資料1 (仮称)あかしインクルーシブ条例 骨子案 1 条例制定の背景  @これまでの市の取組    これまで明石市では、障害のある人もない人も誰もが安心して暮らせる「やさしいまちづくり」の実現に向けた様々な取組を、障害者や支援者、事業者などとともに推進してきました。    また共生社会ホストタウン登録(平成29年12月)や中核市移行(平成30年4月)といった大きな節目を相次いで迎えてきたところです。  A国際的な指標の制定    この間、世界的規模の2つの指針が制定されました。    ア 障害者権利条約      あらゆる障害者に、障害のない人と同等の尊厳と権利を保障するための国際人権条約として、平成20年に発効されました。日本にあっては、障害者基本法の改正、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定を経て、この条約の理念を具体化する制度が整えられ、平成26年に批准するに至りました。      障害は機能障害と周囲の様々な障壁との相互作用によって生じるとする「障害の社会モデル」の考え方や合理的配慮など、現在の障害者施策を推進するうえで重要な概念が規定されています。また、「私たち抜きに私たちのことを決めないで(Nothing About Us Without Us)」のスローガンを掲げ、障害のある人に関わる政策や事業が当事者参加を基礎として検討されるべきであるとしています。    イ SDGs(持続可能な開発目標)      世界が抱える問題を解決し、持続可能な社会をつくるために、平成27年に世界各国が合意した17の目標です。「誰一人取り残さない」ことをポイントとして、マイノリティや社会的弱者、こどもからお年寄りまで、全ての人たちが大切にされるインクルーシブな社会を目指すこととしています。  上記@Aを踏まえ、明石市がこれまで進めてきた「誰もが安心して暮らせるやさしいまちづくり」をさらに加速させ、年齢や性別、障害の程度など様々な違いがある市民の多様性を認め合い、こどもからお年寄りまで、「誰一人取り残すことなく助け合うまちづくり」を進めていくための指針として、条例をつくります。 2 条例の制定により期待できる効果   ◇誰もが暮らしやすいまちに     条例に基づいた施策を進めることで、明石市が、障害をもった市民、支援を必要とする市民にとって暮らしやすいまちになることにより、障害の有無にかかわらず、すべての市民が安心して暮らせるまちになり、明石に住んでよかった、住み続けたいと実感できることが期待できます。   ◇市の施策の方向性の明確化と具体的施策の後押し     「誰一人取り残すことなく助け合うまちづくり」という市の考え方を、議会の議決を得て、恒久的な形ではっきりさせることで、その方向性に沿った長期的な施策を展開するとともに、既存の市の施策やこの条例に基づいて新たに進めていく施策を、推進していくための後押しとなることが期待できます。   ◇市民意識の向上のきっかけづくり     市の考え方を示し、条例に基づく啓発活動を推進することで、特に「心のバリアフリー」に関する市民の理解を深め、市民が主体的に助け合いながら「誰もが暮らしやすいまち」を実現していくためのきっかけになることが期待できます。 3 条例の骨子 1.目的   この条例は、様々な状況や状態の市民が互いの多様性を尊重し、異なる価値観を認め合うことができ、かつ、誰もが持てる力を発揮できるような環境づくりを進めるために必要な事項を定めることにより、障害者その他のすべての市民が大切にされ、誰も取り残されないインクルーシブ社会を実現することを目的とします。 2.基本理念   インクルーシブ社会の実現に向け、次の事項を基本として取組を推進することとします。  @ インクルーシブ社会の実現は、障害者等(障害者のほか日常生活や社会生活の様々な場面において支援を必要とする状態にある者をいいます。以下同じ。)を、助けられ、又は保護される存在としてのみ捉えるのではなく、その自己決定権を尊重し、かつ、自ら活躍できる存在として捉え、その力が地域社会全体によい効果を生み出すために必要であると理解されることを基本として行われなければならないものとします。  A インクルーシブ社会の実現は、障害者等が必要なときに必要な支援を受けられることが、障害者等のみならず障害者等になり得るすべての市民が心から安心して暮らせる社会につながるということを基本として行われなければならないものとします。  B インクルーシブ社会の実現は、障害者等を含む誰もが、それぞれの個性を活かして持てる力を最大限に発揮することを旨として行われなければならないものとします。 3.関係者の責務・役割  @市の責務   ア 市は、基本理念にのっとり、インクルーシブ社会の実現に向けた基本的かつ総合的な施策を推進するものとします。   イ 市は、職員に対し、心のバリアフリー及びユニバーサルデザインのまちづくりに関する啓発、研修等を行い、職員一人ひとりの意識の向上を図るものとします。   ウ 市は、関係部局の横断的かつ一体的な連携を促進し、総合的かつ計画的にインクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進するものとします。  A市民の役割    市民は、基本理念に対する理解を深め、インクルーシブ社会の実現に向けた市の施策に協力するよう努めるものとします。  B事業者の役割    事業者は、基本理念に対する理解を深め、インクルーシブ社会の実現に向けた市の施策に協力するとともに、不特定若しくは多数の者に対して商品を販売し、又はサービスを提供する者として、心のバリアフリー及びユニバーサルデザインのまちづくりに係る取組を積極的に推進するよう努めるものとします。 4.インクルーシブ社会の実現に向けた重要なポイント  @当事者参画   ア 市は、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を実施する場合は、その過程において、障害者等が参画できる機会を確保するものとします。   イ 市は、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を実施した場合は、障害者等の参画を得て、その検証及び評価を行うよう努めなければならないものとします。  A関係機関等の連携・協力   ア 市、市民、事業者及び関係機関は、相互に協力し、及び連携し、一体となって、インクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進しなければならないものとします。   イ 市は、市、市民、事業者及び関係機関の連携を促進し、総合的かつ計画的にインクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進しなければならないものとします。  B情報の利用   ア 市は、障害者等の多種多様なニーズに的確に対応し、必要な情報を障害者等に適切に提供するよう努めなければならないものとします。   イ 市は、障害者等が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるよう、情報伝達手段の確保等に関し、必要な施策を講じなければならないものとします。   ウ イに掲げる必要な施策のうち、手話等コミュニケーション手段(独自言語としての手話、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、平易な表現、代筆及び代読その他日常生活又は社会参加を行う場合に必要とされる補助的及び代替的な手段としての情報及びコミュニケーション支援用具等をいいます。)の推進に関し必要な事項は、制定済の「手話言語・障害者コミュニケーション条例(手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例)」に基づき、促進していきます。  C財政上の措置    市は、インクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとします。 5.インクルーシブ社会の実現に向けた基本的な施策 (1) 心のバリアフリーに関する基本的な施策  @総合相談支援体制の整備   ア 市は、障害者等からの相談に適切に対応することができるよう、関係部局の横断的な連携のもと、市の相談体制の整備に努めるとともに、適切な相談対応には関係機関及び地域住民の力が必要かつ重要であることに鑑み、これらの者と連携するものとします。   イ 市は、障害者等が抱える課題をできるだけ深刻化する前に顕在化させ、適切な支援を行い、障害者等本人のニーズを踏まえ、その解決を図るよう努めるものとします。   ウ 市は、アの相談への対応状況及びイの支援及びその解決の状況を把握するとともに、これらの取組の推進を図るため、継続的に関係部局、関係機関等による会議を開催し、意見交換等を行うものとします。  A福祉人材の確保及び育成    市は、福祉に関する知識又は介護等の技能を有する者(以下「福祉人材」といいます。)の知識及び技能の必要性を認識し、適切に評価するとともに、継続的な研修の実施等必要な施策を実施することにより、積極的に福祉人材の養成及び質の向上を図り、福祉人材の確保に努めるものとします。  B障害者に対する就労支援    市は、市が雇用する障害者の労働環境を整備するとともに、事業者、関係機関等と相互に連携して、障害者それぞれの障害特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めるものとします。  Cインクルーシブ教育の推進   ア 市は、インクルーシブ社会の実現に向けた教育(以下「インクルーシブ教育」という。)を推進するために、市におけるインクルーシブ教育のあり方について、関係機関と共有するものとします。   イ 市は、アの共有を行い、インクルーシブ教育を推進していくために、継続的に関係部局、関係機関等による会議を開催し、意見交換等を行うものとします。   ウ 市は、研修の実施その他のインクルーシブ教育の推進のために必要な教職員等の理解の促進を図るための取組を実施するものとします。  Dその他心のバリアフリーに関する基本的な施策 (2) ユニバーサルデザインのまちづくりに関する基本的な施策  @生活関連等施設の整備等   ア 生活関連等施設(官公署、学校等の公共施設、事業所、事務所等の施設、病院、集会場、物品販売業又はサービス業を営む店舗、宿泊施設、鉄道の駅、道路、公園その他の不特定又は多数の者が利用する施設をいいます。以下同じ。)は、障害者等をはじめすべての市民の尊厳が大切にされ、誰もが分け隔てなく利用できるよう配慮されたものでなければならないものとします。   イ 生活関連等施設を管理する者は、障害者等をはじめすべての市民が当該施設を安全かつ快適に利用できるようにするため、当該施設の職員に障害者等の理解に係る研修その他職員の意識の向上に関する取組を実施するよう努めるものとします。   ウ 市長は、生活関連等施設の整備に係る施策及びイに記載の取組の支援に係る施策を実施するものとします。  A移動手段の確保    市は、障害者等をはじめすべての市民の安全で安心かつ自由な移動を実現するため、切れ目のない移動手段の確保及び整備(移動するために必要な情報の確保及び情報環境の整備を含みます。)に努めるものとします。  B移動等円滑化促進方針及び基本構想との関係    市長は、移動等円滑化促進方針(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第24条の2第1項に規定する移動等円滑化促進方針をいいます。)又は基本構想(同法第25条第1項に規定する基本構想をいいます。)を作成した場合は、これらに従ってユニバーサルデザインのまちづくりを推進しなければならないものとします。  Cその他ユニバーサルデザインのまちづくりに関する基本的な施策 (3) その他インクルーシブ社会を実現するために必要な基本的な施策  @障害者差別解消の取組   ア 市は、合理的配慮の提供(障害者が現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合において、当該障害者が障害者でない者と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、当該障害者の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいいます。以下同じ。)の支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進しなければならないものとします。   イ 合理的配慮の提供その他の障害を理由とする差別の解消に必要な事項は、制定済の「障害者配慮条例(明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例)」に基づき、促進していきます。  A災害時要配慮者の支援   ア 市は、災害時要配慮者(障害者等のうち災害時に特に配慮を要する者をいいます。以下同じ。)に対する災害発生時における支援に係る施策を推進するものとします。   イ 災害発生時に一人でも多くの災害時要配慮者の安全が確保されるためには、平常時における市民同士のつながりの重要性が認識されなければならないものとします。   ウ 市は、災害発生時において、災害時要配慮者の避難及び避難生活が適切に支援されるよう、日頃から地域住民同士が連携し、支援の方法等について必要な協力体制を確保しやすい環境づくりに努めるものとします。  Bユニバーサルツーリズムの促進   ア 市は、障害の有無及び程度、年齢、性別等にかかわらず、誰もが安心して楽しむことができる旅行を実現するための環境の整備に努めるとともに、当該旅行の普及及び促進に努めるものとします。   イ 市は、アにより行う環境整備並びに普及及び促進に当たっては、様々な分野の関係機関と連携するものとします。  Cその他インクルーシブ社会を実現するために必要な基本的な施策 6.施行期日   この条例は、2020年4月1日から施行するものとします。