第5回(仮称)あかしインクルーシブ条例検討会 全体会(後半) 議事概要 場所 明石市役所議会棟2階大会議室 日時 2019年8月8日(木)16:20〜17:30 1 各部会からの報告 (1) 心のバリアフリー部会 (心のバリアフリー副部会長) 総合相談支援体制の整備から話を進める。具体的にはピア相談支援におけるピア当事者の活用の話が出た。相談の専門職は具体的な専門性を持った相談を受けることができる一方、当事者は主観的に自分の経験を踏まえ、その困りごとを受けとめたり、伝えたりすることができる。アセスメントするときにも、チームアセスメントとして、相談の専門家と対等な立場で議論することができるのではないか。相談体制を複合的にする際にピア当事者の活用ができないかと提案があった。 福祉人材の活用について、小規模な事業所は自分たちで人材を確保したり協力したりするのは難しい。例えば市と社協の共同で人材センターのようなものをつくり、研修などもやることで、市全体としての福祉人材の確保、育成につながる。定着に向けた支援もできるのではないか。また例えば市民大学や小中学生への要請というようなこともできるのではないか。 就労支援については、トライやるウィークの障害者版「チャレンジウィーク」を明石市でやるのはどうだろうという提案があった。採用した障害者のフォローに関しては、何をやってもらうのかが不明確なまま。明石市が全ての課で取り組む中で、業務分析をして工程を見える化し、障害者にやってもらえる部分をつかんでいく。採用した障害者のフォローをし、チャレンジウィークもし、その後の雇用にもつなげるようなモデルをつくると、それが民間事業所への範を示すことになる。 インクルーシブ教育に関しては、大きく分けてハードやソフトをどのように作り出すのかという問題がある。エレベーターの設置、看護師や介助師の雇用、教員のスキルアップなどをやった上で、自由な選択の機会が保証される、つまり選択肢を広げていくということが大事であろう。子どもの意見表明権を大事にするのであれば、3歳からの教育の無償化に合わせて、例えば3、4、5歳で統合教育を保証し、それを当たり前にすると、学校を選ぶときに親だけが決めるのではなく、子どもたちが学びたい学校を選ぶことができるのではないかという提案もあった。 (2) ユニバーサルデザインの街づくり部会 ユニバーサルデザインの街づくり部会長) 主に、施設整備、移動手段の確保、災害時の要配慮者支援、ユニバーサルツーリズムの促進というテーマごとに話し合った。 施設整備、移動手段の確保をテーマにしたグループの一つは、視覚障害当事者の委員がいたこともあって、特に情報の重要性ということを中心に話があった。明石市では合理的配慮の提供支援ということで点字メニューの助成をはじめ、様々な取組がなされていることが有名だが、まだまだそういった配慮のある店が多いことが一人一人の当事者に十分届いていないのではないだろうか。あるいは、そういった取組をした店が、当事者からどのような評価をもらっているかなどフィードバックがされているかということの情報については課題。このような取組をしている店があるなら行ってみよう、店側からすれば、お客が来るならさらにこういう取組をしてみようとなるのではないか。ただ、障害当事者が必ずしも当事者団体に所属しているわけではない。どのように情報提供すべきか。店単体ではなかなか難しいので、商店街なども巻き込むことが大事ではないかという話があった。 もう一つのグループでは、ハードとソフトについて話があった。入口へのスロープの設置などハード面の取組をしているところは、お店の対応がよい。それなりに意識を持って取り組んでいるという安心感がある。このようにハードとソフトが一体となった取組の大事さと、例えば接遇マニュアル、ユニバーサルマニュアルのようなものをつくって、それぞれの店員の意識の向上ができないだろうかという話があった。 もう一つは、移動の重要性、モビリティ、移動確保ということ。ある鉄道ではエレベーターはあるが、無人駅。そうすると結局、駅員が来るまで待たされてしまうことになる。これはたこバスがあることの重要性につながる。要するに複数の交通手段を使えるということの重要性が浮かび上がってくる。 災害時要配慮者支援について。インクルーシブ防災の取組の重要性を踏まえたうえで、どの角度から、どのような啓発をするか。特に普段から顔が見える関係づくりが重要である。個人情報の関係から名簿の使い方が難しいが、むしろ普段から顔が見える関係づくりがあれば解決する。名簿がなくても助け合いができるような取組がいるのではないか。あるいは、地域で訓練をするところに、当事者に参加をしてもらうとか、そういうインクルーシブな防災体制をつくっていく。どんな取組がいいのか考えるには、共生社会ということを知ってもらうということが大切だが、知ってもらうということにまだまだ課題がある。 最後、ユニバーサルツーリズムについて。来年ユニバーサルツーリズムセンターができるということで、これをシンボリックな拠点に位置付けて取り組んでほしい。ユニバーサルツーリズムのデザインやインクルーシブを表すロゴなどインクルーシブなまちづくりを進める拠点ということがわかるような見せ方というのが大事。もちろん見せ方だけではなく、例えばコンシュルジュを置いて、県外、市外から障害者が来たときに、鉄板ルートを紹介するなど。さらにカスタマイズをするなどそれぞれに合わせた支援があるとよい。 インクルーシブ条例の対象にはもちろん高齢者も含まれる。人数的に言えば障害者よりも高齢者の方が圧倒的に多い。例えば認知症の高齢者も増えている。インクルーシブ条例を様々な人に知ってもらうことが大事ではないかという話もあった。 2 意見交換 (座長) それでは、これから約1時間、全体でディスカッションしたい。進め方としては、委員1人2分半ぐらいで、今の考え、それから今日伝えておきたいことなど意見等を述べてほしい。その上で、オブザーバーからも意見をもらい、市長からのコメントももらって、最後私がまとめていきたい。このような段取りで進めていく。 極力ゆっくりと、そしてできればわかりやすく話をしてほしい。 (心のバリアフリー部会長) 部会では様々な議論があり、盛り上がった。自分にとってとても大事なテーマは、やっぱり一つは教育。子どものころに、ともに育ち学ぶということを全面展開していかないといけない。人を排除していく社会がじわじわと迫ってくるときに、初めから分けられている社会の中では溝が埋まっていかない。まずともに学び、ともに考えて、ともに生きるという社会をどうつくるのかというところ。国も3歳児以上の教育費の無償化を謳っている。それを使いながら全面的な展開を明石が考えられないか。また学校教育が終わると働く場の問題がある。まず行政から仕事をしっかり見せて、分析して、障害者の働き方について手本を見せていこう。そして障害者が働けるような社会を一緒になって考えていけたら良い。 (ユニバーサルデザインの街づくり副部会長) 市長が最初おっしゃったことの自分なりの理解としては、机の上での作文だけではダメだと。魂を入れなければならない。 防災訓練のことで言えば、やっぱり縦割りの問題がある。福祉部局にいた、あるいは福祉のまちづくり担当された方が防災部門に何人いるかわからないが、人員配置はそう簡単ではない。しかも、防災訓練というのは、本来地域の自治会がやるものだから市役所が決めることではない。一人一人に必ず参加を求めるような強制力がない。だから、防災と教育に関する地域の理解を得て地域でやっていただきたい。それからもう一つ大事なのは、障害当事者は頑張って訓練に参加してほしい。 (委員) 総合相談というのはかえって難しい。個別に一つ一つ対応するのがいい。何とか折り合いをつけられるとすれば、一つの窓口で専門の方に対応していただくということ。当事者がなかなか相談にあらわれず、心配して相談員が出向くと、本人はけろっとしていることもある。 (座長) 今日関わった部会のところだけでなく、全体に関する意見はいかがか。 (委員) 今日で検討会は終わりと思っていた。これを市役所の中の各部署に落とし込んでいったり、市民への啓発をやっていったりするというのは大変だろうと思うし、話し合いをこれからも2〜3カ月に1回続けていくというのは正直言って自分にはしんどい面もある。ただこの条例をなんとか市長とともに成功させていくために皆さんと一緒に努力していきたいとも思っている。 (委員) 明石の場合、障害者配慮条例のほかにも様々な条例ができ、障害当事者が社会参加しやすくなっている。今回の条例によって、より障害者が参加しやすくなり、人生を楽しめるのではないかなという期待がある。 例えば、一昨年のB1大会でも、障害当事者として、今までできなかったおもてなし側になって、お客さんをお迎えした。今回の全日本のB1大会にも80名から100名ぐらいの障害当事者が参加しておもてなししようという環境をつくっていただいた。 また、ユニバーサルツーリズムセンターが明石駅にもできる。これは本当にいいこと。車イスに乗っている人も視覚障害の方も、どんな障害者も1人でなかなか旅行ができない。今、視覚障害者には移動支援、ろうあの方は有料でボランティアがつくことで一緒に旅行を楽しめる。車イスの場合は有料ではなくて、その車イスを押す方はボランティア。できればこのユニバーサルツーリズムセンターには、有料でもいいから車イスを押してくれる方を配置するのも一つの方法かなと思う。 もう一つは市長が今、タウンミーティングをやっているが、こういうことをこれからもやっていき、我々障害当事者というものがどういうものなのか、それからインクルーシブ条例とはどういうことなのかという点を市民の皆さんにわかっていただきたい。 (委員) 今現在、障害を持っている当事者たちは生活しやすい時代で本当に幸せな時代だと、とても自分自身感じている。 福祉関係の仕事に30年以上携わっているが、本当にこの時代はとても良い。増してこういう検討会を立ち上げて、誰も見捨てないというテーマで話し合えることはとても幸せなこと。ただ障害者当事者自身も甘えないで、努力して積極的に前へ出ていって自分を紹介するということをしていったほうが、お互いに歩み寄れるのではないかと感じる。自分自身もその見本となれるように頑張っていこうと思う。 後、検討会に参加している方はほとんど福祉のトップの方が多いと思うが、もっと様々な方の意見等を聴いて、いろいろなアイデアを出すことができれば良い。 (座長) 意見を聴く方法について何か提言はあるか。 (委員) アンケート。市民全体が難しければ、まず障害者を対象にするなど。 (委員) 自分自身が思っているのは、インクルーシブ自体は障害のない方にどれだけ理解され、支援されて、参加してもらえるかということが一番大事ということ。障害者が意見をどんどん言うだけでは、まだ壁があると思う。 今日の話し合いの中で、「チャレンジウィーク」を知り、まず初めに市役所でやればいいのではと思った。 それからそのニーズがどのぐらいあるかいうことが重要。それを踏まえて参加するほうもチャレンジしていける。そういうことが基本になって様々な波及効果を産めば良い。 (委員) 普段、障害者の仕事と暮らしを支援する仕事をしている。本来は一般就労で頑張りたいが、通勤の手段の確保でつまずいて、送迎つきの福祉の作業所を選ばざるを得ない方もいる。暮らしの部分で言うと、入所施設からもグループホームからも手続上断られてしまって、遠い県外の施設を選ばざるを得なくなった方もいる。そういった相談を受けることが多い。どこで誰とどうやって生活していくのかをもうちょっと当たり前に選べるような社会になれば良いと思ってこの検討会に参加しているが、家族の頑張りで何とか成り立っているような現状も少なからずある。チャレンジウィークなど地道な取組かもしれないが、一般就労に向けて頑張っていくための取組も進みつつある。実際進めている側からすると、この条例が後押ししてくれると一気に進んでいく期待もある。チャレンジウィークは具体的な施策の一つにもなる。条例と具体的な施策が一致すると一気にイメージも持てる。市民レベル、支援者レベルでも具体的な施策について話し合うような機会があれば、さらに裾野の広がった機会にできると感じた。 後、事業所の立場から言うと、人材不足は喫緊の課題であり、障害者の当たり前の生活を支える上では人材は欠かせない。お金が発生する問題でもある。障害者が明石で生まれて明石で育っていくために進めるべき政策について考えると、グループホームの確保やヘルパーの確保といった資源の確保が必須になると思う。そういった意味でも行政と一緒に進めていく必要がある。1つの法人の努力だけでは補えきれないところまできていると感じる。この条例にはとても期待をしており、早く一緒に進めていけるようになってほしい。 (委員) まず全体的なこととしては、このような会議は結論ありきで話を進めることが多く、自分が委員として出た会議もそういったものがありがちと感じていたが、今回話し合いを1年伸ばして、市長が実態の伴うものにするということをはっきり言ってくれたことが非常に嬉しい。発言したことが身になっていく期待が膨らみ、より積極的に発言したいと思った。 後、インクルーシブ教育においては、小さいころから一緒に過ごすということが非常に大事だということを身に染みて感じている。一緒に過ごす機会を何らかの形で作っていくことが絶対大事。 市民にいかに知ってもらうかという部分では、啓発が大事。自立支援協議会こども部会ではインターネット等々で1万人メッセージの取組を行ったり、映画上映前のコマーシャルで障害の啓蒙活動をしたり、順次様々な形で発信をしている。もっと広めていきたい。 背景として、ある医療的ケア児の映像を自立支援協議会で流したときに、映像の中でお母さんが子どもに「明石の病院へ行きたいよね」「明石の療育受けたいよね」と何気なく言った言葉を聞き、何らかの手立てをしたいと思った。 また、あおぞら園への通勤時に、視覚障害をお持ちの小学6年生ぐらいの子どもがお母さんと一緒に神戸の視覚障害の特別支援学校に通っているのを見ることがある。明石にそういう学校があれば、毎朝お母さんと一緒に通わなくていいのにと思っていた。 このように1人1人の現状を拾っていくことで、全体が変わるのではないかと切に思う。 (委員) まずは、当事者の枠で、こういった場に参画できたことを感謝している。学びも深くなり、また様々な立場の方がいるので、自分の気づきが深められていると感じている。積極的な検討期間の延長も賛成。市長が実効性のある条例をつくることに強い思いを持っておられることを改めてお聞きすると、何か自分も役割を果たせないかと気持ちが高まる思いがした。 自分は難病の当事者で、それに加えて以前病院で働いていたため支援者側の性格も持っている。支援を実践していく中で、目の前の人の個別ニーズに合わせてカスタマイズできるという状況ではなく、制度に個別ニーズを合わせていくという発想でしか支援に携われない葛藤が常にあった。この条例が一つの突破口となり、考えていく上でのヒントとなるという大事な取組だと思うが、隙間、谷間に挟まれている人たちを、本気で掴み取ることがこの条例の大きな役割だと痛感している。難病に関する施策は遅れていたが、2015年やっと難病法が成立した。働きかけにより私たち難病患者の状況も少しずつ変わっていっている。 これまで日の当たらなかったところを本気で掘り起こすという意味では、総合相談の「総合」という言葉の意味もインクルーシブに重なり合ってくる。 理念的な部分を多く含む総合相談支援であるが、この理念を踏まえた具体案をこれからの1年でどれだけ進めることができるかという部分が、今後の大きな課題だと思う。 (委員) 検討会に参加して、これまで知らなかった市の取組を知ることができた。とてもいい内容で、それが浸透していないのはもったいない。1年間一緒に検討してきて、他の委員と顔の見える関係をつくれて、グループディスカッションでも意見を言い合える関係性が築けてきた。1年間検討が延びたということもあって、しっかりとその取組を市民や企業に周知すること、市民や企業とも顔が見える関係をしっかりとつくっていけたら良いと思う。 (委員) 一緒に、分けないという考え方のもとに、普通に子どもが一緒にいることで、子どもたちの意識や関わり方が格段に違うということを感じている。 教師側も、「困った子」という感覚から「困っている子」という受けとめ方になってきている。このことの大事さは痛切に感じるが、一方、受け入れるにあたって、負担と不安が常につきまとうのも事実。本当にこの子にとっての成長はこれでいいのかと常に思うし、ハード面の整備などこうなればもうちょっと気楽にどうぞと言えるのにという面もある。 ハード面は一足飛びには難しいが、人的なところについてはある程度進めないといけない。普通に一緒にいるということは非常に大事なこと。 (委員) 今日、市長の熱い思いを聞いて、グループディスカッションの中で自分も相当熱くなった。社会教育という面から、行政、企業、施設、住民、当事者が同じテーブルについてみんなで進めていかなければならないと思う。 一つ提案だが、明石市では高齢者の支援企業がある。障害者についても同じような支援企業があってもいいのではないか。当然、企業がもっとやりがいを感じられるように表彰制度みたいなものを設ける。最終的に障害者が就職できる場になっていけば良いと思う。 (委員) 最近、高齢者分野の講演を聞きに行くと、ライフとライフスタイルの違いについてよく聞く。施設でケアを受けている高齢者などを見ると、何もせずにじっとしている人が多い。高齢の夫婦など外出しない方が多い。ケアを提供する側もそうだが、ライフしか提供していない。空腹でないこと、清潔を維持できること、それからさみしくないこと、これらを満たすことに精いっぱいになっている。街中に出ていくことでいろいろと選択できる喜びを持ってもらいたい。 欲しいのは素敵なライフスタイル。好きな洋服を見に行ったり、昔からよく通っている餃子の店にすぐ行けたり。そのために、例えば小さいお皿の高齢者メニューを作ってもらえる、トイレに行くのに店員に補助をお願いできる、到着したときに店員を呼ぶインターホンがあるなどといったやさしいお店のリストを集めていく。やさしいお店になってもらうための働きかけとか認定制度づくりを進めていく。素敵なライフスタイルを続けられる明石市になってもらいたい。 (委員) この会議で1年前、市長が明石のすべての店をバリアフリーにすると言われたと記憶している。大切なことは、可能な限りとかできるだけではなく、すべてということを一旦言い切ることだ。 最近の話で、参議院選挙で重度障害者の人が2人国会議員になったが、その中でバリアフリーが進んだということと、もう一つ、仕事中でも介護の制度が使えるようになったということ。その動きが国でも大阪でも一斉に進んでいる。当事者がいることがとても大切だと改めて感じた。 後最近、小学校や中学校の道徳で障害者をどう教えているかという関心があって教科書を見てみたが、4ページしかない短いヘレンケラーの話の中で、わがままなヘレンケラーをサリバン先生が頑張って立派な人にしたという話になっていて、違和感を覚えた。子どもが生の障害者を見ないでイメージだけで考えるということの危険性を非常に感じた。 明石で実施したB1グランプリで、障害当事者が店側でも客側でも参加して、多くの人と交流する取組が非常に大切だと思う。 その関係で言うと、明石公園はある程度バリアフリーだが、車イス対応トイレが夜は閉まっている。これはインクルーシブではない。夜遊びする障害当事者もいるだろう。ぜひ見直してもらって、外出している障害者が多くいるまちにできたら良いと思う。 (委員) これだけ多くの市の様々な部署の方が聞いてくれていることを心強く思っている。 実際に進めるとき、今まで後回しになっていたこと、些細なことだけれど改良されると助かるようなことをソフト・ハード両面から解決していければ良いと思う。 (委員) 先週の土曜日に住んでいる三田市で市民祭りがあった。自分は毎年三田のろうあ協会として店を出している。金魚すくいをしており、毎年たくさんの子どもたちがやってきてくれる。子どもとお母さんが一緒に来てくれる。その中で、手話や身振りでお祭りの楽しい雰囲気の中交流をしている。祭りへの参加は10年以上になるが、少しずつ地域の方々、市民の方々に聞こえない人のこと、手話のことなどを知ってもらっている。小中学生に手話を教えに行くこともしているし、地域の行事に参加をし、役員も担当している。聴覚障害者が会議に出席するときには、通訳者が同行して同じ委員として参加をする。それぞれに顔が見える関係ができつつある。 そうすると、障害のことを知ってもらい、ろう者のこともわかってもらえる。市民祭りでは、手話通訳者がいなくても、筆談や身振りなどお互いができる方法でコミュニケーションをとることができている。少しずつ考えが広がってきていると思う。 インクルーシブ条例を今後進めていくには、やっぱり当事者が自ら積極的に参加することが必要。それがさらに参加しやすい環境づくりになっていく。お互いに顔を見てお互いを知っていき、交流するということが大切だと思う。 この25日にもフォーラムをするので、多くの市民に来ていただいて、自分も含めてみんなで成功させたい。そしてこれからも参加してくれる人を増やしていきたい。 (座長) 楽しい場イコール交流がしやすいということは大事なポイント。仕組みや仕掛けを大事にしていきたい。 (委員) 視覚障害者当事者として参加している。やはりインクルーシブを市民に伝えたり、条例の理念を広げていったりするには、当事者自身も積極的に社会に参加する必要がある。この検討会で視覚障害者の立場から自分の意見を出させてもらい、リアルに皆さんと話ができた結果、意見を取り入れてくれた内容になっていることが実感できる。これを確実なものにするには、当事者がどのように参加できるのか、積極性を持ってかかわることができるのかというのがすごく重要だと思っている。 どうしても人は無関心のことが多い。自分と関係のないことは無関心なので、どれだけリアルな場を自分がつくれるか、自分が積極的にかかわれるかということがとても重要。 後、視覚障害者は就労の問題が大きい。自分自身相談を受ける中で思う。中途で視覚障害を持つ方が多くいるが、40代、50代ぐらいの人が多い。そこから何かを1から始めるとなると、どうしても難しい。また企業側も視覚障害者をどう扱っていいのかわからない。何も見えないから何もできないだろうと就労につながらないケースが多い。就労に関して、視覚障害の人が鍼灸師など以外で、どのように一般企業で働けるのかというところにも、少し意識を向けていただけると嬉しい。 (座長) 自分も全盲だが、視覚障害者の就労は本当に難しい。ぜひ明石市でこの課題を何らかの形で突破していきたい。 (委員) よく友達と話をするが、明石は誰もが暮らしやすいまちであるとか、やさしいまちづくりということで、皆さん取り組んでいると思う。しかし、例えば仕事で疲れて家に帰って奥さんにあたる。奥さんはいらいらして子どもにいらだちを向ける。子どもは友達をいじめる。そんな負のスパイラルがあってはいけない。職場でも家庭でも、もう少しやさしい言葉で言えばいいのになぜ言えないのか。職場の人とよくそういう話をする。 誰もが暮らしやすいまちを目指し、誰も排除せず、みんな一緒にと思う人たちだけでも、せめて家族にやさしく、職場にやさしくといった気持ちを持てれば良い。そうすれば何か柔らかい空気が流れるのではないか。そういうことから始められれば良いと思う。 (座長) オブザーバーにも何人か発言してほしい。いかがか。 (オブザーバー) 自分はユニバーサルデザインのまちづくりを担当している。明石駅前に開設予定の(仮称)ユニバーサルツーリズムセンターの整備に向けて、観光案内所の運営をしている観光協会等とともに準備しているところ。本日(仮称)ユニバーサルツーリズムセンターについて大変有益な意見をたくさんいただいた。シンボル的な施設になるよう、壁面に大きなピクトをつけるなど自分自身も多くのことを考えている。当事者団体の皆さんなどにも意見をいただき、使いやすい施設になるよう努力はしているが、本日いただいた意見も参考にして、またこれからも皆さんの意見をいただきながら、良い施設にしていきたい。 また、バリアリー法に基づくマスタープラン及び基本構想に相当する「明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画」の策定を進めている。明石市は全国のトップランナーとして計画の策定に取り組んでいる。1年間条例検討が延びるため、先に計画づくりが進んでいるが、これまで検討会で議論されている理念や皆さんのご意見をしっかり受けとめたい。条例よりも計画の方がより具体性で、即地的な内容にできると思うので、より皆さんに納得いただけるような計画づくりを本検討会でのご意見も踏まえながら進めていきたい。 (オブザーバー) 今日、教育の話題が多く出た。障害のある子もない子もともに学ぶという視点でこれから進めていく必要があると思う。 一方で障害の有無にかかわらず、特に全国学力学習状況調査を見ると、0点の子どもや1問、2問しか正解できない子どもが一定数いる。こういう子どもたちは、日常、学校の教室でどんな感じで過ごしているのか。これを細かく捕捉していく。誰1人取り残すことがない学校になるよう取組を進めていく必要があると思う。できる範囲でできることから取り組んでいきたい。 (オブザーバー) 自分は長い間技術職として、ずっと土木の仕事をしていた。この検討会、部会、ワーキングなど様々なものに参加させてもらい、改めて気づくことが非常に多かった。 今までは基準どおりに施工しているということが一種の自己満足であった。ただ実際はそれだけでは十分でない部分が多く見つかった。今年度は中央体育会館のエントランス工事をやっているが、障害当事者の方々に現場に来てもらって意見交換をした。8割方工事が完成した段階でフィードバックのために、お互いに意見交換をした。これは初めての例だと思う。 今、技術職員全員でこういう取組を広げていこうとしているところである。こういったことができたのは、この検討会に参加したことがきっかけになっている。 (オブザーバー) 総合相談支援体制を実効性のあるものにしていくためには、庁内連携の実体化と、社会資源開発、具体的には、地域づくりや関係機関のネットワーク、最終的に予算を使っての事業化。また、地域総合支援センター業務を受託している社会福祉協議会が地域生活支援の理念と姿勢をもち、具体的な仕組みを構築していく必要がある。さらに、具体的な取組を担保する計画、明石市に関しては条例がそれらを担保し、実効性のあるものとしていくことが大事だと思う。 (座長) それでは時間が来たので、最後市長からも発言をお願いする。 (市長) たくさんの具体的な提案を受けたので、若干の方向づけをしたい。あくまで問題意識という形で聞いていただきたい。 まず当事者による相談の重要性はごもっとも。既に明石では障害者による当事者相談がスタートしているが、さらにひとり親家庭なども同様の形の相談を行っている。加えて、待機児童、引きこもりのテーマについても始めようとしている。専門職による専門的な相談も大事だが、当事者が当事者に寄り添うことも重要。その方向でさらにやれることを増やしていく。 福祉人材の採用などについて、既に明石市では保育士という待機児童対策のテーマにおける人材確保を、行政が全面的に応援をしながらフェアをやっている。福祉人材の確保についても同様の取組が可能であろうと思っているし、しっかりやっていきたいとも思っている。 加えて、研修についても、これは単体で小さなところでやるのは難しい。明石市は来年4月に児童相談所の横に研修センターも立ち上がり、しっかりとした立派な研修施設ができる。ここを活用できるのではないかと思っている。 続いて、雇用について。チャレンジ的に実施するなど様々な工夫の中で可能性を具体化していくことも必要だと改めて思う。何かしら考えて形にしていきたい。 統合教育的なテーマ、インクルーシブ教育については、もちろん小中学校の問題も大事だが、特に明石市は待機児童の関係もあって、次々と保育所、こども園などをつくり続けているので、いずれ一定程度目途がつく段階を含めて様々な可能性がある。また、明石は公立の保育所、幼稚園も数多くある。しっかりと公を位置づけていって、そこに予算をつけながらやっていく。 続いて、移動支援などについて。たこバスについて全面的な検討に入ろうとしている。コミュニティバスにお金をかけながら移動支援をしている。これまでどちらかというと、高齢者の方々に対する目線が強かったが、これにさらに様々な要素を加えていく可能性もある。 それから、合理的配慮について。商店街などに対してこれまではアーケードの助成などが多かった。今後は例えばインクルーシブ助成という形で、商店街にある程度まとまったお金を渡し、やさしい商店街にすることを商店街自身に考えていただく。もう行政が考えて、特定のメニューをしてもらうのではなくて、事業者サイドが自ら知恵を絞りやっていく。一定程度、行政が費用負担をするということもできると思った。 ツーリズムセンターは、今日出た意見を具体化できることが多いと思う。後はトイレの問題。トイレに行けないのではまちに出ることができない。ツーリズムセンターにトイレもつくるが、少し遅い時間であったとしても、車イスや事情を抱えた方がトイレに行ける明石駅前にしていく必要性を感じている。トイレは大事。とても大事だと思う。 それから難病のテーマについては、制度に合わせてといっても、難病の場合、制度になかなか合いにくいから難病なわけである。既存の制度に合わせる発想ではなくて、個別性から発想することが必要。特に明石市では、引きこもりについての相談支援を始めたが、引きこもりも一律ではなく大変個別性が強いテーマである。引きこもりに続いて難病についても何かしらの具体的な動きを始めたいと改めて思った。 社会教育の関係で企業の話も出たが、これについても、既に明石市では子育て応援企業や高齢者応援企業という枠組みでそういったテーマに力沿えいただける企業を一定程度広報している。障害者分野、インクルーシブ分野でもそういった分野の企業に対して一定程度インセンティブが働くような何かができると思う。 また、更生支援というテーマで、刑務所を出た方を雇用している企業は公共事業を落札しやすいという枠組みも、既に明石市は持っている。企業が障害者雇用に積極的になるような知恵はさらにあると考えている。 最後になるが、読書バリアフリー法を踏まえて、読書バリアフリーに関する条例づくりを明石もしていきたい。既に議会でも答弁もしている。中核市の場合、大体5つぐらい図書館があるのですが、明石は2つしかない。図書館を増やす方向も既に公約に掲げている。そういった中で狭いバリアフリーではなくて、いつでも誰でもどこでも本に親しめる、そして、インクルーシブの拠点的な要素も含めた図書館づくりといった構想もあり得ると思っている。今後あれもこれも箱ものはつくれないが、一定程度可能性があるツーリズムセンターや図書館にインクルーシブの理念を活かすことが可能だろうと思う。 (座長) 今日大事なことは、1年間の検討延期は、「積極的な遅れ」であるということ。ただの延長ではなくて、少しバージョンアップをした1年間にしていこう。 1年間どう過ごすかということだが、伸ばしがいがあるような内容をさらに作っていこう。これは委員のこの場への積極的な参加や検討会以外での意見提供。あるいはここに来ることができない人の意見を聴く。これらも含めて1年間を有意義に。それから既存の類似の関連の条例との関係性を深めていく。 この条例を含む政策というのは、大きく3つの要素がある。「理念」「仕組み」「財政」。理念はSDGsや障害者権利条約でかなり確立している。ではこの1年間、仕組みをどうしようか。これが実効性の担保になるはず。先ほどの委員の話を聞いていると、仕組みに加えてお祭りのような楽しみを伴う仕掛けも重要。それも含めてアイデアを考えなければならない。財政も市長を含めて考える必要がある。 そういうことで特にこの1年間、最も条例の基本となる仕組みのところ。ここにみんなで知恵を出し合って、考えていこう。 さらにこの1年間私たち自身も成長していく。そして1年間振り返ったら、自分たちも変化があったと思えるように。 差別の反対は平等という答えと、もう一つがあって、差別の反対は無関心。これが一番手ごわい。その層にどうこの条例が作用するのか。本当に大きなこれは宿題。これは無関心というところとどう戦うかということだと思う。こんなこともまたこの1年間考えていこう。 3 閉会