中の皆さんの知るところでありますが、違う理由でそこまでしていいのかについては、大変な議論があろうかと思いますし、今ここで私がすると言っているわけではありません。ただ、諸外国がなぜそこまで、間接強制と言いますが、直接的でないことも含めて、必死に養育費を払わそうとしているかというと、それだけ子どもの貧困とか養育費の重要性に鑑みてだと思っています。この点、養育費といっても一般の民事債権ではないかというような意見があるようですが、それは違うと明確に申し上げます。一般のお金の借金の貸し借りではありません。子どもの養育費というのは、子どもが育っていくうえで、まさに必要不可欠なお金であり、加えてそれは別居する親からの愛情のこもったお金の面もあると私は思っていますので、単なる一般の民事債権と同列に論じられません。だからこそ、他の国も養育費については特別扱いをして制度化しているのであって、一般のお金の借金の貸し借りとは別の論点だと私は思っており、他の国はそのように整理をしておりますが、日本においては今だ馴染みがうすいこともありまして、養育費だけ特別扱いするのはおかしい的な議論はあろうと思いますが、私としては他の国をよく参考いただければ、なぜ他の国があえて養育費に特化して制度化しているか、という背景が見えてくると思っております。

 続いて公表であります。この点につきましても、子どものための施策でありますから、子どもの不利益を予定しているわけがありません。例えば子どもの同意等を前提にしていく、もう少し厳格にすると、子ども自身から申し出があったときに限り公表する、なども考えられると思います。子どもが例えば20歳になったら、2年半後には、成人の年齢も18歳になりますから、18歳になって成人になったら、大人の本人が別居親に対して、養育費を払わなければ公表してくださいということを申し出たときに限り、行政が公表するというスキームも予定されているところであります。いずれにしても荒っぽく公表したら、かえって子どもに不利益が及ぶことは当然認識しておりますので、そういった荒っぽい手続きでの公表は全く考えておりません。そうではなく、子どもの利益に沿う形で何が出来るかという中でのこの制度の検討だと思っております。

 その他、他の国では刑事罰を科す国も多くございます。実際上、養育費を払わないと逮捕している国も数多くございます。別に珍しくありません。アメリカでも韓国でも養育費を払わない場合に、場合によっては逮捕し、収監しております。他の国はそういったことも含めてやっている中で、いまだ日本では養育費を払わなくても仕方がないような状況が続いていることについては、もうさすがに世論を含めて大きな転化を向かえていると私は思っております。実施についての手続きにつきましては、養育費については新たな条例を作ることによって、犯罪被害者については改正によって、対応していきたいと考えております。

 

市民相談室長

(資料に基づき補足説明)

 今回、民事執行法の改正施行に合わせて、市でさまざまな施策を検討しているところですが、まず民事執行法の改正内容について簡単にご説明します。資料をご覧いただきたいんですが、今回の民事執行法のさまざまある改正の中の、このテーマに関連するものを抜粋したものです。例えば、養育費を払わなければならない人、あるいは犯罪被害者の加害者が賠償金を払わなければならないけれども、養育費や損害賠償金を払ってもらえない方が、どういった形でそういった加害者や、養育費の支払い義務者から払ってもらえるかというところで、現在の法制度のもとでは、基本的にはご自分で相手の財産を探して、その財産を差し押さえるという手続きをとらなければいけないのが現状となっております。今回の法改正で、そういった権利を持っている人が、裁判所に言えば、裁判所から市役所などに持っている情報を出しなさいという命令がいきまして、市役所などから裁判所に回答し、裁判所経由で養育費の権利を持っている人や、犯罪被害者の方が相手方の情報を得ることが出来るようになるといったのが、今回の法改正の内容となっております。

 これにつきまして、検討している施策の内容の情報開示の点につきまして、明石市では裁判所を介さなくても、債権者の方、被害者の方や養育費の権利を持っている方が、市役所に直接情報を出して下さいと申請をされたら、要件を満たしていれば情報を開示する、裁判所を介さなくても支払い義務者に関する情報を提供するといった制度を考えています。その理由としましては、やはり多くの市民の方からご相談をいただく中で、やはり裁判所というのは敷居が高いというお声を非常に多くいただきます。裁判所での手続きがいると言うと、自分1人でやるのは難しいし、弁護士さんを頼むとお金もかかるだろうということで、なかなか手続きがご自分で出来ず、諦めてしまう方が多くいらっしゃいます。そういったご相談も非常に多く受けております。こういった現状に鑑みまして、行政として出来ること、特に市民の方からしたら、裁判所に比べれば市役所というのは敷居が低い存在となっておりますので、市役所で裁判所に提出する書類の書き方をアドバイスしたり、裁判所を使わなくても、相手の情報を提供することによって、本来、養育費や損害賠償金をもらうべき人が、しっかりとそれを受け取れるように、行政としても支援させていただくということを検討しているところでございます。

 あと、資料の補足説明としましては、諸外国の養育費確保制度ということで、アメリカ、イギリス、オーストラリア、スウェーデン、フランス、韓国、6か国の状況をまとめております。特に徴収制度について、給料天引きにつきましては、アメリカやイギリス、オーストラリアなどでは当然のように始まっておりますし、イギリスやオーストラリアでは養育費法という法律も制定されております。また、スウェーデンやフランスにおいては、国による養育費の立替え払い制度がすでに築かれており、こういった諸外国の状況も参考にしながら、専門家や当事者の方のご意見を踏まえつつ、市として出来ることを今後検討していきたいと考えているところです。

 

記者

 検討会の構成員で3名名前が挙がっていますが、あとどういった方が入られるんですか。

 

市長

 記載しているお三方は、すでにご了解を得ております。棚村早稲田大学教授、この道の第一人者でございます。シングルマザーズフォーラムの理事長の赤石さん、この方は一人親家庭の支援をずっとやっておられる、この方もこの分野の第一人者でございます。あとは子どもの分野に詳しい津久井弁護士のお三方は了解があります。イメージとしては、あとお三方ほどで、6名程度の検討会を立ち上げ、ご意見を賜わりながらやっていきたい、加えて当事者、いわゆる養育費をもらったり、もらっていなかったりする子どもたちに対するヒアリングも実施していきたいと考えております。

記者

 今検討している施策の内容で再三おっしゃっていますが、条例でどこまで出来るのかというところですが、今まで裁判所がやっていたところも、市でやっていきたいということですが、実質的には可能なんですか。

市長

 ですから、条例を作らなくても出来ることと、条例を作れば出来ることと、条例を作っても作ることが憲法上、法律上どうかという論点に整理していくことになると思います。1例、2例挙げると、手続き支援は条例を作らなくても可能です。民事執行法が改正されて、それを踏まえてしっかりとお手伝いしていくことは可能ですから、それだけでも恐らく裁判所に1人で行けない方が、市役所に相談に来ていただいて、ご一緒に手続きをすれば、その後差押えの書類も事実上市役所の職員が無料で対応すれば、相当程度差押えが進むと思いますので、条例を作らなくても来年の4月から出来ることは数多くあると思います。条例を作れば出来ることは、例えば情報開示、これは個人情報との兼ね合いはありますが、法律上一定の手続きを経れば、情報開示は可能になっておりますので、これは条例を作れば可能だと考えています。

記者

 条例化で裁判所を介さなくても可能ですか。

市長

 可能だと理解しています。その他もろもろの例えば、履行勧告とか履行命令につきましても、書面で払ってくださいということですから、これは条例を作らなくても出来ると思います。ただ新たな制度ですので、条例に位置付けた方が望ましいと私は思っておりますが、条例を作らないといけないかというと、作らなくても出来るとは理解しています。条例を作ってもどうかというのは、例えば同意に基づかない給料天引きとか、市独自の差押えなどの論点についてはかなり意見が割れるだろうとは思いますので、そこは有識者のご意見を賜わりながらどう整理していくかだと思います。この点につきましては、整理した結果、条例では難しいとなってくれば、国に対してしっかり働きかけをしていく、いくら明石市が頑張っても、法律上難しいテーマについては法律を変えていただかないといけません。特に強く希望するのは、法律を作るか、改正をして給料の天引きを国で制度化してほしい、これは他の国ではやっていることだと思いますし、子どものもとに最もお金が届きやすいことだと私は思っています。

記者

 養育費の受け取り率24.3%という数字は、明石市の数字ですか。

市長

 これは厚生労働省の2016年調査の直近の数字で、メディア各社もこの数字を数多く使っておられますが、今公になっている数字としては24.3%です。明石市については、いったん5年後以内にしていますので、一定の時期に市内における調査をした結果、50%を超えているかどうかを確認したいと思います。イメージとしては、中間段階でも一度やりたいと思います。

記者

 現状はこういう数字でいいんですか。

市長

 24.3%は全国の数字です。明石市としてはまだ調査をしていません。先ほどお伝えしたように、例えば、養育費や面会交流を取り決めしていますかというようなチェック欄が、離婚届に出来ましたので、それは法務省においてそのチェック欄の比率は分かります。明石市においては、全国平均6割のところ7割と、やはり市の取り組みによって1割取り決める人が増えたことは、法務省の発表によって知るところになっております。ただ、この養育費の取り決め率については、詳細な調査まではまだ出来ていない、直近の数字は厚生労働省の2016年の数値だという認識をしておりますので、明石市としては目標設定をしたうえで、中間的な状況の確認と、5年後になると思いますが、何%まで明石市内で養育費が払われているかということの確認はしたいと思います。私としては、何が何でも達成する、絶対やり遂げたいと思っています。例えばテーマは違いますが、こども食堂の全28小学校区もちゃんと有言実行で、今もボランティアさんと一緒にやっております。このテーマも行政だけで出来ませんので、機運を高めて、まち中で養育費を払うのが当たり前だと、養育費を払ってもらえなくても仕方ないようなまちではなく、養育費というものは当然に払うべきものなんだというふうに、やはり意識が大きく変わっていく今過渡期だと思いますので、5年後の明石市においては、養育費というのは当然に払うべきものだというのが常識になるようなまちにしたいと思います。

 ちなみに、明石市では里親というテーマにつきましても取り組んでいますが、これも世界で類を見ないほど日本は里親委託率が低いわけです。明石市においてはすでに取り組みを進める中で、これまでは1年に1家庭ぐらいしか里親登録がなかったですが、一気に昨年も十数人が登録いただいております。諦めずにちゃんと取り組みをやれば、諸外国並みにしていくことは可能だと私は思っており、この養育費につきましても、ちゃんと取り組みをやれば、日本だけが例外的に養育費を払わない方が多い国であると思いませんので、これはまさに行政の制度が出来ていないが故の状況、これは繰り返し言いますが、子どもの貧困というのに子どもに責任はありません。子どもの貧困の責任は、政治行政の責任であり、まさに子ども達に対する政治の貧困そのものであって、行政の貧困でもありますので、明石市としてはまずはこの子どもの貧困というテーマについて、しっかり行政として出来ることをやっていく、養育費がすべてではありませんが、やはり大きな要素であることは間違いないと思っています。

記者

 養育費の支払いの確保で、やはり公表を巡って一番賛否が分かれると思いますが、新たな検討会ではどのように意見を重ねてもらって、どのような結論を得たいですか。

市長

 やはり公表についての論点は、まず前提として人権というものは、ある方の人権を擁護というか保障しようとしたときに、他の誰の人権も侵害しないケースもありますが、ときに人権同士が衝突します。それこそ、国民の知る権利や報道の自由といっても、プライバシーと衝突するのと同様でありまして、人権と人権とがまさに悩ましい関係に立つ場面はあります。そういう意味では、例えば氏名公表などについては典型的に、プライバシーの問題、個人情報の問題とぶつかるテーマだと思います。そういった中で、特に氏名公表については、当該子どもさんにとっての不利益という論点がありますので、なお一層丁寧な検討がいると思っております。氏名公表がどうしても先に報道いただいておりますが、私としては公表の論点も全体の中の一部に過ぎないと思っておりますし、逆に言えば公表がもっとも子どもに不利益が及ぶ可能性が高いテーマでありますので、そういう意味では本当に最終の最終の論点かと思っております。検討としては、まず出来ることをきっちり確認して、出来ることから始めていく、今回の中間目標も5年以内という形の目標設定をしておりますので、ある意味、継続的な取り組みを予定しております。条例を作らなくても出来ることは条例を作らなくても始め、条例を作って出来ることについてもより多くの総意を得られるとこを条例化し、場合によってはその後の改正のテーマに位置付けていくということなども想定しています。公表につきましては、繰り返しになりますが、これらの論点の中で、ある意味象徴的に議論の割れるテーマだと思いますし、特に子どもに対する最大限の配慮のいるテーマでありますので、丁寧に丁寧を重ねて対応していきたいと思います。

記者

 子どもの不利益だけは避けたいということですか。

市長

 もちろん、子どものためにやる制度設計で、子どもに不利益があっては本末転倒だと思います。ですからそういう意味では、子どもの申し出にするのか、子どもの同意にするのか、客観的な子どもの不利益状況を第三者機関が判断したうえでするのか、いずれにしても子どもに不利益が及ばないという担保を経たうえでないと、やるべきではないというのが私の考えであります。

記者

 この第三者機関ですが、運用が始まってからも何かを検討するしくみとして残しておくということなんでしょうか。

市長

 それもあり得ると思います。やはり私は市長ですから、思い入れも強く、やりたいことはいっぱいありますし、やりたい気持ちはありますが、ただ行政というのは両面あることはご案内のとおりで、やはり行政が良かれと思っても、場合によってはそこはいき過ぎたりとか、チェックの必要性があります。特に人権同士がぶつかり合うテーマにつきましては、第三者性とか透明性とか手続きの丁寧さという部分は必要だと私自身も思っておりますので、特にこういった日本においては新しい分野にいきますので、丁寧を心がけていきたいと思います。加えて明石市だけで終わるテーマではもちろんありませんので、これは本来日本国が国としてやるべきことだと思っておりますし、明石で制度化したことが、明石止まりではなく、他のまちでも同じように広がっていくことを私としては期待しておりますので、明石市だから出来たではなく、明石市が出来るんだから、他のまちでも出来るでしょうという制度化をしていきたいと思っています。

記者

 初回の会合の予定は決まっていますか。

市長

 はい、内諾しているお三方との日程調整の結果、10月11日の金曜日の午後1時から3時に第1回の検討会をもちたいと考えています。あとお二方かお三方くらい、思っている方はいますが、まだ了解を得ていませんので、その日までには調整をしてと思っております。

記者

 メンバーの中には、養育費の不払いを受けている当事者の方も含まれるという理解でよろしいんでしょうか。

市長

 私自身はその方向で調整したいと思っていますが、なかなかその会議体にメンバーとしてということが難しければ、ヒアリングという形で声を聞かせていただくということはやりたいと思います。

記者

 スケジュールのところで、3月議会に条例案提案ということで考えられていますが、検討会自体もそこまでを目処に議論を重ねられるということですか。

市長

 3月までですべて終わるようなほど簡単ではないと思います。ですから、少なくとも思いとしては、来年4月の民事執行法改正に合わせて、条例を作らなくても出来ることは、4月に運用を始めたいと思います。条例につきましても、少し整理しないといけませんが、議論がそう大きく割れずに、多くの皆さんからご賛同いただけるテーマについては、条例案を3月議会に上程し、4月施行は可能だと私は思っていますが、すでに報道いただいているような、かなり大きな議論を呼ぶようなテーマにつきましては、実際上より丁寧な検討を重ねていく必要があろうかと思います。そういう意味ではこの検討会についても、本年度中で終わるとは予定していません。もう少しかかると思います。

記者

 条例案の提出をいったんは3月議会に目指されるというところは、変わっていないということですか。

市長

 市長としての思いとしては、来年4月の施行に合わせて、条例を作らなくても出来る手続き支援とかはやろうと思います。ただこれも、より丁寧に条例に書き込んだ方が望ましいと思います。履行勧告や履行命令、つまり家庭裁判所に頼まないとやっていただけない手続きについてはそう意見は割れないと思いますので、これを条例に書き込んだ上でやるようなことは、想定し得ると思います。ただ条例については、いわゆる2段階方式、まずそういったことを書き込んで、その後不足とかでさらなる改正を予定した上で検討を重ねて、より議論の割れるテーマについても踏み込むのかどうかという2段階方式を採るのか、逆に条例はもっと丁寧な議論を重ねて、運用面で4月スタートしながら、条例はもう少し先に合わせて1回で条例を作るのかというのは、検討会のメンバーのご意見を踏まえて考えたいと思います。

記者

 市長が、明石市が養育費にこだわるのは、そもそもどういったまちづくりにこだわるからこその政策であり、目的があるのか教えてください。

市長

 そこはいろんなところで言い続けていますが、子どもは親の持ち物ではありません。子どもは人格ある1つの個であります。それに対して残念ながら、我が日本社会は、あたかも子どもについては、当該親の責任であるかのような歴史的過程があると私はかねてから認識しており、それはその子にも親にも、社会全体にも望ましくないと思っています。すべての子どもたちを、まちのみんなで本気で応援するまちを作りたい、そういったまちこそが、選ばれるまちとして、暮らしやすいまちとして、まちのみんなにとってそれが望ましい姿なんだというのが、私の基本的な考え方であります。それに基づいたときに、この養育費というテーマにつきましても、それは離婚した親の責任、親がもらえなくても仕方ないという形で放置するテーマではなく、子ども自身に何の責任もありません。かつ、子どもは自分で稼げるわけではない以上、子どもの貧困について、子ども自身が何か対応出来るわけではないわけであります。それを当該親、特に同居している親の責任に押し付けるのも、それで問題が解決できるわけでもないわけでありまして、これはやはり公、行政というものが関わっていく必要があるテーマだと、かねてから思っており、そういった中での一環であります。別に明石市は養育費だけにこだわっているわけではなく、里親もこども食堂も児童虐待の児童相談所も作っておりますので、そういう意味で言えば、あまりにも子どもに冷たい社会に対して、そうではなくて、子どもたちに温かい社会を作っていきたい、それをまず明石から作っていきたい、それを全国に広げていきたい、そういう思いはかねてから持っている思いであります。

記者

 今回賛否がある部分も多いテーマですが、その中で例えばシングルマザーの方に普通に補助金を支給するとか、さまざまな方法があると思いますが、どうしていわば手のかかるというか、法律上の課題も多そうなことをやろうと思われたんですか。

市長

 明石市につきましては、経済的支援策も一定程度以上にやっているという認識は持っています。具体的には、こども医療費の無料化、保育料の無料化、今後もいろいろ予定していますし、加えて子どもの遊び場も無料化もしています。加えて、妊娠した後の出産費用についても、本年度から実質的な無料化も図っておりますので、さまざまな無料化施策や経済的支援策もとっている認識はあります。ただ、養育費というものについては、いわゆる行政の支援とは違う面があります。子どもにとってのまさに親でありますので、そこは単なるお金というだけではなくて、色の付いたお金だと私は思っており、お金に色が付いていないと人はよく言いますが、私は養育費は色が付いていると思います。愛情の色が付いたお金であると私はそう信じていますし、そういう意味において、愛情の色の付いた養育費を子どもに渡すことによって、ある意味、子どもからすれば、両方の親から愛されているという実感を抱ける場合もあると思いますし、虐待のテーマにつきましても、いわゆる同居親だけの目ではなくて、別居している親の目も子どもに届いた方が、さまざまなリスクについて気づきやすい面もあろうかと思いますので、そこは単にお金が助かるからという論点だけではなくて、それを超えた、やはり親子というテーマがあると私は思っています。

記者

 氏名公表はこの一部だとおっしゃっていましたが、それがなくても市が給料天引きなどを出来るようにやっていくなど、いろいろなやり方があるかと思いますが、一番最初の設計図の時点でそれでも氏名公表が入っているというのは、何か強い思いがあるんでしょうか。

市長

 これは誤解のないように改めて言いますが、諸外国の制度の中で、検討対象として位置付けている形でありますので、氏名公表に特に私が強い思いがあるわけではないです。私の強い思いをあえて言うと、給料天引きです。氏名公表をしただけで、お金は動きませんので。しかも、氏名公表には、氏名公表される側にとっての不利益ですし、それが子どもや同居親にとっても、いろんな形で事実上影響が及ぶテーマでありますから、そういう意味では氏名公表というのは、より慎重に検討して然るべきテーマだと元々思っています。ただ氏名公表は議論が割れますので、報道としてはそこを報道いただいている面があるのかもしれませんが、私の思いとしては、どれか1つ選べと言われれば、給料天引き制度を作りたいし、まずは本人の同意に基づいて給料天引きを始めたいと、そうすると安定的に給料が払われる度に、子どものところにお金がいきますので、子どもの手元にお金を届けたいという思いが強いわけです。しかも私自身は、強制より任意が良いと思っています。嫌々力づくでされるのではなくて、当該別居親が子どものことを思って、同意をして、給料天引きで結構ですと、私の給料の中から先に子どもに渡して下さいという気持ちも加えて、子どもさんのもとにお金を届けたいと思っておりますので、行政が強制的にすることは望ましいわけではなくて、強制せずに出来る方が望ましいです。ただ、放置し難い状況ですので、一定の議論を呼んだとしても、私としては5年以内に、少なくとも明石では半分以上の子どものところに、養育費が届く状況は実際出来るということをしっかりと示したいとは強く思っています。そのためには、議論が分かれるテーマにつきましても、逃げることなく議論を続けたいと思っています。

記者

 先ほどから諸外国の例と言われていますが、これは明石だけの問題ではなくて、ここをスタートとして市ではなく、国とかもっと大きなもの、制度を目指していくという意味で、ここが始まりと位置付けていらっしゃるんですか。

市長

 そこはおっしゃるとおりです。例えばアメリカで言うと、1975年までは制度がなかったわけです。その当時のアメリカとしても、子どもの貧困とか離婚後の子どもの置かれている状況について世論が高まり、そこで1975年に制度化が始まって、その後1984年88年など次々に改正して今に至っているわけです。日本においても、1990年代からこの議論は実はあって、例えば日本弁護士連合会なども、2000年当時に養育費の立替え制度をすべきだという意見書を国にあげています。私自身は1997年に弁護士になりましたが、その当時から日本が極端に養育費を受け取れない国であることは、周知の事実であり、私もその頃から、さすがに日本も動かなければいけないと思ったものであります。そして私自身は2003年に国会に議席を得ましたが、その時に国会で今と同じようなことを提案しています。国会の衆議院の厚生労働委員会でも、養育費についてのさまざまな質問や提案もしております。その時からみても、もう16年経っています。残念ながら当時の国は動かなかった。そういった中で私自身は、国を動かす前に、まず自分としては市長として、明石市で出来ることとして、形に示したいという思いの中で今に至っています。繰り返しになりますが、昨日今日ではありません。少なくとも私の中でも、1997年の弁護士になった20年以上前から、このテーマについて強い問題意識を持ち、そして2003年の国会議員になったときにも同様の問題意識で国に提案をし、議員立法についても準備していました。ただ、今私は国会議員ではありませんので、明石の市長としては、明石市で条例を提案申し上げ、制度化するというのが自分の今の立場だと思っています。ただいずれにしても、本来は国が動いて、国が制度化すべきだという思いは当然持っています。

記者

 給料天引きは、市役所の職員に限るわけではなくて、どういう人でもということですか。

市長

 そうです。同意があれば可能だと思います。具体的な場面を想定すると、明石市が勤務先情報を得ていて、差押えが可能な状況になる場面は十分に想定されます。明石市の場合には、明石市で勤務している弁護士資格のある職員などが、事実上無料で差押え手続きのお手伝いをしますので、ある意味、同意しなくても給料が毎月差押えられる状況にはなると思います。その時に、毎月差押えの紙がきて、毎月差押えられたいか、それとも逆に同意いただいて、給料天引きの方がいいかというような場面は十分想定されますので、ある意味、差押えが前提になろうかと思いますが、ご本人にご了解いただいて、任意な形で書類を書いていただいて、給料天引きをスタートすることは、理論上出来なくないとは思っています。

記者

 そうすると、義務者の同意に基づいた給料天引きというのは、かなり検討事項としては優先順位が高いものですか。

市長

 そこが実現するとかなり意味が大きいですので、いくつかのうちの検討の重要テーマの1つだと思います。

記者

 同意していない場合にはどうするかは、これは法的な整備も必要なので、ここは議論になると思うんですが。

市長

 そこは率直に言うと、介護保険料や国民健康保険料については法律があるので、法律に基づいて天引きが可能であります。だから法律を作れば天引きは可能だと当然思いますが、法律がないのに条例で出来るのかというのは、恐らく相当意見が割れるとは認識はしています。

記者

 4月から出来るとするのは、市役所での情報提供ですか。

市長

 民事執行法の改正施行に合わせて、情報開示がしやすくなりますので、裁判所を経過する形での情報開示、このお手伝いは出来ますし、それを踏まえた差押えのお手伝いは出来ると思っています。ただ、裁判所を経過せずに情報開示するのは、これは条例が必要です。個人情報保護条例の関係で、これは条例を作らないと出来ません。条例を作らずに、市の持っている個人情報を出してはいけませんので。ただ条例を作れば、可能だと法律ではなっています。

記者

 では条例ができれば4月からそれは可能だということですか。

市長

 可能になるということです。それが可能になると相当大きいと思います。分かりやすく言うと、一人親家庭の方が市役所に相談に来て、養育費を払ってもらえませんと言っていただければ、養育費の取り決めを確認し、相手の方も明石市民で、ちゃんと税金や介護保険料も払っていて、勤務先も明らかですというときに、書類を書いて裁判所に出せば、裁判所が会社に紙を送って、会社としては本人に払うと二重払いになりますから、差し押さえられた分については本人に払わず、いわゆるお子さんの方に払っていきますので、これは相当可能です。そうすると一気に、一人親家庭が相談に来られて、次々と勤務先の差押えが始まると思います。勤務先の差押えが始まると、給料天引きにご協力いただく方が増えてくると思いますので、そこは期待しています。

記者

 ということは、ほぼ同時期に給料天引きも可能になっていくであろうということですか。

市長

 ただ給料天引きは、ちょっと詰め切っていません。

市民相談室長

 やはり今申し上げたように、個人情報の問題がありますので、個人情報保護条例との関係性、また今度改正される民事執行法との関係、そのあたりを丁寧に検討会の皆さんとも意見交換しながら進めていきます。そのうえで、最終的には給料天引きについても検討していこうと考えているところです。

市長

 私のイメージでは給料天引きは、明石市役所の場合は、労働組合の組合費の天引きと同じようなイメージですから、本人が天引きしていいですと言って、給料から先に引いて払うことは可能だと思います。明石市役所以外の勤務先について、そこの会社の方と相談して、本人の同意に基づいて会社の事務が、その天引きに応じてくれるかどうかの論点になろうかと思いますので、そこはもう少し詰めないといけませんが、私は可能だと思っています。

記者

 給料の天引きは実際にお子さんにお金がわたるというところで納得ですが、諸外国でもというところも含めまして、氏名公表は実際にお金が動くわけではないので、ペナルティ的な要素があるというような認識でしょうか。

市長

 そこはそのとおりです。若干法律用語になりますが、強制執行には2種類ありまして、直接強制というのは直接お金が動く場面です。間接強制というのは、お金は動かなくて心理的に、精神的にプレッシャーという中でしていただく話です。例えば水道料金の滞納のときに、水道を止めるのはなぜかというと、水道を止められたら困るから料金を払うからです。別に水道を止めたからお金は動きません。でも止めるわけです。なぜかというと、払ってもらいたいからです。そこの部分がどこまで許されるかどうかというのは、非常に議論が割れるテーマであることは明らかですので、ここは特に日本の場合には、氏名公表についてはまだ養育費は制度化されていませんので、相当議論は割れると思います。ただ公表については、そもそも例えば明石市でも生態系保護の観点から、アカミミガメを大量に捨てた事業者の名称は公表する条例も作っていますし、別に公表そのものはあることです。例えば保健所なども、食中毒を出した場合に、その事業者名を公表しますから、公表そのものというものは、一定の制度としてはすでにあります。ただこういった養育費の分野での公表というものは、これまでほとんど日本では議論されてこなかったので、非常に意見がいろいろあろうかと思います。もっとも、アメリカの場合には、養育費を払わないと顔写真のポスターを作って街に貼っている州もあります。議会で答弁もしましたが、民間のピザ屋さんと連携して、ピザの配達のときのピザの上に、日本で言う容疑者のような形で「WANTED」と書いて、養育費を払っていない方の写真を刷って、配っているところもあります。そこまでしていいのかという議論は割れますが。ただ、私が言っているのは、日本以外の韓国やドイツやアメリカなどでは、氏名公表は現に国として制度化しているのであって、議論の検討から始めから外すことはないだろうと思っているということです。加えて氏名公表は、特に公表される側の不利益がこの情報化の社会、いったん出てしまったら一生残りますし、それがいろんな形でお子さんの方にはね返る面もありますから、よほど慎重に慎重を重ねるべきテーマであることは明らかであって、ただ養育費を払わないから即公表みたいなことではなくて、相当慎重な手続きは必要だと思います。

記者

 日本において公表というのは、ある一定の成果は見込めるとお考えですか。

市長

 そこも議論していったらいいと思います。そこは意見が割れますね。払わない人は名前を公表しても払わないだろうという意見もありますし、逆にプライドが高い方などは、自分の名前が出ることは望まないので、であれば払うだろうという意見の方もおられます。私もそこまで専門性が高いわけではないので、ただ諸外国では1つの制度としてあるので、この検討会で皆さんに意見は聞いてみようと思います。その結果、どういう意見が出るのかによって違ってくると思いますし、もちろん最終的には条例となれば市議会がどのような判断をなさるかだと思います。

記者

 以前の立替えのときにも出たように、このようなテーマの場合必ず出る話だと思いますが、相手の親御さん、例えば父親なら父親が経済的な理由とか、病気など、いろいろな事情で払いたくても払えないというような場合があると思いますが、それに対してはどうお考えですか。

市長

 まず、払いたくても払えなければ、そもそも養育費の額が妥当ではありませんので、養育費がもし取り決められていても、減額の調定をアドバイスして、適正な金額に定めることになると思います。無職であれば払えませんので。払えない人に払ってくれと言うのは無理ですから。ポイントは、払えるのに払わない方のテーマであって、払いたくても払えない方については別論点です。そういう方についてはその情報をお伝えして、実際上当時は一定の収入があったけど、今は無職で貯金もないようですという情報をお伝えすることになります。そうすると実際上、養育費については期待が持ちにくいわけですから、その方については養育費の減額の調定をするか、実際上払えない状況を説明申し上げて、逆に行政の違う形の支援に繋げていく方法もありますので、養育費がすべてでは当然ありませんが、養育費というものについてしっかり向き合った上で、払える方については払っていただくというイメージです。

記者

 検討項目の中に、行政サービスの一部制限というのが入っていますが、ここはそれほど難しくないとお考えですか。

市長

 ここもそれこそ、訴えられたときにどうなるかという論点だと思います。例えば、養育費を払わないこととの関連性とかいろいろあります。水道料金を払わないから水道を止めることは、法律上予定されています。ただ水道法15条などは、正当理由があれば他の場合も可能になってきます。ここもいろいろ論点があって、判例もいろいろありますが、割れています。どこまで水道を止めていいかという論点です。水道ってすごく大きなテーマです、水が出ないんですから。ただそこまでしたら、普通は水道料金を払います。ただ、例えば市役所の発行している図書カードを発行しなければ、明石の図書館では本を借りれません。これも行政サービスの1つです。それをしたからといって、痛くもかゆくもないかもしれませんが、本好きにとっては一定のサービス制限になります。そのあたり、端から端まである論点ですので、丁寧に議論をしていきたいと思います。ただ諸外国では、パスポートを発行しないとか、運転免許を止めます。トラックやタクシー運転手は、免許を停止されたら働けないわけです。そこまでしているところもあるぐらいですので、議論の対象としては、行政サービスの一部制限についても付したいと思います。

記者

 お子さんへの不利益は氏名公表の場合はありますが、行政サービスの一部制限の場合は払わないご本人の不利益のみということですか。

市長

 そうですね。それこそ図書カードを発行しない場合の不利益は、本人だけですね。水道を止めたら、再婚家庭があったら再婚家庭の子どもに影響がいきますので、個人だけでは済まなくなります。行政サービスでどこまで出来るかですね。あとは、還付金の相殺とかも他の国ではやっていますから、そのあたりもかなり議論はいります。例えばプレミアム商品券とかを配る時に、一定の要件のもとにプレミアム商品券を配らずに、養育費をもらっていない子どもに配るとか、いろんなことが考えられると思います。

記者

 支払義務者の情報開示項目として、勤務先情報のほか、どのようなものが考えられますか。

市民相談室長

 市が持っている情報、例えば不動産に関する情報とかはあります。基本的には勤務先の情報、収入は把握しております。ただ、どこまでの情報を出せるのかというところは検討課題かと思いますので、これはまた検討会で皆さんのご意見を聞きながらやっていきたいと思います。

記者

 明石市民以外でも対象ですか。

市民相談室長

 明石市民の情報だけです。

市長

 離婚して片方が東京で暮らしていて、同居親の子どもが明石市民、基本的な考え方は子ども基準ですから、子どもが明石市民であれば手続きするイメージですから、別に別居親が東京であろうが、北海道であろうが、その不動産が明石にあって明石市が把握している固定資産情報を持っていますから、東京にお住まいであろうが、明石の情報は開示可能です。もし不動産があって、そこにアパートが建っていて家賃収入でもあれば、そこを押さえることも可能です。不動産情報というのは単に、不動産を競売にかけるだけではなくて、不動産の上で家賃収入などを得ているかもしれません。そうすると不動産が分かれば、いろんなヒントが得られますので、その不動産を確認することによって、養育費の差押え対象が見つかることは十分あると思います。

記者

 逆に言うと、明石市内に不動産がなく、勤務先が市外であればアクセスは難しいということですか。

市長

 明石市としては情報を持っていませんから、それこそ私としては、マイナンバーカードを全国民に普及させるんだったら、それを統一的にするとどこまででもいけますから、国が制度化すればいい話です。やはり今回の論点は他の国がやっているのに、日本は国がしないので、明石市がやろうとしているので、やはりそこは自ずから諸外国並みの制度といっても国ではありませんので、始めから当然限界はあります。エリア的限界もあるし、法律との整合性の兼ね合いもありますから、そういう意味では、明石で出来ることをまず始めて、国の制度化をしっかり求めていきたいというスタンスになります。

記者

 結局、不払いに対応する新たな条例というのは、市長としては4月に施行したいというところを目指しておられるんですか。

市長

 したいという意味では、民事執行法の改正がおそらく4月に施行されますから、それに合わせて条例化の方が望ましいとは考えていますし、条例化可能なテーマもあるとは思います。ただ、条例を作りますが、かなり議論の割れるテーマが3月には間に合わないと思いますので、継続的に検討すると思います。ただ明石の場合、犯罪被害者条例も作って、改正して改正してになっていますので、いったん条例を作った上で、改正の手続きでやっていくのか、そうではなくて、しっかり議論をした上で、全体的に条例を少し遅れてでも作るのかというのは、検討会のメンバーの意見を聞いてからになると思います。

記者

 そういう意味では、時期としてはどっちかと言うといつからですか。

市長

 目指すという意味では3月議会で成立して、4月条例施行は目指していますが、どうしても氏名公表もすでに議論も行われていますので、率直に言って、氏名公表については間に合わないと思います。氏名公表とか行政サービスの一部制限なんかはとても間に合わないと思います。

記者

 それは盛り込めるとしても改正後ですか。

市長

 改正後だと思います。ただ、履行勧告とか履行命令とかは十分間に合うと思いますし、裁判所を経過しない情報開示も条例を作れば可能です。民事執行法の改正を絵に描いた餅にしないためにも、なかなか一般の方は裁判所はすごく遠いし、裁判所の手続きと言えば結構ですと言われてしまいかねないので、裁判所の手続きを経ずして、行政が持っている情報を提供出来ますから、申請書類を書いたら明石市役所で条例に基づいて、勤務先情報をお伝えできますので、早々かなりスピード感を持って子どものもとにお金を届けられるようになると思います。やはり情報開示手続きも裁判所を経過しなくても出来るようにした上で、差押えをするようにしたい。氏名公表はしたくはないです、せずに払ってほしい。差押えもしたいわけではないです。差押えしなくても払ってほしいわけです。差押えしなくても給料天引きにご協力いただければ、任意に毎月安定的に子どものもとに養育費がいき続けますから、やはり1回1回振り込んで下さいと言うと、1回2回振り込んでそのうち振り込まなくなるケースが多いですから、やはり安定的に継続的に支払いがあるためにも、給料天引きを導入するのが良いと思っています。

記者

 今回の一連のスキームは、当然養育費は新しい制度を作りますが、同じスキームを犯罪被害者の方には改正で入れ込むイメージですか。

市長

 本来得て然るべきものが得られていないという論点は、同じ面はありますが、ただ、違う場面もあります。やはり犯罪被害者の賠償金は、数字的な金額も違います。基本的には賠償金は1回払いですから、判決でいくら払いなさいと言われて、払わないのでなります。養育費は継続的になります。逆に犯罪被害者は金額が大きいので、よほどまとまったものがないと、実際上差押えについても容易ではない面がありますので、そこは状況は同じ面と違う面があるので、そこは切り分けて整理したいと思います。重なるところはあると思います。履行勧告して履行命令して、手続き支援をするあたりは重なると思いますが、その後は違ってくると思います。ただ氏名公表1つとっても、多分世論は割れると思います。養育費について氏名を公表する場面と、犯罪被害者について、加害者が正当な理由なくして払わない状況で氏名公表するのでは、価値判断が違う方はいると思います。

記者

 給料の天引きについて、今の想定では、あくまでも支払わない人に対してですね。強制執行の手続きをした人に向けて想定されているんですか。

市長

 もちろん一般的に、払っている状況でも給料天引きをお勧めすることもあり得ますので、そこは1回1回銀行振り込みすることなく、給料天引きの方がいいと思います。ただ一般的に言うと、勤務している人は自分の会社にいろんなことを知られたくないでしょうから、給料天引きというのは、会社の事務レベルが養育費を払っている状況を知ることになりますので、そこは若干悩ましいです。ただそれでもいいという方については、給料天引きを、すでに払っている方についてもお勧めしたり、途絶え途絶えの方、払ったり払わなかったりの方などは、なおさら給料天引きをしてもらえませんかと言うことはあると思います。

記者

 これは市を経由するわけではなくて、直接債権者に払ってもらう形ですよね。

市長

 そうです。そこも面会交流をやっていると特に思うんですが、結局間に入ると出来ることは結構あるんです。面会交流しましょうと取り決められても、離婚した夫婦同士はなかなか連絡も取りにくいです。やはり行政が、お子さんといつ会いますかという日程調整をして、具体的には同居している親が、市役所の駅前ビルのある階にお子さんをお連れいただく、その後お子さんと一緒に別の階に降りて、別居親が子どもと一緒に楽しく遊ぶ、それを市の職員が見守るということを現にやっています。養育費についても、直接的に勤務先とやり取りなんてことは、なかなか難しいわけですけど、明石市で勤務先情報が得られれば、場合によっては勤務先にご連絡申し上げて、協力を得ることも不可能ではないと思います。ただその時には、基本的には勤務先について連絡するんだったら、勤務している別居親の同意を前提としないと、また違う論点が出てくると思います。 

記者

 実際、給料天引きをやろうと思うと、氏名公表はお金がかかりませんが、若干コストがかかってくると思いますが。

市長

 ただ、立替えに比べれば・・。諸外国では養育費を前提とせずに制度設計をしようとすると、行政が皆さんから預かった税金をそういった一人親家庭とか子どもの貧困に振り向けないといけないわけです。でもやっぱりその前に、まずは親の責任も含めた養育費の支払いがあった方が望ましいわけです。これは社会コストからみても望ましいわけです。その点、立替えについては、取っぱぐれのリスクを誰が追うかの論点なので、そういう意味では犯罪被害者については、明石市が取っぱぐれのリスクを負ってでも、立替金300万円上限で位置付けていますが、養育費については、お子さん側で一定年齢になるまですごく長期でありますし、回収の可能性についても議論が割れるところですので、明石市としても民間と組んだ状況での、まだモデル事業の位置付けです。そういう意味では、立替え制度を行政、明石市がやるんだったら、相当な財政の裏付けの財源確保を前提としないと、安定したものにならないと思います。公表はほとんどお金がかかりません。天引きも実際上、そんなにびっくりするほどお金がいるわけではなくて、手間はいると思います。市職員の手間は要りますけど、預かっている皆さんの税金を過大に使うわけではないので、ここはご理解いただけると私は思っています。

記者

 条例ができなくてもやれる支援について、市の職員の方が裁判手続きについて、支援されるということですが、弁護士資格を持つ職員が、あくまでも支援という形で、代行して裁判所の手続きをするというわけではないんですね。

市長

 代行と代理は違うんですが、通常弁護士は代理人弁護士と称して、代理という形でやるわけです。でも例えば司法書士さんなどは、一定金額までは裁判出来ますが、一定金額以上は出来ないルールになっていますので、司法書士さんは一定程度の裁判は代行で、事実上書類を書いて、司法書士の名前を出さずに、本人の名前で裁判所に提出して、裁判所にはついて行ってあげて、困ったらアドバイスして現にやっておられます。そういう意味では、いわゆる代理人方式なのか、事実上の代行という形でやるのかという論点です。ただ今の論点は、弁護士であれ司法書士であれ、一定費用が発生している場面ですが、明石市についてはそれを本人負担ではなくて、市の職員がすでに皆さんから預かっている税金で雇われていますので、あえて当該本人から新たな費用を得ずに、いわゆる無料で対応しましょうというところが特徴だと思います。

 ここもぜひお伝えしておきたいのは、私自身は養育費については、本来は裁判所がもっとちゃんとやるべきだと強く思います。もちろん国も制度化するべきですし、弁護士もこのテーマにもっと向き合った方がいいと思います。私も弁護士登録している立場ですが。ただ実際上、簡単に言うと費用倒れなんです。結局、養育費の手続きを弁護士が一生懸命やり続けるとなると、手間暇かかる割に、実際上養育費ですので、そうびっくりする金額ではありません。その結果何が起こっているかというと、例えばある弁護士さんなんかは、NPOを作られて協力していますが、報酬を3割という形にしています。すると、子どもに本来全額いくうちの3割が、子どもではなくて弁護士さんの懐に入っています。法テラスという国の機関がありますが、基本的に法テラスにお願いすると、法テラスから頼まれた弁護士が養育費の差し止めをしますが、その入ってくるお金のうち、例えば3万円入ってきたら、そのうち5000円くらいを天引きして、弁護士の収入にします。私はそれは間違いだと思っています。子どもにいくお金は、全額子どもにいくべきであって、子どものお手伝いをする形をとりながら、子どものお金からお金を抜くのは間違っていると思います。何が問題かというと、これは本来、民民のテーマではなくて、公が関与して、子どものもとに全額いく制度をちゃんと国や行政が作るべきであって、これを民間の弁護士任せにしているから、結局子どもに払うべきお金を一定程度抜く形で制度設計してしまっていると、これは大変大きな問題です。法テラスも大きな問題だと、声を大にして言いたいです。法テラスは、子どもの養育費から天引きすべきではないということです。これは本当に思います。それは間違いです。子どもからとるべきではありません。それは国がちゃんと、そういったことをした弁護士にもし報酬を払うのであれば、国のお金として報酬を発生させるべきであって、子どもからとるべきではないと思っています。その点で明石市は、子どもからお金をとらない、子どもに払われるべき養育費は全額、1円も差し引くことなく、子どもに渡しますというところもポイントだと思います。

記者

 5年以内に50%以上を目指すということですが、取り決め率が上がってはいますが、その中で債務名義まで作っているという人は、かなり少数だと思いますが、そこを上げていくため何か新たな方策は考えていますか。

市長

 考えてはいますが、今日言うのは早すぎます。とりあえず、おっしゃる通りです。論点は大きく3つあります。取り決めしてない人に取り決めしていただく。取り決めを債務名義、つまり強制執行が絡む状況にする。そしてそれを絵に描いた餅ではなくて、実際確保する。この3つとも大事です。この3つのうち、明石市が最初に始めたのは、1つ目の取り決めしましょうと言って、参考書式をお配りしたりするのを始めました。2つ目の債務名義化は、公証役場と連携するとか、家庭裁判所に連絡して対応するということも始めています。

 私自身は市長になる前は、養育費の取り決めをしていなければ、協議離婚書は受理しないという考えでありました。だから、離婚するときに養育費も決めない状況で、離婚は認めない、こう聞くと皆さんびっくりされますが、逆に言うと日本だけです。子どもの養育費の取り決めもしなくて離婚を認めているのは、世界でも日本ぐらいしかないんです。日本以外の国は、未成熟の子どもがいる状況での離婚のときには、行政か司法のどちらかが関与して、子どものその後の生活保障やその後の親との交流について、目配りをした上で離婚を認めているのが、むしろ多数派です。日本のように、紙切れ1枚で離婚を認めている国の方が大変珍しい状況です。ですから、私はかねてから、こんな荒っぽい、離婚届の紙を両親が判子を押しただけで、子どもの意見も聞かず、子どものその後の行く末も誰も気にせずに、それで放置するというのは大変制度として不備だとかねてから思っておりました。他の国ではそうしています。明石の場合では、例えばの案としては、離婚届を出す時に、若干お時間をとっていただけますかと言って説得するとか、少し話を聞いていただいたら何かするとか、明石市の場合、妊娠届を受理する時に、1時間ぐらい妊婦さんの話を聞きます。1時間ぐらい相談に応じていただいた妊婦さんに、5000円のタクシーチケットを渡しています。そういったことも、子どものテーマで始めていますので、これからのテーマになりますが、いかにして離婚する際に養育費などについて、夫婦の合意を得ていただくかの論点はまだあります。出来ることもあると思っています。

 次に債務名義化については、かつて明石市は法テラスを市役所の中に入れました。まさに市民相談の中に、明石市役所内法テラスを作りました。これも財務省の反対で、わずか2年でなくなってしまいましたが、明石市は現に法テラスを位置付けたこともあります。そこの中で、法テラスなり、公証役場というものを市役所の中に位置付ければ、自動的に離婚届の受理の手前に、公正証書化ということは私は事実上可能だと思っております。このあたりは、公証人とかの協力を得てやれば出来得ると思いますので、今後の論点であります。ただ今回は、取り決め率を上げるテーマと、いわゆる債務名義化と言いますが、差押え可能にするテーマとは別に、いわゆる支払い確保の場面において、実際上、絵に描いた餅にならないように、民事執行法の改正を受けて、施行前にやろうとしておりますので、この3つのうちの、3つ目のテーマについて今日はお伝えしている認識であります。問題意識としては、50%以上にするためには、今お伝えしたようなテーマもありますので、継続してやっていきたいと思っています。

記者

 養育費事業に取り組む市長の動機ですが、弁護士時代に実際にお困りになっているご家庭に関与されたご経験もあったと思うんですが、もう少しだけ教えていただけますでしょうか。

市長

 まず1つは、おっしゃっていただいたように、1997年に弁護士になりましたが、愕然としました。離婚する時に大人の意見だけ聞いて、子どもの意見も聞かずに離婚を認めてしまっている事実に、弁護士になりたての頃愕然としました。どうして子どもの意見を聞かないのかと。そして、子どものその後のことを誰が考えるんだという時に、それは当該お父さん、お母さんは離婚のことで精一杯なので、子どものことまで気が回らない状況をつぶさに見てまいりましたので、これは冷静な第三者が、子どもの立場に立って寄り添っていく必要があると思ったのは、20年以上前のことです。ですから、私は弁護士時代も離婚案件も数多く扱っていましたが、私としては子どもの意見を聞くように努めておりました。子どもの意見を聞いて、お伝えする中で、子どものことを考えた離婚というものを導き出したいと思った弁護士の活動をしていたつもりです。2003年に国の方に行って、国会で訴えかけましたが、残念ながら当時国は動きませんでした。今日なんかこれだけマスコミに来ていただいているんだから有難いです。時代は変わりました。当時も同じようなことを言っているので、私は。何も言っていることは変わっていないんです。でも当時は残念ながら大きな動きにつながらない中で、自分としてはせめて、当時から明石市長になろうと思っていましたので、明石市長になって明石のまちで具体化していかないことには、いつまでも待っていられないと思いました。加えてもう1つ大きいのが、市長になった後です。特に大きいのが、この4月に明石は児童相談所を、自治体としては全国で9年ぶりに立ち上げました。全部関係しています。子どもの貧困も、虐待もつながっています。生活困窮とか、孤立化です。こういったテーマは、本当に待ったなしです。いわゆる報道でも、子どもの貧困や子どもの虐待死の報道が続いていますが、それに向き合うほどの施策展開をしているとまでは言い難い状況です。そういう意味で、これまでも強い思いを持ってきた者の1人として、加えて子どもの近くで、児童相談所を立ち上げ、虐待の場面にも実際上心を痛めている者として、このテーマについては待ったなしだと思っています。私の中では、児童虐待防止も子どもの貧困も全部つながっていって、全部関連性は深いと思っています。やはり、一人親家庭の貧困の状況であるが故のネグレクトとか、それを解消するために次の展開の中で、いわゆる悩ましい論点が生じていますので、一人親家庭の生活の安定があれば、状況も違ってくると私はそのように実感しています。子どもの貧困状況、子どものネグレクト状況はあるんです、現に私たちの社会に。これを身近な立場において知り得る立場にあり、それに気づいた立場の市長としては、このテーマは国を待つことなく、やるしかないという思いであります。そこは大きいです、国を待っていたら、子どもが死に続けてしまいます。

記者

 この検討会では、立替払いに関しては枠外というか、話し合いの議論のテーマにはないという位置付けでいいのでしょうか。

市長

 そこは検討課題の中に当然入ります。当然、立替制度の充実化を求める意見が出て然るべきだと思います。そうなってくると、立替制度を拡充するなり、今は民間と組んでいますが、市が直接やるべきだとう議論もあるかもしれませんし、いろいろあると思いますので、そこは議論の対象です。ただ、立替制度の場合には、かなり財源の裏付けが伴うテーマになってきますし、加えて昨年の11月にスタートして、基本的には今、モデル事業としてやっていますので、そういう意味では、今やっている状況をもう少し推移を見てから、本格的な議論をしてもいいのかなと私は思っています。

記者

 氏名公表ありきではないというのは理解した上で、先ほど子どもの同意のところで一例を出されたと思うんで、それが決定事項でないことも理解しますが、子どものプライバシーの権利以外に、子どもの同意といっても、判断能力があるのかとか、何歳からするのかとか、場合によっては成人になったら養育費が終わっているかもしれない、その人たちの同意を得たところでどうなんだというような、いろんな他の課題というか議論すべき点があると思います。主だってここを議論しないといけないというところを、もう少し詳しく教えていただけますか。

市長

 検討課題は山積みですから、いっぱいありますが、今の話の延長線で言いますと、仮に子どもの同意なのか、申し出なのかがあります。子どもというのを、子ども基準できくのか、小さい子どもの場合どうするのかの議論はあります。今成人は20歳ですが、20歳であっても養育費は大学卒業するまでという取り決めも多いですから、20歳の場合でも現に養育費をもらうべき立場の方もおられます。仮に終わっていても、過去分についても請求可能ですから、そういう意味では過去分について払えと言って、払わなければ公表というのはあります。20歳という基準においても実際上、20歳になった大人の養育費をもらうべき立場の者が希望すれば、他の状況をクリアした上で公表というのもあり得ますし、年齢をおとすのであれば18歳、2年半後には18歳で成人です。法制度上は、15歳で遺言可です。遺言は誰の同意も必要なく本人が書けますので、日本の法制度上は、15歳である場面は大人とみなしていて、15歳で遺言を書くことは出来ますので、15歳というのも1つの基準かもしれません。等々いろいろ考えられると思います。

記者

 そのへんを総合的に議論してもらうということですか。

市長

 そうです。いずれにしても氏名公表の論点は、公表される別居親のプライバシー、個人情報の問題と、加えてその情報が出ることによって、不利益を受けかねない当該子どもと、当該同居親の問題もありますので、同居親の同意もできるのかという議論は必要です。ただ、同居親だけの同意では足りないと私は思います。つまり同居親が、個人的感情に基づいて公表を求めたとしても、その結果、子どもに不利益になっては意味がありませんので、基本的に子どもは外せないと思っています。

記者

 3月議会に向け、条例案の提出を考えられていると思いますが、今年度中の議論では間に合わない部分もあるだろうということですが、そうなると氏名公表とか差押えとかの内容が、丸々3月の条例案に含まれない可能性もありますか。

市長

 そこも検討会メンバーのご意見もあります。あと条例の場合には、提案は市長の方ですが、条例の可決否決は議会ですから、市議会明石市は30名おられますので、市議会議員の過半数の賛同がなければ条例は通りませんので、議会の皆さんのご意見も踏まえた対応になると思います。

記者

 ということは、書いてあることは氏名公表も含めて市長は提案しようと思われているということですか。

市長

 そこは検討対象という理解でいいと思います。検討対象にした上で、検討会メンバーに、私の思いとしては、条例を作らなくても出来ること、条例を作れば出来る中で、あえて言うと多くの賛同が得られやすいもの、条例を作れば出来なくはないんだけど、割れるテーマがあります。条例を作ってやってしまうと、法律違反とかそのあたりになる論点もあると思いますから、そういう意味でいうと大きく4種類に分けるんでしょうね。その中で、私としては条例を作らなくても出来ることは4月にやりたいと、これを条例に書き込んでやるのかどうかです。次に条例を作れば出来ることのうち、総意が得れるもので、検討会メンバーと市議会議員の多くの皆さんのご意見がほぼ一致するのであれば、3月議会に上程申し上げて、条例として成立して4月施行は十分あり得ると思っていますが、場合によっては、丁寧な議論が必要だと、作って改正ではなくて、ちゃんと議論した上で総合的に条例を作るべきだという意見が多いのであれば、条例の提出時期については少し待った上でということもあり得るとは思っています。私自身としては、かなり踏み込んでいる状況でありますので、出来ることはあれもこれもするんだという思いです。子どもの不利益は望んでおりませんので、子どもに不利益が及ぶようなことはしませんが、子どものためであれば、意見が割れる場合であったとしても、しっかり検討した上で、子どものもとに養育費が届けられる方向でやっていきたいと思います。

養育費のテーマについて、民法も改正されまして、民法766条でどう書いてあるかというと「子の利益最優先」です。民法自身も法律改正によって、子どもの利益最優先を謳っているんです。だからある意味、誰かのためにと思うと、誰かが若干それは止めてという議論は行われます。しかしながら私としては、子どもの利益最優先の価値判断で多くの理解を得たいと思います。

 

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