第7回(仮称)あかしインクルーシブ条例検討会 議事概要                       場所 オンライン(ZOOM)                       日時 2021年10月22日(金)15:00〜17:00 1 開会 2 市長挨拶  まずは皆さんに感謝している。今日は7回目で最終の検討会となるが、第1回は今から3年以上前の2018年8月に開催された。3年をかけて今日がある。来年3月にはいよいよ条例を議会に提案する段階になってきた。この間、コロナ含め様々な支障もあったが、力添えいただいたことにまずは感謝したい。  加えて、検討会だけでなく、明石のインクルーシブに向けてのまちづくりにそれぞれの分野・テーマで様々な形で力添えいただいたこと、明石市を代表してお礼を言いたい。「いつまでもすべてのひとにやさしいまちをみんなで」というSDGsのまちづくりを進めてきた中で、年を重ねるごとにインクルーシブの理念も多くの方たちから評価されるようになってきたと感じている。例えば、実際に明石に住んでいる人たちが住みやすいと実感する声も高まり、直近の調査では91.2%の市民が明石市は住みやすいと評価している。もっとも市長としては、残り8.8%の住みやすいと答えてもらえていない市民にこそしっかり光を当てて、より多くの市民に住みやすいと感じてもらえるようなまちづくりをしていきたいと強く思っている。また、最近は明石市が選ばれるまちとして評価されるようになってきた。明石駅前でユニバーサル対応を行っている「あかし案内所」が全国で初めて、また県下で唯一「心のバリアフリー施設」として観光庁から認定を受けるなど、明石市の取組が国からも評価されている。さらに兵庫県民が選ぶ「住みたいまちランキング」では、明石市が急上昇し、西宮市、神戸市中央区に次ぐ第3位となった。加えて3日前に発表された「全国戻りたい街ランキング」では、明石市が全国1位となった。明石市に住んだ経験がある方が、明石市に戻りたいと思うようになってきたことは、市長として嬉しい限りである。  自分としては、単に「人口が増えれば良い」、「お金が増えれば良い」と思っているわけではない。「住みやすいまち」、「住みたいまち」と一人ひとりに思ってもらえるような安心のまちを作っていきたいというのが市長としての思いである。「誰一人として取り残すことのない」「すべての人に目配り、気配りできるような」まちづくりをしっかりやっていきたい。  インクルーシブ条例はまちづくりのシンボル的な条例であり、皆さんと一緒に制定に向かっていることは本当に嬉しい限りである。もっとも条例ができて終わりではない。条例はスタートであり、引き続き皆さんと一緒にまちづくりをしていきたいと考えている。今日で検討会はいったん区切りになるが、引き続きまちづくりへの力添えをいただきたい。 3 座長挨拶  今日は本来であれば直接皆さんと会ってお話ししたかったが、コロナで叶わなかった。2018年8月27日の第1回検討会以来3年以上経つが、そのうちの約半分はコロナの感染流行期とオーバーラップしてしまった。条例づくりも遅れてしまった。  しかし、検討が遅れたことが必ずしも悪いことではない。コロナは市民全員に降りかかった目に見えないバリアであり、そのような視点も織り込んだ条例を作ることができた。また時間を置くことで熟成し、ブラッシュアップされてきたとも言える。さらにこの間、条例の内容を実践するような取組が各団体で行われてきた。  本日は第7回目で最終の検討会。最後にもう一度みんなで総点検し、良いものを議会に送り出したい。 4 条例案の報告(資料1、資料2 事務局より説明) (ユニバーサルデザインのまちづくり部会 部会長)  条例検討が始まってから3年が経った。この間、コロナ禍ですべての人が外出を制限され、孤立感・閉塞感が高まるような状況を経験したと思う。だからこそ、インクルーシブな社会を実現するためのこの条例の重要性が広く知られるきっかけになるはずである。市長の話にも「住みやすいまち」「住みたいまち」として評価が上がっているとあったが、そのこととインクルーシブ条例を検討していることとは決して無関係ではないと感じる。  そしてこの間、検討期間は延びたが、ブラッシュアップする時間をもらったと思っている。特に、先ほどの説明にもあった「障害者等の参画」「私たち抜きで私たちのことを決めないで」ということ。そして、「インクルーシブ教育の推進」や「地域生活の支援」。これらは、障害者権利条約の肝になる部分でもある。  コロナ禍をくぐり抜けた社会において、障害者権利条約の理念の実現にいち早く取り組み、実現しているまちとして、明石市がさらにキラッと光っていくためにも、この条例は何としても制定したい。 (委員)  よく練られ、委員の意見が反映された条例案になって良かった。自分は主に子どもに関するテーマで意見を述べるが、第12条の規定が非常に良かった。特に「すべての子どもたちが、地域の学校で共に学ぶことができる環境及び学びの機会について、自分自身で選択することができる環境を整える」という規定により、知的・発達の子どもたちや肢体不自由、視覚・聴覚障害の子どもたちにも選択の機会をしっかり与えることが示されていることは安心につながる。また、様々なことを前に進めるために必要な障害関係の福祉人材について確保が難しい現状を踏まえ、同条第5項に「専門性を持つ人的資源を確保」という規定があることも良かった。  併せて雇用については、雇用されている障害者がコロナにより時短勤務になったり、解雇されたりして、困っているという意見を聴いている。そういった点で障害者雇用の確保が条例上規定されていることは良いことだと思う。 (委員)  部会では、交通バリアフリーとユニバーサルツーリズムを中心に議論に参加した。部会全体を通してとても良かった点は、最初から当事者を交えたワークショップや、まちづくりイベントを重ねてきたこと。みんなで課題を共有し、認識して、条例を作っていくプロセスが有意義であったと感じている。  条例案については、主役である市民に語り掛けるようなわかりやすく良いものに仕上がった。一方で条例案をスタッフに読んでもらったが、「ふわっとしている」や「今の自分は何をすればよいかわからない」という意見もあった。検討にかかわっている私たちは、「障害者配慮条例」や「手話言語・障害者コミュニケーション条例」などの個別条例に横串を刺して全体を包み込むようなものだと理解しているが、初めて条文を読む人はこれらの立ち位置が見えにくい。手引きなどの普及ツールは、具体的な例から紹介し、求めることやすべきこと、そして理念が明確になるように構成してほしい。  後、若年層世代の情報ツールは、すでに紙ではなくスマホになっている。予算の関係もあると思うが、プロにお願いしてパンフレットなどのキャラクターをLINEスタンプにしたり、明石出身のタレントにインスタグラムで語り掛けてもらったり、YouTubeでバズらせたりするなど、メディアミックスを駆使して若年層世代のニーズに合致させ、インパクトのあるメッセージを浸透させてほしい。また、これらを教育コンテンツに流用すれば、子どもたちの教育の仕掛けの一つとしても、効果的だと考える。 (委員)  良い案ができた。ただ条例の制定後が問題。条例上は各部局が横断的に話し合うということになっているが、具体的な例が直接政策局に上がってくることは少ないと思う。他部局との関係性の部分が心配である。また、コロナ禍でみんなに行き届くような情報発信が有効に行えたのかということは気になっている。  もう一つ、自己の機能を超えるような困難が障害者に生じた場合、必要なときに協力を要請することや健常者が積極的に援助を申し出たりすることが、日常生活の中で自然になっていけば、インクルーシブ条例が活きることになる。今後も改善すべき点は積極的に改善しながら取り組んでいってほしい。 (委員)  試行錯誤しながら熱意を込めて作った条例案であることが伝わってきた。自分たち委員の思いも込められた内容になっている。  最近、コロナの感染拡大に伴って、「自宅で一人取り残されたらどうすれば良いか」という相談が相談支援事業所に多く寄せられている。施設に入れるか、またヘルパーが来てくれるかという相談を受けることが多かった。介護者が不在になる状態が特に重度障害者にとっては数年後の自分の生活の直視につながっていると感じた。一方で、自分たち支援者にとっては利用者の暮らしが家族依存で成り立っていることを改めて感じることになった。  ただ、結果的には、コロナの感染拡大によって「誰一人取り残さないインクルーシブな社会の実現」が必要であることを体感することにつながった。  具体的な条例の内容では、事業所の運営にかかわる者として、第15条「地域生活の支援」を具体的な取組として進めていくことが、家族依存から抜け出すために必要であると改めて感じた。また、重度障害者の所得保障は、大きな課題である。行政と一緒に今後も取り組んでいきたい。 (委員 事務局代読)  条例案の前文を読んでいて思ったことがある。資料1の1ページ目下から3行目に「今後、生じる差別も含め「いかなる差別も許さない」という決意を示す」とある。  差別を許さない決意はもちろん大切なことだが、一方で同時に偏見も無くしていく必要がある。障害者や外国人に対する偏見がまだ残っていると感じている。自分自身も今後の活動の中で、差別だけでなく偏見もなくすよう取り組んでいきたいと思う。 (委員)  これまで、事業者も研修に積極的に参加させていただき、障害者への接客マナーを学んできた。参考になった部分が多い。これからも定期的に開催してもらい、事業者として様々な立場のお客様に対する接客マナーを学ぶことができると良い。また、点字メニュー、スロープ設置の費用の助成など継続的に実施してもらえればありがたい。ソフトとハードの両面からインクルーシブなまちづくりができるよう、事業者としても前向きに取り組んでいきたい。 (心のバリアフリー部会 副部会長)  3年にわたって作ってきた条例が良いものになったことを嬉しく思っている。一方でこれからと思っている部分が大きい。特に「いつまでもやさしいまち」になるためには、それが継続的に続くための仕組みづくりが求められている。  ポイントは、第14条「総合相談支援体制の整備」と第15条「地域生活の支援」。この2つに共通して大事なことは、行政、社会福祉協議会、一般の事業者など支援にかかわる人すべてが同じ方向を向いて、同じような方法や視点に基づいて仕事をしていくことである。総合相談であれば個別条例を作って実体化していくことも必要。総合相談支援というと多部局連携が必要になるが、実際は連携ができないままバラバラになることが多い。これをどのように解決できるかが気になっている。  もう一つ気になっているのは職員研修。明石では児童相談所での研修はしっかりやっていると聞いている。それだけでなく福祉にかかわるすべての部局が同じような研修を受ける中で、アセスメントやケースワークの底上げをやらない限り、総合相談が絵に描いた餅で終わってしまうという危惧を強く持っている。立派な条例を作った明石だからこそ、条例に沿った仕事ができる職員の底上げが一番求められている。 (事務局)  条例検討を進めてきて痛感しているのは連携の部分。連携ができなければ話が進まないことを、条例検討の過程で強く感じた。個別の条例を作ることも必要になってくると思う。ご意見のとおりすべての課題を政策局が解決していくのは難しい。ただ、そのために全庁が同じ方向に向かって仕事を進めるには、一人ひとりの職員の底上げと同時に仕事がしやすい環境を作ることが必要。疲弊している状態であれば前に進んでいかない。そこを見直す必要がある。  また、条例検討の初期段階で、理念だけでなく具体的に課題解決に結びつける条例にすべきという声が多くあった。政策局まで話が上がってこないと作用しないというのではなく、条例が庁内すべてに浸透していくことが必要。特に教育や総合相談の分野は連携の課題が大きい。幸い条例施行まで時間があるので、組織としてどうすべきか、オブザーバーにも意見を聴きながら検討していく。 ※※条例名称について※※ (事務局)  条例名称については、委員の皆さんからも様々な意見をいただいた。皆さんそれぞれに思いがあり、検討が難航した。その中で「わかりやすく自分事として伝わる要素を入れながら目指す社会像を示したもの」が名称に必要なポイントであると整理した。その結果「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」を正式名称として提案し、略称はこれまで通り「あかしインクルーシブ条例」とする。  この名称に至った理由については次のとおりである。  まず、委員の皆さんから「分けない」や「選べる」という言葉の提案があったことから、様々な選択肢を可能にするという意味で「自分らしく生きられる」という表現を使っている。また、「多様性」という言葉についても多くの委員から提案があり、多様性を認め合うという概念を同じく「自分らしく生きられる」という言葉に込めている。なお、多様性という言葉は、条例の本文はもちろん前文でも示している。  また、「一緒にみんなで作る」という表現が良いという意見もあった。明石市では行政だけでなくみんなで作っていくという意味でこれまでも「まちづくり」という言葉を使ってきたことから、「まちづくり条例」と表現することで「一緒にみんなで作る」という要素を入れた。  条例名に数多くの言葉を入れることもできたが、短い条例名がより伝わりやすいという意見も踏まえて、最終この条例名にした。これから議会に提案していく中で指摘いただいて、変わっていく可能性もあるが、皆さんからいただいた思いをしっかり込めることができれば良いと考えている。 (座長)  もう一度条例名を言ってほしい。 (事務局)  「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」 (座長)  長い印象はあるが、略称もある。今後議会でも意見はあると思うが、ここが到達点として、送り出す側としてはこれで送り出したいと思う。  ある人に商品名を考えるときの話を聞いたことがあるが、名称は少し「あれっ」と思うぐらいがちょうどいいそうだ。説明のチャンスがあるし、むしろ馴染んでいく。この条例も「インクルーシブ」とは何?と聞かれたときがチャンスで説明する機会が訪れたと思ってほしい。 5 条例制定後の取組について(資料3 事務局より説明) (委員)  3年間の検討会は短かったような長かったような気がする。条例が施行された後は「インクルーシブ」という言葉がいろいろな場所で使われていくと思うが、やはりスタートが大切でこのような取組を続けていくことが大事と考える。当事者も健常者も一緒に集まる場を設け、インクルーシブについて話し合いながら理念を広げていき、市民の皆さんがインクルーシブを身近に感じられるようにできると良い。市民からの相談を受けるに当たって、一目でアドバイザーであることがわかるよう、私たちがバッジを胸につけるなどするのも一つの方法。いろいろな方法を取りながら、市民に分かってもらえるようになれば良い。自分自身これからも当事者目線で意見を言わせてもらえる機会があればありがたい。 (委員)  非常に格調高い条文であり、また具体化されている。施行後どのように施策を進めることができるか、継続して見守ることが必要と思っている。  自分は、知的障害のある子どもの親の会の会長もしているが、その親から聞いた話がある。オリンピックで3000メートル障害のレースを見ていたところ、子どもから「僕も障害やけど障害ってこれなん」と聞かれたそうだ。この場合「邪魔になるもの」を「障害」と捉ええている。何気なく障害物競走などというが、「障害」とは何だろうと考えさせられた。何気ない言葉や動作が当事者にとってはダメージになる。心の配慮が必要。条例制定後も「仏作って魂入れず」にならないようにしてほしい。明石ではコミュニケーション、差別解消、更生支援などのテーマで全国に先駆けた条例を作ってきている。SDGsの計画も策定中。これからも長いスパンで、具体的に一つ一つ困難を乗り越えてほしい。 (委員)  条例制定後が大事と感じている。インクルーシブアドバイザー制度には、自分も積極的に参加したいと思っている。なかなか声が届かないところから声を積み上げていくために当事者が最初から参加していく試みであり、とても大事と実感している。個々の状態や立場によって、同じ障害特性でも思っている事、感じ方や対処方法が違う。アドバイザー制度を有効に活用できると良い。そして、今後インクルーシブ条例を市民に身近なものと感じてもらえるように、どのようにPRできるか一緒に考えていきたい。 (委員 事務局代読)  条例ができた後には、地域の活動にもかかわっていきたい。そして、地域で支えあうあたたかいまちにしていきたい。自分たちの力でできることはまだまだある。また、インクルーシブ条例についても検討会だけで終わりでなく、今後制度化を予定しているインクルーシブアドバイザー等でもかかわらせていただきたい。  今後、インクルーシブの理念が地域にしっかりと浸透していき、困っている人が頑張らないと暮らしていくことができないまちでなく、みんなが助け合いながら、頑張らなくても暮らすことができるまちになることを期待している。 (心のバリアフリー部会 部会長)  皆さんの意見を取り入れた良いものになった。資料3を参考にしながら意見を述べる。私たちは「心のバリアフリー」と「空間のバリアフリー」、この2つの仕組みについて変革を試みてきた。その中で明石市は我が国のトップバッターとして障害者配慮条例を作った。障害者配慮条例は、合理的配慮の公的助成の仕組みや市民を巻き込んだ差別に関する研修啓発の仕組みをはじめとして、優れた理念と中身を持って展開できたと思っている。2ページに取組が書かれているが、理解してほしいのは「心のバリアフリー」と「空間のバリアフリー」は決してバラバラではないということ。また、4つのバリア「意識のバリア」「物理的バリア」「情報のバリア」「制度的バリア」は構造的にも有機的につながっている。例えば、心のバリアを取り除くために当事者が参画しようとしても、適切な情報提供がなく、また物理的バリアがあれば、そもそも参画できない。全体がつながって展開しなければいけない。  そのような意味でインクルーシブアドバイザー制度はとても大事。この条例の目玉と言え、第9条の当事者参画の具体的なテーマである。障害者が利用する可能性のあるすべての建物、参加する可能性のあるイベントや集会などについて、企画段階から当事者アドバイザーが参画していくのであれば、しっかりしたシステムが必要である。アドバイザーとして誰に声をかけてどのような研修を受けてもらうのか。そのうえで登録してもらい、活動に参加してもらう。個別事案についてのマッチングもしなければならない。全体の仕組みがあってこそ展開できる。アイデアは良いので、仕組みをしっかり構築していただきたい。 ※※ 全体を通してその他委員より一言 ※※ (委員)  本当にこの条例は良くできている。特に市の責務、市民の役割、事業者の役割ということで、今後何を整え、どこを目指せばいいかが明確に示されている。その他も様々な角度からよく練られている。  今後どう実現していくかということと、インクルーシブという言葉をどう市民に広げていくかということが課題と考える。広報も必要だし、制度を作りながら特に事業者の行動を誘発することも必要である。また、教育も重要である。「多様性のない組織は発展しない」ということは、様々な研究からも明らかとなっている。「インクルーシブマインド」を持つことが世界のどこでも活躍できる一つの態度だと考えている。インクルーシブ条例を小学校や中学校などの教育の中に具体的に取り入れていければすばらしい。自分は「あかしSDGs推進審議会」にも関わっているので、この条例検討で話し合ったことも反映できるよう努めたい。 (委員)  インクルーシブ条例は良くできている。ただ施行されて終わりではない。我々市民としてはそこから始まる。市民一人ひとりがインクルーシブの理念を理解し、どれだけ浸透していくことができるか、1年から2年の間しっかり見ていきたい。アドバイザー制度にも期待している。 (委員)  明石市民で良かったと感じている。通所施設に勤務しているが、コロナ禍で通えなかった利用者も多くいた。本当に移動しづらい社会状況になっている。ただ悪いことだけでなく、リモートで普段会えない方と場所移動しなくても会えるといった新しい流れになってきている。インクルーシブ条例は制定が終わりではない。当事者の声が届き、その声を拾い上げることができるよう改善しながら、社会状況に合わせて新しい工夫ができないか今後も考えていきたい。後、例えば障害者手帳がもらえる人は良いが、手帳が交付されず、かつ、みんなと一緒に住むのは難しいといった、狭間にいる方や生きづらいと思っている方もいる。こういった方たちを取り残さないために、できることをもっと掘り下げて考えていきたい。 (委員)  民生委員として、高齢者、子ども、障害者など様々な人から相談が届く。社会福祉協議会の総合支援センターと相談しながら、当事者の課題の克服に取り組んでいる。総合相談支援体制の整備を今後進めていく中で全庁的な連携をすることになっているが、市内部の組織だけでなく総合支援センター等外部の声も聴きながら、きめ細かい対応をしていってもらいたい。今後どう実現するかが重要なことである。ともに自分も頑張っていきたい。 (座長)  民生委員の中でインクルーシブ条例の動きは浸透しているか。それともまだまだか。 (委員)  まだまだ難しい。でも条例の正式名称が決まったので、「インクルーシブ」という言葉を考えるきっかけになると思う。 (委員)  とても良い条例ができた。他の委員から名称案の提案はそれほどないと思っていたが、とても多くの案が出てきて驚いた。決まった名称に違和感はない。わかりやすい。  条例中にもコロナについて言及があったが、コロナによって障害がある人とない人の違いが大きくなっている。今は障害がない人は比較的自由に外出できるが、介護など支援が必要な人は外出できない。支援者を派遣してくれない場合もある。また、入所施設だと外出できなかったり、面会が制限されていたりする。障害がある人は大きく制約されている現実がある。諦めざるを得ない部分をどう解消できるかが課題である。  後、具体的な部分で言うと、かつて明石公園のトイレが16時30分で閉まっていた。これも時間的なバリア。このような課題がこれからどうなるか注目される。まち歩きやインクルーシブアドバイザーを利用して、取り組んでいければ良い。また、本当に大切なのは教育。分けない教育に力を入れてほしい。 (委員)  公共交通は、インクルーシブ条例とかかわりの深いものであると捉えている。バスで言うと、バリアフリー法が制定されて、ハード面はノンステップバスなど物理的なバリアを取り除きながら進んできた現状がある。一方で心のバリアフリーは、まだまだ社会全体が成熟していないと感じている。条例をきっかけに、明石が広めていかなければいけない。  乗務員については、SDGsやインクルーシブへの理解がまだ乏しい。SDGsの委員会を会社で立ち上げ、乗務員教育を行っていく予定である。また、コロナで中断しているが、毎年バリアフリー教室を開催し、小学校で授業している。心のバリアフリーの重要性を小さい子どもにしっかり伝えていかないと、大人になったときに対応できない。私たちも協力していきたい。  一方で、バス停については、ターミナル駅周辺は整備できているが、それ以外のすべてのバス停を整備するのは難しい。バス会社もコロナで苦境に立たされている。行政からも声を上げて全国的にハード面の整備ができるように働きかけをしてほしい。どこから乗ればいいのか、時刻表がわからないなど障害者からの声も多い。私たちもできるだけ協力していきたい。条例を持続可能で実効性のあるものにしていってほしい。 (委員)  障害当事者が日常生活で経験した不便さや思いを、市職員も交えたグループワークなどを通じ、検討会で意見交換できたことが印象的。今回条例を制定するだけでなく、当事者参画制度も整えてもらったことを嬉しく思う。皆さんと一緒に何ができるのか、明石がどんなまちに変わるのか、楽しみにしている。 (委員)  条例が制定されてからが非常に大切。条例を社内でも地域でも浸透させていきながら、会社の規則や研修にも盛り込んでいきたい。また、言葉の浸透とともに、インクルーシブが当たり前になる社会が実現することが大切。障害という壁を取っ払い、誰もがともに思いやりを持っていけるような社会に貢献していきたい。今後も、市と連携・相談しながら検討していきたい。 (委員)  この検討会に参加できたことを嬉しく思う。難病患者であり、医療的ケアが必要な子どもの親でもあり、以前は急性期の病院でソーシャルワーカーとして働いていた。このような複数の立場に立つ者として、検討の最初から当事者も一緒になったこの場自体がインクルーシブな場であることがすばらしく、参加するたびに気持ちが暖かくなった。  当事者がただ支援される側ではなく、条例にもあるように自分たちが弱みを持っていることを社会に還元して、それがまちづくりに活かされることに大きな意味がある。検討会で終わりでなく、アドバイザー制度などを活かしながら当事者としての声を上げていきたい。  支援者としては、相談支援の分野で危惧がある。「横断的」や「連携」など文字で書くと簡単だが、実行することは難しい。たとえば、子どもの栄養相談中にアンパンの話になったことがあるが、その大きさ一つとってもそれぞれのイメージに相違が見られたことがあった。連携に際して、専門職など多くの人が関わると安心ではあるが、話をかなり擦り合わせないと現場では簡単に齟齬が生じてしまうのではないか。庁内だけでなく、福祉や教育などにかかわる地域の現場との連携もしないと、条例が理念に終わってしまう。連携を意識することが大切だと感じている。 (委員)  とても良い条例が出来上がった。前文の第4、第5段落で今後の方向性が強く打ち出せたのが良かった。それと、教育について長くかかわってきたが、学校も含めて頑張っていかなくてはならないと思っている。特に、困っている子どもたち、しんどい思いをしている子どもたちが自分らしさをしっかり発揮することを進めていこうとすると指導に当たる者のサポートが必要。その点、まとめで人的資源の確保を入れていることは良い。また、家族の中で考え方を共有することの必要性が示されていることがとても大事なこと。誇りをもって教師が子どもたちにかかわっていけることが大切。ハード面の整備はかなり進んできたが、心のバリアフリーの部分で学校が果たす役割は重要。自分も頑張っていきたい。 (ユニバーサルデザインのまちづくり部会 副部会長)  ブラッシュアップされてなかなか良い条例になった。ただこれは今後の武器にならなければ意味がない。ふわっとした印象があるのも事実。どう活用するかが大事。その点、逐条解説書は事務局任せではなく私たちもかかわって作らなければならない。条例に関する施策を進めるに当たっての中心になる。  また、情報発信の強さが必要である。例えば、市の広報に2年間ぐらい委員一人ずつ寄稿するなど。みんなで市の手伝いをしながら発信できればと思う。  後、条例の内容で言うと、「尊厳」と「権利」の言葉が入ったことが大きい。当たり前のことだと思われるかもしれないが、てこずるのはこの部分。相当な武器になる。二つ目は「ユニバーサルデザイン」という表現。わかっているようでわかっていない。条例で定義できたことが大きい。三つ目は「横断連携」。自分自身行政の縦割りに困らされてきた。条例に明確に入れてもらっているのは、とても良かった。 6 今後のスケジュール(資料4 事務局より説明) 7 座長総括 (心のバリアフリー部会 部会長)  これだけ豊かな内容を盛り込んだ条例をみんなで作ってきた。どんなネーミングでもすべての内容を盛り込むことは無理。このネーミングで納得して、これを活かして具体的に展開していきたい。  もう一つは、単なる包括的な理念条例にならなかったこと。第9条に「市は、インクルーシブ施策を実施する場合は、企画立案から評価検証に至るまでのすべての過程において、障害者等の参画機会を確保するものとする。」とある。これは理念規定ではなく義務規定。すべての部局にわたってアドバイザー制度を使って当事者参画をしていかなければならない。また、第12条にも「市は、専門性を持つ人的資源を確保するなど前3項の取組を推進するために必要な措置を講じるものとする。」とある。必要な措置を講じるときにアドバイザー制度をどう使うのか。今後の条例の展開を楽しみにしている。 (ユニバーサルデザインのまちづくり部会 部会長)  条例をまとめるまでが検討会の一つの役割であったが、これで終わりではなくて、アドバイザーや事業所、団体での取組などこの条例を使ってまちづくりを進めていくという皆さんの決意を力強く感じた。条例をまとめるのは一つのゴールだが実はこれからがスタート。条例施行と同時に、この条例に規定した基本的な理念と方向・内容を具体化していく。その中でさらにまちづくりの具体的な条例が必要になるかもしれない。条例を活かしながら必要性を感じたものをみんなで作り上げていく。そういう好循環のサイクルこそが条例制定後のみんなで作るまちづくりに大事なこと。エンジンとしての条例を活かしながら、みんなで頑張っていこう。 (座長)  今の世の中、生産性や成果だけが大切にされ、ひたすら上へ伸びていこうという風潮がある。今日のオンラインにしても生産性の権化。しかし、上に伸びた分だけ横の広がりが大切。横のつながりとは、環境や文化、哲学、宗教、人のつながりなど。インクルーシブ条例は、横のつながりの中心だと思う。上へ上へだけでは倒れてしまう。それを支えてくれるのが横の広がりであり、明石市のインクルーシブ条例もその一つとなろう。  2018年8月27日の第1回検討会で自分が言ったこと。一つは、10年後20年後に市民が、よくぞこの条例を作ってくれたと思ってもらえるような後世に恥じないものを作ろうということ。もう一つは全国に影響を及ぼすようなものにしようということ。国のことにも注文を付けられるような影響力のあるもの。この条例はその2つに十分に耐えられる中身になっている。  何人もの委員が言った、これは出発だと。「終着駅は始発駅」という古い歌謡曲がある。私たちは今日終着駅にたどり着いたがこれはスタート。まずは市役所の改革。そのエネルギーで明石市全体を変化させ、その延長線上で兵庫県、全国に展開することを強く切望する。  障害者権利条約第3条に「固有の尊厳」という表現があり、日本国憲法第13条には「個人として尊重される」とある。表現は柔らかくなっているが、この条例の「自分らしく」という表現は、法的な規範である障害者権利条約と国際理念であるSDGsがしっかり握手をして、委員の知恵を持って練りあがってきた証拠である。後は実践あるのみ。  かつて知的障害者福祉を引っ張った糸賀一雄さんは、「気づいた人が責任者」という名言を残した。この条例は様々なことを気づかせてくれる。責任者をどれだけ多くすることができるかと期待している。  委員の皆さんにお礼を申し上げる。また、事務局の皆さんお疲れさま。座長としての総括を兼ねての挨拶を終わらせていただく。 (事務局)  非常に長きにわたった検討であったが、検討のプロセスを大事にして今後につなげていきたいと思っていた自分としては得られたものが多かった。大きな組織を変えていくには大きな壁(バリア)がある。まちづくりは長距離走。疲れたときは相談しながら取組を進めていきたい。インクルーシブの名のもとに当事者参画の仕組みを構築し、試行錯誤しながらより作用するものにしていきたい。今後も皆さんのお力を借りながら、進めていきたい。