第3回(仮称)あかしインクルーシブ条例検討会 全体会 議事概要 場所 明石市役所議会棟2階大会議室 日時 平成31年1月30日(水)15:30-17:30 1 開会 2 座長挨拶 冒頭、最近の障害福祉について少し話をする。日本ではかつてないことが起こっている。一つは「優生保護法」の問題。これが一人の勇気のある人の提訴を皮切りにして、一気に社会の表舞台に浮上した。近々国会の方でも超党派により新しい法律ができそうである。もう一つは「障害者の水増し雇用」。これは前代未聞の出来事である。これらの共通点は「壮大な障害者差別」ということ。優生保護法の問題であれば障害者はこの世の中で好ましくないということ。水増し雇用の問題であれば官製による障害者排除。自分の省庁では採りたくない。労働力が低下してしまうという思い込みがある。障害者権利条約ができてからもう13年になるが、いまだに障害分野は一進一退にあることを痛感させられる。 明石市でいま取り組んでいるこの条例づくりは、まさに障害者排除に正面から向かい合っている。支援団体や行政の関係部署、それだけでなく関係部署を超え全市を挙げて考えていこう、願わくば一般の市民も。国としても考えてほしいことは多々あるが、同時に基礎自治体である市から一つの方向性を見据えていこうではないか。そういった意味でとても大事な条例づくりであると思う。第1回検討会で私はこう言った。一番大事なことはこの条例が障害を持った方の暮らしぶりの向上につながっていくことであると。同時にこの条例づくりが他の自治体の励ましとなるようにと。現在は道半ばの状況である。今日も部会での議論を聞いていたが、非常に熱心に議論がされていた。これをしっかりと条例に反映させていく。完成した条例をきれいな花とするならば、今の段階は根っこの部分である。その栄養はディスカッションに尽きる。違う意見もきれいな花を咲かすための栄養源である。今回が一つの山でとても大事な会議である。よろしくお願いする。 3 各部会からの中間とりまとめ報告 (1) 心のバリアフリー部会 (副部会長) 資料1のP10、P11に基づいて、今日まで議論をしてきた概要について説明する。資料には総合相談体制の整備、福祉人材の確保、障害者に対する就労支援、インクルーシブ教育の推進と書かれているが、その前提となる意識啓発を加えた5点につき話をしたい。 どのようなことが議論されたのかということを中心にして話をする。総合相談体制の整備に関しては、課題解決のための具体的な取組として大きく2点意見が出た。 1点目は障害のある方や様々な困難を抱えている人は、相談の場があっても自分の困りごとが明確にできていない、あるいはどう表現していいかわからないという前提があるということ。それを解決するためには、現状、困りごとを持っている方がどのような困りごとを感じているのかについて、支援者と相談者が一緒に整理できるような体制づくりが必要である。そして、整理をする中で、ここに相談すればすぐに解決するのではなく、ここに相談することで自分も安心することができ、2歩3歩先を見えるための相談ができるという体制づくりをする必要があるのではないか。 2点目は病気や障害を抱えた方が家族内で発生すると、家族で抱え込んでしまい、そのニーズが外に出てこないということ。そのニーズを掘り起こし、外に出すきっかけを作る必要がある。つまり潜在化されたニーズをどのように顕在化するのかが大きなテーマである。 そして、そこからもう1点大事な課題として挙がったのが、庁内連携や関係機関連携の形についてである。現段階では、例えば認知症のケアマネ、精神や発達障害のワーカーといったように、障害種別ごとにバラバラになっていて、又は支援者間で囲い込むことなく連携ができているかという点が不十分。さきほど家族内で抱え込まずにニーズに掘り起こすことが必要だと言ったが、支援者が単独で囲い込まずに、連携しながら複合的な問題をどのように解決に向けてつながっていくことができるのかということが、解決のための具体的取組として条例案にもつながればいいのではないかという整理になった。 福祉人材の確保についてだが、障害者に対する就労支援とつながっており、順番を変えて先に就労支援の話をする。課題は2つある。1つは民間事業所への支援。もう1つは市として取り組む就労支援。 まず民間事業所は、身体障害者への就労支援が進んでいる一方で、知的障害、精神障害、発達障害といった見えにくい障害の当事者への就労支援が進んでいない現状がある。その中から見えにくい障害の当事者に対するチャレンジの機会の創出を民間事業所へ働きかけ、多様な働き方をどのように作り出すのかということがテーマとなる。そしてそこから考えるべきなのは、市として取り組む就労支援についてである。先般霞が関で障害者雇用の水増し問題が出てきたが、明石市が市役所として障害者にどのように働いてもらうのかということを、もう少し整理する必要がある。企業は利潤追求が第一だが、自治体はそうではない。市の中でどのように働いてもらうかについて、ジョブコーチ役の人と担当課が議論をしながら働き方の体制をつくっていく。民間事業所へのリーダー的役割として、見える障害の人も見えにくい障害の人も市がこんな形で雇っているということを示すことができれば、それが市内の民間事業所にも広がっていく。市にはそういったリーディングの役割があるのではないか。そこでは当然障害がある方がどのように働けるのかという働き手の側のニーズ調整だけでなく、受け入れ側の職場としてどのように働いてもらえるのかという調整も必要になってくる。任期付き雇用の多い現状では、正規雇用への切替や民間へのステップアップの支援をどのようにすることができるのかということが課題として挙がった。 そしてここが福祉人材の確保にもつながってくる。一番簡単であり、求められている答えとして報酬単価の増があるが、限界があるということも議論された。現状では潜在ヘルパーなど福祉資格を持っている市内に住んでいる人を掘り起こし、定着を支援する必要がある。そのために市ができる就労支援として2つ目としては、研修の機会を増やす。市としてスキルアップをどう応援することをどうできるかも課題である。 インクルーシブ教育の推進については、4点取組の可能性が議論された。環境及び人的な整備、切れ目のない支援、連携と相談、研修である。 環境や人的整備については、低年齢から一緒に過ごしたり、お互いに知り合ったりする環境をどのように作っていくのかが大きな課題である。例えば市内には視覚障害児や聴覚障害児を対象とした学校がないがゆえに、視覚障害児や聴覚障害児が、地域でそれ以外の子と知り合うことが少ない。お互いが知り合うような場がどのように作れるのかということが具体的な取組の案として出てきた。 切れ目のない支援については、例えば様々な障害を持っている子どもが普通学校に通うときに登校の問題など様々な支援が必要になってくる。この場合に、学校の中だけで解決できなければ、社協やまちづくり協議会など様々な地域の組織と連携することで、学校だけでなく地域の中でも解決策を考え出すことができないだろうかという提案があった。 連携と相談については、個別教育計画にどのように親と子どもの意見を反映させるのか、かつ、質の向上をどう担保するのかといったという議論があった。そしてこれは研修の話ともつながってくる。普通学校や特別支援学校の先生に研修の機会を確保することで、障害児への支援についてのスキルがアップすることが期待できる。さらに最近増えている発達障害であれば、子どもの発達障害を抱えるプロの支援体制をどのように構築していきながら学校との連携を進めて行くのかということも大きな課題だと考える。 ここまでの4点を支える土壌となるのが意識啓発の話である。これまでも意識啓発については触れてきたが、この意識啓発で大事なのは、障害のある人もない人もみんなが当事者意識を持って、障害のある人は積極的に外に出ていき、障害者が排除されないようなコミュニティをどのように作っていくのかというところが大きな論点である。具体例として、講演会やイベントはこれまでも明石市内でされてきているが、講演会においては一般市民の参加が少ないという現状がある。例えばまちづくり協議会やサロンや社協などの地域密着型の活動の中に具体的にこういった障害理解の講演を組み込むことができないか、あるいは明石市内でB−1グランプリを含む様々なイベントがあるが、イベントに当事者が出かけていって交流できる機会をどのように埋め込んでいけるのか、そういうことを通じてどんな講演会やイベントに行っても当たり前のように当事者がいるという場をどのように作っていくのかということが、今後の課題解決のための具体的取組として必要である。 (部会長) まず条例を作るときに理念条例は作ってほしくない。必ずするという条例にしてほしい。 総合相談体制については、相談する場所はあるが、実際に相談してもしっかり話を聞いて整理するといった体制にはなっていない。条例において必要な研修体制を構築するということを義務付けるぐらいの根性があるようなものにしてほしい。複合的な課題を抱えている家族は抱え込んでいるが困ってしまっている。相談体制の中でアウトリーチできる仕組みの作り方、あるいは特定の支援者が囲い込むだけでなく、必要な連携を構築するということをイメージし、やるということを明確にするような条例にする。 福祉人材の確保については、お金がかかることを自治体がやるのは大変である。せめて明石市の福祉分野で求められている研修体制をつくって、サポートする。お金はないが人は出すという姿勢。これも条例で義務付けてほしい。 就労については、明石市が民間事業所のモデルになってほしい。身体障害だけでなく、知的障害、精神障害、発達障害など多様な障害種別の就労モデルとして、ジョブコーチ等を置いて必要な業務が展開できるように、市は多様な障害種別の障害者を雇うことを義務付けるぐらいの条例にしてほしい。民間事業所については情報がオープンになっていない。障害者が興味を持った事業所を就労前に体験するプログラムを、すべての市内の事業所に義務付ける。門戸を閉ざさずに1週間ぐらいのプログラムを市と一緒に作って必ずやる。条例にやらない場合のペナルティをおくぐらいする。厳しいが経験しないとわからない。一緒になって語り合うと企業側も今まで知らなかったことがわかってくる。知的障害者であってもこんなことができるという驚きなど。食わず嫌いは許さないというぐらいの仕組みにしてほしい。 教育については、小さいころからともに学びともに育つという環境を構築してもらいたい。それを基本として、困ったときにはSOSが出せるような仕組みにしてほしい。普通学校の特別支援学級でも必ず個別の支援計画を立ててもらって、必ず本人や家族が参加して作る。その子が放課後デイを使っている場合は、放課後デイの職員も参加する。福祉と教育の本人の連携をする仕組みを義務付けるぐらいにしてほしい。 意識啓発はみんなの思いがこもっている。地域で様々な講演会があるが、障害者が参加しているのが当たり前という状態にしてほしい。イベントでも企画段階から障害者が参画して、参加しやすいような仕組みにすることを努力義務とするぐらいの根性のある条例にしてほしい。 (2) ユニバーサルデザインの街づくり部会 (部会長) 民間・公共施設、交通・観光、災害の3つのテーマに沿って5グループに分かれて意見交換をした。グループ討論は普段以上に一人一人の発言の時間も確保できるということもあって50分では足りない、もっと話したいという感じになった。グループ討論して良かったと思う。 共通した項目としては、研修や意識付けの重要性があった。 1つ目は民間・公共施設において障害者は来ないという先入観の有無によって全然違ってくるということ。障害者は来ないという先入観を払拭するような研修や意識付けが重要で、そういう研修等が進むように条例の中に盛り込むべき。 2つ目は当事者参画の重要性とそれをシステム化するということ。当事者参画はいろいろな場で必要性が謳われているが、それを仕組みとして機能させることが大事。まちづくりの分野でいうと、いろいろな建物や道路等をチェックしていくことがあるが、完成段階のチェックだけでは、できていないところの課題出しだけになってしまう。そうではなくて事前チェックや事後チェックが大切。事後チェックでは、例えば点字ブロックを必要に応じて引き直す。手直ししやすいように事前チェックがあって、完成してからの事後チェックで見つかったら手直しをしていく。一言で言えば継続したチェックと見直し。そういった当事者参画ができるようにシステム化する。 3つ目は情報の重要性。観光が関係してくるが、他の地域から来られた方が明石駅を出て明石公園や魚の棚商店街などがどこにあるかすぐにわかる表示、観光スポットに行くためのバリアフリールート、いろいろな方面へバスが走っているが、迷うことなく乗りたいバスに乗れる情報提供、点字ブロックが改良されて仕様変更されているが、当事者達に伝わっていないことがあるのできちんと当事者達に伝える情報提供などが大事。ユニバーサルツーリズム(バリアフリー観光)においては、ユニバーサルツーリズムセンターをつくってコンシェルジュを設置する。障害がある人が観光したいとき、観光地があり、宿泊所があり、移動手段や、介護が必要な場合はこういう事業所が使えるなど、その人に合わせたコンシェルジュ機能まで持っているツーリズムセンターがあれば良い。 情報発信については、改正バリアフリー法に自治体でもバリアフリーマップ作成が盛り込まれたこともあり、バリアフリーマップをどう作っていくかと話があった。そのひとつの手段として電子情報を使ったバリアフリーマップ、簡単に言うとスマホのアプリを使ったバリアフリーマップの作成がある。バリアフリー情報は常に更新されていくので、例えば小学校単位で街歩きイベントをしていく。それをやりながらみんなでバリアフリーマップを作りこんでいく。それ自体が小学生の頃からみんなで作る住民参画になれば良い。そうなれば多言語対応も可能だし、バリアフリーになっているお店の情報なども発信できる。 災害については、近年災害が続いているので改めていろいろな課題が出された。1つが要配慮者名簿の活用で、個人情報保護法の関係で十分活用されない事例がこれまでの災害地域でもあった。例えば要配慮者名簿を持っている自治会長の集まる場で、活用事例の紹介等が出来ないだろうか。 もう1つは避難行動の場合、障害を持っている人は迷ってしまうということ。例えば要配慮者名簿に載っている人達に電話やメールで避難行動を促すとか、具体的にどう避難行動を取ればいいか教えて欲しいと話が出た。避難所を運営される方が障害のある人の合理的配慮のことを理解してほしい。例えば避難所で救援物資が届いたということを校内放送の音声だけで伝えられても聴覚障害の方は分からない。設営運営も含めて情報提供、合理的配慮の共通理解が進むように条例に書いて欲しい。あと避難所に来られない人、避難所では過ごしにくい人達への支援も盛り込んで欲しい。災害時の避難は普段からの繋がりが大事で、自治会の避難訓練に障害者も参画した避難訓練を実施されるようにして欲しい。 (副部会長) 全体を一口にまとめたら、私も参加してつくった2000年型のバリアフリー法の世界、それと連動した都道府県条例の福祉のまちづくりの世界、この2つでできてきている現在のバリアフリーのレベル、これを超えるには条例であったり要綱であったり内部の規定であったりとシステム化する必要がある。ポイントになる内容を補足すると、1つは個々のバリアフリーの取り組みを決められた国、県、市の基準で強制的に進めていたのが、時代は変わってユニバーサルデザインとしてバリアフリーだけでは解決しにくい様々な問題を同時に解決していく流れがある。これらは役所だけでは手に余るのではないか、レベルの高いユニバーサルデザインを遂行するには連携してやっていかないといけない。 レベルの高いユニバーサルデザインを進めるにはいくつか必要なことがある。第1に皆さんが強調された当事者参画。非常に多様な社会ニーズや身体的条件、非常に多様な家庭や社会条件それらを反映させるには1人でも多くの人が集まって考えるような当事者参画を進めていきたい。街づくり部局、福祉部局一体になって志を持って目標を立てPDCA化することが大事。当事者参画については仕組みをつくらないとなかなかできない。明石市の飲食店すべての出入口はバリアフリー化等されることを何とか実現したい。口で言うだけでなくそれを実行する方法を考えたい。これは市民理解が必要。頑張らなければいけない。そのためには縦割りを無くし、公共民それぞれの役割を有機的に果たすことが必要。特に災害時に如実にあらわれるが、バラバラで動きが取れず、連携されないということがある。そうならないための仕組みをつくっていこう。条例や要綱がないとなかなか難しい。東北や熊本の大きな災害の現地に入っているが、共通しているのが市の福祉部局は障害者名簿で電話をかけまくっているということ。障害者団体は障害者団体名簿で電話をかけまくっている。1人に50〜100人からダブって情報が通っているということがいまだに続いている。その原因は情報公開の連携ができていないから。一方で情報公開にはいろいろな制約があることは皆さんご承知のとおり。そこのところいつまでも両方制約があるからとズルズルいくのではなく、使えるようにするにはギリギリで頑張る。普段から連携する習慣をつけないとダメ。 移動手段では明石市はコミュニティバスを持ちながら、どこに障害者がいてその方のためにコミバスにどう乗せるかという検討はない。それは明石市だけの話ではないが、移動手段問題はまた別の機会にする。 4 意見交換〜藤井座長による進行〜 5 全体会としてのとりまとめ (座長) 各部会長、副部会長から話があったが、双方の部会の報告を聞いて質問はあるか。 (心のバリアフリー部会長) 質問というより、両部会の内容が非常に重なっていると感じた。聞いていた中で、一番大きいのは意識啓発。災害時要配慮者に関する研修をこれから地域のいろいろなところでやるが、すべての障害児者を含めて参画できるか。障害児者や高齢者を含めて意識啓発をすることが必要。教育や就労支援でも本人や家族の要望に対して合理的配慮をいかにするかという問題になる。このように中身を考えると重なってくる。 (座長) 詰めていけば共通なのは当たり前だが非常に共通部分が多いということ。例えば当事者参加などもそう。共通事項を総則に掲げるといった条例の構造にも影響してくる。 (ユニバーサルデザインの街づくり部会長) 共通部分で言うと研修や意識づけもそう。これらを条例の中にどう盛り込むか。当事者参画の部分だが、システムとして確立する必要がある。担当者のやる気の有無で行われるべきものではなく、仕組みとして作っていく必要がある。当事者参画のシステム化がポイントになる。後、バリアフリーマップ作成の話でもあったが、学校教育の段階からの取組の重要性も共通である。 (ユニバーサルデザインの街づくり副部会長) 知的障害、精神障害、発達障害をお持ちの方々については、理解することから始める。話を聞くことが必要。そうなると検討会の中では心のバリアフリー部会の方がなじみやすいと言えるか。京都市は基本構想の一環として知的障害、精神障害、発達障害の方々についてバリアフリーのハンドブックの中でA4版4ページにわたり掲載している。 (心のバリアフリー副部会長) 先週、人権推進委員や民生委員などが集まる場である「あかしみんみんプロジェクト」の中で具体的に防災をテーマにして、障害や高齢や地域福祉を超えてどのようなことができるかということが議論された。わかったのが各校区レベルで災害時要配慮者について具体的に話し合う場がこれまでなかったということ。その話と当事者参画の話とバリアフリーマップを作る話がつながる。バリアフリーマップを作ることが防災マップの作成につながる。災害時にどのように支援をするのかは各学区単位で理解していると災害時要援護者をどのように支援するのかということにつながってくる。行政の大きい計画に位置付ける前に、ボトムアップ的に各校区レベルでつなげていくことに意味がある。それを後押しするような条例であればよい。 (委員) 電子版バリアフリーマップの作成の話があったが、障害がある高齢者であればスマホを持たない人も多い。しかし持たないと利用できない。スマホの購入費用や毎月の通信費用の補助、スマホの使い方の指導など行政的な支援が必要でないかと思う。 (座長) 情報はインクルーシブ化のためには非常に重要である。しかし、新しい情報機器を持てない部分をどうフォローするのか。また、新しい情報機器が使えない部分をどう保証していくのかという2つの大事な支援が含まれている意見である。 (委員) 部会では情報をどう伝えるかということが話題になった。配慮を必要とする人もさることながら一般の市民がどう関心を持ってみんなが当事者意識を持つことが課題である。情報を受け取ることが難しい人への対策案は多く出てきたが、市民の人たちがみんな当事者意識を持てるようになる仕組みは何か。多くの人に情報がいかないということが問題。みんなが当事者意識を持てるような情報提供に関するいい案はあるだろうか。 (座長) 委員はどう考えるか。 (委員) いろいろなイベントを通じて多くの人たちが気軽に障害を体験することが必要。またどのように助けたり参画したりすればいいかわからない点については、その回数を増やしていく。低年齢のうちに当事者と触れ合い、一緒に考えていく機会を増やしていくことで当時者意識が出てくると考えたが、まだまだ不十分だと考えている。 (座長) まさにこの条例でいう「インクルーシブ」とは、わけないということ。しかし現状では多くの場でわかれてしまっている。即効性がある方法はあるだろうか。 (ユニバーサルデザインの街づくり部会長) 即効薬はあまりないと思う。地道な取組をどう続けるか。教育段階からの取組というのが一番重要。災害の場面なら、自治会での避難訓練で障害者への呼びかけがなく、参加の想定がされていない場合がある。それぞれの地域で避難訓練など具体的な行動を伴う場面で障害者が参加できるようプログラムを作っていくことが大切である。 (心のバリアフリー部会長) 矛盾した話だが、小さいころから共に育ち学ぶという話と特別支援教育の中で個別支援計画をたてるという話の両面がある。例えば、イギリスでは特別支援教育はとても進んでいる。統合教育を進めているが、特別支援教育は残っている。しかし、それがあるから各地域で年1回、2回キャンプ活動をし、違う学校に行っている子どもたちも地域の住民と一緒になることができ、地域の子どもとして捉える。違う学校に行っていても地域の子どもとして参加、参画していく地域のプログラムを保障していく。その根性がないといけない。 (ユニバーサルデザインの街づくり副部会長) 名古屋城を木造で完全再現するという問題がある。現在あるエレベーターを撤去する。それに対して障害者団体から抗議がある。名古屋市長はバーチャルリアリティで楽しんでもらうとか階段歩行器で登るなど発言している。破綻した方法を平気で提案している。名古屋市民からも一緒に障害者と登りたいという意見がほとんどない。市長の悲願だし、バリアフリーを諦めようという雰囲気になっている。こういうときは経験がものをいう。インクルーシブ社会の実現はすごい理想であることを痛感した。 (委員) 2つある。ひとつは一度作ったバリアフリー設備も定期的に見直すことが重要。その場合、行政と当事者と事業者が入って議論をする。それが必要である。明石ではそういった話ができる仕組みや志があると感じる。もうひとつ明石駅を出たときまず見えるのは明石城だが、櫓があるところに車いすで上がれるかという問題。実際には文化博物館のエレベーターを使えば登れる。ただ公園にある看板や地図には登れることを書いていない。まず見える明石城に登れると思わせることが重要である。また明石市はバスが充実している。明石城や魚の棚への行き方やバスにどうやって乗れるかということが駅を出た瞬間にわかり、歩きやすいと思わせることが必要である。実際に大阪の障害者団体に呼びかけて今年のB−1に行きたい。その人たちが明石駅を出たときにわかりやすいと思ってくれるような取組を進めていってほしい。 (座長) 見直すことの必要性についての意見。条例自体も制定後も成長し続けるものにしていきたい。「インクルーシブ」はわかりやすいというのも一つのキーワードである。 (オブザーバー) 条例検討は障害分野がメインになっているが、LGBTなどマイノリティの問題、外国人の問題もある。これらはインクルーシブ条例の射程には入ってこないのか。自分は「インクルーシブ」が共生社会への一つの道標であると考えると、そういった方たちも含めて考えていく必要があるのではと思う。 (座長) 社会的に不利益を被りやすい人すべて含むのではないかという意見である。今日すべてを決めてしまうわけではないが、おそらく今の意見をおかしいと思う人はいないのではないか。 (委員) コミュニケーション支援ボードは大変いいもの。先ほど外国人についての意見があったが、外国人にとってもコミュニケーションしやすくするためのツールであると思う。英語以外の言語も入れることでより使いやすくなる。誰も排除しないということについてコミュニケーション支援ボードは非常に有効であると思う。 (座長) コミュニケーション支援ボードについて他の都道府県などの自治体の好事例やうまくいっていない事例などを聞いているか。 (委員) いろいろ各市で作成されている。そういった実例の中からいいところを参考にして作っていってもらえればよいと思う。あとアジア等に旅行するとき、現場でコミュニケーションするにあたって身振りもするが、言語変換できるアプリもある。役に立つという話を聞いた。アプリの活用も進んでいけばいいと思う。 (委員) 条例の基本的な考え方として、これまでどちらかと言えば不利益を受けないという考え方で議論してきたが、その前提として自分の力を発揮して活躍できるということがある。条例の中にそういったポジティブな内容も入っているとよいと感じた。 (座長) マイナスを埋めるだけでなく、先が見えるといったポジティブな考え方を盛り込んでもらえればという意見であった。これも反対はないと思う。 (委員) 小さいころから障害のある子どもたちと一緒に遊ぶことで当たり前という意識を持つことができる。しかし、学校に自分たち福祉の人間を利用してほしいとお願いしたところ、気持ちはあるけれど教育委員会は県管轄であり、できることは研修にとどまるという話があった。組織としての感覚は分かるが一方で兵庫県もヘルプカードの推進をしているのになぜ壁ができるのかと思う。条例の中で、打開しながら当たり前に子どもたちが過ごせるということを盛り込んで、明石がそうなることを切実に思っている。 (座長) 内輪の壁をなかなか壊せない。ここに対応しない条例は意味がないということ。 (心のバリアフリー部会長) 自分もその壁にぶつかったことがある。市町村に裁量権があるのは保育所だけ。大阪府下のある自治体で心身障害児は保護者が希望すれば保育所に入れるようにしている。幼稚園や学校や教育委員会など他との調整の問題がありなかなか自由にならない。2年間保育所で一緒に遊べば仲間になる。その後の普通学校にも安心して入れる。希望すれば受け入れるということは市町村の覚悟次第。明石市はその覚悟をもってやってほしい。 (委員) 小学4年生に車いす体験をしてもらったり、話を聞いてもらったりしている。その中で感じてもらえることも多いが、中学生や高校生も含む少し上の学年で障害者と接することができれば、もっと具体的に子供たちの中で理解が進むのではないかと思う。指導要領やカリキュラムがあるとは思うが、学年に縛られることなく上の年代にもかかわれるとよい。後、どうしても当事者としては日頃の不便なことを伝えたいが、その解消に直接関係のない部署とも意見交換することも必要である。そうすることで、それぞれの立場が分かるだけでなく、後々の改善につながる可能性もある。 (委員) 災害時要配慮者についてだが、昨年も地震が発生した。地震は事前に情報がわからない。その中で避難勧告とか避難指示とかが出ても、ほとんど避難していない。自分の場合は民生委員が安否確認してくれるが、避難しないとダメなのかと思うこともある。助けてほしいと言われても手遅れになってしまっていることもある。いかにして要配慮者が迅速に避難所に行くかが課題ではないかと考えている。 (委員) 要配慮者の避難の話が出ていたが、まち協も取組をしていて災害対策本部を立てるとか地域でこういうことをしなければならないと考えていたが、現実には大きな災害が平日に起きたら誰も6時にはいない。大きな災害が起きたときに自分を守って家族を守ることが大切。まず向こう3軒両隣と普段から仲良くして、要配慮者であることを認識して、一緒に活動して身の安全を守るやり方をしないといけないと考えている。 (座長) 災害時の支援は、日常時における避難訓練、日常時における支援のレベルと連動する。条例をどう活かすかということもポイント。 (委員) 明石には平成4年から要援護者の福祉システムがある。阪神淡路大震災のときに非常に役に立って、評価も高かった。今後は新しいものと元々あったものが一緒になって活動していくということが必要であると思う。 (委員) 用語として「インクルーシブ」が市民の皆さんにどう捉えられるか。せっかく「インクルーシブ」と銘打っているので、一般的な「インクルーシブ」の意味を打ち出したうえで明石としてその「インクルーシブ」をどう解釈するか。取りこぼしのない、誰もが安心して暮らせるといったキーワードもあった。わけない、わかりやすいなど市民の皆さまがわかりやすくイメージできるような文言が必要。他に地域連携などの用語についても明石市がどんな理念を持っているかということを伝える必要がある。 (座長) とても重要な意見。「インクルーシブ」がどのくらい市民の中に入っていくかが重要。政府の訳はもっとわかりにくい。私たちは、かつて「ノーマライゼーション」「ボランティア」「リハビリテーション」「バリアフリー」などを和語や大和言葉に訳してきたけども馴染まなかった。外来文字を全部和語にするのは難しい。その言葉自体を普及させていこう。そのためには丁寧な説明が必要である。 (ユニバーサルデザインの街づくり副部会長) 今回検討している条例の中身には入らないが、関連施策として「健康まちづくり」あるいは「動物と共生するまちづくり」がある。補助犬も含まれる。このように関連施策も洗い出せればよいと感じる。 (座長) 今日発言できなかった委員は、メモで構わないので事務局に寄せていただきたい。 最後に今日の話の中で強調しておきたいキーワードを整理しておく。 まず、もう理念はたくさんであるということ。どう実効性を持たせるのか。そういった条例にしなければならない。これは誰も異議がないはず。実効性が条例からにじみ出るようなものにしたい。 次に「当事者参加」ということを条例でどれくらい規定できるか。理念から仕組みづくりへ。企画段階でどう当事者が入っているか。いろいろなイベントに当事者がどれぐらい参加しているか。半ば義務的になるようなそういったことを含めた当事者参加。 さらに「インクルーシブ」の概念=わけないということ。わかりやすいということも必要。条例だけでなく条例に基づくあらゆる明石市の施策もわかりやすいということが大切。 言い方は変わるが市民にとってこの条例は得をする、障害分野の狭い範囲だけでなくみんなにとって明日が少し見えてくるような効力があることも必要。そして同時に条例に照らすと市役所の中で課題点や問題点がひっかかる。そういうものになるかということ。 最後にこの条例の結論が出た後にも成長を続けていくような仕組みと仕掛けを条例の中に備えておくことが必要であろう。 6 今後の検討スケジュール(資料3 事務局より説明) 7 座長総括 権利条約やSDGsなど国連で新しい基準値が出来てきた。日本でも障害者基本法や差別解消法などができてきた。これらをしっかりと裏打ちするために自治体の条例が必要になる。でも出来栄えによってはせっかくの権利条約や差別解消法が台無しになってしまう。国連の動きや国の措置を増幅させる政策は大事なこと。自分がかつて弱視でだんだん目が見えなくなっているときに駅から事務所へ歩いていると放置自転車に躓いて転んだことがある。その時は腹が立って自転車の所有者を待ってやろうと思い、30分待ったが現れなかった。その事を職場で相談すると「そんなこといくらやってもダメだ。放置自転車をした者には「わかった」となるが、一般の人達に伝えるとなると、どれくらいの人と話さなきゃいけないか。そうではなく、政策が大事で政策が先で意識が後。巡回警備員がいるか、駐輪場がつくられているか、駐輪禁止の立札があるかなど、こういったものがあることによって気付いたり、意識が変わっていったりする。これが政策。イギリスやヨーロッパで成功した考え方で、政策が先で意識が後ということ。」条例も政策が中心的なもので、いずれ発展して市民の意識も変わってくるのではないかと思う。まだ道半ばだが、委員の皆さんにおいても、これからも事務局と協力して気付く意識を持って、意見等出していって欲しい。