第5回(仮称)あかしインクルーシブ条例検討会 全体会(前半)議事概要 場所 明石市役所議会棟2階大会議室 日時 2019年8月8日(木)13:30〜14:20 1 開会 2 市長挨拶 3 条例制定に向けた進め方について(資料1 事務局より説明) (市長) 条例づくりは、まちづくりの手段。つくる過程も大事だし、つくった後でそれをしっかりとやり抜くことも大事。この間の検討を踏まえて条例の大きな理念部分はまとまってきている。しかし、まちづくりの観点で考えると、実際の現場でどれだけしっかりとできているかは、まさに過渡期のような気がする。 具体例をいくつか示しながら思いを伝える。 @防災訓練 これまで健常者限定で訓練を行ってきた。最近では障害者に対しても訓練を行っているが、例えばろうあの方の場合、訓練に手話通訳者がずっと一緒にいる。実際の災害時にはすぐ横に手話通訳者がいるとは限らない。いつ何時災害が起こるかもしれない。まちのみんなで一緒になって防災訓練を実施していく必要があるのではないか。 AB1グランプリ 2年前に西日本大会を実施し、障害者がボランティアとして健常者を案内する風景もあり、非常に好評だったが、ボランティアジャンバーの色が障害者と健常者とで異なっていた。自分としては、単純に二つに割るのではなくて、それぞれが一緒にやれないだろうかという思いがある。障害者が参加できないイベントではなく、障害者も支えるイベントにはなってきているが、インクルーシブ的な考え方に至っているかというと、ちょうど過渡期。この11月には明石でB1グランプリの全国大会もあるので、具体的な取組を進める中で、インクルーシブという概念が実際のまちづくりにどのように反映できるのかといった課題も含めて整理をしていく。 Bこども食堂 全28小学校区でこども食堂が立ち上がり、現在41のこども食堂が運営されている。その中には認知症カフェ的なところや、「引きこもり的な方もどうぞ。」というところも生まれてきている。自分としては、狭い範囲の方が来るこども食堂ではなく、地域の誰もが参加できるような方向づけもあり得ると思っており、各地においても実践が進んでいるところである。地域におけるインクルーシブ社会がどういった形でできていくのかという過渡期に、今あるのではないかと思っている。 C読書バリアフリー法 この6月に制定され、施行された。読書バリアフリーについては明石市でも問題意識を持っており、例えば明石駅前の市民図書館では、拡大読書器や視覚障害者が音声で聞き取れるような機器を既に導入している。しかしながら、そういったお金をかけた物があるにもかかわらず、実際の活用は非常に数少ない状況である。発信などまだまだできることがあるということに気づき始めているところである。 このように、自分としては、つくる過程でこの条例の理念をしっかり各現場に落とし込み、その中での気づきを条文に反映させ、条文に反映させなくても、条例に基づいて制定後も引き続き検討していくといった、インクルーシブ社会に向けたまちをあげての条例制定につなげられればと思っている。 (座長) 私もこの間の経過を事務局から聞いた。急がば回れという言葉もあるが、むしろ次の目的へ向かって時間が足りないということかと思う。さらに1年をと言うのは「積極的な遅れ」と位置付けていいのでは。「私たち抜きで私たちのことを決めないで」と障害者権利条約で謳っているが、まだまだ当事者の参加が足りない。同時に「インクルーシブ」という概念を、この条例をつくる過程でどれぐらい明石市に浸透させていくのか。何より市民への浸透であるが、同時に、「隗より始めよ」で、市役所の各部署に染み入るように、浸透させていかなければならない。 かつて「ノーマライゼーション」「バリアフリー」「リハビリテーション」などの言葉は、馴染むのに時間がかかった。「インクルーシブ」もどう翻訳、和訳をしても、その概念が伝わりにくい。むしろこのまま使っていこうじゃないか。「一緒に」と「分けない」というこの2つを足したぐらいの概念だと思うが、概略でも「インクルーシブ」という言葉をまず明石市民に定着させていこう。いつまでも延ばすというわけにはいかないが、定着させていくためには、時間がかかる。 最後に、1年間延期する以上は、実効性がある条例を目指すということを考えると、理念だけではなく膝をポンと叩きたくなるような何かがあることが重要。市長、事務局、私たちも含めて、この1年間をむしろ有意義に使っていこうじゃないか。私たち委員も頑張っていくことの気持ちを新たに持ちたいと思う。 (オブザーバー) 検討会を1年延長するということについて異議はない。 インクルーシブ条例を具体性と実効性を伴う条例にするという点についてだが、自分は、(仮称)あかしインクルーシブ条例は概念的なものであり、実効性は「ユニバーサルのデザインのまちづくり計画」で具現化していくと聞いていた、条例と計画の2つの関係やこれらが今後どのような形になっていくか教えてほしい。 (事務局) ユニバーサルデザインのまちづくりについては、バリアフリー法に基づくマスタープランという計画を立てるため、別途会議を設けており、オブザーバーで参加いただいているまちづくり担当が進めているところである。 今回条例検討においては「心のバリアフリー」「ユニバーサルデザインのまちづくり」の両面からソフトとハードに分けて話し合ってきたが、条例検討の過程でソフトとハードに二分できるものと、必ずしも二分できないものがあった。例えば防災の取組や読書バリアフリー含む教育分野の課題など。計画で考えていく部分と条例検討の中で考えていく部分を整理して、これからの1年で考えていきたい。 (市長) 市長として、今後少し先のこともお伝えする。 この(仮称)あかしインクルーシブ条例は、つくって終わりではなく、インクルーシブという概念をしっかり明石のまちに根づかせて、継続してやっていくべきものだと強く思っている。明石市では、まちづくりのキーワードとして「SDGs未来安心都市」というキーワードも既に使っている。いわゆる「誰一人取り残さない」という国際社会が目標とするSDGsの理念をしっかりと明石の大きな柱に据えていくべきものだと思っている。 例えば長期総合計画があるが、これはちょうど2011年から2020年度までの10年間が第5次であり、第6次は2021年度のスタートになる予定。また、地方創生総合戦略は2015年度からスタートしており、明石市はトリプル3として人口、赤ちゃん、本のまちという3つのキーワードによるまちづくりを進めている。これら2つをドッキングしてこれからの中長期的な明石のまちづくりの指針をつくっていく方向性を市議会でも報告をしている。 ここで重要な理念になってくるのは、「SDGs」そして「インクルーシブ」というキーワード。今回、この条例の理念が実現された暁には、それは明石の5年、10年先の計画に反映されていくべきものではなかろうかと思っている。繰り返しになるが、この条例をつくって終わりではなく、この条例をつくりながらしっかりとまちづくりをし、つくった後もさらにしっかり根づかせていく。 ≪条例検討延長につき検討会で承認≫ 4条例の理念と全体像について(資料2 事務局より説明) ※資料3、資料4についてもあわせて説明 (市長) この後、部会にわかれて忌憚のないご意見を賜りたい。 また、後半の全体会に参加させていただく。この場は非常に大事な場。自分は本気でやさしいまちをつくりたいと思っている。「ふり」ではなく「本当にやる」。おかげさまで一定程度ありがたい評価もいただきつつあるが、まだまだ十分とは言い難い。 例えば、「やさしいまち」という期待を持って明石に来られた複数の車いす当事者から言われたことがある。「入る店がありませんね。」と。やさしいと言っても、実際に車いす当事者が何人かそろって入れる店は明石駅前にほとんどない。「食べたいものを選ぶ」ではなくて、入れる店の中から選ばざるを得ないのが今の明石であり、食べたいものが食べられる、行きたいときに行ける明石はまだまだこれからの課題だと思う。 その他にもいろいろなことを言われる。特に多いのが発達障害児の親からの悲痛な叫びである。生まれたときから様々な不安等を抱えながらそれぞれ子どもと向き合っている。まだまだ行政のできることはあると思う。できる限りその子を排除することなく、みんなで一緒に過ごしていける明石をつくっていくにはまだまだ道半ば。発達障害児の親から非常に強い期待感をもらっている中で、できることを一つでも増やしていきたい。 最後に、相談のテーマについて。行政からすると、相談窓口をつくり、相談時間を過ごすことに意義があるように思われる面がないわけではない。しかしながら、個々の人にとって必要な支援が継続されないと、単に相談をしただけで終わってしまう。相談窓口を開設したからいいのではなく、相談をスタートにして、しっかりと暮らしを支え続けられてこそだと思っている。そういう意味ではまだまだ明石市の行政ができることは数多くある。 部会では「こうやったらいいのでは。」「もうちょっと頑張ったらできるのでは。」「関心が薄そうなあそこも一緒に入ってもらったら、きっと何か変化が起こるのではないか。」といったできるだけ具体的なご提案を数多くいただきたい。事務局で受けとめて、それをしっかりまちづくりに反映させていきたい。 (座長) 私も一言。今の話に尽きるが、しばしばこういう条例はだいたい事務局案が先行する。事務局案を見て、「もうこれで良い。」となりがちである。つくる過程が大事であって、今出ている条文の原案は、まだ実効性が乏しいと思う。もう理念はほぼ確立しているし、それをどう生かすかということだと思う。そうすると、委員の方たちの具体的なアイデアや経験を出すことが必要。 一定の限界があるし、絞り込みも必要かもしれない。すべてを結果に反映させることは難しいかもしれないが、意見を出すことは委員の役割だと思う。今日の部会やグループディスカッションを含めて、ぜひ積極的に意見を出してほしい。