明石市 ジェンダーと防災に係る専門委員会第1回資料 ジェンダーの視点がなぜ防災対策に不可欠なのか? 報告者 浅野 幸子 減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員 〜はじめに〜 社会の大きな変化に合わせた発想の転換の必要性 ・急激な少子高齢化,単身世帯の増加,景気の低迷と非正規雇用者の増加、格差拡大など,人々の暮らしの基盤である家族と仕事をめぐる環境変化、安定性の揺らぎ ・ こうした変化が災害時の被害の拡大・復興の遅延要因に ・我が国の防災政策が確立した時期とは全く異なる社会状況が出現し、災害の影響がより一層大きく複雑になっている ・ 単純な“災害の合理的制御”の発想の限界 ・人の多様性、暮らしの多様性に焦点を当てた防災対策を ・その際、ジェンダーの視点が不可欠 1.災害の被害は人と社会を平等には襲わない データ 阪神・淡路大震災 男女別・年齢階層別死者数(関連死含む) 兵庫県内の死者数 6,402人(男性 2,713人、女性 3,680人、不明9人) (備考) 1.兵庫県「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について」(平成17年)より作成。 2.性別不詳,年齢不詳は除く。 データ 東日本大震災では・・・高齢者が多く亡くなった 上図:東日本大震災の被災地では、被災前の人口の約三分の一を60歳以上の高齢者が占めていましたが、犠牲になった人々をみると約三分の二までが、高齢者でした。 警察庁「東北地方太平洋沖地震による死者の死因等について【平成23年3月11日から平成24年3月11日】」、平成22年度国勢調査より 下図:障害者の死亡率は、健常者の2倍以上でした。障害者手帳を持っていた人は、被災三県で全人口の4%いましたが、犠牲者全体では、9%を占めています。 中日新聞(2013年4月22日)被災前人口(平成22年9月1日)に占める障害者手帳保有者の比率と、震災の犠牲者に占める比率 データ 東日本大震災では… 障害者の死亡率は健常者の2倍以上 災害時には、人は誰も同じように被災するわけではありません。東日本大震災では、特に多く犠牲となったのが、高齢者と障害者でした。 大規模災害時には、高齢者や障害者が犠牲になりやすいという傾向がありますが、年齢と障害の有無以外にも被災の違いをもたらす要素はいくつかあり、性別は重要な要素の一つです。 データ 東日本大震災で・・・ 避難行動における男女差 内閣府『平成24年版男女共同参画白書』より 避難訓練の企画・運営の中枢に、女性や子どもが入っていますか? 平日の昼間、地域にいるのは誰でしょう?主に高齢者と女性ですね。そして地域にいる女性たちも、幼い子供を抱えていたり、高齢者や障害を持った人をケアしたり、パート勤めをしたりしながら生活しているケースも多いはずです。東日本大震災は、平日午後2時代に発生しましたが、避難行動の実際を見てみると、男性よりも女性の方が、複数人でまとまって逃げた人の割合が高くなっています。これは女性の方が、より多く自宅や地元地域に近い場所にいたためでしょう。勤めていても地元で働いているため、自宅に戻ってすぐに家族や近所の人に声をかけて逃げるという行動をとったというお話はたくさん聞かれます。また、避難行動の支援が必要な要援護者(避難行動要支援者)の状態を良くわかっているのも、家族内でケアを担っていることが多い女性たちです。したがって、女性たちが避難計画や訓練の企画・運営の中枢に入っていないと、避難の効果が高まらないということです。また、もしも東日本大震災が、完全に春休みに入った時期に起こっていたら、もっと多くの子どもたちが犠牲になったことでしょう。あの日亡くなった学童期の子どもたちの多くは、風邪をひいて自宅にいたり、親や親族が車で迎えに来て逃げたケースです。子どもが登下校中や長期休みの場合でも自分で取るべき判断できるよう、子どもたちも主役として地域の防災訓練に参加してもらう必要があるのです。 昼間と夜間で人口構成が異なる〜ある市の場合〜 ある市のある地域における昼夜間の人口構成の違いから、特に昼間に女性が多い地域では、防災訓練に女性が参画することが不可欠であることを伝えます。 ポイント ・夜間と昼間で人口構成が異なる地域がある。 ・このような地域では、昼間に災害が起こったときには、より女性の力が重要になる。 ・防災訓練の参加が男性に偏っていると問題。女性が参画する必要がある。 備考:総務省統計局「平成22年国勢調査」及び株式会社日 統計センター「推計昼間人口データ2010」より内閣府男女共同参画局が作成 内閣府男女共同参画局資料 避難形態別の困難 大規模災害ではどの立場になるかわからない/避難所や地域で対応に差が出た 災害が発生すると、次のような状態になる。「自宅を失う・ 自宅は残るが当分住めない・余震が恐い・移動ができない・避難所では生活できない・情報が欲しい」 《直後から2日3日》 指定避難所(小中高校等)では 多少の食料備蓄があっても、当日か翌日にはすぐ尽きる。持ち寄る。 未指定避難所(集会所 ・事業所等)や車中泊・他 (ガレージ、テント等)では互いに食料や水を持ち寄って過ごす。 自宅、親族・知人宅では備蓄した食料や水のほか、あるもので過ごす(ボランティアの支援も限界がある)。 要配慮者(高齢者・障害者・難病者・妊産婦・乳幼児・持病のある人・アレルギーの人・外国人等)はすべての避難形態にいる。 これらの避難形態を行き来する人(余震、ライフラインの復旧状況、食事のみ、昼夜間の使い分け等)もいる。 《その後》               指定避難所(小中高校等)に避難している人はプライバシー無し、不衛生。周囲に気遣いし、避難所に居られない。 車中泊 ・他(ガレージ、テント等)や自宅、親族・知人宅に避難している人は食料・生活物資や情報が近隣でなかなか手に入らない。 避難所を出れば、支援が減る。避難所にもらいに行くが断られるかも。 指定避難所や未指定避難所に避難している人は、公的な食料・生活物資の支援、被災者支援関連情報を得やすいが、車中泊 ・他(ガレージ、テント等)や自宅、親族・知人宅に避難している人は、得にくい。 ※劣悪な条件の避難所環境・在宅避難生活で亡くなる人も発生⇒関連死 データ 東日本大震災で・・・関連死の約半数が避難生活での疲労 避難所などにおける生活の肉体的・精神的疲労 福島県59%(433件) 岩手県・宮城県39%(205件) 復興庁『東日本大震災における震災関連死に関する報告』(平成24年8月21日、復興庁ほか『東日本大震災における災害関連死の死者数』(平成26年12月26日) 平成24年3月31日 現在で1,632人(1都9県)が震災関連死と認定。 死者数が多い市町村と原発事故により避難指示が出された市町村の1,263人の、原因(複数)を特定。 福島県 761人 宮城県 636人 岩手県 193人 令和2年9月30日時点 3,767人認定 これまでの大災害時には、「災害関連死」が発生してきました。「災害関連死」とは、災害による家屋の倒壊・火災・水難といった、災害の直接的な被害による死ではなく、避難生活の疲労や環境の悪化などによって、病気にかかったり、持病が悪化したりするなどして死亡することを指します。 東日本大震災では、平成25年度末までに、2688人の方が「関連死」(自殺を含む)で犠牲になりました。 グラフの示す通り、震災から1年で時期を区切ってみると、亡くなった理由として一番多いのが、「避難所における生活の肉体的・精神的疲労」であり、全体の約半数を占めています。また、「関連死」犠牲者の大半が高齢者です。 データ 熊本地震で・・・ 関連死は直接死の4倍以上 ・直接死は50人(家屋倒壊等) ・発災約2週間目の2016年4月27日の段階で16人が関連死と発表。 ・関連死認定は200人以上に上る。 ・被災のショック・過酷な避難生活等 熊本地震の災害関連死の死因内訳により、血圧上昇、脱水による血液 2017(朝日新聞、年8月末現在、熊本県まとめ9月26日、WEB)粘度の上昇で心不全、心筋梗塞、脳卒中等増加。 ・避難所のホコリの多い環境は呼吸器系疾患を悪化させる。 <ケース> ・71歳の女性が避難所に避難した翌朝、トイレで倒れて亡くなる(南阿蘇村)。 ・車中泊をしていた51歳の女性が、発災から4日目に、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)で死亡(熊本市)。 ・妊娠5か月の女性が車中泊10日目で体調悪化、病院に運ばれるも、帝王切開で取り上げるが新生児が死亡(体内で細菌感染していた模様)。 ・約4カ月、車中泊と複数の避難所を転々とした90代男性が、腎不全が悪化、発災から約半年後に死亡(南阿蘇村)。 2.ジェンダー視点等から見た災害時の困難・影響の違い 課題の領域@ 生活環境 課題の主な内容  プライバシーや衛生問題/乳幼児・障害者・認知症など集団生活になじまない人と家族の困難 など 課題の領域A 救援物資 課題の主な内容  育児・介護や女性用品の不足傾向/在宅避難者が物資を受け取れないなど 課題の領域B 心身の健康 課題の主な内容  女性の不眠・傾向/便秘/生理時の困難/膀胱炎や婦人科系の疾患/妊産婦・褥婦の医療支援不足 など 課題の領域C 安全面 課題の主な内容  DV・性暴力・ハラスメント(被災者・支援者ともに,加害者・被害者のいずれにもなり得る) 課題の領域D性別役割が強化される傾向 課題の主な内容  家事・育児・介護の重労働化/受け入れ親族の世話/避難所での炊き出しや掃除など無償労働の女性への過度な負担/避難所運営などの負担の少数の男性への集中 など 課題の領域E経済生活 課題の主な内容  女性が解雇されやすい/保育・介護支援が不十分な状況下での仕事探し/支援制度等の世帯主主義による義援金・支援金・補償金などの使途へのアクセスの欠如(特にDV被害女性)/ひとり親家庭(特に母子家庭)の貧困化 など 課題の領域F意思決定に関る男女比等の偏り 課題の主な内容  避難所運営をはじめ地域の共助・支援活動・復興協議の場などの責任者や委員の大半が男性/復興アンケートは世帯主宛て/結果,女性や若者・障害者・性的マイノリティ・外国人等の多様な意志が反映されにくい など 課題の領域G復興期の家庭・地域の人間関係 課題の主な内容  男性の孤立・引きこもり・不慣れな介護の問題/DV・児童虐待/住宅再建等をめぐる家族関係/復興後のコミュニティのあり方など 性別による社会的役割期待・慣習に関連した問題の傾向 《ケア役割の過重負担》 (例) ライフラインの停止、保育園・学校が休みの状態での、家族の衛生・栄養状態の維持、自宅の片づけ 《その他》 (例) ・家族ケアと職場復帰の板挟み・被災者支援、復旧において、避難所運営組織や企業の意思決定に関われない ・母子家庭の避難生活上、経済上の問題(保育、就労、貧困) 《組織責任・家庭の経済的責任のプレッシャー》 ・(男女問わずだが)救援関係者は休息を取るのが難しい ・東日本大震災に関連した自殺者は男性が多い 引きこもり、孤立・孤独死など ・阪神大震災では、仮設住宅の孤独死は男性約7割 ただし、上記はあくまで男女別の傾向であり、こうした傾向を参考としながら、全ての人・世帯の支援を考える必要がある 例:共働き家庭の保育問題、父子家庭・男性の介護者の負担、責任ある立場に就く女性の困難、家族ケアのため職場復帰が遅れることでの解雇・降格、暴力防止など データ 防災体制における女性の参画度合い 項目 都道府県防災会議の委員に占める女性割合 東日本大震災時※1 2010年4.1%(12都道府県で女性委員0) 2020年※2 16.1% 目標(2020年)※3 30% 項目 市区町村防災会議の委員に占める女性割合 東日本大震災時※1 政令市のみ2010年6.0% ※4(2018年15.0%) 2020年※2 8.8% 目標(2020年) 10% 早期に30%目指す 項目(参考)自治会長に占める女性の割合 東日本大震災時※1 2020年4.1% 2020年※2 6.1% 目標(2020年)10% ※1地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(平成22年度) ※2地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和2年度) ※3第4次男女共同参画基本計画 ※4東日本大震災以前は市町村全体を対象とした数値は公開されていなかったため政令市の数値を掲載 データ 防災会議の女性委員比率別、避難所運営に関する指針等に記述がある市区町村の比率 全国調査(2017) ゼロ(279) 10%台(294) プライバシーの確保  ゼロ(279)43.4% 10%台(294)72.1% 情報の伝達、コミュニケーションの確保 ゼロ(279)40.1% 10%台(294)67.7% バリアフリー・ユニバーサル対応 ゼロ(279)15.8% 10%台(294)33.0% 福祉避難所の設置 ゼロ(279)39.8% 10%台(294)54.1% こころのケア対策 ゼロ(279)22.9% 10%台(294)40.1% 健康や栄養状態についての指導や助言 ゼロ(279)25.8% 10%台(294)41.5% 糖尿病、人工透析等の患者への支援 ゼロ(279)6.5% 10%台(294)19.7% 妊産婦、乳幼児を持つ女性への支援 ゼロ(279)28.3% 10%台(294)51.4% 避難所内での託児所の設置 ゼロ(279)5.7% 10%台(294)6.8% 自宅で病人等の世話をしている家族への支援 ゼロ(279)6.8% 10%台(294)10.9% 女性への暴力やセクハラ防止のための対策 ゼロ(279)11.8% 10%台(294)28.9% 避難所運営への女性の参画の推進 ゼロ(279)19% 10%台(294)44.2% ペット対策 ゼロ(279)30.8% 10%台(294)63.3% LGBTへの配慮 ゼロ(279)0.7% 10%台(294)3.4% その他 ゼロ(279)9.3% 10%台(294)7.5% 無回答 ゼロ(279)34.8% 10%台(294)15.6% データ 災害対策本部・復興体制における女性の参画度合い 熊本地震調査(2017) 項目 災害対策本部職員に占める女性割合【】内は管理職中の割合 東日本大震災 国・関連機関4.6%【4.9%】※1 地方公共団体27.9%【5.5%】 熊本地震※3 県5.9% 市町村4.3%(但し本部会議の構成員中) 項目 復興計画の策定や推進のための委員会等に占める女性委員の割合 東日本大震災 市町村平均14.6%※2 参考:青森県25.0%、岩手県10.5%、宮城県8.3%、福島県10.0% 熊本地震※3 市町村平均13.0%(但し回答した7市町村のうち) ※1内閣府「男女共同参画の視点による震災対応状況調査」(2012年) ※2内閣府「東日本大震災からの復興に関する男女共同参画の取組状況調査」(2013年) ※3内閣府「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査」(2017年) データ熊本地震で・・・ 指定避難所の改善が比較的早期にできた理由 指定避難所において育児・介護・女性のニーズへの対応が比較的早期にできた理由 1週間以内、半月以内、1ヶ月以内を選択した市町村30団体のうち。複数選択 「地域防災計画、防災マニュアル等に規定してある通り取り組んだ」 46.7% 「避難住民のニーズなどを聞き取って取り組んだ」 46.7% 「自治体内部の職員の議論で意見があり取り組んだ」 33.3% 「支援物資等や避難所の集約などにより取り組めるようになった」 26.7% 「国・県などから情報提供されたチェックリストに基づいて取り組んだ」 16.7% 「応援自治体職員のサポートや指摘を受けて取り組んだ」 16.7% 「民間支援団体のサポートや指摘を受けて取り組んだ」 16.7% 「課題の優先順位として高かったから」 10.0% (2017) 「対応に要する費用のねん出の目途が立ったため取り組んだ」 3.3% 熊本地震調査(2017) 東日本大震災の被災地の復興の現状 「「支援者調査」の後継調査(調査中)を通してみた復興の現状、および復興指標と復興政策への示唆」 (池田恵子、2020) <指摘された復興期の課題> @人口の流失 A若年層の人口流出(特に女性) B家族の分離 C小学校の統廃合・児童数の減少 D生活困窮・賃金格差・働く場・雇用 E生活インフラ(買い物・交通など)・子育ての場 F帰還・自主避難・住宅・移転先の関係 Gかさ上げや防潮堤の建設など HDV/性暴力/離婚、安全 I心身の健康 J高齢者の孤立・孤独 K若年男女の問題 (虐待・引きこもり・不登校、居場所、性被害、依存症など) L子どもの状態 ※科研費基盤(A)19H00613 2019 年度報告書ジェンダーWG(指標グループ) http://www.waseda.jp/ prj-sustain/Kaken201923/Kaken2019/2019_13%20ikeda.pdf 東日本大震災の復興政策への男女共同参画視点の導入状況 ◆「東日本大震災復興基本法」(2011年6月) ・(基本理念)被災地域の住民の意向が尊重され、あわせて女性、子ども、障害者等を含めた多様な国民の意見が反映されるべきこと。 ◆「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」復興構想会議(2011 年7月)(抜粋) ・これまで地域に居場所を見出せなかった若者や、孤立しがちな高齢者・障害者、声を上げにくかった女性などが、震災を契機に地域づくりに主体的に参加することが重要。とりわけ、男女共同参画の視点は忘れられてはならない。 ◆「東日本大震災からの復興の基本方針」(2011 年7月) ・基本的考え方:復興のあらゆる場・組織に女性の参画を促進する。 施策@ 災害に強い地域づくり ⇒ 高齢者、子ども、女性、障害者等に配慮したまちづくり 施策A 地域における暮らしの再生 ⇒ 女性の悩み相談、若者・女性・高齢者・障害者を含む雇用機会、女性の起業活動 施策B 地域経済活動の再生(農業) ⇒ 高齢者・女性の参画 実際の復興事業の内容と比較すると・・・ データ 熊本地震 復興政策におけるジェンダー視点の欠如 熊本地震調査(2017) ・復興計画の中に男女共同参画の視点を反映させるための工夫(計画を策定した・策定中の13市町村中) 「計画策定委員に女性を積極的に任命した」 3団体 25.0% 「パブリックコメントを活用し多様な意見を反映した」5団体 41.7% 「住民アンケートをとった」2団体 16.7% 「男女共同参画の視点から支援を行う団体等にヒアリングした」1団体 8.3% 「特に無い」 6団体 50.0% ・生活再建上の課題(39市町村中) 「平常時以上に仕事と育児等の両立が困難になる」16団体(43.2%) 「生活再建支援関係者に男女共同参画の視点を持つ者が少い」11団体( 29.7%) 「災害復興住宅の整備など住まいづくりへの女性の意見反映」8団体(21.6%) ・課題に対応するため取り組んでいること(39市町村中) 「仕事を探す際の子どもの一時預かり支援」1団体 「臨時的な雇用創出を講じる際には女性の雇用機会も確保している」2団体 「生活再建支援に携わるものへの男女共同参画視点を入れた研修」なし など 3.防災政策へのジェンダー視点の導入のために 大規模災害の発生後、適切な対策が取られないと時間経過とともに被害が拡大する。 被害の幅をできるだけ低減するためにジェンダーの視点は不可欠。 大規模災害の発生後、直接の人的被害(死亡・大けが)。 救命・救助力が不足し、建物やライフラインの被害が発生する。 避難生活者の増大。避難生活上の過酷さと犠牲者の発生(高齢者・障害はもちろん女性や子どもも) 生活再建の遅れ・貧困・暴力・人口減少・税収減少などにつながる。 私たちの暮らす地域の防災体制は、ともかく「直接の人的被害」を防ぐということが第一に考えられています。それだけでも、大変な作業です。 しかし、発災直後の避難行動まで、という短期間の視野で考えるのではなく、避難生活が長引いた時の生活環境の整備という長期的な視点を持つことが必要です。 「避難生活者が増大」する中で、「避難生活上の過酷さ」によって、高齢者や障害者、乳幼児など、特に困難を経験する人が出てきてしまい、関連死による「犠牲者も発生する」ことを重視する必要があります。 ジェンダーは脆弱性を形づくる根本要因の一つだからこそ災害対策に不可欠! ジェンダーは、経済的・社会的・物理的・環境的な脆弱性の要因を形作っている。 女性は、これらすべての条件にまたがる脆弱性の増大のため、災害に対してより脆弱な状況に置かれる。経済、人種、その他の不平等を伴ったこれらの横断的要因が、災害が起きた場合に異なるグループの女性たちを異なったリスク下に置いてしまう、災害時の社会条件を生み出す。 (Enarson 1998:UNISDR・UNDP・IUCN 2009) →物理的な環境、社会的文化的側面、性別役割の問題、教育格差、公的情報のターゲット、健康格差、経済面、環境面 など (UNISDR・UNDP・IUCN 2009) ※結果として、子どもや高齢者の状態、家計、地域などへ影響は広がる 男女共同参画と防災・復興 : 国内外の動向 国際動向 1990年「国連防災の10年」(1999年まで) 1994年 第1回国連防災世界会議 「横浜戦略」採択 防災に女性や社会的に不利な集団の参加を奨励 災害とジェンダー研究領域の確立 2000年 第23回国連特別総会(北京+5) 勧告:防災・減災・復興・人道支援にジェンダー視点導入 2002年 第46回国連女性の地位委員会 ジェンダーの不平等は災害脆弱性の根本原因の一つ 2005年 第49回国連女性の地位委員会 災害後の救援・復興にジェンダー視点を統合する決議 2005年 第2回国連防災世界会議(神戸市)「兵庫行動枠組」採択 あらゆる災害リスク管理の政策・計画の決定過程にジェンダー視点を →災害リスク削減におけるジェンダー主流化政策 国内動向 1995年 阪神・淡路大震災 被災地で課題がある程度顕在化するも、社会的な認識には至らず。それでも地元女性団体が発信を継続。 1999年 男女共同参画社会基本法 2000年 第一次男女共同参画基本計画 2001年 DV防止法 2004年 新潟県中越地震 内閣府男女共同参画局が初めて職員を被災地に派遣、課題の把握や避難所の改善に携わる地元の女性団体も発信を継続 2005年 防災基本計画の改定 男女双方の視点・女性の参画 2005年 第二次男女共同参画基本計画 防災・復興の項目が初めて入る 2008年全国知事会による自治体への調査 全国の自治体における、ジェンダー視点の防災対策の取り組み状況がはじめて明らかに Making Disaster Risk Reduction Gender-Sensitive Policy and Practical Guidelines (UNISDR 2009) 男女共同参画と防災・復興:国内外の動向(つづき) 国際動向 2012年 第56回国連女性の地位委員会  自然災害におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント 2015年 第3回国連防災世界会議(仙台市)「仙台防災枠組」 すべての政策や実践に、ジェンダー、年齢、障がいや文化の観点を含め、女性と若者のリーダーシップを高める(3章「原則」) 女性と防災テーマ館 仙台市内。国内外の関係者が集まり、課題の共有と交流をおこない、エンパワメントの場となる 国内動向 2011年 東日本大震災 2011年 復興基本法 女性・子ども・障害者等多様な意見の反映 2012年 日本女性会議2012(仙台市) 2013年 「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」(旧版) 2013年 避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(内閣府防災)女性視点入る 国連防災世界会議が行われた2015年3月、東日本大震災から5年目の2016年3月と、女性と防災に関する新聞記事などの情報が増え、認識が広まっていたところへ、 2016年4月に熊本地震が発生したために、直後から被災地の女性の困難に焦点が当たる。 2016年 避難所運営ガイドライン(内閣府防災) 全編にわたり女性のリーダーシップの重要性が盛り込まれる 多様な取り組みの進展、相次ぐ風水害の発生と課題 2020年 「災害対応力を強化する女性の視点男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」(新版)を反映させて 2020年 第五次男女共同参画基本計画を作成 災害リスク削減におけるジェンダー主流化により災害に強く持続可能な社会をつくる (作成 池田恵子) 『男女共同参画の視点で実践する災害対策 テキスト 災害とジェンダー<基礎編>』 産業、雇用、都市、福祉、通信交通、教育などにおいて災害リスクの削減とジェンダーの平等を実現できれば災害に強く、持続可能な社会になる 防災基本計画(国)のジェンダー・多様性に関する記述(抜粋) 1編 総則第3章 防災をめぐる社会構造の変化と対応 〔2020年5月改定版より〕 ・人口の偏在,少子高齢化,グローバリゼーション,情報通信技術の発達等に伴い我が国の社会情勢は大きく変化しつつある。国,公共機関及び地方公共団体は,社会情勢の変化に伴う災害脆弱性の高まりについて十分配慮しつつ防災対策を推進するものとする。 ・地域における生活者の多様な視点を反映した防災対策の実施により地域の防災力向上を図るため、地方防災会議の委員への任命など、防災に関する政策・方針決定過程及び防災の現場における女性や高齢者・障害者などの参画を拡大し、男女共同参画その他の多様な視点を取り入れた防災体制を確立する。 第2章 防災の基本理念及び施策の概要 ・被災者のニーズに柔軟かつ機敏に対応するとともに、高齢者・障害者その他の特に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に配慮するなど、被災者の年齢・性別・障害の有無といった被災者の事情から生じる多様なニーズに適切に対応する。 防災基本計画(国)の多様性に関する記述(抜粋) 第2編 各災害に共通する対策編 〔2020年5月改定版より〕 第1章 災害予防 ・防災知識の普及・訓練を実施する際、高齢者・障害者・外国人・乳幼児・妊産婦等の要配慮者の多様なニーズへの十分な配慮 ・地域における要配慮者を支援する体制の整備 ・被災時の男女のニーズの違い等男女双方の視点に十分配慮 ・自主防災組織の育成・強化、研修の実施等による防災リーダーの育成,多様な世代が参加できるような環境の整備等と、女性の参画の促進。 ・男女共同参画担当部局が災害対応について庁内及び避難所等における連絡調整を行い、男女共同参画センターが地域における防災活動の推進拠点となるようにする。 ・そのため、平常時及び災害時における男女共同参画担当部局及び男女共同参画センターの役割について、防災担当部局と男女共同参画担当部局が連携して明確化しておく。 防災基本計画(国)の多様性に関する記述(抜粋) 第2章 災害応急対策 〔2020年5月改定版より〕 ・市町村は、指定避難所の運営における女性の参画を推進するとともに、男女のニーズの違い等男女双方の視点等に配慮する。 ・女性専用の物干し場、更衣室、授乳室の設置や生理用品・女性用下着の女性による配布、巡回警備や防犯ブザーの配布等による安全性の確保など、女性や子育て家庭のニーズに配慮した指定避難所の運営管理に努める。 ・被災者の生活の維持のため必要な食料・飲料水・燃料・毛布等の生活必需品等を効率的に調達・確保し、ニーズに応じて供給・分配を行う。その際、要配慮者等のニーズや、男女のニーズの違いに配慮する 第3章 災害復旧・復興 ・被災地の復旧・復興に当たっては,あらゆる場・組織に女性の参画を促進する。併せて,障害者・高齢者等の要配慮者の参画を促進する。 ・防災まちづくりを実施する際,住民の理解を求めるよう努める、併せて、障害者・高齢者・女性等の意見が反映されるよう環境整備する。 避難所運営ガイドライン (項目) 内閣府、平成28年4月 T 運営体制の確立(平時) (1)平時から実施すべき業務 1.避難所運営体制の確立 2.避難所の指定 3.初動の具体的な事前想定 4.受援体制の確立 5.帰宅困難者・在宅避難者対策 U 避難所の運営(発災後) (1) 基幹業務 6.避難所の運営サイクルの確立 7.情報の取得・管理・共有 8.食料・物資管理 9.トイレの確保・管理 (2) 健康管理 10.衛生的な環境の維持 11.避難者の健康管理 12.寝床の改善 (3) よりよい環境 13.衣類 14.入浴 V ニーズへの対応 (1) 要配慮 15.配慮が必要な方への対応 16.女性・子供への配慮 (2) 安全安心 17.防犯対策 18.ペットへの対応 W 避難所の解消 19.避難所の解消に向けて ※全編に女性の視点、女性のリーダーシップの発揮の必要性が盛り込まれた http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/ 男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン ・男女共同参画、女性の視点からの災害対応を進める際に参照できるよう、基本的な考え方、平時の備え、初動段階、避難生活、復旧・復興の各段階において取り組むべき事項を示したものです。 ・行政向けとはなっていますが、地域防災活動、災害ボランティア活動も対象と考えてください。 第1部 7つの基本方針 1.平時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基礎となる 2.女性は「主体的な担い手」である 3.災害から受ける影響やニーズの男女の違いに配慮する 4.男女の人権を尊重して安全・安心を確保する 5.女性の視点から必要な民間との連携・協働体制を構築する 6.男女共同参画担当部局・男女共同参画センターの役割を位置付ける 7.要配慮者への対応においても女性のニーズに配慮する 第3部 便利帳 災害発生時に現場で活用できるチェックリストやポスター等を掲載 *備蓄チェックシート *避難所チェックシート *応急仮設住宅 ・復興住宅チェックシート *男女別統計チェックシート *授乳アセスメントシート *避難所の見守り・相談ポスター *女性の視点からの空間配置図の例 *お役立ち情報一覧 男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン 第2部 段階ごとに取り組むべき事項 ◆平時の備え 1.職員の体制と研修 2.地方防災会議 3.地域防災計画の作成・修正 (※地域防災計画における男女共同参画部局・男女共同参画センターの役割の明記) 4.避難所運営マニュアルの作成・改定 5.※応援・受援体制(女性職員の積極的な受入れ/派遣) 6.物資の備蓄・調達・配布 7.自主防災組織 8.※災害に強いまちづくりへの女性の参画 9.様々な場面で災害に対応する女性の発掘 10.女性団体を始めとする市民団体等との連携 11.防災知識の普及、訓練 12.※マイ・タイムラインの活用促進 13.男女別データの収集・分析 ◆初動段階 14.避難誘導 15.災害対策本部 (※災害対策本部の下に男女共同参画担当部局や男女共同参画センターの職員を配置することの重要性を強調) 16.災害対応に携わる女性職員等への支援 17.帰宅困難者への対応 18.女性に対する暴力の防止・安全確保 ◆避難生活 19.避難所の開設・運営管理 20.避難所の環境整備 21.※要配慮者支援における女性のニーズへの対応 22.※在宅避難・車中泊避難対策 23.※災害関連死の予防 24.物資の供給 25.保健衛生・※栄養管理 26.避難所の生活環境の改善 27.子供や若年女性への支援 28.町村域等を超えた避難生活 ◆復旧・復興 29.復興対策本部 30.復興計画の作成・改定 31.住まいづくり(応急仮設住宅・復興住宅の提供と運営) 32.復興まちづくり 33.保健・健康増進 34.生活再建のための生業や就労の回復 35.生活再建のための心のケア (※男女共同参画センターが行う相談業務の活用) ※は、新版での新たな項目、下線部は独立した項目として整理し直されたもの 男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン 第2部のポイント 1 段階  平時の備え 取組が必要な課題・場面 ・防災担当職員の男女比を、庁内全体の比率に ・訓練・研修等は防災・危機管理担当部局と男女共同参画担当部局・センターが連携する ・地方防災会議の女性委員の割合を高める ・地域防災計画に本ガイドラインの事項を反映する、男女共同参画担当部局・センターの役割を明記する ・避難所運営マニュアル、応援・受援計画、物資の備蓄・配布に女性、男女共同参画の視点を入れる ・自主防災組織のリーダーに複数の女性を ・男女別データの収集・分析を行い、平常時から災害対応、復旧復興期に至るまで生かす など 2 段階 初動段階 取組が必要な課題・場面 ・災害対策本部の構成員に女性職員を配置する ・支援者の子育て・介護支援 ・女性職員が安全・安心に支援活動が行えるようにする ・妊産婦・乳幼児の安全を確保できる避難誘導と介助 ・暴力の予防(女性専用スペース、巡回など) 男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン 第2部のポイント 3 段階 避難生活 取組が必要な課題・場面 ・開設時から授乳室、男女別のトイレ・物干し場・更衣室 ・自主運営の責任者には、女性が少なくとも3割 ・女性用品の配布は女性が担い、配布の工夫を ・在宅避難者・車中泊避難者支援を (要配慮者もいることを前提に) ・衛生管理、感染症対策、栄養管理 ・妊産婦・母子への目配り(乳児栄養の国際基準) ・子供・若年女性の相談支援、安全確保 ・広域避難者支援 4 段階 復旧・復興 取組が必要な課題・場面 ・復興対策本部の構成員に女性を配置 ・復興計画作成へ女性も参画、男女共同参画の視点(女性委員の増員、女性だけ対象のワークショップなど) ・公営住宅の計画・設計で女性への女性の参画 ・女性の雇用機会を確保する ・生活再建における心のケア (男女共同参画部局・センターの相談機能の活用) <男女共同参画センターを意思決定過程に組み込む> 東京都豊島区は、女性の視点は全ての分野に求められるものとの認識から、発言できる者を意思決定段階に配置する必要があるとして、防災会議委員(平常時)と災害対策本部本部員(有事)に新たに男女平等推進センター所長のポストを追加しました。 ケース 熊本地震で・・・ 女性管理職も多様な形で力を発揮 ・熊本市では市長のリーダーシップにより地震前から女性管理職の育成に力を入れていた。 ・そうした状況から、女性管理職たちは、庁内横断のネットワークを築いていた。 ・個々の女性管理職が、自分の部署において柔軟かつ現実に即した感覚による、効果的な対応例、リーダーシップを発揮する例が見られた。 ・他部署との連絡調整が必要な場合に、女性管理職のネットワークが有効となった例が見られた ・家族のケア役割のたいへんさや、お風呂にもまともに入れない過酷な環境、安全性の配慮など、女性職員どうしだからこそ、共感をもって工夫したりささえあえた側面もあった。 「平成28年熊本地震熊本市女性職員50の証言」は男女問わず、災害対応に関する学習素材としても有効 https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=23768&class_set_id=2&class_id=221 5応援・受援体制 【受援】 チェックボックス 応援職員に対し、必要に応じて被災者支援における女性の視点の重要性を伝えるよう努める。 チェックボックス 受援体制の整備において、女性の応援職員にとって安全で安心できる受入環境を定めるよう努め、女性の応援職員の円滑な受入れに努める。 【応援】 チェックボックス 受援側の要請を踏まえつつ、女性の職員や、男女共同参画担当部局の職員を積極的に派遣するよう努める。 チェックボックス 本ガイドラインに盛り込まれた事項が明記された派遣者用対応マニュアルの整備に努める。 チェックボックス トップマネジメントの支援にかかわる可能性がある職員を始め、応援に派遣する職員に対し、派遣前に、本ガイドラインに盛り込まれた事項を説明する。 チェックボックス 派遣される女性職員にとって安全・安心できる派遣環境を整える。 熊本地震調査(2017) 災害派遣に関する説明会の実施、派遣者用のマニュアル等の作成状況: ・災害派遣者用マニュアル有り 都道府県 → 回答 39団体中25団体(64.1%) 市区町村 → 回答 820団体中97団体(11.8%) ・説明会実施もしくはマニュアル作成を行った団体のうち、男女共同参画の視点の事項あり  都道府県 → 回答 35団体中 6団体(17.1%) 市区町村 → 回答208団体中 13団体( 6.3%) 仙台市が熊本地震の応援職員派遣の際に配布した資料 仙台市より、被災地で避難所運営に当たられる皆さまへ 安心・安全な避難所運営のために 〜多様な意見を取り入れた避難所運営のお願い〜 この度の地震による被害に、心よりお見舞い申し上げます。 さて避難所では、様々な方が共に生活を行うことになります。 東日本大震災の際は、避難所での共同生活が長期化するにつれて、様々な問題が起こりました。 「赤ちゃんの泣き声が迷惑と白い目で見られる…。」 「間仕切りがなく、安心して着替えや授乳ができるプライベートな場所がない…。」 「仮設トイレが男女別になっていなくて、入りづらい…。」 「夜に一人でトイレに行くのは怖いので、水分を取らないようにしよう…。」 「生理用品を男性が配っていると、もらいにくい…。」 「乾パンやビスケットは、硬くて食べることができない…。」 「女性専用の物干し場がないので、恥ずかしくて下着を干せない…。」 でも、みんなが我慢しているから言えない…。こんな事態にならないために! ぜひ、運営に女性の意見を取り入れて下さい! 高齢者や障害者、乳幼児など災害時に支援を要する方のケアは、日頃は女性が担っている場合が多いものです。 つまり、女性は避難生活上の様々なニーズに気が付きやすい! 避難所の運営に、女性も参加できるように取り計らっていただき、様々な意見を取り入れることで、だれもが安心して暮らせる避難所となるよう、ご配慮をお願いいたします。 一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。 平成28年4月 仙台市 男女共同参画課 10 女性団体を始めとする市民団体等との連携 チェックボックス 男女共同参画センターに集まるネットワークを活用するなどし、女性団体と連携・協働する。 チェックボックス 社会福祉協議会、NPO、ボランティア、企業、学生等の多様な主体と協働する。 <支援主体の多様化> 災害時は、被災地内外の地方公共団体以外に、社会福祉協議会、NPO、ボランティア等の多様な主体が、初動段階から災害対応にあたるようになりました※。 災害直後は慢性的なマンパワー不足にあります。 地方公共団体だけでなく、多様な主体の人材、情報、ネットワークを活用し、各主体の強みを活用した速やかな災害対応が求められます。 特に、男女共同参画担当部局や男女共同参画センターには、平常時から様々な女性支援に関わる団体とのネットワークが構築されていること、災害時に女性団体等から支援の申し出が来ることもあることから、災害時に必要な連携・協働について平常時から体制を構築しておくことが有用です。 ※内閣府防災担当「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック」(平成30 年4 月) データ 熊本地震で・・・育児、介護、女性等の多様なニーズの把握方法 避難所の担当職員や避難所の運営体制に女性を配置した 被災市町村(35団体) 48.6% 応援市区町村(328団体) 15.2% 応援都道府県(31団体)22.6% ※保育士、介護士、看護師、保険師、など専門職員を配置した 被災市町村(35団体) 60.0% 応援市区町村(328団体) 39.0% 応援都道府県(31団体)41.9% 担当を決め、ニーズの聞き取りを行った 被災市町村(35団体) 20.0% 応援市区町村(328団体)11.9 % 応援都道府県(31団体)25.8% ※ニーズ調査を行う際に、同性が調査を行うように配慮した 被災市町村(35団体) 11.4% 応援市区町村(328団体)5.5 % 応援都道府県(31団体)6.5% ノウハウを有する派遣職員を担当とするようにした 被災市町村(35団体) 2.9% 応援市区町村(328団体)8.8 % 応援都道府県(31団体)16.1% 地元をよく知る市町村職員を担当とするようにした 被災市町村(35団体) 28.6% ※育児、介護、女性等の分野で活動する民間団体と連携した 被災市町村(35団体)11.4 % 地域の女性リーダーに協力してもらった 被災市町村(35団体) 5.7% その他 被災市町村(35団体) 14.3% 応援市区町村(328団体) 18.0% 応援都道府県(31団体)38.7% 特に行っていない 被災市町村(35団体)20.0 % 応援市区町村(328団体) 40.9% 応援都道府県(31団体)19.4% ※無回答を除いて集計。一部被災自治体のみ聞いた質問項目がある。 25 保健衛生・栄養管理 チェックボックス 妊産婦や乳幼児にとって衛生的な環境を確保するための対策を行う。 チェックボックス 妊婦や母子専用の休養スペースを確保するなど、生活面の配慮を行う。 チェックボックス 妊産婦や母子への相談対応を行う。同性の支援者でないと相談しにくい悩みもあることから、女性の相談員を配置する。保健師や助産師等と連携する。 チェックボックス 保健師、助産師、管理栄養士、歯科衛生士等の専門職や、女性団体、子育て支援団体、母乳育児支援団体等と連携して、妊産婦や母子をはじめとする女性のニーズに対応する。 <妊産婦や母子へ目配りを> 要配慮者は、早い段階で女性専用、家族専用、母子専用、介護・介助スペースへ移動させて、栄養の確保と健康維持のための配慮を行う必要があります。 定期的に本人や家族等の支援者へ声かけをし、必要に応じて医療、保健、福祉等の専門家と連携し、個々の状況に応じた対応を行う必要があります。 乳児に対しては、母乳育児の場合、感染症のリスクを減らす観点から、母乳をあげている場合、それを継続するための支援が重要です。 母親がリラックスして母乳が継続して与えられる環境を整え、必要な水分・食料や休息を取るための支援が必要です。 粉ミルクや液体ミルクを使用する際は、平常時の状況や本人の希望について聞き取り(アセスメント)を行い、必要な乳児に衛生的な環境で提供することができるよう、必要な機材や情報をセットで提供する必要があります。→第3 部 授乳アセスメントチェックシート 育児中の女性は平常時から、「子供のため」として我慢したり、周囲からそうした価値観を押しつけられることも少なくありませんが、災害時は、そうした状況がより強まる傾向にあります。災害時には、より一層、母親の意思を尊重し、不安や悩みをはき出しやすい環境を作っていくことで、母親の回復に繋がり、最も脆弱である乳児の支援に繋げていくことが重要です。 災害時は適切な授乳支援が求められる 《母乳の方》 可能な限り、母乳育児を継続できるように支援 ミルクは一律には配布しない!母乳の人には特に気を付けて 《ミルクの方》 ミルクが必要量、継続して届くように支援 ・安心できる環境 ・適切な情報 ・適切な支援によって、 ミルクの全体の必要量が下がり、感染症が予防されると、 ミルク等が必要な赤ちゃんに行きわたり、結果として感染症のリスクも下がる。 《母乳の方》 ・不安な環境 ・不適切な情報 ・不適切な支援によって、 ミルクの全体の必要量が上がり、感染症のリスクが拡大する。 《ミルクの方》 災害時に資源が限られる ・不安な環境 ・不適切な情報 ・不適切な支援によって、 ミルクが必要な赤ちゃんに行きわたらなくなる。感染症のリスクが拡大する 被害の拡大! 避難所チェックシート 確認日:_________  確認者:____________ @ 避難所のスペース プライバシー チェックボックス 授乳室(椅子、授乳用の枕やクッション、おむつ替えスペース)がある チェックボックス 男女別更衣室、男女別休養スペースがある チェックボックス 男女別更衣室、男女別休養スペースが離れた場所にある チェックボックス 間仕切り・パーティションがあり、その高さや大きさなどが、プライバシーの保護の観点から、十分である 要配慮者 チェックボックス 適切な通路が確保され、段差が解消されている チェックボックス 乳幼児のいる家庭用エリアがある チェックボックス 介護・介助が必要な人のためのエリアがある チェックボックス 単身女性や女性のみの世帯用エリアがある チェックボックス 女性専用スペース(女性用品の配置・女性相談)がある チェックボックス キッズスペース(子供たちの遊び場・勉強・情報提供)や保育エリアがある チェックボックス 足腰が悪い人のための寝具(段ボールベッド等)が提供されている トイレ チェックボックス 安全で行きやすい場所に設置されている チェックボックス 女性トイレと男性トイレは離れた場所にある チェックボックス 女性トイレ:女性用品・防犯ブザーの配置、仮設トイレは女性用を多め チェックボックス 男性トイレ:尿取りパット等の配置 チェックボックス 多目的トイレが設置されている チェックボックス 洋式トイレが設置されている チェックボックス 屋外トイレは暗がりにならない場所に設置されている チェックボックス トイレの個室内、トイレまでの経路に夜間照明が設置されている チェックボックス トイレに錠がある 入浴施設 チェックボックス 安全で可能な限りバリアフリーに対応した入浴施設がある チェックボックス 男女問わず一人で(又は付き添いを受けながら)入浴できる施設がある 安全 チェックボックス 避難所の危険箇所や死角となる場所の把握・立入制限がされている チェックボックス 間仕切り・パーティションが高い場合は個室の定期確認がされている その他 チェックボックス 各部屋に部屋札(ピクトグラム、やさしい日本語)が設置されている チェックボックス 掲示板による情報提供(インターネットが使用できない人・情報が届きにくい人向け)がされている A 避難所の運営体制・運営ルール 運営体制 チェックボックス 管理責任者には男女両方を配置している チェックボックス 自治的な運営組織の役員に女性が3割以上参画している チェックボックス 運営組織に、多様な立場の代表が参画している ・介護・介助が必要な人・障害者・乳幼児がいる家庭の人・PTA・中学生・高校生・外国人(居住者が多い場合) 運営ルール チェックボックス 避難者による食事作り・片付け、清掃等の負担が、特定の性別や立場の人に偏っていない(男女を問わずできる人で分担) チェックボックス 女性用品(生理用品、下着等)は女性担当者が配布を行っている ニーズ把握 チェックボックス 避難者から要望や困りごとを受けられる仕組み体制がある(トイレ等への意見箱の設置) チェックボックス 女性や子育て・介護中の家庭の要望や困りごとを積極的に聞き取り、運営に反映させている チェックボックス 避難者名簿を作成し情報管理が徹底されている( 氏名、年齢、性別、健康状態、保育や介護を要する状況、避難場所、在宅・車中泊、外部からの問い合わせに対する情報の開示/非開示の可否) チェックボックス 相談体制の整備、専門職と連携したメンタルケア・健康相談が実施されている B 暴力防止・安全の確保 チェックボックス 配偶者からの暴力の被害者等の避難者名簿の作成と情報管理が徹底されている チェックボックス 男女一緒に行う防犯体制がある チェックボックス 就寝場所や女性専用スペース等へ巡回警備が行われている チェックボックス 避難所の校庭など、敷地内に車中泊がいる場合は、車中泊エリアの巡回警備が行われている チェックボックス 暴力を許さない環境づくりが整備されている(啓発ポスターの掲示、相談カードの設置、照明の増設、女性や子供は2人以上で行動する、移動する際はまわりの人に声を掛け合う) チェックボックス 防犯ブザーやホイッスルが配布されている →不安や悩み、女性に対する暴力等に対する相談窓口、男性相談窓口が周知されている C 衛生環境・感染症予防 チェックボックス 感染症予防(手洗い・消毒・マスク)対策がされている チェックボックス トイレの使用方法・汚物の処理などの衛生対策が行われている チェックボックス トイレ専用の履物(スリッパ等)が使用されている チェックボックス ゴミの収集や分別が徹底されている チェックボックス 炊き出しを行う際は、調理の手順の表示や食品の管理、主要なアレルゲンの有無の表示、残食の廃棄が徹底されている →育児用ミルク(粉ミルク/ 液体ミルク)を配布する際は、授乳アセスメントシートに基づき説明した後に配布している D 在宅避難者を含む指定避難所以外の避難者への支援 チェックボックス 在宅避難者を含む指定避難所以外の避難者情報も登録されている(特に要配慮者の把握のため) チェックボックス 在宅避難者を含む指定避難所以外の避難者への食料・物資配布の時間や場所がある チェックボックス 在宅避難者を含む指定避難所以外の避難者への支援情報等を伝達する体制が整っている チェックボックス 在宅避難者を含む指定避難所以外の避難者のニーズを把握する体制がある 出典:「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」第3部(内閣府、2020年) 共助力/受援力の質を高める地域防災領域への多様な参画 地域において、男女共同参画と多様性の視点から、多くの人が防災体制を担うことは、外部からの支援を有効に活用するためにも必要です。災害時には、乳幼児、妊産婦、障害者、外国人の支援など、専門的な知識と技能を持った民間の団体が支援を行います。 そんな時に、男性だけ、一部の人だけ、行政ばかりに依存した被災者対応を行っている地域では、多様なニーズ・女性のニーズがわからず、多様な専門支援団体に関する知識も少ないために、また一手に責任を負っているために疲弊してしまっており、これら外部からの有効な支援を十分に活用しきれません。被災者も、本当は当事者の事がわかる専門団体に支援に入ってほしいと思っていても、なかなか言い出しにくいことになってしまいがちです。その結果、多様な人々のニーズに対処することができません。 しかし、避難所や被災した地区の代表者に、多様な人々、つまり、子育て世代から介護世代までの男女、PTA、民生委員、婦人会など地域の組織を担っている人や、障害を持つ当事者やその支援を行っている人が入っていれば、多様なニーズを満たす支援の受け入れが必要かどうか判断しやすく、専門団体とつながっている当事者の元には、専門的な支援の情報も早く届きます。避難者も相談をしやすいので、ニーズの把握もしやすいです。 地域の防災体制は、多様な人が担うことが重要です。 4.地域防災領域への定着に向けて 時間軸による課題の変化・広がりの共有は重要 災害発生前後(緊急避難行動含む) 平日昼間は女性・高齢者・子どもが主体にならざるを得ない傾向 高齢者・障害者・乳幼児連れの人の避難行動が困難 高齢者・障害者等の地域の避難支援・安否確認体制を作るのが難しい 避難生活初期・中長期(在宅避難など含む) 避難所の立ち上げ人員の不足、初動の質の確保の問題 衛生・栄養・育児・介護・女性等のニーズへの対応の遅れ。女性が共助/支援の意思決定の場に参画しづらい(⇒共助活動と外部支援受け入れの際の質の低下) 子どもの遊び場・居場所・学習スペースがない 子ども・高齢者等の預け先がなく、片付けや仕事ができない 在宅避難者に情報・食料等が届かない ライフラインの被害・復旧の遅れとそれによる家族ケア全般の困難(一部の地域だけ復旧が遅れることも) 生活再建期 住民が離散して復興まちづくりの協議に十分集まれない。女性、マイノリティの意見の反映が難しいなど 子どもの遊び場・居場所・学習スペースがない 子ども・高齢者等の預け先がなく、片付けや仕事ができない 孤立・引きこもり(男性が特にハイリスク) 住宅の修理が長期にわたりできない すべての時間軸において 障害者、ひとり親世帯、外国人、経済的に厳しい人々など見落とされがちな人たちの多様な困難 地域防災組織のマネジメントのこれからは? トップダウンではなく、ネットワーク型かつ、チームマネジメントが地域防災活動にはふさわしいのでは?(特に平常時および避難生活期) 表面的にはトップダウン型のように見せつつ内実はネットワーク型。必要に応じてトップダウンの顔を見せるイメージ。フラットな関係、多様性の尊重、情報の共有、協議 ・地域組織はリーダーが倒れた場合に人材の代替・補給が難しい。 ・少数のリーダーが掌握するトップダウン体制、画一的な指示系統や訓練だと、臨機応変な対応が難しい。 ・一部の性・世代にリーダー層が偏っていると、災害時の諸課題に十分対応できない(特に避難生活期)。他の世代や性の人がかかわりにくい 事例 男女共同参画型の組織作り・運営(自主防災組織) 高知県安芸市 【取組の概要】 ・高知県安芸市の自主防災組織である川向防災会では、子育てや介護などで忙しい女性も含めて、住民が活動に無理なく参加できる仕組みづくりを実施。 【取組のポイント】 《役員に女性枠を設置》 ・会長1名 副会長(男女各1名):会長の任期は最長2年。  班長1名 副班長(男女各1名):班長、副班長は原則として名簿順。  という体制にし、名簿順にすることで、男女問わず誰でも役員になるような仕組みに。また、役員の数自体を増やすことにより、女性が役員になりやすい仕組みを構築。 ・名簿は、もともと世帯主(男性)を記載していたが、徐々に個人単位での記載に変更。 ⇒これらは規約に明記し、組織全体の明確なルールに。 《短時間でだれでも参加しやすい会議》 ・子育てや介護などで忙しい女性も含めて、無理なく参加できるよう、会議の時間は短時間に限定し、参加しやすい時間帯に開催。 《性別での役割分担をしない》 ・災害時はどんなメンバーで活動するかわからないため、防災訓練の際、原則として役割を男女で分けず、事務局がランダムで役割を割り当て。 平成28年3月現在 内閣府男女共同参画局作成の研修教材より 【参考】 『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査報告書』 http://risetogetherjp.org/?p=4879(全文ダウンロード可) (2013 年 12 月発行、2015 年 1 月修正) 【調査主体】東日本大震災女性支援ネットワーク調査チーム ゆのまえ知子(NPO法人フォトボイス・プロジェクト共同代表) 吉浜美恵子(ミシガン大学社会福祉大学院教授) 柘植あづみ(明治学院大学社会学部教授) 正井禮子(NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ代表理事) 池田恵子(静岡大学教育学部教授) ※ 東日本大震災女性支援ネットワークは2014年3月で解散しました。お問い合わせは減災と男女共同参画 研修推進センターへ 【参考】自治体の男女共同参画の視点からみた防災・復興対策と災害対応の実態に関する量的調査一覧 1:「防災分野における男女共同参画の推進に関する調査結果」 2:「女性・地域住民からみた防災施策の在り方に関する調査」 (2008、全国知事会男女共同参画特別委員会) http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/3/3bousai080326.PDF http://www.nga.gr.jp/データ/activity/saigaitaisaku/h20/1395984797158.html 3:「男女共同参画の視点による震災対応状況調査」 (2012、内閣府男女共同参画局) https://www.gender.go.jp/policy/saigai/jyoukyou.html 4:「東日本大震災からの復興に関する男女共同参画の取組状況調査」 (2013、内閣府男女共同参画局) https://www.gender.go.jp/policy/saigai/report2012FY/index.html 5:「男女共同参画の視点による平成28年熊本地震対応状況調査」 (2017、内閣府男女共同参画局) https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/kumamoto_h28_research.html 6:『防災・減災と男女共同参画:2019年2月1日第30回社研シンポの要旨;「2017年度女性・地域住民からみた防災」』 (2019、大沢真理編、東京大学社会科学研究所発行) https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/publishments/issrs/issrs/pdf/issrs_66_01.pdf?fbclid=IwAR3nWb0Xx9ozsGr2LhdkPuH5EkB7NUYzKpqG0djNoEMerkTRJCvWyJFRQos