明石市ジェンダー平等の実現に関する検討会 第2回(2022年3月11日) 委員提出資料3 提出委員氏名  江 藤 俊 昭   多様性に基づく「公開と討議」の場としての議会の創造 ――留意点と選挙制度の考え方(再考)―― はじめに  申先生、三浦先生の報告に刺激を受けるとともに、アイデアも膨らむ。多様性の実現には、こうした発想からの議論が必要。その際、日本で可能かどうかも含めて考えたい。非政党選挙、政党選挙にする場合の二元の対立の可能性と打開の方途…。法律の範囲内、反しない限りでの条例の制定権ではあるが、そもそも法律は「地方自治の本旨」に基づかなければならないので、法律にすべて従う必要はない。ただし、監査請求等、最終的には裁判で争われる。 本日は、資料提供、論点のみの提示。  T 第1回検討会を踏まえて考えたこと、今後の留意点  U 議会の存在意義とそれを創り出す選挙制度  V 参考資料(1は総務省研究会の選挙制度改革論、2は自治法解釈の緩和の動向) T 第1回検討会を踏まえて考えたこと、今後の留意点 【第1回検討会に参加して】 ・多様な視点からの議論は刺激的だった。  @障がい者主流化、ジェンダー主流化:「ジェンダー平等プロジェクトを軸に明石市すべての取組に横串を刺して、点検していく」:縦割りから総合的視点  A障がい者運動の「私たちを抜きに私たちのことを決めないで」→当事者主権  B「傍聴席に男性の議員が1人もいない」→男性議員の問題でもあるとともに、議会の問題でもある:議会での議論も期待 【組織(民間、行政)、及び政治のリーダーの「ジェンダー平等」についての留意点】 1. リーダーとフォロアーとの関係(リーダーの多様性とともに、フォロアーの意見がリーダーに到達する実質的な制度;住民参加の充実)  @リーダーの多様性の実現(本検討会の課題)  Aフォロアーの意見の反映(すでに行われている制度の再検証と改革) 2. 少数者(現時点)が政治の場に   共通:政治の場への少数者の意見の必要性  @原理1:社会の意向を鏡のように反映:女性の政治参加(社会的代表)  A原理2:少数派の現状を踏まえた意向が社会にとって重要   *原理2は、事実として少数派(社会的少数)が政治の場に登場させる論理:過剰代表 3. 3割を下回らない(性別)の根拠  A.政治(議会)の場での3割を下回らない    根拠:クリティカル・マス   @現行法(解釈)前提:主権者教育・選挙の出方講座、政党・政治団体への呼びかけ、条例(政治分野における男女共同参画推進条例等)   A現行法・解釈を超える(以下のUの論点へと続く)    ・法改正の議論がようやく動き出した(あくまで議論)    ・現行法でも可能な改革はどこまで?    ・機会の平等(手続き)から結果の平等(クオータやパリテ等)ヘ進むことは可能か 明石市議会議員の女性構成比は、30%強。制度改正の意味の再確認 →状況・課題把握へ  B.政治以外(民間、行政職)の場での3割を下回らない   @民間:入札等の条例(公契約条例等)   A行政:審議会(市民参画条例第12条2号)、行政委員会・委員、その他の特別職(選挙管理委員会以外市長の意欲=条例、要綱による明記)、職員要検討  〔参考〕女性職員【今後の対応のポイント】   ○的確な女性職員の現状把握と数値目標の設定及び検証   ○産休・育休等を取得しやすい職場環境の整備及び職員間の機運の醸成   ○年休の計画的取得や超過勤務の縮減等の働き方の見直し   ○管理職昇任試験の試験科目や実施方法・時期の工夫   ○女性職員に対する出産・育児・介護などライフステージに対応した女性職員に対するきめ細かい支援策   ○先輩女性職員から後輩女性職員へのアドバイスを定期的に行う場の設定 「地域の自主性及び自立性の向上に関する研究会」(座長江藤)一般財団法人 地方自治研究機構『市区町村における多様な人材の能力活用に関する調査研究』平成 28 年3月、 <4D6963726F736F667420576F7264202D2081798EA98EE581458EA997A78CA4817A95F18D908F9176657238816993FC8D6594C5816A2E646F6378> (rilg.or.jp) *障がい者等の考え方 4.視点  @複眼的視点(現行法、解釈変更と改正、短期中期長期、…。)  Aバックキャスティング志向(理想像から出発してみる)(基本的人権論とともに、メリット(社会にとって、議員にとっても)) 5.その他 U 議会の存在意義とそれを創り出す選挙制度 【前提:存在意義を実現する時代】 〇議会には重要な権限すべてがある(条例、予算・決算、合併、さらには契約、財産の取得処分等) 〇「住民自治の根幹」(第26次第29次地方制度調査会)が議会だから 〇多様性、討議、世論形成 <多様性の意義>  @総合的な政策実現  A寄せ集めではなく、少数(と思われ、政治的に登場しにくい地域、層等)にも目配り  B少数派の意見が多数派にも有用(たとえば、ハードなバリアフリーは高齢者にも育児にも、ソフトでは多様性が認められる社会の方が住みやすい) 【現状】 〇原理(大選挙区単記非移譲式):少数代表法(多様性重視) 〇現実:性別、年齢などで大きな偏り 【打開のためのさまざまな試み】 〇運動:女性を議員に(サポーター、選挙支援制度等) 〇法律制定・改正:政治分野における男女共同参画法等 <多様性を創り出す視点:議会の動き>  @ポジティブアクション   ・議会基本条例における多様性の強調   ・議会による政治スクール(北海道浦幌町議会の実践)   ・社会における多様性を推進する  Aバリア(障壁)除去   ・ハード障壁除去(議場、保育室)   ・ソフト障壁除去:会議規則改正(欠席事由)、オンライン委員会、政治倫理条例(パワハラ・セクハラの是正) 【さらなる一歩:条例による打開の方途】 〇第一原理:多様性の重視 ・議会の多様性を実現させるために ・政治分野における男女共同参画推進法等の理念と制度の広がり 〇第二原理:現行解釈(当然として理解)と変更の可能性 ・従来の解釈:黒瀬敏文・笠置隆範編『逐条解説 公職選挙法 改訂版(上)』ぎょうせい、2021年、でもほとんど解説していない。議論の余地がほとんどないものとしてか。  (選挙の単位) 第十二条 1〜3 (略) 4 市町村の議会の議員は、選挙区がある場合にあつては、各選挙区において、選挙区がない場合にあつてはその市町村の区域において、選挙する。  (一人一票) 第三十六条 投票は、各選挙につき、一人一票に限る。ただし、衆議院議員の選挙については小選挙区選出議員及び比例代表選出議員ごとに、参議院議員の選挙については選挙区選出議員及び比例代表選出議員ごとに一人一票とする。 ・解釈変更の可能性:時代の変容(政治分野における男女共同参画推進法などの立法趣旨)  第12条の「市町村の区域」は問題なしとする。  第36条の「投票は、各選挙につき、一人一票に限る。」については、「ただし」があるので難しい。立法趣旨とは異なるが、「平等」が保障されれば可能と解釈する(以下リスト方式)か、ペア方式で一票を堅持するか。 *地方自治法については、かなり緩い解釈の可能性もでている(後掲資料(第29次地制調議事録))。公職選挙法は厳しい。 〇第三原理:平等(機会平等(を超え結果平等へ))(普通・秘密・直接) <参考:以下の問題がありながらも実現されている。平等の捉え方が異なるのだろう> ・リスト方式(男女別に立候補(男女別の立候補リスト))、女性定数保障制度も同様の問題 選挙権 被選挙権 留意点(被選挙権の平等原則からの逸脱という解釈の可能性) 選挙区(行政区ごと) 〇 〇 リストごとに当選ラインが異なる(Aリストで1万票で当選、Bリストでは落選)。 一人一票 〇 〇 ・性別ペア方式(男女ペアで立候補) 選挙権 被選挙権 留意点(被選挙権の平等原則からの逸脱という解釈の可能性) 選挙区(行政区ごと) 〇 × ペアを組めないと立候補できないとすると被選挙権制限となる(条例でそこまで踏み込むと法律違反の可能性) 一人一票 〇 × ・政党別比例代表制:選挙区と一人一票はクリアーできるが、政党選挙は想定されていない(被選挙権の侵害の可能性)。 【小結】 〇確認:多様性は時代の要請 〇公職選挙法の当時の立法趣旨と現在の他の法律との乖離(公職選挙改正の必要性) 〇他の法律(政治分野における…)などを参照して、解釈変更の可能性 *参考:1は選挙制度の議論、2は自治法の解釈 【参考資料1:総務省研究会の動向(選挙制度も議論に:ただし動かすには難しい)】 表 地方議会・地方議員選挙にかかわる総務省研究会 地方議会のあり方に関する研究会 地方議会に関する研究会 地方議会・議員に関する研究会 町村議会のあり方に関する研究会 地方議会・議員のあり方に関する研究会 2013年8月6日〜2014年2月25日 2014年7月15日〜2015年2月24日 2016年11月2日〜2017年6月22日 2017年7月27日〜2018年3月26日 2019令和元年6月28日〜2020令和2年8月24日  総務省「地方議会・議員のあり方に関する研究会 報告書」(2020年)の選挙制度を扱った章では(地方議会への多様な人材の参画と選挙制度)、「学術的観点および実体的観点の双方から議論」が行われた。  市町村は、定数が5人であろうと50人であろうと、大選挙区単記非移譲式、都道府県は選挙区選挙(従来は市と郡を選挙区)とした選挙区で(1人区であろうと、10人区であろうと)、有権者一人一票(小選挙区制、大選挙区単記非移譲式)となっている。 表 「地方議会・議員のあり方に関する研究会 報告書」(2020年)(抜粋) 【投票方式】 ・多様な人材の参画を促進する観点から、複数人を選ぶ制限連記制を導入し、有権者の選好表明の機会を拡充してはどうか。これに伴い、ペアやグループ単位で選挙運動を行うことを可能とすることも考えられるのではないか。 ・制限連記制の導入については、無責任な投票行動を招来するおそれや、議員自身の有 権者に対する責任感を希薄化するおそれがあることから、慎重に考えるべきではないか。 ・都道府県議会議員の選挙については、ある程度政党化が進んでいる実態を踏まえ、比例代表選挙(PR)の要素を加味する(選挙区を設ける又は全県一区とする)ことが考えられるのではないか。これにより、候補者の多様化が望めるとともに、指定都市の区域から選出される議員の数が多くなるという課題を回避できるのではないか。 ・比例代表制などの導入によって地方政治の政党化を浸透させることについて、地方議会議員の地域代表性や政党にとらわれない多様な人材の参画などの観点から、慎重に考えるべきではないか。 【選挙区について】 ・市区町村議会議員の選挙について、きめ細かく地域代表を選出する観点や有権者が候補者を十分に認知する観点から、選挙区を設定して実施することが考えられるのではないか。特に中核市では、原則支所を単位とする選挙区を導入することなども考えられるのではないか。 ・都道府県議会議員の選挙について、1人区での無投票が多くなっているため、市同士の合区の自由度を増し、選挙区の規模を拡大することや全県一区とすることが考えられるのではないか。 ・都道府県議会議員や指定都市議会議員などの選挙における選挙区については、選挙の性格を均質化する観点から、規模を揃えるべきではないか。 ・都道府県議会議員の選挙における選挙区設定に際して、人口変動を反映し一票の較差を抑制する定期的見直しや、公正性・客観性を担保するための区割りルールの明確化や第三者機関の設置が考えられるのではないか。  これらの制度の採用にあたって、議会の議決のほか、住民投票に付すことも想定されている。地方議会改革は、自治体の基本構造改革や地方選挙制度改革とも密接に連動している。住民自治や地方議会の充実強化の視点から慎重な議論が必要である。 【参考資料2】  そもそも、その自治法は、自治体の組織の運営を規定しているが、それは「地方自治の本旨」に基づいている。第29次地方制度調査会第11回専門小委員会では次のような議論が展開されている。「〔自治法で〕禁止されていないものは自由にやっていいのかどうかというのは、私もちょっとよくわかりませんけれども。」という質問に対して、行政課長は「具体的には、個別に考えなければいけませんけれども、一般論としてはそういうことになります。」と回答している(議事録参照)。 *総務省が解釈権を有しているわけではないが…。 ○江藤委員 今、金子委員の話を聞いていて、一応確認をした方がいいと思うんですけれども、議会の基本的なことで、まだまだ解決しなければいけないことというのはたくさんあるんじゃないかということを感じました。その点で、特に地制調に参加させていただいて議論のトーンというのが自由度を高める、恐らくは任意性とかそれぞれの規模ごとに選択的なことが考えられるんじゃないかと思っています。そういう意味では、末節なところというよりは、かなり本格的な議論を今回議会改革ではやらなければいけないのではないかと思いました。  その関連で言えば、地方議会改革のベースキャンプはどこなのかの確認なんです。今お話ししたように、特に片山副会長がずっと強調されていた選択制だとか自由度を高めてくるということであれば、議会の組織だとか運営についてはかなり自由にしていくんだよという確認をしたいと思っているんです。そういうことであれば、自治法について、従来、結構縛りを強く解釈していたと思いますが、この地制調では、禁止していなければ基本的に自由に決めていいんじゃないかというトーンで議論されていたんじゃないかと、私は思っているんです。そういうようなことをまずは確認していいのだろうか、禁止されていなければ創造的に組織や運営について自由にそれぞれの自治体で考えて実施するんだよと理解していいのか。私はしたい、できると思っているんです。  その上で、議論するのはどういう対象になるかと思うんですが、勿論それぞれの地方制度調査会というのは何次、何次と分かれているのでしょうけれども、第28次というのは、ここで残られている方もいらっしゃるんですが、そのときにかなり重要な論点について議論されていたんじゃないかと思うんですね。ですから、そこで何ができて、何がまだ不十分で先送りされているのか、そこの対象に上がっていないのは何かというところを報告していただいて、論点整理された方が議論が進みやすいんじゃないかという提案を含めてさせていただきます。  あと、1点、今日の資料ですごく勉強になったなと思ったのは、議決事件のところで必要的議決事件と任意的議決事件という区分は、もともとそういうふうに分けられていたんですか。必要的なものは制限列挙といい、従来は任意的なものはかなり消極的に理解されていたのとはかなり違います。必要的なものを義務的と置き換えてもいいなと思うんですけれども、より積極的に理解されている。こういうことへ進んだんだなということも含めて、ちょっと余計なことも言いましたけれども。 ○林小委員長 1点確認ということですけれども、それはいかがでしょうか。 ○行政課長 必要的議決事件、任意的議決事件というのは今回初めて使わせていただいたわけですけれども、これまで、自治法に書いてあるということではないんですが、議決事件を制限列挙事項という表現をしていたんですが、この用語ですと、制限していると誤解を与える面があるのではないかと。追加できるわけでございますし、ただ、法定受託事務については追加できないということがあるわけですが、そういう意味で、より今の制度に近い表現をした方がいいのではないかということで、必要的議決事件、任意的議決事件という形で表現を修正させていただいたということでございます。 ○林小委員長 禁止されていないものは自由にやっていいのかどうかというのは、私もちょっとよくわかりませんけれども。 ○行政課長 具体的には、個別に考えなければいけませんけれども、一般論としてはそういうことになります。