ジェンダーと防災に係る専門委員会議 第1回(議事要旨) 日時:2022年2月2日(水) 10:00〜12:00 場所:明石市役所本庁舎8階 806AB会議室 議事(要旨) 1.開会(事務局) 2.市長挨拶 災害はいつ何時起こるか分からない。災害は想定外への対応が大事になるが、想定内でも対応が難しい。明石市防災会議では、委員である関係機関トップの多くが男性かつ障害を持っていない。その中で議論をしているため見落としをしている観点や気づきの不足がある。それぞれの立場からの気づきや頂いたアドバイスを今後の明石市の防災施策に活かして行きたい。 3.専門委員会議設置の趣旨(事務局) 【資料1の説明】 2021年8月、庁内にジェンダー平等プロジェクトチームを立ち上げ議論を重ねてきた。 災害対応力を強化するためには、性別・年齢・障害の有無・家族形態などの多様な観点を盛り込むことが重要であり、例えば子供連れ、妊婦、障害を持つ方等は、避難に困難が伴うなど避難生活への配慮が必要となる。加えて災害時は、平常時の暮らしをめぐる課題が悪化・顕在化する側面もあり、実際に過去の災害では、避難所における女性への役割分担の固定化や性暴力の発生、男性に比べて多い災害関連死等の問題が明らかになっている。これらの背景を踏まえ、ジェンダーや障がい者の多様な視点から求められる対策について、明石市防災会議に専門委員会議を設置し検討を開始する。 議論結果は、2022年夏に改訂予定の明石市地域防災計画に反映する予定である。 4.座長互選 座長を本塚委員にお願いしたい。(全委員了承) 5.検討の進め方 【男女共同参画課長より資料3の説明】 会議は全4回。第3回の前にワークショップを予定。第4回で提言書をまとめて、2022年夏に行われる明石市防災会議で提出。施策の個別論点については引き続き検討していきたい。 【木下委員より資料4に沿って説明】 「明石市地域防災計画」の避難所の項目にジェンダー視点を取り入れた記述をしているが、方針的事項にとどまっており具体策の記述がない。例えば、災害対応での参集時、勤務体制やサポート体制、施設整備等が整っていない。また、市職員の防災意識には個人差がある。特に男性職員は、防災に「女性の目線」を入れるという意識が低く、その必要性を学ぶ機会も少ない。 (事務局より男女共同参画センター等の相互支援ネットワークについて補足あり) 【浅野委員より資料5に沿って説明】 暮らしの基盤が揺らいでおり、社会の大きな変化に合わせた発想の転換が必要。性別・立場による避難所の問題点は、トイレ・衛生の問題(女性の膀胱炎、仮設トイレが足腰悪くて使えない等)、環境の問題(着替え・授乳室が無い、育児・介護用品の不足等)等多岐に渡るが、要配慮者視点と災害視点は表裏一体と言える。要配慮者は指定避難所以外の場所に避難することが多いが、指定避難所以外の避難者に対する外部からの支援が少ない。災害時は性別役割が特に問題となり、仕事と育児の両立が平常時以上に難しくなる。避難所運営において、子育て中の職員は昼間のみ等出勤可能な時間帯で運営に入ってもらうことで職員の長期間勤務を防ぐことができるようになる。熊本市では、市長のリーダーシップで女性管理職の育成に力を入れており、庁内横断ネットワークが築かれていた。熊本地震の時は、連絡調整が必要な場面でも女性管理職のネットワークが有効となった。 【過去に被災経験のある職員(明石市DVセンター婦人相談員)からの話】 2020年4月入庁。実家は福島県。11年前の東日本大震災時、東京で非常勤の婦人相談員をしていた。当日は母子DV被害者をシェルターへ移動させているときに被災。災害時の判断に正解はなく、平常と同じことはできない。自分一人しかいない状況であれば個人の判断で物事を決めなければならず、臨機応変に対応していくしかない。 福島から東京へ避難するバスにDV加害者と被害者が乗り合わせていたが、避難所に到着するまで分からなかった。現地に到着して2人を引き離し、事なきを得た。被災経験は若者支援と女性支援という形で今の仕事につながっている。 6.議事@ジェンダー視点を取り入れた避難所運営 (木下委員)資料5のP.16の指定避難所の改善が早期にできた理由に「地域防災計画、マニュアル通りに取り組んだ」とあるが具体的にはどういうことか? (浅野委員)単に計画とマニュアルがあるだけでは動けないが、まずは書いて整備しておくという事が重要。その上で、平時からマニュアルに沿った防災訓練等を実施することが大事。九州は水害が多いけれども、マニュアルの整備がされていないことが多い。熊本地震発災後9日目に支援に行った役場では、他自治体からの応援職員も何をしたらよいか分からない状況だった。肢体不自由の女性が避難所の床に寝かされていた。授乳室や更衣室もなく、乳幼児連れや介護を抱える女性はサイズが合うおむつがなく困っていた。最初は警戒されその困りごとを中々打ち明けてもらえなかった。また、とりまとめをする人間がおらず、受け入れ側の受援計画がなかった。 (真邊委員)保健師の立場では災害時、福祉避難室や福祉避難所での要配慮者対応をする事になる。現在、市役所で働く保健師85名は全員女性で産休育休や就学前の子供を持つ職員も多く、災害時においては7割くらいの職員しか実際に動けない。この職員数で全避難所の対応は困難で対応の検討が必要。女性だから相談してもらいやすく、また保健師の立場で女性にも男性にも声掛けしやすい。マニュアルがあれば事前準備もしやすい。 (本塚座長)避難所では、初期対応から体制が整うまでタイムラグがある。まずは避難所運営マニュアルの改訂をする必要があるが、どういう項目があればいいか? (大野委員)まずは平時にマニュアルを元に訓練する必要がある。当地域では高齢者の一人暮らしが増えており、各地域で共助の取組みが必要。ちなみに女性の出番が少ないという話があったが決してそうではない。兵庫県南部地震時、女性は炊き出しや毛布・古着を集めるといった支援活動をすぐ開始した。男性はなかなか気づかない点も女性は気づきやすい傾向があるように感じる。実際民生委員は女性が多く、女性は地域を支える重要な役割を担っている。 (古川委員)学校側としては、災害が起きたらまず児童・生徒の安全を確保する方に注力し、学校に避難してくる住民のことまで考えが及んでいないのが実情。小学校では定期的に避難訓練をしているが、地域に対しては災害時に何をどうしたらいいか分からない。支援や運営には誰が来て、どんなことが起こるのか日ごろから意識する必要がある。校長やまち協の会長はどういう立ち位置でどういう動きをしたらいいのか確認をしておく必要がある。 (本塚座長)まずは何から取り組んだらいいか? (浅野委員)マニュアルは概して分厚くなりがちだが、作成する前提(考え方)を市職員・地域関係者が共通認識として持っていくことが肝要。また、ポイントのみわかる概要版が必要。在宅支援の多くは女性がやっているが、地域の顔は会長で、多くが男性。今までの防災訓練でいいのか?例えば、炊き出しを女性の仕事と固定化するのではなく男性の料理人でもいい。大阪北部地震の支援時は、男性会長と女性防災リーダー両方にアプローチした。また例えば、一部損壊の家屋確認時、男性は外観のチェックをしがちだが、逆に女性は損壊家屋の中の状況まで細かく見る傾向があったのが印象的。損害家屋の中の状況まで見ることで、気づかなかった被災者ニーズも見えてきた。 (本塚座長)学生たちが活動することの意味は? (明石南高校 高橋氏)頭に浮かぶのは南海トラフ巨大地震。あるデータでは、現在の高校生は20代のうちに何らかの大きな災害を経験するだろうと言われている。私自身以前勤務していた長田区の高校で兵庫県南部地震を経験した。役所の人も被災、死亡し、支援が来ない中では被災者同士が支えていた地域が多かった。震災2日後、勤務先の学校が被災者で埋まっていた。広域災害であればあるほどそういう状況が多くなる。生徒たちにはこういう時に自分たちで動き、何か一言でも発言できる人になってほしい。以前町内会の運営に携わったことがあるが、町内会を支える高齢者は戦後の経済成長を支えた自負がある方が多くプライドも高く、周囲の人はものが言えないことが多い。男性中心社会で生きてきた人たちはその環境に慣れ、結果的に年下の意見には耳を貸さない傾向。ただ学生世代を見ると女性が元気であり、実際当学校の防災ジュニアリーダーも女性が大半。10年後には状況も変わってくるだろう。 (浅野委員)政令市で防災リーダー育成に係わっているが、最近は女性が増えている。 (本塚座長)災害直後、我慢してしまう人たちや声を上げられない人たちがいる。今後の課題は? (真邊委員)危機的状況の中、「こんなことを言ったらわがまま?」と思い、自分でギリギリまで我慢してしまう人がいる。「要望を言ってくれることで他の人も助かるんですよ。」とこちらから声掛けして要望を聞き取ることが必要。乳幼児連れ、妊婦の方、シングルマザーの方からの声は特に聞く必要性が高い。 (大野委員)校区ではなく隣保で親しい関係性が必要。自治会の中でお互いが相談しやすい関係を構築するため地域住民のボランティアを募り活動している。 7.議事A市役所職員が安心して災害対応にあたれる環境の構築 (本塚座長)地域としては公助への期待も高い。災害時に市役所職員が安心して働けるための環境は? (総合安全対策室 任期付嘱託員) 防災担当として採用されているが、正規職員ではないため災害時の災害対応は求められていない。任期付職員は災害時にも通常業務を行う要員として考えられているが、正規職員のみで災害対応をする事にはそろそろ限界が来ている。 (男女共同参画課 事務職員) 自身は家庭に2歳の双子がおり、夫も職場に緊急参集が必要な仕事。仮に災害が発生して職場参集が求められた場合、どのように対応できるのか不安。自身は災害が起きたら市役所職員として現場対応する意識はあるので、「子供を抱える女性だから」という理由で災害対応を免除するのではなく、むしろ子供を安心して預かれる環境を整備して育児を抱える職員でも安心して災害対応にあたれる体制を整備してほしい。 (政策局 ジェンダー平等推進部長) 兵庫県南部地震時、市役所職員として週末返上で家屋調査業務にあたっていたが、精神的にも体力的にも相当張りつめていた。実際、疲労で転倒し長期入院した同僚もいた。被災者支援にあたる立場として公務員は弱音を吐かずに限界まで頑張っているのが実情。 庁内で女子職員のネットワークを作り、被災自治体の職員のために下着を送る活動をした。自治体間の応援ネットワークは必要と思う。今後の体制作りが求められている。 (本塚座長)被災地応援に行くと、被災地の市役所職員が疲弊しながら限界まで頑張っている。被災地応援は、被災者のサポートだけでなく市役所職員のサポートもあっても良いのではないか。 (本塚座長)市職員だけでなく地域と協力してみんなで避難所運営をする必要がある。そのためにはどういったことから地域で始めたらいいか?どんな課題があるか? (古川委員)周りのサポートを受けて効率的に動くためには、指示系統の確立が必須。各々がリーダーシップを発揮すると、行動が裏目に出て板挟みになることが懸念される。きちんと指示系統を把握し、役割分担をすることが重要。市役所・地域・学校・外部からの応援スタッフなど、多くの関係者が被災地にいることを想定し、指示系統・役割分担の整理が必要。また学校現場で感じるのは、困っている人こそ中々要望を打ち明けてくれないので、自分から働きかけて声をかけることの必要性。悩みを打ち明けてもらうのは、事務的な相談窓口では難しく、相談員と被災者の信頼関係が必要ではないか。 (大野委員)まち協で防災対策本部を立ち上げようとしている。職員も一住民であり被災者となる。まち協と市が連携して行きたい。 (木下委員)避難所に関わるガイドラインを作成する必要がある。それぞれに期待する事、タイムライン、自分が避難所にどう関わっていくか、目に見えるものを作って行きたい。現状のマニュアルは避難所開設までの記載しかなく、開設後の記載がない。女性の意見をしっかり取り入れて作成する必要がある。地域の中から女性に集まってもらうためには、女性防災の会などのネットワークづくりが必要。また、避難所を開いたら第三者からのチェック体制が必要だが、誰がどんな風にどうやって行うのかを考えていかないといけない。 (本塚座長)防災に限らず、まちづくりは日頃の生きやすさと暮らしが基本になる。多数決ではなく、すべての人が生きやすく活躍できるための切り口として、防災ではどういった事ができるか今後も議論したい。 8.閉会