資料1 (仮称)明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせるまちづくり条例(素案) 前文 第1章 総 則 第2章 障害理解の啓発及び合理的配慮の提供の支援 第3章 障害を理由とする差別の解消  第1節 差別の禁止等  第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策  第3節 障害者差別解消支援地域協議会 私たちのまち明石市では、平成27年4月より、「手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例」を施行した。この条例は、障害のある人とない人との相互理解を実現し、コミュニケーション手段利用の場面における差別を解消し、もって障害のある人とない人との相互にわかりあうまちづくりを進めることを目的としている。一方で、障害者を取り巻く状況は、保育・教育、就労、医療、移動、生活環境、情報、防災、親亡き後等の問題など様々な社会的障壁により、依然として多くの差別につながる現状がある。 こうした現状を受け、本条例は、市民、関係者及び関係機関と障害者との相互の理解と協力により障害のある人もない人も共に支え合って暮らしていくことのできるまちづくりを目指すものである。 障害者の権利に関する条約は、平成18年に国際連合で採択され、平成26年1月に日本政府が批准したことにより日本国内において発効されることになった。条約を批准するまでの国内法の整備として、まず、障害者基本法では、障害のある人とない人との実質的な平等の実現のためには、社会的障壁を取り除き、一人ひとりの障害の特性に応じて必要な合理的配慮を社会の側が提供しなければならないという差別の禁止が原則として位置づけられた。その後、これを具体化する障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が制定されたことは、障害のある人とない人が共に暮らす地域づくりに大きな力を与えている。 こうした新しいステージに立って、私たちは、同じ地域社会の一員として、障害の有無に関わらず分け隔てなく平等な機会が与えられ、一人ひとりの個人の尊厳と人格、選択と自己決定が大切にされ、真の意味で、すべての市民を包容する地域づくりによって共生社会を築きあげていく意義を共有することを確認する。そして、共生社会を築くための役割を市民一人ひとりが担い、共に幸せと喜びを分かち合うことのできる明石市を実現することを目指して、この条例を制定する。 第1章 総 則 1 目的 この条例は、障害を理由とする差別の解消、合理的配慮の提供に対する支援及び障害者に関する市民の理解の促進に関する基本的な事項を定めることにより、障害の有無にかかわらず、個人の尊厳と権利が平等に尊重されることを全ての市民が理解し、その権利を享受しあい、障害者が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、権利の主体として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する機会が得られることによって、障害のある人とない人とが共に支え合い活かしあうことができる地域社会を実現することを目的とする。 2 基本理念 (1)障害を理由とする差別の解消による障害者の社会参加の機会の確保は、すべての市民が相互の多様性と違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重することを基本として行われなければならない。 (2)障害のある人とない人との実質的な権利の平等は、障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて合理的配慮が提供されることにより、最大限尊重されなければならない。 (3)障害を理由とする差別の解消は、差別する側とされる側とに分けて相手側を一方的に非難するものではなく、障害は障害者をとりまく社会的障壁を除去する取組によりすべての人に関係する問題であることが理解され、差別を生む背景にある誤解、偏見その他の理解の不足が解消されるよう、障害の有無にかかわらず共に学びあい協力していくことを基本として行われなければならない。 3 定義 (1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。 (2)社会的障壁 障害者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの。 (3)差別 不当な差別的取扱を行うこと又は合理的配慮の提供をしないことを指す。 ア 不当な差別的取扱 客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害者を区別し、排除し、もしくは制限すること、又はその人に条件を付けることその他の不利益的な取り扱いをすること。 イ 合理的配慮 障害者が日常生活又は社会生活において社会的障壁の除去を必要としているとき、障害のない人と同等の権利を行使するため、必要かつ適切な現状の変更及び調整等を行うこと(当該措置を行う者に社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担を課すこととなる場合を除く)。 (4)事業者 市内において、営利、非営利に関わらず事業活動を行う自然人及び法人(国、都道府県、市等の公的機関を含む)。 (5)市民 市内に居住し、又は通勤し、もしくは通学する者。 4 市の責務 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。 (1)市民及び事業者に対して、合理的配慮の模範を示すため、障害者の意見を聞きながら、積極的かつ率先して合理的配慮のあり方を調査、研究し、合理的配慮を提供すること。 (2)障害者が、地域社会において、障害のない市民との間で相互に理解し、ともに安心して暮らすことができるよう、事業者が、障害者に対し、合理的な配慮を行うことができるよう支援すること。 (3)市民及び事業者の協力を得て、障害を理由とする差別解消の意義及び基本理念に対する市民の理解を深めるため、障害理解に関する情報の普及及び啓発、研修その他の取組を行うこと。 5 市民および事業者の役割 市民は、基本理念に対する理解を深め、合理的配慮の提供の支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する取組の普及及び啓発に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。 6 差別を解消するための施策の推進 (1)市長は、障害を理由とする差別の解消の促進を図るため、次に掲げる施策を推進するものとする。 @障害を理由とする差別の解消に関する必要な情報提供及び合理的配慮の提供の支援及び障害理解のための啓発その他の差別の解消を推進するための環境整備に関する施策 A障害を理由とする差別の解消に関する相談体制及びあっせん制度その他の紛争の解決について、必要と認められる施策 B差別に係る相談事例の検討の結果、必要と認められる制度上の見直しその他の環境整備に関する施策 (2)市長は、前項に規定する施策を策定する場合においては、第3章第3節に定める明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会(以下「地域協議会」という。)の意見を聴き、その意見を尊重するものとする。 (3)市長は、本項(1)による施策を策定した場合は、当該施策を明石市障害者計画(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき策定された計画をいう。)に位置付け、総合的かつ計画的に推進するものとする。 7 財政上の措置 市は、障害を理由とする差別解消の施策を推進するため、予算の範囲内において、市民による合理的配慮の提供の支援その他の施策に関する必要な財政上の措置を講ずるものとする。 第2章 障害理解の啓発及び合理的配慮の提供の支援 1 合理的配慮の提供に当たっての基本理念 合理的配慮は、障害のある人とない人との平等を基礎として、すべての人権及び基本的自由を享受するために必要とされるものであることを旨として提供されなければならない。 2 合理的配慮の提供の支援 市は、前条に定める認識に基づき、市民、事業者及び行政機関等が、合理的配慮の提供を容易に行うことができるよう、合理的配慮の提供に関する情報提供、助言、及び環境整備等の施策を推進するものとする。 3 条例の実施状況の確認、評価 市長は、第1章第6項に掲げる施策に関し、市民の障害理解、市民および事業者の合理的配慮の促進その他のこの条例に基づく施策の実施状況を確認し、評価した上で公表し、施策に反映するものとする。 4 研修の実施 市は、障害及び障害者に対する市民の理解を深めるため、周知啓発又は研修の実施その他の必要な取組を行うものとする。 5 交流の機会の提供 市は、障害及び障害者に対する市民の理解及び障害のある人ない人との相互理解を深めるため、互いに交流することができる機会の提供その他の必要な取組を行うものとする。 6 障害理解の促進及び合理的配慮の提供に向けた連携 市、市民及び事業者は、第2章に掲げる施策につき、相互に連携、協力しながら取り組むものとする。   第3章 障害を理由とする差別の解消  第1節 差別の禁止 1 差別の禁止 何人も、第1章第3項(3)に定める差別をしてはならない。 2 意思の尊重 何人も、合理的配慮を提供するに当たっては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。  第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策 1 相談・助言等 (1)障害のある市民、障害のある市民の家族、支援者又は事業者は、市に対し、障害を理由とする差別に関する相談(以下、「特定相談」という。)をすることができる。 (2)市は、前項の相談を受けたときは、相談支援事業者等(障害者総合支援法(平成17年法律第123号)第77条第1項第1号に規定する事業を行う者。以下同じ。)と連携しながら、必要に応じて次に掲げる対応をとるものとする。 @特定相談に係る関係者への事情聴取、説明、及び助言(以下、「助言等」という。)。 A関係行政機関又は利用できる制度の紹介。 B関係行政機関への通告、通報その他の通知。 C第17条に規定するあっせんの申立の支援。 D@からCにかかげる他差別を解消するために必要な対応。 (3)特定相談に係る関係者は、正当な理由がある場合を除き、前項第1号に基づく助言等に協力しなければならない。 2 あっせんの申立 (1)障害のある市民は、当該紛争の解決を図るため、市長に対し、その事項を解決するために必要なあっせんの申立をすることができる。 (2)障害のある市民の家族その他の関係者は、前項の申立をすることができる。ただし、当該申立をすることが障害のある市民の意に反することが明らかである場合は、この限りでない。 (3)(1)(2)の申立は、第3章第2節1に規定する特定相談に対する助言等を経た後でなければ、することができない。ただし、紛争の解決がなされないことにより、回復困難な損害が生ずるおそれがある場合は、この限りでない。 (4)あっせんの申立は、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)その他の法令に基づく不服申立又は苦情申立手続をすることができる行政庁の処分又は職務執行については、することができない。 3 事案の調査 市長は、前条の申立があったときは、その申立に係る事実について調査を行い、又は相談支援事業者等に必要な調査を行わせることができる。この場合、調査の対象者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。 4 あっせん申立に対する審議 (1)協議会は、市長の諮問に応じ、あっせん等申立にかかる事項を調査審議する。 (2)協議会は、前項に定める調査審議のため、あっせん部会を設置する。 (3)前項に定めるあっせん部会は、次に掲げる事務を所掌する。 @障害を理由とした差別に係る事項の調査審議 A調査結果に基づくあっせん案の答申 (4)本項(2)(3)に定めるもののほか、あっせん部会の運営に関し必要な事項は、規則で定めるものとする。 5 あっせん (1)市長は、あっせんの申立があったときは、協議会に対して、あっせんを行うことについて審議を求める。 (2)協議会は、市長より前項の指示があったときは、第3章第2節4(2)に定めるあっせん部会を設置する。 (3)あっせん部会は、必要やむを得ない場合を除き、あらかじめ地域協議会の承認を得た上で、あっせんを行う。ただし、あっせんを行うことが対象事件の解決に資すると認められないときは、あっせん部会はあっせんを行わないことができる。 (4)あっせん部会は、あっせんを行うために必要があると認めるとき、対象事案の関係者に対して、その出席を求めて説明もしくは意見を聞き、又は資料の提出を求めることができる。 6 勧告及び公表等の措置 (1)あっせん部会は、差別を行ったとされる者が、正当な理由なくあっせん案を受諾せず、又はこれを受諾したにもかかわらずあっせんに従わないときは、障害を理由とする差別を行ったとされる者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱を解消する措置をとるよう勧告すべきであることを市長に求めることができる。 (2)市長は、前項の規定による求めがあった場合であって、必要があると認めるときは、障害を理由とする差別を行ったとされる者に対して、必要な措置をとるように勧告することができる。 (3)市長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表する他必要な対応をとることができる。 7 意見陳述の機会の付与 市長は、公表をしようとするときは、あらかじめ、当該公表に係る者に対してその旨を通知し、かつ、その者またはその代理人に対して意見を述べる機会を与えなければならない。  第3節 障害者差別解消支援地域協議会 1 障害者差別解消支援地域協議会 (1)市は、障害を理由とする差別の解消に関する施策等についての協議を行うため、明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会(以下、「協議会」という。)を置くものとする。 (2)協議会は、第1章第6項に規定する施策の推進について意見を求められた事項について、市長に意見を述べる。 (3)地域協議会は、障害者の医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務及び事業に従事する地域の関係機関、事業者、団体等が、障害を理由とする差別に関する相談に係る事例を踏まえた差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、次に掲げる関係機関等により構成されるものとする。 @障害者及び家族 A障害者に係る事務及び事業に従事する地域の関係機関及び事業者 B特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 C学識経験者 D法曹関係者 Eその他必要と認められる行政機関等又は障害者施策及び人権に精通している専門機関及び有識者等  (4)地域協議会は、第3章第2節第4項(3)に定める事項のほか、次の各号に掲げる差別解消に係る事項に関して協議を行うものとする。 @合理的配慮の提供の支援及び啓発に関する事項 A障害を理由とする差別の禁止に関する指針(ガイドライン)の作成等に関する事項及び指針を踏まえた相談事例の対応の検証に関する事項 B本条例の施行状況に関する検討を行い、その結果必要があると認められる見直しに関する事項 Cあっせん申立に対する答申 Dその他、障害を理由とする差別解消に必要な企画及び立案に関する事項 (5)地域協議会は、(4)に掲げる事項に関して、必要があると認められる場合には、部会を置いて協議及び取組を行うことができるものとする。 (6)前項に定める地域協議会は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会とする。 (7)上記に定めるほか、地域協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 附則 1 市長は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行の状況、社会情勢の推移等を勘案し、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な改正を行うものとする。