資料3 障害者のコミュニケーション支援にかかる現状と課題〜 各委員からの意見 〜 「手話言語」に関連して 1 日常生活または社会生活における「手話」と「言語」の関係と必要性 ○ろう児に「手話」を第一言語、「日本語」を第二言語として学習させるバイリンガル教育(※1)を推し進めることで、ろう児の発達早期にコミュニケーションが成立し、母子関係、家族関係が安定する。ろう児・者であることに自信や誇りがもてる。自分で考え自分で決めて責任を持った行動・生活ができる。福祉的対応ではなくコミュニケーション手段の一つとして社会に広まり、聴者との「手話」によるコミュニケーションや情報保障が「当たり前」になってくると、ろう者は聴者と対等の立場になって社会的集団生活や交流ができ、市民としての誇りがもてる。 (※1)バイリンガル教育:バイリンガルろう教育とも言われ、重度聴覚障害児に対し手話と書記言語の2つの言語を習得させ、それによって教科学力を効果的に獲得させることを理念とする教育法のこと。 ○健聴者自身の言語に対する認識を深めること。自身の言語を大切にすること。現行の日本語が音声言語であるという認識に基づき視覚言語である「手話」が社会的に認められて初めて、ろう者が人間としてその人権が尊重されるのではないか。 ○手話は視覚言語としてろう者が使用し育んできたが、社会は音声言語のため、ろう者の教育も手話ではなく口話教育が行われ、聞こえる家族もほとんど手話が出来なかった。手話通訳制度や手話による情報保障も少しずつ広がっているが、限られている。(例えば、外国のニュース映像が流れたとき、手話通訳が付いている国があるが、日本ではまだ。手話通訳の制度も自治体によってまちまちなど。) ○手話が言語と法律に位置づけられたのだから、手話が言語という認識を社会がもって手話を尊重し、音声言語と同じように教育、仕事、生活の場で手話を使用できるようにする必要がある。 ○昔は、学校では口話教育で手話は禁止されていたため、その時代に育った人の家族はほとんど手話ができず、家族の中でろう者が孤立することが多々あった。家族にも、「音声言語が聞こえない」=「何も理解できない」と誤解され、情報は後回し、もしくは知らないままにされることが多くあり、手話という言語を使って、情報を得ることができるということが理解されていなかった。市民に、身近に手話を学ぶ機会、ろう者のことを知ってもらう機会を増やすことが、「ろう者にとって手話が言語である」ということを知ってもらえることにつながる。 ○健常者は、日常生活において「手話」と「言語」を結びつけて考えることはほとんどないが、聴覚障害のある人にとって「手話」と「言語」は一体化したもの。コミュニケーションの手段は、身振り・手振り、筆談、文字の指さし、その他いろいろあるが、「手話」は時間効率がよく便利なものだと考える。 ○ただ、手話を習得するには時間も労力も必要になる。特に健常者にとっては、手話を習得できる機会をしっかり保障することが大切だと考える。 2「手話言語」が認められないことにより日常生活・社会生活の中で感じる困難など ○長年「手話」は言語として認められず、単なるジャスチャーなどと、侮辱的に捉えられてきたと同時に、その使い手である、ろう者の人権や尊厳も踏みにじられてきた。ろう者の第一言語である「手話」で聴者に要望を訴えても、手話を見ただけでコミュニケーションは無理、予算がないから手話通訳者の保証もできない、と追い払われてきた。同じ人間、市民でありながら、自由に市民講座に参加できない、災害訓練にも呼ばれない、視覚情報保障もしてくれない。車椅子の方や視覚障害者の方に配慮があっても「聞こえない人」にはまったく情報保障の配慮がされない。「災害時には聞こえない人が真っ先に死ぬ」という覚悟を持っているろう者は普通にいる。 ○例えば、街中で急に体調が悪くなった場合や、子どもが事故でけがをした場合などに、どうしてそうなったかなどの事情説明がうまくできなかった。すぐに電話して助けてほしいときでも電話ができない、手話通訳者もすぐに呼べないという場合に困る。 ○家族がいる場合は支援を受けられる場合もあるが、一人暮らしのろう者はより不安を感じている。 ・ろう者の考えや思いがきちんと受け止められていない。 ・手話以前に、ろう者への理解ができていない。 ・様々な場面で一方的にいろんな事柄を決めつけられてしまう。(ろう者の日本語の習得が不充分なことと、健聴者が手話を理解しないことによる行き違いが多い。)生活のあらゆる場面で。 ○自分の思いを他者と共有できないことによる孤独感を感じやすいだけでなく、知りうる情報が格段に少なく、困難を感じる機会は多い(交通案内や災害時の避難勧告等、音声によるガイドは広がっているようだが、聴覚障害者には役立たない)。 3「手話言語」を普及し定着させていくための課題と取り組みなど ・「障害者計画」において手話に関する取り組みを定め、総合的・計画的に推進すること。 ・市民が手話を学べる機会(ボランティア活動を前提とした講座ではなく)の確保。 ・市職員が手話を学習する取り組みの推進をすること。学習手引書の作成。 ・手話による情報発信、手話通訳者養成講座・派遣、ろう者などの相談を行なう拠点の支援。またその職員に当事者(ろう者)及び手話通訳関係者(聴者)を正規雇用すること。 ・設置手話通訳者の正規採用。(きちんとした身分保障を講ずる) ・手話通訳者及びその指導者の確保、市県外への手話研修参加の義務。 ・ICT(情報通信技術)による遠隔手話通訳サービスの普及・活用。 ・手話通訳者派遣範囲の拡大。(要綱改正) ・ろう児が通学する学校は、教職員の手話技術向上に必要な措置を講ずるとともに、ろう児及びその保護者に学習の機会の提供、教育に関する相談・支援等に努めること。手話に対する理解・促進など。 ・聴覚障害者相談員の正規雇用。 ・ろう者及びろう者団体は、自主的に普及啓発活動に努めること。 ・手話に関する施策を実施するため、必要な財政措置を講ずること。 ・手話施策推進協議会の設置。 ○すぐに取り組んでいくこと ・手話言語条例普及啓発 ・学校教育における手話およびろう者に対する理解・促進 ・市民向け・事業向け手話講座の開催・支援 ・設置手話通訳者の正規採用 ・手話通訳者派遣範囲の拡大(要綱改正) ○時間をかけて取り組んでいくこと ・ろう者と聴者(市民)が直接交流できる啓発イベント ・遠隔手話通訳サービスの普及・活用 ・手話推進員の研修の充実 ・手話通訳者の身分保障と人数拡大と研修参加の支援 ・聴覚障害者相談員の正規雇用 ・学校教育・社会教育を通じて、「手話言語」に対する正しい理解が必要。 ・単に手話を広めるのでなく、言語の違いを知り、互い(ろう者と健聴者)が理解しあう大切さを学ぶ。 ・手話ができること(ろう者との交流の場を持って、コミュニケーションの方法を学ぶ)>比較的、実現しやすい項目 ・手話通訳でできること(ろう者に対する情報提供とコミュニケーション保障) >長期に時間をかけて取り組む内容。 ・手話通訳者派遣範囲の拡大や設置手話通訳者の身分保障など、行政側の制度の見直し(京都府下では手話通訳ができる人の正規雇用実績もある)。 ・ろう者のことが理解されていないので、手話通訳者のことはもっと理解されていないのが現状。言語としての手話でのコミュニケーション保障が当たり前になるような社会環境整備には、大変な時間がかかる。 ・現在は福祉体験教室などで、手話の学習に取り組んでいる小学校もあるが、これを明石市内全部の小中学校で開く(小さな頃にろう者から直接手話を学ぶことで、将来にわたっての大きな啓発になる)。 ・現在、市内には手話でのコミュニケーション支援を得ることのできる施設が皆無に近い状況。今後は、市内に様々な公的施設ができる時には手話でのコミュニケーション支援が得られ、ろう者・聴覚障害者に配慮のある施設であること。そして、ろう者がひとりぼっちの老後を過ごすことのないよう、安心して過ごせる場作りの取り組みを望む。 ・手話の普及が必要。聴覚障害のある人だけでなく、健常者も手話を知らなければコミュニケーションの手段として成り立たない。 ・「手話言語」の理解啓発。 ・「聞こえない」人だけでなく、「聞こえにくい」人にも視点を。 ・視覚的なガイド情報を多く取り入れる。 ○すぐに取り組んでいくこと ・電光掲示板の設置 ・視覚情報も提供できる設備の整備 ○長期的に取り組んでいくこと ・手話言語教育の普及(義務教育教材、手話言語教室) ・わかりやすい広報誌など(聴覚と知的の重複障害者もおり、一般的なわかりやすい版を作ることが支援につながる) 4 事前ヒアリングの中で出てきた差別事例 障害を理由とする不当な差別的扱い ○手話通訳者派遣制度がありながら、利用できる範囲が狭いために母親としての権利、また父親としての権利、さらには人権まで奪われたかのような差別的扱いを感じた(冠婚葬祭は一親等以内の親族に限られているため、祖父母のお葬式や友人の結婚式に参加する場合には利用できない)。 ○音声言語が当たり前すぎる社会の中で、「耳が聞こえないから連絡はFAXまたはメールで、コミュニケーションは筆談や身振りなど視覚情報を」と伝えているにもかかわらず、音声言語のみで「電話で折り返し連絡を」などと平然と言う警察官や配達業者、行政・教育関係者等がいてとても困った。自立心を拒まれているようだ。  例えば、検問で停められた際、聞こえないということを伝えても、そのまましゃべりかけられる場合があった。発語できると少し聞こえると思い込まれてしまうところがある。 ・ろう者であるとわかった時点で、距離をおかれる。 ・ろう者と生活を共にしている者に対しても同様なことがある。 ・手話通訳者がいるのに、筆談をされることがある(文章が苦手なことを知らない。手話通訳を介することへの不安)。 ・家族が高齢になったり亡くなったりした後、身近な人とも筆談や口話で十分なコミュニケーションがとれず、行き違いやトラブルが生じ、困った人と思われている。また本人も精神的に不安定になっている。 ・ベースとなる情報(健聴者であれば自然に耳に入ってくるような日常の情報)が入っていないため、手話でも理解できないことがある。 ・学校に行っても、通常学級に入れず、特別な扱いがなされる「みんなと違うこと」により、いじめが発生する可能性もある。 ・就職活動(特に面接)の対応拒否や、習い事の入会拒否、アパート入居拒否といった、「受け入れ拒否」もある。 合理的配慮がされなかったこと ・役所や年金事務所、ハローワーク、駅など受付業務の人に、「耳が聞こえません」と伝えたにもかかわらず、音声言語のみで対応される。 ・無人駅のインターホンで声をかけることができない。 ・電車事故による状況報告や振替輸送などが音声情報で流れるが、電光掲示板には表示されない。視覚情報がない。 ・緊急連絡が音声対応しかなく、人を救うことができない。 ・エレベーターが急に止まったときインターホンが音声対応しかない。  ・宅配便の不在票が電話応対のみで連絡できない場合がある。 ・ろう者であるにもかかわらず、音声での呼び出しを平気でされる(いろんな場面で起こっている)。発語ができていると、聞こえていると思い込まれる。 ・人は、皆、聞こえることが当たり前であるように見られる。 ・耳マークなどを提示していても、筆談対応が不十分である。 ・レストランでの注文の際、メニューの写真などを見て注文できるが、注文の確認をする場合にはほとんどの場合が口頭でされる(目で見てわかる形で確認をするなり、メニューを指差すなりのことが当たり前にできるよう啓発が必要)。 ・催しの連絡先、宅配便の不在届などの連絡先なども、FAX番号が書かれていない場合がほとんど。不在届の場合、機械音声で希望日を届けるという方法をとっている運送会社も多く、ろう者は対応できない。 ・市役所の窓口など、番号札を取り順番が来たら呼ぶというやり方では、ろう者にはまったくわからない。郵便局や銀行のように、今、呼ばれているのは何番の番号かを見てわかるようにする必要がある。病院での呼び出しも同じ。 ・病院には手話通訳者の設置が不可欠(医療以外でも、公共的なところに設置されれば、より安心して情報を得られるようになる)。 「要約筆記」に関連して 1 日常生活または社会生活における「要約筆記」の必要性 ○公共機関の講演会などには、手話通訳と同等に要約筆記の情報保障が必要。 ○要約筆記者の個人派遣については、まず中途失聴難聴者に啓発が必要と考える。また、制度自体に使いにくいところがあり(1週間前に事前申請が必要であり、派遣できる範囲が限定されている)、派遣件数が少なくなっているところもある。中途失聴難聴者の場合、言いたいことは言えるという部分があるため、守秘義務への不安を超えてまで利用しようとしないところもある。また、当事者からの派遣依頼だけでなく、学校行事や病院等、聴覚障害者が来ると思われる側からも派遣申請出来るよう制度を変えていく必要がある。 ○中途失聴難聴者にとっては、完全に内容を理解したいことについては筆談では歯がゆい部分があり、情報保障という観点では要約筆記が必要。 ○聴覚障害はコミュニケーション障害といわれる。社会生活を営む上で、聞こえないことにより音声情報を疎外され、すべての面で他者とのコミュニケーションがとれないということ。それにより本来持っている能力を発揮できない聴覚障害者もたくさんいる。聴覚に障害があることで情報が保障されず、不利益や不都合、不合理な扱いを受けることは人権が侵されている状況といえる。 ○聴覚障害者の中で、特に難聴者・中途失聴者の方々の多くは手話ができない(障害者手帳を持っている聴覚障害者の中で、手話を理解し手話で会話が可能な方は全体の約3割)。その方々にとって、文字によるその場の通訳である「要約筆記」(参加の保障)を利用して、積極的に社会参加することは「人権の保障」につながっている。要約筆記者は「聴覚障害者の権利擁護を目的とした社会福祉サービスの担い手」であることを自覚している。聴覚障害者が参加する場面には、通訳として要約筆記が付けられることが望ましい。 ○特に、お互いの意思疎通という点で考えると、ろう者の場合は手話という言語をそれぞれが駆使することで会話が成り立つのに比べて、中途失聴・難聴者の場合は筆談または要約筆記者の介入がなければ会話は成り立ち得ない。この点は一般的には気づきにくい視点。聴覚障害者というと手話と短絡的に受け取られることが多い(筆談とは書いて伝える方法。お互いのコミュニケーションをとる時に使う)。 ○聴覚障害のある人にとって要約筆記は、講演会や説明会、会議、また選挙演説など、基本的に音声を媒体とする情報交換の際に大きな役割を果たす。第一コミュニケーション手段として「手話言語」を使いこなせる人はまだまだ少ない。特に、難聴や中途失聴者は第一コミュニケーション手段を「音声言語」とする人も多く、新たに「手話言語」を覚えるのが難しい。何より、習得にも時間がかかる。 それに対し要約筆記は、聴覚障害のある人だけでなく、かなり幅広い人が利用できる。音声言語と合わせて要約筆記も取り入れることで、より情報入手が簡単になるうえ、その場の情報を文字に書いてプロジェクターでスクリーンに映し出すなどの手段をとれば、効率性もよい。 2「要約筆記」が認められないことにより日常生活・社会生活の中で感じる困難など ・情報量が少ない。 ・内容がつかめない。 ・誤解をまねく。 ・自分の意見を言えない。 ・高校生は授業内容のノートテイクが利用できないため、受験勉強の際など深刻な問題となりうる。 ・障害者雇用促進に後押しされ就職はできても、コミュニケーションの壁があって離職してしまうケースがある。 ・若い中途失聴難聴者は対象者が少ないため、集える場も少ない。 ・子育ての際、健聴者でも多くの情報が必要となるが、どうしても得られる情報が限られる。聞きたいことを聞きたいタイミングで聞けない。 ・会話に入れない。 ・興味のある講演、研修、イベントに参加しても聞こえないために楽しめない。 ・市の広報紙などに各種イベント、研修等の案内があるが要約筆記がついていないため参加したくてもできない(手話はついていて要約筆記がない場合がある)。 ・選挙立候補者の意見が聞こえない。 ・趣味や就職活動等、中途失聴・難聴者の方々の生活の質を高める行動が阻害される。 ・ご近所との関係など円滑に進めることができない場合もある。 ・正確な情報を受け取れない。 ・積極的な社会参加が妨げられる。 3「要約筆記」を普及し定着させていくための課題と取り組みなど ・要約筆記者の技能向上。 ・行政公共機関の講演会等での要約筆記情報保障を必ず付ける。 ・中途失聴難聴者への啓発・啓蒙。 ・要約筆記の体験講座を広めていく。 ・養成講座受講者を増やすための広報を充実させる。 ・病院に専門知識を持った要約筆記者を設置する(専門性の高い内容のやりとりに対応できるスタッフの配置)。 ・一般の方々の要約筆記への理解は、以前に比べると広がってきている。市民会館やアスピアの講演会などに要約筆記が付けられることにより、聴覚障害者だけでなく、高齢者などもスクリーンの文字を見て、内容を理解されることがある。 ・明石難聴者の会とあかし要約筆記サークルが協調して、啓発・普及活動を行うこと(例えば「耳の日の集い」とか「聞こえのセミナー」の開催など)が、要約筆記の普及だけでなく、難聴者の組織活動の活発化につながると考える。しかし会員の高齢化により当事者団体の組織力が年々弱体化していることが大きな課題。会員の掘り起こしが急務。 ・個人派遣制度の利用枠の拡大(ノートテイクの利用)  難聴者に市の個人派遣制度をもっと利用してもらうためには、現在の「病院・学校・役所の手続き」の枠を広げる必要がある(例えば、趣味・旅行・研修・講座・見学など)。範囲外の場合にはボランティア対応もしている。 ・個人派遣制度のPRが必要(現在の主たる利用者は明石難聴者の会会員で、会員以外の方は制度について知らない人もいるのではないか)。広報でのPRなどにより、情報を得にくい難聴者の方々に制度を浸透させ、もっと幅広く利用してもらいたい。 ・市主催の講演会で手話通訳はついているが要約筆記がついていないことも多い。少なくとも、手話なみには要約筆記をつけてほしい。 ・市職員及び外郭団体の職員に研修を。新任研修などに要約筆記を研修項目に入れてもらい、難聴者への理解を深めてほしい。 ・市行事での要約筆記配置を義務づける(例えば、兵庫県では平成24年度から、県関係の300人以上の規模のイベントには要約筆記をつけている)などの取り組みが必要。 ・成人式に要約筆記をつける(若者への啓発。多くの他都市が成人式に要約筆記をつけている)。 ・啓発講座の実施(対象は障害当事者、その家族、聴覚障害に関心がある人、一般市民) ・行事主催者への周知、派遣費の一部助成。 ○要約筆記をする「通訳者」の養成が必要 要約筆記をするためには、いっさい個人的な感情をいれないように客観的に書く必要があり、また、話の内容だけでなく会場の雰囲気や聴衆の反応なども書き表す必要がある。また、健常者と同じスピードでコミュニケーションをとるために、要約筆記者は早く正確に書く能力を求められる。これらの少し特殊な能力を持つ要約筆記者を育てることが大切。 ○要約筆記の積極的な普及 要約筆記の認知度を上げるためにも、様々な場面で積極的に用いていくべき。健常者の情報入手の妨げにもならない。 ○すぐに取り組んでいくこと ・可能な限り、様々な場面で要約筆記を取り入れること。 ○長期的に取り組んでいくこと ・健常者への理解啓発 ・要約筆記者の養成 4 事前ヒアリングの中で出てきた差別事例 障害を理由とする不当な差別的扱い ・聞こえる家族と同席の場合 聞こえる人とのコミュニケーションで疎外されることがある。 ・聞こえない他は何ら変わらない一社会人が、聞こえないということだけで同等の活動が妨げられるのは差別的扱いである(家族の支援を受けられない一人暮らしの方、家族に頼らず自立して活動をしたい方、難聴という障害を受容し社会で健聴者と同様に活動をしている方など)。 合理的配慮がされなかったこと ・初めに聞こえないことを伝えても、しばらくすると早口・声が小さくなったりすることが、よくある。 ・「耳マーク」があるのに、FAX対応・メール対応してくれないところがたくさんある。 ・難聴者の方が裁判の傍聴をしたいとの目的で、市の個人派遣の申請をしたが認められなかった(裁判を起こした当事者でないからという理由だった)。 ・各部署窓口や店舗には「耳マーク」が置いてあるが、実際に書いてもらっている難聴者を見かけたことがないなど、配慮が足りないと感じている。 ・難聴者の方が資格を取得したいと思っても情報保障がなく(個人派遣が認められない)、困ったことがあった。 ・講演会などで、主催者側の予算不足や設営場所や設備の問題などで要約筆記がつけられず、難聴者が参加をあきらめたケースがある。 ・数年前、障害福祉課作成の福祉施設の紹介ビデオには、手話がついているが字幕はついていない。 ・災害時、緊急時の文字情報が少ない。 ・電車の遅れ、緊急停止などの場合の情報がわからない。 ・無人駅の連絡方法がインターホンなどの音声のみ。 「点字・音読」に関連して 1 日常生活または社会生活における「点字・音読」の必要性 ○視覚障害者は、文字・画像・人や物の動き・その場の状況や景色・障害物など、目から情報が全く得られない(全盲)か、または、それが極めて困難(弱視)な状況にある。 従って、聴覚(音読・音声ガイド・アラームなどの識別音など)や、触覚(点訳・突表示・形や手触りなどによる識別・確認)など視覚以外の感覚での情報は、日常生活には不可欠である。 ○コミュニケーションには、文書による場合と対面による場合がある。対面は当然双方向コミュニケーションであるが、文書でも何らかの応答を要求している場合や障害者側からの問合せ・意見・投書などが当然予想されるので双方向コミュニケーションと考えるべき。 ・文書:点字、音訳、文字テロップ付き手話ニュースの様なDVDなど ・対面:手話、要約筆記、指点字、指手話、指文字、点字タイプライター(現場用)、 スマホ利用の体表面点字表示器など ○文書によるコミュニケーション ・点字の触読・書き方を習得している人にとって点字は情報源・発信手段。 ・学校での学習・試験等では点字の読み書きが必須(音声での代替は不可能)。高校・大学への進学に当っても、点訳等の支援者・組織の確保の可否が進学の可能性を左右する。また、社会に出てからも各種資格の取得時の勉強・受験など点字の読み書きは必須。 ・社会生活を営む上で情報取得・発信(諸手続などを含む)の手段として文書情報は不可欠(聴覚による代替は不可能)。点字文書のみならず墨字文書を独力で作成する必要性も(見える人に文章を受け渡す際や、メール送信、見える人と混じって働く職場など)。 ○対面コミュニケーション ・各窓口に、盲、ろう障害者(盲ろう含む)のために点字・指点字・指手話・手話・要約筆記などのコミュニケーションツールを配置すべき(双方向コミュニケーションを可能にするため)。 ○社会生活を送る上で、市からの情報は墨字なので、視覚障害者が情報を得るためには、点字か音声に換えて伝える必要がある。現在のところ、点字を読めない中途失明者が多いので音訳が便利なのではないかと考える。 視覚障害者の中には日常生活を送る上で読書を楽しみとする人も多く、墨字を音訳して楽しんでもらう必要があると考える。 ○視覚障害者に対して現在行っている事業は、明石市の広報(広報あかし、同特別号、明石市議会だより、あかしの水道、さわやかライフ、明石の社会福祉、明石市ハザードマップ(※2))、明石市障害福祉のしおり、明石市障害者計画、明石市立図書館ニュース 週刊文春、毎日夫人、ミニコミあかし、一般の書籍類(小説、エッセイ)などを音訳して編集、サークル独自のものも作成して編集、デイジーCD(※3)に焼き付けコピーして視覚障害者90人に発送することと、要請のあった視覚障害者宅や施設で訪問・対面朗読を行うことである。 (※2)ハザードマップ:自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもの (※3)デイジーCD:Digital Accessible Information SYstemの略(DAISY)。視覚障害者など墨字の印刷物を読むことが困難な人々のためのカセットに代わるデジタル録音図書の国際標準規格。 ○日常生活や社会生活において、視覚による情報が多くを占めるが、視覚障害のある人にとっては、音声による情報は大きな役割を果たす。点字というのは、点字表記を覚え、マスターしなければ実用性はないので、点字表記の整備をもって、視覚障害のある人への支援ができていると考えるのは不十分である。点字表記の整備とともに、音声による情報提供も行う必要がある。「点字」や「音読」がないということは、情報を与えないということになる。 ○健常者にとっても、暗いところでは音読が助かる。広い会場では、前方にある表示や説明は、後ろの方にいると見えにくいため、音読してもらえると助かる。 2「点字・音読」が認められないことにより日常生活・社会生活の中で感じる困難など ・公的機関からの重要事項の告知や通知・災害時・非常時などの勧告や掲示・会議など。 ・タクシーに乗った際、どういう道順で走っているのかを確認するすべがない。 ・選挙権の行使、請願の署名にも点字が認められているにもかかわらず役所、民間機関では点字が認められておらず、公的な書類や民間の契約書等においては必要事項の記入や署名が必須な場合が多い。介助者がなくとも点字による手続き書類の作成が認められるべき。 ・新聞折込みの広告チラシを読みたい。 ・外出時、日常的に変化する道路情報、交通手段情報に即応して点字情報がほしい。災害時の情報などに比べ、日常情報への配慮が足りない。 ・建物階段での階数表示や、日用品などの諸商品上に点字表示が必要。 ・視覚障害者は、スクランブル交差点では方向感覚を失いやすく、交差点を渡ったあと進むべき方向がわらなくなる。方向を知らせる何らかの音響情報が必要。 ・視覚障害者の持つカードはICタイプ(タッチ型)にするべき(磁気カードでは自動改札機等での盗難事例あり)。 ・点字ブロックを塞いでものを置くことは減ったが、人が群れて通行を妨げている例が多い。明石駅コンコース・外の広場。要注意喚起、傍らの派出所巡査による群衆整理が必要。点字ブロックの設置拡大も必要。 ・駅の案内表示が読めない。切符購入がしにくい。 ・何かの手続きの際、書面での説明では情報を得ることができない。 ・手紙や広報誌、説明書、書面広告、お知らせの文書などが読めない。 ・パソコンのメールが読めない。(デジタルの場合は、そもそも点字表記が不可能なので、音声による案内しかできない。) ・本が読めない ・電話をかけるとき、番号ボタンの位置がわからず、電話をかけられない。 ・家電のコントロールボタンの場所と機能がわからない。 ・色がわからないので、信号がわからない。 ・特に、一人で暮らしている人にとっては、日常生活の多くの場面で困難を感じるのではないか。 3「点字・音読」を普及し定着させていくための課題と取り組みなど ・点字の使用者そのものが減少傾向にあり、点字を読めない視覚障害者が多くなっている。むしろ、音読や音声による情報望む人が大半かも知れない。その場合、読書用再生機入手し、使い方を覚えることが必要となるが、ここで二の足を踏む人もいる。問題なのは、点訳物も読めず、読書用再生機も使えない人たちがいる現実である。 ・点字、または読書用再生機の操作の何れかの習熟の推進を図る。 ・音声PDAや視覚障害者専用スマートホンの普及 ・日常生活用具での地デジチューナー付ラジオの支給 ・点字は視覚障害者にとっての文字であるのに、点字ディスプレイの日常生活用具支給要件が「視覚障害2級以上かつ聴覚障害2級以上」となっている。要件を緩和してほしい。 ・盲人用時計は、音声・触読どちらでも選択できるようにしてほしい。 ・市民図書館の墨字の書籍を目録から選択し、それを対面で朗読してもらえるサービスを提供してほしい(点訳・音訳されている書籍の数は限られている。また、点訳・音訳には時間がかかるため、最新の刊行物などを読める機会が少ないため)。 ・点字・音訳関連分野ではこれだけのサービスを提供できる、というサービス内容の広報に努める。障害者を全体的に把握している市が「積極的提供」を目指すべき。 ・高齢になってからの点字習得は本人の熱意と身体の状態次第。音声情報に向うのは自然だが、書くことで発信し、人との繋がりを拡げられる。地域で点字習得教室・ボランティアによる個別指導などが考えられる。 ○すぐに取り組んでいくこと ・視覚障害者向け公文書・選挙公報その他の点字化(双方向コミュニケーション) ○時間(1〜2年)をかけて取り組んでいくこと ・明石市に市公文書の点訳、墨訳を担当する部署を設ける。 ・障害者からのニーズを掘起こして、それに見合う点訳・音訳ボランティアを養成するという目標レベルを設定する。 ・障害者差別解消法が施行されれば、ボランティア、ヘルパーの活用だけでは対応不可。小中校での教育に取入れ、高・高専・大学での選択科目、実技、資格取得をシステム化する。 ・市として点訳者・音訳者の位置づけを確定させ障害者差別解消の枠組みに組込む。 ・障害者となった人が点字習得の努力を続けられるシステムの構築(点字習得のための継続学習が難しい人を支える仕組みづくり) ・現在の音訳者は60代、70代が主力である。後継者育成のため養成講座を開催しているが、養成講座を修了した若い人は、ボランティアが無償のため、パートなど収入を求めてやめる傾向がある。もっと若い世代を育成するためには有償ボランティアを考える必要があるかもしれない。市の広報を有償にすることも考えられる(現在は媒体のみ現物支給で報酬はなし)。 ・障害福祉課との連携により、新しく視覚障害者になった方へ音訳を紹介する必要を感じている。 ・カセットテープからデイジーCDへの移行の過程で、プレクストーク(※4)を所有されないリスナーへの貸し出しは打ち切らざるを得なかったが、市に対して、プレクストーク購入の助成を相談する必要があったかもしれないと考えている。 ・ハザードマップなど、音訳前に文章化する際に専門的な知識が必要とされるものは、あらかじめ市の担当者に文章化していただくことが望ましい。 ・視覚障害者からの様々な要望に応えるために、研修によって技能を向上させていく必要がある。 (※4)プレクストーク:視覚障害者用デジタル録音図書読書関連機器及びソフトウエアを区別するために用いられる呼称。デジタル図書規格であるDAISYに基づいている。 ○以下の課題についてはいずれも速やかに問題解決することが望ましい。 ・障害福祉課との連携(プレクストークの検討、新しい視覚障害者への紹介) ・音訳する前段階での文章化(例:ハザードマップなど)  ・市役所からの発出文書について横断的な視点での音訳の計画を要望する。 ・障害者との交流の場を持ち、要望を聞き取る ・音訳従事者の後継者育成 ○点字は、点訳者の養成も含め習得するのに時間がかかるので、まずは「音読」、「音声案内」の設備整備が必要。ただ、音声案内はやりすぎると、健常者にとってもいささか迷惑なものとなりかねないので、手段を考える必要がある(例えば、音声案内が流れる専用のヘッドフォンを備える、視覚障害者の専用スペースを設けるなど)。 ○すぐに取り組んでいくこと ・駅の案内や書面の説明書きなどには、積極的に点字をつける。 ・パソコンや信号に音声案内を付ける。 ○長期的に取り組んでいくこと ・点字の習得者を増やす。 ・一般人の理解を促す取り組み。 4 事前ヒアリングの中で出てきた差別事例 障害を理由とする不当な差別的扱い ・一人で白杖を突いて歩いていると、横合いから体を激しくぶつけられ、危うく転倒しそうになった。 ・飲食店に入りかけた時、いきなり店の外に押し出された。 ・親戚の冠婚葬祭の席には、呼ばれないが現金は徴収される。 ・家を借りる時、「火事を出されては困る」と断わられるなど。 ・タクシーで目的地を告げたが、遠回りをされた、あるいは違うところで降ろされた。 ・予防接種やNTTドコモショップなどの同意書などの署名が代筆不可ということで、手にボールペンを握らされて手首をつかまれ、署名させられたことがある。 ○上にも述べたように、視覚障害者は、人の挙動や表情・人相風体などは見えない。それゆえに、差別的不当な行為を受けたことにすぐには気付かないか、かなり時間が過ぎてから、あるいは数日も経過してそれらしいことに思い当たることも少なくない(例えば、黙って物を持ち去る、盗み取っていくなど)。 ・点字版の選挙公報が届かない。墨字公報と近い時期に配布あるべき。 ・役所からの書類に点字版がない。明石市・年金機構・税務署など 差出人、内容、返信の要否、同期限など全く分らない。介助者に依頼するしか方法がなく、個人情報に触れられなければならなくなる。 ・「公報あかし」の全点訳版を発行するべき ・銀行 「本人が視覚障害で説明書を見ることができないのなら、家族が代わってそれをしてほしい、もし家族もできないのなら取引はできない」と数箇所で断られた。この20〜30年間で最大の精神的苦痛の一つである。(全盲者の声) ・就職面 病院などで盲人の三療(あ・は・き)(※5)の人を雇う際少しでも見える人が有利。全盲割合を上げるべき。 (※5)三療(あ・は・き):あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に定められた3つの医業類似行為(治療行為)、あん摩マッサージ指圧、鍼、灸を指す言葉 ・健常者は、市からのサービス提供など、広報などの冊子によってその内容を把握できるが、視覚障害のある人にとっては、点字・音読での情報提供がないとき。 ・外出先で援助依頼をしても無視されたとき。 ・視覚障害を理由に習い事の入会を断られたとき。 合理的配慮がされなかったこと ・私が育った頃は、合理的配慮を求めるのは、依頼心の表れで「甘え」だと教えられたのであまり求めない方だと思っている。にもかかわらず、娘を通わせていた保育園では、私たち両親共に全盲と知った上で、保母らから親子共々悪質で酷い扱いを受けた。 ・銀行ではまず整理券を取るところがどこになるかわからない。取っても何番かがわからない。呼び出されても、「1番窓口」がどこにあるのかがわからない。 ・ATMでインターホンで話しながら操作を行うと、どうしても片手になるのでお金を扱う上で不安もあるし操作もしにくい。 ・フォーラムや講演会などで点字資料が用意されていない。 ・引越しの際に、粗大ごみを出すことになった。両腕で抱えないと運べない物で、片手に白杖をついては指定のごみステーションまで持っては行けない。市役所に、こちらは視覚障害者であることを説明して、自宅まで収集に来てもらえないかとお願いをしたが、「運び出すときに、柱・敷居・壁やふすまなどを傷付ける恐れがある、過去にそういうことでトラブルになった」などと言われ、聞き入れてはもらえなかった。それならば、家の外までは運び出すので、そこから持っていってもらえないかと頼んでみたが、「そういうサービスはしていないので」と断られた。 ・点字図書を有する市立図書館のあり方(視聴覚障害者にもサービスを行うべき、という運営方針が必要。必要な方への広報・啓発、駅前に移転した際の点訳物の電子データの利用の導入の目処の有無など) ・携帯用の点字ディスプレーが日常生活用具の対象になっていない。 ・移動の援助はもちろん、券売機のタッチパネル等で駅員に苦情を言ったときに面倒くさそうに対応されたときなど。 「ひらがな等の表記」に関連して 1 日常生活または社会生活における「ひらがな等の表記」の必要性 ・知的障害者のコミュニケーション支援は、意思決定支援とセットでやらないと意味がない。結局は理解力の問題であり、ひらがな表記はあればいいけれどもそれによってコミュニケ−ションが格段に向上するとは思えない。 ・学校教育での目標として、最低限の意思疎通能力の獲得を具体的に実施できればいいのでは。特別支援学校ではそういう申し入れもできると思われるが、普通学校の支援学級では難しいのではないか。 ・健常者にとっては、読めない漢字に出会ったときに助かるが、常識程度に漢字が読めれば、日常生活に支障はないが、漢字を知らず、ひらがなしか読めない人にとって、ひらがな等の表記は情報を得る際に役立つ。 ・ただ、ひらがな文字と違って漢字そのものには意味があり、読めなくても意味を理解できる場合もあるので、漢字表記にルビを打つことで有効性が高まると考える。 ・知的障害のある人の中には、文字言語を理解しにくい人もあり、文字表記の工夫のみにとどまらず、デザインパネルなど、視覚的な支援ツールを用いることで意思疎通を図ったり、日常生活上の困難さを軽減することにつながる。 2「ひらがな等の表記」が認められないことにより日常生活・社会生活の中で感じる困難など ・実際には知的障害の場合何らかの形でのサポ−トがなければ自立した判断(高度な判断)は不可能。 ・支援学校の先生や親は本人の意思をある程度察知できるため、言葉のないコミュニケーションが成立する場合があるが、それ以外の人とのコミュニケーションができない。 ・わかりやすい表現、簡単な表現が有効。 ・選挙の投票の際に、本人にどのようにして選択の基準を提供できるか、どの程度本人が理解した上で投票できる条件が準備されてるかが疑問。補佐するにしても、どういう形が望ましいのか判断しかねる。 ・交通機関の乗り降り、住所や様々な案内表示が読めず、行きたい場所へ行けない。 ・新聞が読めない。 ・各種申請書・契約書等の記入及び、理解(一人暮らしの知的障害者が悪質な訪問販売の被害にあった事例がある) 3「ひらがな等の表記」を普及し定着させていくための課題と取組みなど ・行政が発行するパンフレットなどのわかりやすい版を作成するために、知的障害者や家族、支援事業所従事者や市職員でプロジェクトチームを構成する。お互い意見交換をしながら制作を進め、本当に必要な支援を模索する。 ・iPadなどのタブレット端末を使ったコミュニケーション支援を導入する。 ○すぐに取り組んでいくこと 様々な場面において(特に案内表示や、新聞、説明書など、紙媒体のもので音声案内ができないものを中心に)、ひらがな等の表記もすること(「わかりやすい版」の作成) ○長期的に取り組んでいくこと ・誰もが漢字を読めるように、教育を充実させる。 ・知的障害に関する理解啓発。 4 事前ヒアリングの中で出てきた差別事例 障害を理由とする不当な差別的扱い ・外観、言葉での表現が困難、通常から見れば異常と思える行動をとるなど相手の障害に対する無理解が多いので、言葉や行動による差別を受けることは日常茶飯事。 ・いじめの対象に。 ・就職における受け入れ拒否。 ・障害者施設設置計画に対する反対運動。 ・高額商品の一方的な訪問販売。 合理的配慮がされなかったこと ・買い物、食事などの場合に露骨に嫌な顔をされる、来ないでほしいなどと言われる。 その他のコミュニケーション支援について 1 日常生活または社会生活における「手話言語」「要約筆記」「点字」「音読」「ひらがな等の表記」以外のコミュニケーション支援の必要性 ・身振りや表情も意思疎通(コミュニケーション)のひとつ。 ・日本語を話せない外国人と関わることがあってもおじけることなく、身振りでコミュニケーションがとれる。 ・ALS(※6)障害者等にも文字ボード、単語ボード等は必要。 (※6)ALS:筋萎縮性側索硬化症。重い筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、極めて進行が速く、治癒のための有効な治療法は現在確立されていない。 ・辛うじて文字を読むことが可能な弱視者には、拡大版も必要。 ・盲聾者には、「指点字」による要約や会話が必要。 ・いわゆる「言語」以外にも、絵図や写真・記号・サイン・ジェスチャー(見本の動きを示すなども)・表情など、様々なコミュニケーション手段が挙げられる。 ・話すこと、書くことへの支援。障害のある人が、思っていることを「伝える」ための支援も必要。 2「手話言語」「要約筆記」「点字・音読」「ひらがな等の表記」以外のコミュニケーション支援が認められないことにより日常生活・社会生活の中で感じる困難など ○コミュニケーションが「できない」ことによって分かる情報が得られず、社会からつまみはじき出される。市民として受け入れてもらえない大きな疎外感。同じ仲間の身内の世界でしか生きられなくなる。市民として地域での集団行動ができない=永久的に半人前扱い。 コミュニケーション支援全般に関連すること ○コミュニケーションは様々な方法があるが、それを望む人を何らかの理由をつけて拒む権利があっていいはずはない。どんなコミュニケーション方法でも受け入れ、支援し、積極的に社会に取り入れるべき。どんな人でも、人権を尊重してほしい。 ○人との関わりが希薄になっている現代社会で、今回の条例が市民に理解されるよう多くの言葉を尽くす必要がある。立場の違いをきちんと理解することで、その人が必要とする支援が見えてくるように感じる。手話を言語として認めてほしいとの願いを強く持つ聴覚障害者は、自身の生い立ちの中で、自身の事が上手く表現できないもどかしさをずっと感じていたのではないか。手話が母語であることを認めてもらえないまま、音声言語である日本語で教育を学んだ過去を語れる人は少ないと考える。表面化していない部分にスポットを当ててもらうことで、コミュニケーションの大切さを分かり合い、ろう者以外のコミュニケーションに支援が必要である方々への理解が必然のものとなっていくよう望む。 ○コミュニケーションは双方向で、コミュニケーション支援を必要としているのは市民という考え方が大切だと感じる。 ○「ひらがな等の表記」のみならず、障害のある人のコミュニケーション手段を促進する上で、まずは必要性がどの程度あるのか(何が社会的障壁になっているのか、それを取り除くための合理的配慮の方法は何なのか)をしっかり見極めることが大切だと考える。 ○そのコンセンサスを築くためのエネルギーは必要だが、それが明確になれば、予算の裏付けもしやすく、順次実行に移していける。 ○また、コミュニケーション支援を促進するには、「手話言語」という一つの観点だけでなく、障害の有無を超えて、生きづらさ(コミュニケーションのしづらさ)をもつ人への総合的な支援を進めるという観点が必要だと考える。 ○ICF(※7)の示す「環境因子」には、「物的環境」や「制度的環境」など予算と実行力があれば解決できる内容の他、障害のある人への意識・理解などの「人的環境」が挙げられている。物的なコミュニケーション手段の促進と併せ、「人的環境」の整備を進めていくことが重要であり、見逃してはいけないことだと考える。 (※7):ICF:2001年にWHO(世界保健機関)が提唱した、障害者の概念の検討に影響を与えている国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health)の略称。 ○明石駅前に新しく建設されるビルには市立図書館が現在地から転居して入居し、新たにサービスを開始することが計画されている。おりから障害者差別解消法の施行に先立って明石市として障害者とのコミュニケーション促進条例が制定されようとしており、この意味においても新図書館において視聴覚障害者の為に新たにサービスを開始し、その方面に力を注ぐことは同条例の趣旨を現実の果実とするために有効な手段である。 現在まで市立図書館では視聴覚障害者に対するサービスがほとんど行われていなかったことを改善し、これを機に、新図書館におけるサービス、特に視聴覚障害者に対するサービスを重要な分野と位置づけることは重要な施策である。この機に臨んで新市立図書館に望むべき提言を以下にとりまとめた。 ○全体的態勢 ・図書館として視聴覚障害者へのサービスを積極的に行うことを運営指針に明記し、公表する。また、各年度毎に視聴覚障害者向けのサービス実績を公表する。 ・図書館から視聴覚障害者へのアプローチができるように、市役所が障害者の意思の確認を行い、希望者のデータを図書館に開示する。 ○図書館の業務態勢 ・図書館の貸出し業務を点字図書(従来も可能であったが利用者がほとんどなかった)、点字データ(電子データ)、音訳図書、音訳データ(電子データ)にまで拡げる。また、ダウンロードサービスも可能にする。点字図書リスト・音訳図書リスト(各点字版)を常備する。貸出明細・貸出期限などは点字での記入対応を行う。 ・図書館としてネット上のサピエ図書館に加入し、視聴覚障害者の要望に応じてサピエの利用を介助する。読みたい図書の検索・ダウンロードなど。 ・図書の点訳物、音訳物の公報(ダイレクトメール・公報あかし)を行う。 ・視聴覚障害者用の「視聴覚室」を設け、点字ディスプレイ、音訳データ再生機・DVD再生機、などを装備しておく。書架を設け、点字・音訳書籍の新刊、DVDなどの紹介をする。ITを使えない障害者も視聴覚室へ行けば点訳物、音訳物、ビデオなどを自分で選択して視聴できるようにする。 ○視聴覚障害者のための環境整備 ・ 貴崎の総合福祉センターへは交通アクセスが万全ではないが、明石駅前であればアクセスが相当よくなるので明石駅と図書館ビルを空中回廊で結び、地上交通に妨げられずに安全に図書館に到達できるようにする。回廊には音声ガイドなども装備する。 ・貴崎の総合福祉センターは視聴覚障害者に対するサービス(「視聴覚室・録音室」があるだけ)はほとんどないので、この図書館ビルに視聴覚障害者のための福祉センター機能(「障害者コミュニケーションセンター」)を配備する。これにより障害者(点字の習得、対面朗読、手話の習得など)向けの諸サービスを展開し、同時に支援者向けの支援技術の習得活動(点字・音訳・手話・要約筆記その他)の拠点を設ける。 ○老人介護には介護士・ヘルパーなどの有資格者が当るように社会的な制度が固まっている。障害者のコミュニケーションには障害者同士と一般人との場合があり夫々にコミュニケーションの技術が必要である。又障害者の年齢層も幅広い。介護士などに該当する「情報介護士」の様なものが制度として必要ではないか。手話通訳士、点字技能師など個々にはあるがそれでは不十分で、「情報介護士」の中に手話・点字・音訳・要約筆記・仮名表記などを包含させ、資格として保証すれば、有資格者の雇用機会も生れ、一切をボランティアに依存している現状を打破することが出来る。制度として定着させれば「守秘義務」など情報の取扱いを法で規制することも可能となる。