ジェンダーと防災に係る専門委員会議 第3回(議事要旨) 日時:2022年6月1日(水) 16:00〜18:00 場所:明石市役所本庁舎8階 806会議室 議事(要旨) 1. 開会(事務局) 2. 議事1)第2回会議で出た主なご意見 【事務局より資料1の説明】 防災に関する地域との連携について 避難所は地域の拠点の場となる。全ての運営を市職員で対応するのではなく、地域の人にも何か役割を持ってもらう必要がある。行政・地域・学校の役割分担の中で相互扶助の関係ができると良い。訓練で役割固定するのではなく多くの役をやってもらうことで柔軟な対応が可能となる。発災直後、初動期間、落ち着いた段階で求められる役割は異なるため、時間軸で対応を考える必要がある。 DV被害・児童虐待の現状と災害時に求められる対応 DVや子ども虐待は災害発生時に増える傾向がある。今のコロナ禍でも同様で、子どもも親もストレスをかかえており、誰にも相談ができない場合も想定される。明石市の様々なネットワークが活用できたらよい。現状明石市の児童虐待やDV担当部局の災害時の役割が支援部に割り振らているが、効果的に動けるため見直しが必要だと思う。 3. 議事2)障害者・要配慮者の防災対策 @ 明石市における取組み状況 障害者・要配慮者の防災対策 明石市の取り組み状況 【事務局より資料2に沿って説明】 災害時の助け合いとして「自助・共助・公助」があるが、大きな災害が起こると「公助」が遅れるので、災害時は「自助・共助」がとても大切である。そのため、明石市としては、自分で避難することが難しい障害者や高齢者を登録した「避難行動要支援者名簿」を作り、日頃からの見守りのために多くの地域に渡していくこと、災害時に障害者や高齢者が避難する福祉避難所を増やしていくこととあわせて、地域や福祉の担当者が協力して、それぞれの人にどのような支援が必要か、どこに避難するかなどを考える、ひとり一人が助かるための「個別避難計画」の作成をより一層進めていきたいと考えている。 (大観校区・王子校区・藤江校区の訓練の取組み動画を視聴) A 当事者の声から見えてきた課題 当事者を交えたワークショップ等で見えてきた課題 【事務局より資料3に沿って説明】 4月25日に障害当事者を交えたワークショップを行った。参加者は32名で、障害当事者、地域関係者、学生、事務局、手話通訳者等が5グループに分かれて参加した。 ●災害が起きた!どこにどうやって逃げる? 大まかには自宅、避難所、高台と分類された。障害がある方は、そうでない方に比べて自宅での避難を選ぶ傾向が強いことが分かった。 ●避難所生活で何が困る? 避難所に行くまでの困難として、道路陥没、瓦の落下、電柱倒壊等あれば迂回路が必要であり、車椅子での移動が困難となる。聴覚障害の方は、音に気付かないため災害が起きていること自体を認識できない。そのため、地域での情報共有・伝達、サポート、事前準備が必要となる。避難所での困難としては、トイレの数・環境に対しての不安、盗難被害の心配、困りごとの相談を誰にしたらよいのか分からない、普段と違う環境でパニックになるか不安、介護食や処方薬の避難時対応が心配、子どもやペット連れだと心苦しいなどの意見があった。知的・精神障害は一見で分からない。本人の説明書のようなものや周囲からの理解があると良い。避難者同士で役割分担すれば行政側の負担が減る。携帯電話の充電切れは致命的なので、電池式充電器と予備の乾電池があれば安心である。 ●自宅で避難する時、どんなことに困る? 阪神淡路大震災を経験された方は、当時も在宅避難を選択した。盲導犬連れでは避難所に行けないという声もあった。住民同士の声かけや、聴覚障害者のことを考慮してフェースシールドや筆談ボードの準備があれば良い。在宅避難時に困ることは、トイレ、水、電気に関する内容が多くあった。体調不良時の相談先、正しい情報の入手方法に関する不安、病院や物資に関する情報が必要だと思われる。災害時に備えて日頃からできることとして、個別避難計画作成促進と各地域でのモデル的取り組みの実施をすることがある。災害が起こったときにできることとしては、避難所運営の工夫と情報提供の工夫がある。 B 今後の取り組みについて 【事務局より資料4の説明】 在宅避難者には、避難の意志があっても避難できない方と自身の判断で自宅等にとどまる方がいる。在宅避難者の把握方法としては、地域内、位置情報システム、住民基本台帳の3つある。在宅避難者が要望する情報内容を整理し、その発信手段を検討する必要があるが、視聴覚の障害者には届かないため別の発信手段が必要となる。そのためには、地域の平素からのつながりを強化したまちづくりを推進することが重要となる。 避難所運営の役割分担として、学校職員・市職員は、在宅避難者把握及び支援、福祉避難室の調整や巡回、避難者の健康状態把握、相談対応をする。コミセン職員は、避難所名簿作成及び修正を行う。避難者には、施設内の見回りをしてもらう。 2022年明石市総合防災訓練は、避難所開設訓練を行う。トイレの設置や要配慮者対策などは、内閣府男女共同参画局が作成した「災害対応力を強化する女性の視点の避難所チェックシート」を参考に実施する予定である。 (本塚座長)本日はご参加いただけなかったが、肢体不自由児者父母の会会長から意見をいただいているので紹介する。 防災において、災害弱者といわれる方たちが災害弱者にならないように前向きな議論をお願いしたい。地域の避難訓練だが、車椅子、バギー、どのような経路で移動されるか、どこが障害になるのか検証されない今の防災訓練に疑問が残る。これでは参加する意味はないように感じる。地域によっては避難所での模擬訓練、障害者施設と連携して訓練している自治体もあると聞く。地域の方に存在を知ってもらうことも必要だが、地域格差があること、地域によって訓練内容が違うこともおかしい。親が率先して参加させる努力も必要だと思うが、迷惑や負担になるか、ためらいがあり線引きが難しい。個別避難計画作成が3年前から始まっていると聞いたが初耳だった。災害対策基本法の一部改訂で努力義務になったことを知った。今回、福祉避難所へ多くの施設が登録されたことに感謝したい。災害時にはスムーズな開設と避難を希望する。災害対策は多くの分野を踏まえて議論されることも必要不可欠。よい意見が交わされることを期待する。 (本塚座長)まずは障害当事者の方々から思いや、疑問、課題を話していただきたい。 (山下委員)視覚障害者の観点から、ワークショップの中での1箇所(資料3のP11盲導犬連れなので避難所に行けない)を訂正してほしい。明石市では盲導犬の啓発はかなりされている。店でも断られたことはない。災害時、我々はできないことから考えてしまう。明石市の人口は65歳以上が約3分の1。若者を何らかの形で任意登録して、発信力がある若者にSNSで発信してほしい。災害時、まずは自分ができることを考えることが必要である。大きなコミュニティでは難しいが、自助、公助、近所を大切にし、まずは自分たちの存在を知ってもらい、小さなコミュニティを今後も大切にしたい。 (増田委員)身体障害があり大久保小学校区の自治会役員をしている。自治会役員に障害当事者は殆どいない。坂もあり、校区が広いので小学校まで避難することが難しい。個別避難計画作成は、明石川の近くに住んでいる方だけでなく、人口の多いところから実施してほしい。災害時に名簿がどのように役立つのか、自治会によっては高齢者しかいないので助け合いが難しい。スクールガードを9年近くやっている。顔見知りの小学生が増えて、積極的に自治会活動に参加してくれている。その親達も一緒に参加してくれるなどよい循環が生まれており、今後も続けていきたい。 (四方委員)災害時要支援者名簿は基本的に療育A判定が対象だが、理解や状況によって異なるため柔軟な対応をお願いしたい。明石市で個別避難計画作成を進めている。障害の程度は人により様々であり、避難所に行った時のサポートは身近な障害支援者でないと難しいため、避難所生活はハードルが高い。赤ちゃんの声でパニックをおこす子もいるなど、個別の状況の把握がなかなか難しい。東日本大震災時は、避難所に行かないと物資がもらえない状況だったが今後は在宅避難者の支援をお願いしたい。阪神淡路大震災時、朝から夜まで外で働いていたため地域コミュニティに関われなかった。積極的に自分から関わっていくことが大事。作業所と地域のコミュニティが関わるなどの関係を築く必要がある。知的障害者は防災訓練に積極的に参加することが難しいが、経験は必ず生きているのでできるだけ参加してほしい。 (岸田委員)聴覚障害者は、日常生活の中で工夫すればなんとか自分で生活ができる。災害時に情報が取れないと非常に困るが、自分の力で情報を取ることが難しい。今はインターネットがあるので、情報把握の方法として情報発信アプリが開発されたら、情報収集の一つのツールとして、行政側も被災者側も助かるのではと思った。しかし、高齢者にはなかなか難しい。2〜3年前、地域の防災訓練に夫が初めて参加した。最初はお客さんとしてポツンと座っているだけだった。客としてではなく自分にも手伝えることがあるのではないかと気づき、ダンボールベッドを地域の人に教えてもらいながら作った。障害があるから遠慮するのではなく、それぞれにできることがあるので今後も積極的に参加したい。地域の人に存在を知ってもらうことは大事だと思う。 (横山委員)精神障害者は、特性として災害時にパニックを起こすことが懸念される。精神障害にも種類がいろいろあるが、引きこもり、身内がいない、発達障害など、いざというときに助けてほしいと言えず、災害時に助けてもらえない懸念がある。民生委員の方には日ごろから精神障害の特性を知ってもらいたい。小学生向けの啓発が大切で、地域との関わり合いがとても大事になってくる。体験型の避難訓練を自分たちで経験することが大事。災害が起きた場合、薬の確保、病院とのつながり、訪問看護師との連携を考えてほしい。災害時は水が大事だが、水を浄化するような装置があれば役に立つのではと思う。デジタルに不慣れな人もいるのでアナログ対応も必要だと思う。精神障害者の特性上、団体生活である避難所生活は難しいと思う。 (本塚座長)当事者の困りごと、要望、課題をいただいた。共助として地域ではどんな助け合いができるか。地域として、若者としてできること、またどんな連携ができるか。 (大野委員)共助の体制はすでに取り組んでいる。住民の要望としてあった防災対策を最優先課題として自治会単位で取り組んでいるが、校区全体としてできることは殆どない。今崎野地区をモデル地区として月1回集まり、共助の体制づくりを考えている。コミュニティ、顔も見える関係をどう作っていくか、自治会で見守り隊を全住民に募集したところ現在27名で行っている。お互いが助け、助け合う関係により細かく自治会を区切って月1回の見守りを実施している。高齢者は、足腰が弱ったというよりも認知が進んでいることが今一番心配である。先月は気づけなかったが、今月は様子がおかしいという事に報告会で気づく。認知が進むとお互いに助け合えないため、積極的に地域活動に参加してもらうなどして認知にブレーキをかけたい。先月のワークショップに参加して、参加学生たちが地域に愛着を持っているのを実感した。高齢者の要支援者を見つけることも大事だが、世話をしてくれる若者を見つけるのも大切。近所、自治会を中心としながら、校区まち協はそれを下支えして市に要望を働きかける役割も担う。 (本塚座長)熱い思いも一緒に伝わった。最近、「すべての人に出番がある」という言葉を知った。お互いを尊重しすぎるとお互いのためにならないことがある。災害時にもそれぞれの出番があり、助ける人ではなく、助けてくれる人を見つける必要がある。 (堀委員)高校生ができることには、小中学生や高校生に対して、災害時にどのように逃げるか、避難所運営でできることは何かなど知識を身につけてもらうことがある。南海トラフ大地震は、私たちがもう少し大人になったときに起こる可能性が高い。その時の避難所運営は現在の小学生が担うことになる。前回の会議の中にあったが、知識としてだけでなくゲームなどでこういうことがあったなと知ってもらうことも大事。今後は、実際に障害者に会って話を聞くことで防災ゲームの見直しをしたい。 (和田委員)私にできることは、自治会活動や防災訓練に積極的に参加することがある。また、できる範囲でけが人の手当、こどもや高齢者の相手や用具の運搬もできる。 (本塚座長)運搬という意味では、昨年の夏に和歌山市で水道管が破裂して断水した。自身も被災した和歌山大学の学生が高齢者宅に水を届けた。一緒に活動することで会話が生まれてお互いを分かりあえた。対話の重要性を感じた。 (浅野委員)地区によって取り組みの優先順位が違ってもいい。津波、洪水、土砂災害、火災などの災害直後に緊急に避難が必要な地区は、個別避難計画作成が最優先となる。災害リスクの低い地域では、ライフライン停止時の避難生活をどう支えるかを積極的に議論する必要がある。まずは地区のデータの共有が必要。私が関わっている自治体では地区カルテを作成していて、従来はハード対策が多かったが、人口動態、要介護者の認定数、避難行動要支援者の数、名簿記載同意者数などを各校区で出している。人数が具体的に分かると議論がしやすい。地域のリーダーたちとの情報共有によって、社会資源、福祉事業所など様々な資源の情報が共有できる。災害時に時間軸で起こる問題はだいたい分かるので、時系列が頭に入っていれば議論が進みやすい。また、訓練の底上げが必要だがみんな忙しい。私が提案するのはオリンピック方式で、大きな訓練は4年に1回でも良いと思う。1年目のターゲットは子育て世帯、2年目は障害者に先生になってもらい福祉メインで、3年目か4年目で大きな訓練を行うなどでもよい。そのためには、自治体内部や、障害者団体との連携も重要となる。障害当事者の避難訓練に関しては、いきなりの顔合わせでは急に対応できない。事情が分かって訓練につきあってくれる障害当事者を団体から地域へ紹介することも必要だと思う。 (真邊委員)時間軸の話が出たが、フェーズによって避難所生活で必要な状況やニーズは変わってくる。その中で保健師はどう活動していくか。ロードマップでは、災害直後のフェーズ0ではみんなが必死でそれぞれがやれることをやっていく。色んな資源や支援が入っていくのはフェーズ1となる。過去の災害時、救える命を医療に繋げなかった教訓がある。保健師として避難所での巡回や相談、救護所の設置、医療の整備をする中で、避難所の中にいる要支援者をどう見つけて行くかという課題がある。医療が必要な避難者を早くキャッチすることが重要になる。医療や心のケア、DMAT、保健医療の活動チームは全国から派遣される組織であるため、情報の共有が大事である。1つ提案があり、個別避難計画作成が進んでいるが、避難するにあたってどこに避難するか、避難するまでの情報に加え、どこの病院がかかりつけか、どんな薬を飲んでいるか避難するにあたって重要な情報が入っている。避難所生活の中でも必要な情報となるため、避難行動の後も活用していけたらよい。 (本塚座長)避難所の話の補足で、色んな人が参画協働して避難所運営をしていく。学校の立場でできることはどんなことがあるか、またどういった交流ができるか。障害当事者と理解を深めるために実施した取組みがあれば教えて欲しい。 (古川委員)増田委員のスクールガードの話を聞き、学校側はお世話になるばかりだと思ったがそうではないことが分かった。保護者世代が交流し、小さなコミュニティを作ることで災害時に助け合うことができることが確信できた。学校としては、教員は日頃からインクルーシブ教育を推進する立場にある。障害がある子もない子も一緒に学校生活を送っていく。障害のある子にとって居心地がいい環境を作るということは、誰にとっても居心地のいい環境となる。避難所設営にあたってそういう精神を発揮してほしい。 学校も変わろうとしていて、コミュニティスクールが推進されようとしている。学校の教育課程を地域の方にも開いて、地域の方にも子どもの育成に参加してもらう。子どもだけではなく地域の方々が学校を核として絆を深めコミュニティを作っていくことで、避難所を設営した時に円滑な避難所運営ができると思う。先日、防災訓練で引き渡し訓練を行った。保護者だけでなく、今後は地域の方々ともかかわって絆を深めていきたい。 (本塚座長)インクルーシブは重要で明石市も進めているところである。明石だからできることをみんなで前向きに、全員が当事者となって参加して話を始めることが重要。 (山下委員)災害はいつどこで起こるか分からない。近年、線状降水帯の発生など突発的な災害が多く発生している。訓練が大事だということが分かったが実践的な体験が必要だと思ったので、現実のシミュレーションに従ってやっていきたい。 (木下委員)防災訓練は展示的に行われていることが多い。実際的で、本当に必要な訓練を行う必要があるため、ぜひ取り組むべき。また地域を牽引していく人材も大切で、ハブ的な役割が果たせる人を発掘し、育てていくことが重要。地域の中心にいて様々な情報を収集・発信し、人と人、組織と組織を結び付けていくことができるような人、今ここにおられる大野委員のようなタイプの人材を育てていくべき。 その意味では、今回参加してくれている明石南高校の3人の生徒さんは将来きっとハブの役割を果たしてくれると思う。会議での結論も大事だが、人の育成やネットワーク作りも、とても大事である。 (本塚座長)この会議で何かを決めるというよりも、前に進んでいくことが重要である。考えたうえですぐに行動できる人材がいる。提言に含めるような内容を提言前から動けることが重要となる。 4. 閉会