(仮称)あかしジェンダー平等の推進に関する条例(素案) 目次  前文  第1章 総則(第1条―第7条)  第2章 性別等に起因する権利侵害の禁止(第8条)  第3章 意思決定過程におけるジェンダー平等の推進に向けた基本施策等(第9条―第18条)  第4章 その他ジェンダー平等の推進に向けた基本施策(第19条―第24条)  第5章 推進体制の整備等(第25条・第26条)  附則  人は誰もが個人として尊重される権利を持ち、性別等により差別されることのない平等な存在です。  国際社会の共通目標であるSDGsにおいても、人権尊重を土台とした「誰一人取り残さない」インクルーシブの理念が掲げられており、これを実現するための前提として、性別、年齢、障害の有無及び程度、国籍などの様々な違いが、多様性として尊重されるべきこととされています。  明石市においても、SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」「持続可能な」「パートナーシップ」によるまちづくりを推進し、SDGs全体の基本原則でもある「ジェンダー平等」の実現に向けて様々な取組を進めてきました。  しかしながら、性別による固定的な役割分担等に基づく制度や慣行により十分に社会参画ができていない人、性別等に起因する差別により苦しんでいる人、性別や障害といった複合的な要素が絡み合うことで、より困難な状況に置かれる人が存在するなど、ジェンダー平等の実現にはいまだ多くの課題があります。  これからジェンダー平等を推進していくためには、すべての取組にジェンダー平等の視点を取り入れる「ジェンダー主流化」の観点からも、あらゆる場における意思決定過程において性別等にかかわりなく多様な人々が参画して、施策や取組が行われることが必要です。  そして、このようなジェンダー平等の取組は、年齢、障害の有無及び程度、国籍等を理由とする複合的にもたらされる差別を解消する取組とあいまって、多様な属性を持つ人が誰一人取り残されることのないインクルーシブ社会の実現につながります。  ここに、性別等による不平等がなく、市民それぞれが自分の意思で生き方を選ぶことができ、もってすべての人がその個性と能力を十分に発揮することができるジェンダー平等社会を実現するため、この条例を制定します。    第1章 総則  (目的) 第1条 この条例は、ジェンダー平等の推進に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、ジェンダー平等を推進するための基本的施策を定めることにより、性別等による不平等がなく、市民それぞれが自分の意思で生き方を選ぶことができるようにし、もってすべての人が個性及び能力を十分に発揮することができる社会を実現することを目的とする。  (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。  (1) ジェンダー平等 市民一人ひとりが、社会的・文化的に形成された性別並びに性自認、性的指向及び性表現にかかわりなく、等しく権利、資源、機会、責任等を有し、その個性及び能力を十分に発揮できる状態をいう。  (2) 性別等 性別、性自認、性的指向及び性表現をいう。  (3) 性自認 自分が女性又は男性であるか、その中間であるか、そのどちらでもないか、流動的であるか等の自らの性に対する自己認識をいう。  (4) 性的指向 異性を対象とする異性愛、同性を対象とする同性愛、男女両方を対象とする両性愛、いずれも対象としない無性愛等、人の恋愛や性愛がどのような性を対象とするかを示す概念をいう。  (5) 性表現 服装、髪形、仕草、言葉遣い等自己の性についての表現をいう。  (6) セクシュアル・ハラスメント 性的な言動(性的な関心又は欲求に基づく言動をいい、性別により役割を分担すべきとする意識又は性自認、性的指向若しくは性表現に関する偏見に基づく言動を含む。以下この号において同じ。)により個人の尊厳を侵害し、個人の生活環境及び集団の職場環境を害すること又は性的な言動に対する個人の対応に起因して、当該個人に不利益を与えることをいう。  (7) 市長等 市長その他の執行機関(教育委員会、監査委員、選挙管理委員会、公平委員会、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいう。)をいう。  (8) 市民 市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。  (9) 事業者 市内において事業活動を行う者又は団体をいう。  (基本理念) 第3条 ジェンダー平等は、すべての人が個人として尊重され、及び性別等にかかわりなく、その個性及び能力を十分に発揮することができる環境が整備されることを基本として、実現されなければならない。 2 ジェンダー平等は、すべての人が性別等による差別的取扱いを受けることがなく、及びすべての人に対して性別等に起因する暴力が行われることがないことを基本として、実現されなければならない。 3 ジェンダー平等は、家事、育児、介護をはじめとする家庭生活(以下「家庭生活」という。)及び職場、学校、地域をはじめとする社会における生活(以下「社会生活」という。)に存在する性別による固定的な役割分担等を反映した制度又は慣行を見直すことを基本として、実現されなければならない。 4 ジェンダー平等は、すべての人が社会の構成員として、家庭、職場、学校、地域、災害時における避難所その他のあらゆる場(以下「あらゆる場」という。)において、意思決定過程に参画できることを基本として、実現されなければならない。 5 ジェンダー平等は、すべての人の性と生殖に関する健康と権利が尊重され、すべての人が生涯にわたって自分らしい生き方を選択できることを基本として、実現されなければならない。  (市の責務) 第4条 市は、基本理念にのっとり、ジェンダー平等の推進に係る施策(以下「ジェンダー平等施策」という。)を実施するものとする。 2 市は、ジェンダー主流化の観点から、あらゆる施策の検討及び実施に当たっては、ジェンダー平等の視点に立って行わなければならない。 3 市は、ジェンダー平等施策の実施に当たっては、当該施策にかかわる多様な当事者の意見を聴くとともに、市民、事業者、地域団体等との連携に努めなければならない。 4 市は、職員に対して研修等を行い、ジェンダー平等の実現に向けて取り組むために必要な職員一人ひとりの意識の向上を図らなければならない。  (市民の役割) 第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、あらゆる場においてジェンダー平等の推進に努めるものとする。 2 市民は、ジェンダー平等施策について、市と協力して取り組むよう努めるものとする。  (事業者の役割) 第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、事業活動を行うに当たって、積極的にジェンダー平等の推進に係る取組を行うよう努めるものとする。 2 事業者は、ジェンダー平等施策について、市と協力して取り組むよう努めるものとする。 3 事業者は、すべての従業員が職場における活動と家庭生活を両立することができるよう、必要な環境づくりに努めるものとする。 4 事業者は、職場におけるセクシュアル・ハラスメント及び婚姻、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの根絶に努めるものとする。  (財政上の措置) 第7条 市は、ジェンダー平等施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。    第2章 性別等に起因する権利侵害の禁止 第8条 何人も、あらゆる場において、性別等に起因する差別的取扱いその他の性別等に起因する人権侵害を行ってはならない。 2 何人も、あらゆる場において、セクシュアル・ハラスメント及び婚姻、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを行ってはならない。 3 何人も、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、パートナー若しくは交際相手である者又はあった者に対する身体的、精神的、経済的又は性的な暴力行為を行ってはならない。 4 何人も、性自認又は性的指向の公表を本人に対して強制し、又は禁止してはならず、かつ、本人の同意なく性自認又は性的指向を公にしてはならない。    第3章 意思決定過程におけるジェンダー平等の推進に向けた基本施策等  (あらゆる意思決定過程等におけるジェンダー平等) 第9条 あらゆる場における意思決定過程においては、性別等にかかわりなく多様な人が参画できる機会が保障されなければならない。 2 ジェンダー平等施策の推進に当たっては、性別等にかかわりなく多様な人が参画できる機会が保障されなければならない。  (特別職) 第10条 市長は、定数が2名以上である特別職(地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第3項第1号に掲げる職のうち、市長が選任又は任命の権限を有するものをいう。)の選任又は任命に当たっては、当該特別職を占める者が男女同数(当該特別職の定数が奇数であるときは、男女の人数の差が1人であることをいう。)となるよう努めるものとする。  (市職員) 第11条 市長等は、職員の採用に当たっては、性別等にかかわらず多様な人材が採用試験又は選考を受けられるように必要な施策を講じなければならない。 2 市長等は、職員の管理職又は監督職への昇任に当たっては、性別等にかかわらず多様な職員が昇任を希望できるようにするために必要な職場環境の整備等を行うとともに、能力の実証に基づいた上で、管理職又は監督職に昇任する職員の性別の比率になるべく偏りが生じないように必要な配慮を行わなければならない。  (審議会等) 第12条 市長等は、審議会等(地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定により設置する附属機関その他の審議会、検討会等(その構成員の全部又は一部に市民が含まれるものに限る。)をいう。次項において同じ。)の委員を選任する場合は、性別等の比率になるべく偏りが生じないよう配慮するなど多様な委員構成となるよう努めるものとする。 2 審議会等の委員の構成その他の必要な事項については、別に条例で定める。  (政治分野) 第13条 市長は、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28号)の規定に基づき、必要な施策を実施するよう努めるものとする。  (事業者) 第14条 市長は、事業者において、性別等にかかわりなく多様な人材が管理職、役員等の指導的立場に就くことを促進するために必要な施策を実施するものとする。  (協働のまちづくり推進組織) 第15条 市長等は、協働のまちづくり推進組織(明石市協働のまちづくり推進条例(平成27年条例第33号)第17条第1項に規定する協働のまちづくり推進組織をいう。)において、性別等にかかわりなく多様な人材が意思決定過程に参画することを促進するために必要な支援、啓発等を行うものとする。  (防災及び災害分野) 第16条 市長等は、防災及び災害対応に係る取組において、性別等にかかわりなく多様な市民の参画を得るために必要な施策を実施するものとする。  (教育分野) 第17条 市長等は、その権限に基づく範囲内で、教育分野に携わる者における性別等の比率になるべく偏りが生じないよう配慮するものとする。  (家庭及び社会分野) 第18条 市長は、家庭生活及び社会生活における意思決定過程のジェンダー平等を推進するために必要な支援を行うものとする。    第4章 その他ジェンダー平等の推進に向けた基本施策  (防災及び災害分野における施策) 第19条 市長等は、性別等にかかわりなく地域の防災及び災害対応における活動に関わることのできる人材の育成その他のジェンダー平等の視点に立った防災及び災害対応に係る施策を実施するものとする。  (教育分野における施策) 第20条 市長等は、性と生殖に関する健康と権利についての教育その他の子どもたちの年齢に応じたジェンダー平等の推進に関する適切な教育を実施するものとする。 2 市長等は、子どもたち、保護者、教職員等に対し、ジェンダー平等を推進するために必要な研修等を実施し、啓発に努めるものとする。 3 市長等は、教職員等が家庭生活と職場における活動を両立して行うことができるよう、環境整備に努めるものとする。  (家庭及び社会分野における施策) 第21条 市長は、市民が家庭生活と社会生活を両立できるよう、必要な施策を実施するものとする。  (職場における施策) 第22条 市長等は、市の職員が家庭生活と職場における活動を両立できるよう、多様な働き方を推進するものとする。 2 市長は、事業者におけるジェンダー平等を実現するために、家庭生活及び職場における活動の両立に配慮した研修機会を付与するなど、誰もが働きやすい職場環境の整備を支援するものとする。 3 市長は、市民が家庭生活と職場における活動を両立できるようにするために、当該両立に必要な制度等を、事業者へ啓発するものとする。  (啓発活動の実施) 第23条 市長等は、ジェンダー平等に関する市民、事業者、地域団体等の理解を深めるための啓発活動を実施するものとする。  (その他の施策) 第24条 市長等は、前条までに規定する施策に加え、あらゆる場におけるジェンダー平等を推進するために必要な施策を実施するものとする。    第5章 推進体制の整備等  (推進計画の策定) 第25条 市長は、ジェンダー平等施策を総合的かつ計画的に進めるための計画(以下「推進計画」という。)を策定するものとする。 2 市長は、推進計画を策定し、又は変更するに当たっては、市民、事業者、地域団体等の意見を聴き、当該意見の反映に努めなければならない。 3 市長は、推進計画を策定し、又は変更したときは、これを公表しなければならない。  (推進体制の整備) 第26条 市長は、ジェンダー平等施策を推進するため、進捗状況の管理を含めた必要な体制を整備するものとする。 2 前項に規定する必要な体制に係る事項は、推進計画において定めるものとする。    附 則  この条例は、令和5年4月1日から施行する。