資料4−1 明石市障害者差別解消に関するガイドライン(案) 第1版 平成28年4月 明石市 このガイドラインは、障害者差別解消法に基づく障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」といいます。)等の国が示した指針や、これまで条例検討の過程で明石市民や市職員、事業者のみなさまから寄せられた事例を参考にして作成しました。 なお、本ガイドラインの内容については、関係者からの意見等をお聞きしながら必要に応じて見直しを行い、修正及び補足をしていきます。  はじめに 明石市では、国の障害者差別解消法の施行に合わせて、「明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例(以下「条例」といいます。施行日4月1日)」を制定しました。 この条例は、障害のある人への差別をなくしていくことで、誰もが安心して暮らせる共生社会を実現していくことを目的としており、「合理的配慮の提供支援」と「障害理解の促進」を柱として、市の具体的な取組を規定しています。また、市民や事業者の皆様においても、市と協力して障害を理由とした差別をなくす取組を進めていくことが規定されています。 障害や障害のある人について知らなかったり、よくわからないために、気付かないうちに差別をしてしまったり、必要な配慮を提供できなかったりすることも少なくありません。差別と思われる出来事が起こってしまった場合に、それを調整していく手段についても条例に規定していますが、差別をなくしていくためには、障害への理解を深め、差別を未然に防止していくことが大切です。そこで、差別とはどういう行為を指すのか、合理的配慮として具体的になにをしたらよいのかをわかりやすく示すために、条例の趣旨や目的に則して、このガイドラインを作成しました。障害のある人とない人が、お互いに理解し合うために必要なコミュニケーションをとったり、何が必要なのかを考えていくきっかけに、また、もし差別と思われる出来事が起きた際にも、どのように対応すればよいかを考えるきっかけに、このガイドラインをご活用ください。  明石市の目指す誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり 「障害のある人」と聞いたとき、どんなイメージが浮かびますか? 「障害のある人」は「自分とは違う特別な人」と考えてはいないでしょうか。「特別な人」と思うと、交流するのをためらったり、相手に嫌な思いをさせてしまったりと差別につながるきっかけになることもあります。 身体や心の状態によって、生活の中で不便さや難しいことがあるのは、障害のない人も同じです。高齢になり体力や機能が低下する人、病気やケガで思いがけず障害のある状態になる人もいます。何歳であっても、どんな障害があっても「住みなれた地域で自分らしく生きていきたい」という思いは誰もが持っています。みんなが生き生きと暮らせる街づくりには、多くの人の知恵や力、そして継続した取り組みが必要です。 明石市では、事業者の皆様や地域の方々、障害のある人たちとともに意見を出し合いながら、誰もが安心して暮らせる共生のまちづくりを進めていくことを目指しています。障害がある人にとって暮らしやすい環境を整備することは、一部の人のための特別な配慮ではなく、障害がない人にも暮らしやすい環境となります。どんな配慮やしくみがあれば、今より暮らしやすくなるか、障害があることで嫌な思いや悲しい思いをすることがなくせるか、一緒に考え取り組みを進めていきましょう。  どんなことが「差別」なの? 1 差別には2つの種類があります 障害のある人は、心身のどこかに具合の悪いところがあるために、健康な人と一緒にすごすことができない、という場面によくあいます。健康な人と一緒の会社に勤められないとか、一緒の学校に行けないとか、同じサークルに参加できない、などです。こうした、健康な人が暮らす社会から排除されている状態のことを、障害者差別解消法や条例は、「障害を理由とする差別」と考えています。 この「障害を理由とする差別」は、大きく分けて2つの類型があります。 「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」です。 以下では、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の提供」について詳しく説明します。 なお、それぞれ具体的にどのような行為がこれらに当たるのかについては、別冊の事例集をご覧ください。 2 不当な差別的取扱いの禁止 (1)「不当な差別的取扱い」をしてはいけません 不当な差別的取扱いとは、障害者に対して、正当な理由なく、障害及び障害と関連する事由を理由として、財やサービスや各種機会の提供を拒否する又は提供にあたって場所や時間を制限する、障害のない者に対しては付さない条件を付けることにより、障害者の権利利益を侵害すること(※1)を指します。 こうした行為は、たとえ個人であっても、条例で禁止されています。 ※1 条例では、「不当な差別的取扱い」とは、「正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害者を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付け、その他の障害者に対する不利益的な取扱いをすることをいう。」と定められています。 (2)気づかずに差別をしてしまわないために(留意事項) ア 「障害」そのものを理由にした差別的取扱いでなくても… 条例では、「障害に関連することを理由とする差別」も禁止しています。 ・具体例1 盲導犬を連れて飲食店に入店しようとした際に、「衛生上の理由でペットの同伴はお断りしております」という理由で入店拒否にあう場合があります。これは一見、「衛生上の理由なら仕方がないかな」と思うでしょう。しかし、そうすると、全盲の人は、そのお店に入れないことになってしまいます。 ・具体例2 視覚障害者が利用する白杖を携行して公共施設を利用する場合に、傘と同様に「突端が鋭利で危険なので、入口で預かる」と言われたケースもあります。たしかに危ないと思うかもしれませんが、白杖は視覚障害者の大切な道しるべです。入口で白杖を預けると、その人は施設の中を歩けなくなるので、結局その施設を利用できないことになります。  イ  わざとではなくても『差別』です みなさんが、その障害者に対して、「わざと差別をしよう」と思っていた場合だけではなく、なにげなくとった行動も差別に当たることがあります。 ・具体例3 「ご本人にわかりやすいように」と思って知的障害のある成人に対して幼児語で話しかけることは、差別になります。知的障害があっても年齢相応の個人として尊重しなければなりません。 このように、なにげなく差別的な態度を取ってしまわないために、日ごろから障害について関心を寄せ、情報をキャッチしておきましょう。   (3)「不当な差別的取扱い」に当たらない場合 ア 「正当な理由」があれば差別に当たりません 障害のある人を、障害のない人と異なる扱いをすることは基本的には差別と考えられます。しかし、そうした異なる取扱いをするだけの「正当な理由」がある場合は、差別に当たりません。 「正当な理由」とは、障害者に対してお断りをすることが、 @ 客観的にみて正当な目的のもとに行われたものであり A その目的に照らしてやむを得ないといえる場合 です。 みなさんが、日々の生活の中で、やむを得ず障害のある人を別の取扱とせざるを得ないときは、なぜそのような取り扱いをしなければならないのかをきちんと説明できなければなりません。   イ 障害のある人とない人との平等を実現するための措置も差別に当たりません 障害のある人は、心身の具合によって社会的に不利な立場に置かれることが少なくありません。そうした「不利」を解消するため、以下のように障害のある人を障害のない人と比べて優遇することがあります。こうした優遇措置は、「障害のある人に対する逆差別ではないか。平等と逆行するのではないか。」と思われるかもしれません。しかし、「障害のある人とない人との平等を実現する」という目標を達成するために必要な措置として、むしろ実施すべきものとされています。   (措置の種類) 積極的差別改善措置として、障害者でない者と比較して障害者を有利に扱うこと。 (具体例) ・ 障害者枠での採用募集 ・ 各種の障害者割引 (措置の種類) 障害のある人に対して、合理的配慮に係る措置を講じること。 (具体例) ・ 段差にスロープを渡すこと。 ・ 目の見えない市民への郵便物に、点字シールを貼って内容がわかるようにすること 等、無数にある。 (措置の種類) 合理的配慮を提供する前提として、プライバシーに配慮しながら、必要な範囲内で障害者に障害の状況等を確認すること。 (具体例) ・ 出張相談をするにあたり、来庁できない理由を確認するために障害の状況を簡単に確認する。 3 合理的配慮の提供 (1)合理的配慮の提供とは 障害のない人にとっては当たり前にすごしている社会ですが、病気やケガによって当たり前が当たり前でなくなることがよくあります。毎日歩いていた道も、車いすを利用するようになった瞬間から段差と階段のためにいつも通りのルートを通ることができなくなる、というのはよくあることです。しかし、障害があるために直面する困難は、その人の責任で負ったものではありません。 そこで、こうした困難を社会の責任で解消しようとするために必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を「合理的配慮の提供」といいます(※2参照)。そして、合理的配慮を提供しないことも「差別」に当たり、禁止されています。 ただし、その障害者が求めている行為の内容が、社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担を要求するようなものである場合には、障害のない人がその措置を実施できなくとも差別には当たりません。 ※2 条例では、「合理的配慮の提供」とは、「障害者が現に社会的障壁の除去を必要としている障害者でない者と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、当該障害者の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいう。」と定められています。 (2)どんなときに「合理的配慮の提供」をしなければならないのか @ 「困っていそうだな」と思った時にはいつでも配慮を A 常に「ご本人はどうしたいか」に気をつける B 必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うこと @「困っていそうだな」と思った時にはいつでも配慮を 〜現に社会的障壁の除去を必要としていることを認識できる場合〜 障害のある人であれば、いつでも必ずなにか配慮をしなければならないわけではありません。自分でできる「現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合」に、職員は合理的配慮を提供してください。 具体的には、 ○ 障害のある人から「手伝ってほしい」と言われたとき ○ 障害のある人から手伝ってほしいことをはっきりとは言われてはいないが、合理的に考えて何らかの配慮が必要であるとき などです。「この人、困っていそうだな」と思ったときには積極的に声をかけてみてください。 A 常に「ご本人はどうしたいか」に気をつける〜当事者の意思を尊重〜 障害者の中には、知的障害、精神障害や重い言語障害などにより、コミュニケーションの難しい障害のある方もいらっしゃいます。そうすると、つい周囲の支援者や家族などと直接対話をして、ご本人の意思をたしかめることをおろそかにしがちです。しかし、まずご本人の意思を確認するようにしてください。 このような場合、あなたが「社会的障壁の除去を必要とする状況を認識」するときには、障害のある人の支援者や親族などから状況確認をしつつ、どのような配慮が必要かを考えることは差し支えありません。ただ、その場合も、ご本人の意思を確認することを意識しながら、状況確認を行ってください。   B 必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うこと @、Aに注意しながら、障害のある人がどのような配慮を求めているかがわかったら、あとはそれを実行してください。 【応じられなくても差別に当たらない場合〜「過重な負担」の場合〜】 障害のある人が合理的配慮として求めていることが、社会通念上相当な範囲を超える過重な負担であれば、そのまま応じられなかったとしても差別にはあたりません。 その場合、以下の2点を満たす必要があります。 @ 申し出のあった配慮が提供できない理由につき、きちんと丁寧に説明すること。 A 他にできそうな配慮があれば、それを提案すること。    過重な負担に当たるかどうかはケースバイケースなので一律にはいえません。以下の事情をチェックしながら、過重な負担といえるかどうか、考えてみましょう。 ●担当部署の事務・事業への影響の程度→事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か ●実現可能性の程度 → 物理的・技術的制約、人的・体制上の制約 ●求められている配慮の費用・負担の程度 ●担当部署の財政・財務状況   ※合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。職員から寄せられたアンケート結果や、すでに公表されている事例集などから、障害種別ごとにまとめた接遇の例については、別冊事例集を参照してください。  共生のまちづくりを実現するための支援 障害のある人が社会参加しようとするときに障壁となっている事柄を可能な限り取り除くための配慮が、障害者差別解消法において求められています。明石市の条例では、その実現に向けて、市民や事業者の皆様が合理的配慮を提供していきやすくするために、市が支援や助成等を行いながら、障害のある人にとって暮らしやすい環境づくりを進めていくことを規定しています。 1 合理的配慮の提供を支援する助成金制度の創設 具体的な取組として、条例第8条に基づき、民間事業者や地域の団体が過重な負担を理由として合理的配慮の提供を断念することがないよう、提供に際して発生する経済的負担を助成し、主体的な取り組みを支援する制度を新たに設けます。 (1)制度を利用できる団体  ・商業者など民間の事業者  ・自治会など地域の団体  ・サークルなどの民間団体 (2)助成の対象になるもの 合理的配慮を提供しやすくするために環境整備にかかる費用で、次のもの。 @ コミュニケーションツールの作成費(上限額5万円までは全額助成)  点字メニューの作成費用、チラシ等の音訳にかかる費用、コミュニケーションボードの作成費用 など A 物品の購入費(上限額10万円までは全額助成)  折りたたみ式スロープや筆談ボードなどの購入費用 B 工事の施工費(上限額20万円までは全額助成)  簡易スロープや手すりなどの工事にかかる費用 2 障害理解の普及・啓発の機会の確保 相互理解を進めるためには、それぞれの障害特性を理解することが重要です。条例第9条では市の役割として、障害のある人とない人との交流の機会の提供や支援を進めていくことを規定しています。市では、障害理解の啓発と条例の普及に関する取組方針を作成し、障害理解に関する施策を具体的に実施していきます。 まず市民や民間事業者に向けて、どういったことが障害を理由とした差別にあたるかを示すために作成した本ガイドラインのほかに、障害理解や障害のある人への応対方法などを盛り込んだ「啓発パンフレット」を作成し、一人ひとりが障害のある人と接する際に配慮するべきポイントなどを知ることができるよう、わかりやすい広報活動を行っていきます。 また、タウンミーティングを開催し、障害のある人とない人との交流の機会をつくるほか、自治会など各地域でも活用できる啓発用DVDを作成するなど、様々な立場の方が障害について関心を持ってもらえるよう工夫を凝らした啓発活動を進めていきます。 特に民間事業者には、障害のある人への応対方法をマナーとして学ぶための研修の機会をつくっていきます。合理的配慮の提供を支援する助成金制度などと合わせて、障害のある人と主体的に関わっていくきっかけを作っていただけるよう、具体的な情報発信に努めていきます。 障害のある人でも、人によって何に困っているかは違います。多くの人が障害について知るようになれば、それぞれの人に必要な配慮が提供されるようになり、誰もが安心して暮らせる街に少しずつ近づいていきます。  こんなときはご相談ください 1 差別をされている、と思ったら 「障害のせいで、こんなサービスを受けられなかった」「障害にこんな配慮をしてほしいのに理解してもらえない」など、障害を理由とする差別を受けた市民、ご家族、支援者の方からの相談を以下の窓口でお受けしています。 ○ 対象となる方 障害のある市民(明石市内に居住している人、明石市内に通勤・通学している人)、障害のある市民の家族、支援者 ○ 相談窓口と電話番号 窓口  障害者施策担当 住所 明石市中崎1丁目5番1号(明石市役所内) 電話  078-918-5142 ファックス  078-918-5133 窓口  障害福祉課 住所 明石市中崎1丁目5番1号(明石市役所内) 電話 078-918-1344 ファックス 078-918-5244 窓口  明石市立発達支援センター 住所 明石市二見町東二見1836番地の1ふれあいプラザあかし西2階 電話 078-945-0290 ファックス 078-945-0291 窓口 基幹相談支援センター住所 明石市貴崎1丁目5-13明石市立総合福祉センター 電話 078-924-9105 ファックス 078-924-9109 2 「こんなときはどうしたらいいの?」というお問い合わせ 「合理的配慮として何かしてみたいけど、何から始めたらいいのかわからない。」、「障害のある方から要望をもらったけれど、どうしたらいいのかあわてている。」などの事業者の方からのご相談もお受けしております。 ○ 対象となる方 明石市内で事業を営んでいる事業者(営利・非営利を問いません。NPO法人や社会福祉法人なども含まれます。) ○ 相談窓口と電話番号 窓口 明石市役所 福祉総務課 障害者施策担当 住所 明石市中崎1丁目5番1号   電話 078-918-5142 ファックス 078-918-5133