資料1 個別当事者のヒアリング(概要) 本資料は、第2回検討委員会に向けて実施した面談による個別当事者(※)からの事前ヒアリングの内容について、個人情報との関係で当事者を特定しないことに留意し、検討の際に参考になる部分を要約してまとめた。 (※)ヒアリングの対象は、盲ろう者2名(内1名は通訳者と出席、もう1名は点字送付による回答のみ)、喉頭摘出障害者(2名)、知的障害者2名(内1名が出席) ヒアリング結果の概要 以下の(※)が付いている方が第2回検討委員会に出席 (1) あなたは、日常生活または社会生活で、まわりの人との間でコミュニケーション、つまり、自分から話しをしたり、相手の話しを聞いたりするときに、どのような方法を使っていますか?  【盲ろう者Aさん(補聴器使用)】(※) ○自宅では妻に耳元で話してもらう。外出先では通訳者を介してコミュニ ケーションをとる。相手が話す言葉を通訳者が耳元で話してくれる。  【盲ろう者Bさん(点字による回答)】 ○私の対話法は音声です。相手からの場合は手のひらに平仮名で一文字ずつ人差し指で書いて貰えば通じます。 【喉頭摘出障害者】(※) ○明瞭な声を期待するのは極めて困難であり、そのいずれもが厳しく長い教育訓練を受けなければ、発声を自分のものとすることは出来ない。 (2) あなたは、必要な情報を知ったり、まわりの人に伝えたりするときには、どのような方法を使っていますか?  【盲ろう者Aさん(補聴器使用)】(※) ○情報はラジオから得ることがほとんど。ラジオで知ったことを周りの人 に伝える時は、自分で話をして伝える。  【盲ろう者Bさん(点字による回答)】 ○点字の場合は「点字毎日」などの雑誌購読。点灯会からの新聞抜粋のニュースの回覧紙で助かっている。 【知的障害者(中度)Aさん】(※) ○スマートフォンを使ったり本屋で本を読んだりして情報を得ている。 ○テレビはあまり観ないが、新聞はたまに読むことがある。 (3)あなたは、ふだん、まわりの人とコミュニケーションをするときに、どのような場合に難しいと感じますか?  【盲ろう者Aさん(補聴器使用)】(※) ○広い会場で複数の人が話すと、聞き取ることがほとんどできない。そう いう場合は通訳者に事後報告という形で、あとで要約した内容を読んでもらうことになる。 ○聞こえないと思って大きな声で話される場合があるが、かえって声が反 響して聞きづらいこともある(甲高い声もダメ)。 ○通訳も決まった人でないと難しい。声によって聞き取りやすい声と聞き 取りにくい声がある。 【盲ろう者Bさん(点字による回答)】 ○手を取られて相手から話しかけてきたときに、「あなたはどなたですか」と名を問い答えてくれないときは、私には誰が話しかけてきたのか分りませんので対話は難しい。 【喉頭摘出障害者】(※) ○発声ができても、電話で話すときに記録をとる場合、発声用の電気器具を持ち、もう一方の手で受話器を持って両手がふさがっているために、ペンを持つ間、会話を交わすことができず、そのことが相手には理解が難しく、いぶかしさを与える。 【知的障害者(中度)Aさん】(※) ○人に何かを聞いたとき、「なにしゃべってるの?」と聞き返されることがある。(何度か会話している人であれば大丈夫だが、初対面の人などはわかってもらえないことがある) ○自分が何で困っているかを人に聞くのが難しくて、あきらめてしまう。 聞こうと思っても意味が分からなくて聞けないことがある。 ○文章の中に難しい漢字など読めない字があると、あきらめてしまう。 ○病院などでの事務的な手続きで、書類を書いてくださいと言われてもよくわからないことがあり、間違って書いてしまったことがある。 (4)まわりの人とコミュニケーションをするときに、あなたの障害が理由で、差別的な扱いを受けたと感じたことがありますか?  それは、どのような場合ですか? 【盲ろう者Aさん(補聴器使用)】(※) ○視覚障害者の会議に参加した際、通訳者が会場で同時通訳をすると声が かぶって聞こえないのでやめてほしいと言われたことがある。 【喉頭摘出障害者】(※) ○差別を受けたとは思わないが、声の音質が普通でないために、例えば電車の中や喫茶店などで話していると周囲の人がじろじろと顔を眺めてくる。 【知的障害者(中度)Bさんの支援者】(※) ○近くに来ないで、気持ち悪いなどと言われたことがある。 ○差別の意味を理解して答えられるかというと、難しい。例えば、「差別された」というような抽象的な表現ではなく、「叩かれた」「怒られた」など具体的な表現でないと意味が理解しにくい。 (5)こんな支援や配慮があれば、もっとまわりの人とコミュニケーションができたり、必要な情報を知ったり伝えたりすることができると思うことがありますか? それは、どんな支援や配慮ですか? 【盲ろう者Aさん(補聴器使用)】(※) ○複数の人が集う会議などでも、一人一人が順番に話してくれて、通訳のための間合いを図ってもらえたら理解できる。 ○手のひらに文字を書くというコミュニケーション方法も訓練は必要だが、指点字や触手話などと比べるとハードルが低いので、もっと取り入れていけたらと思う。 【盲ろう者Bさん(点字による回答)】 ○回覧板。抜粋でも、点訳して必要と思えることを知らせてくれたら助かります。   【喉頭摘出障害者】(※) ○喉頭摘出による音声言語機能障害者は、障害部位としては言語障害しか 認められていない。 ○喉頭を摘出するということは、喉元に永久気管孔を開けて、そこで呼吸するため、口と鼻が呼吸機能を持たない。これだけで、言語機能喪失と同じくらいに重度の障害である。にもかかわらず障害の対象となっていないため、まさしく制度の谷間におき去られた障害ともいうべきものである。 ○手術により音声・言語機能を喪失したものに対しては、発声に至るまでの正しい指導と訓練が求められる。障害者手帳交付の際に、喉摘障害者には、こうした訓練機関(同病者の交流の場所)があることを知らせてほしい。 ○健康を維持するための装具の数々は、高額であり、全額個人負担となっているために、障害者個人の経費負担が大きい。十分に装具が普及されていないため、これらに対し、日常生活用具の指定をする支援をしてほしい。 【知的障害者(中度)Aさんの支援者】(※) ○文章が読めるけど理解できない場合がある。解説してくれる人がいて説明を聞いたら理解できるので、身近にいる支援者の存在が大きい。 ○書類が送られてきたり、何か手続きが必要な場合、どういう書類なのか、どういう手続きが必要なのかなど、わかりやすく書かれた説明書類などがあれば助かる。(絵やサイン、まんがによる説明などもわかりやすい。) 【知的障害者(中度)Bさんの支援者】(※) ○言葉のやりとりはできるので、理解できていると思われるとコミュニケーションが成立しにくい。障害を理解した上で、ゆっくり時間をかけて、わかりやすい言葉を使って確認しながら伝えてもらう必要がある。 ○フリガナがふってあれば読むことはできるが、内容をすべて理解できる わけではない。わかっていないことを前提にしたうえでの、わかりやすい表現が望ましい。 以上