資料3 5 委員報告(第1回)  委員報告の趣旨  本協議会委員より、障害を理由とする差別解消と障害理解について、それぞれの立場で取り組まれている内容を報告していただき、そこから見えてきた成果や課題を共有するとともに市の施策の参考にしていく。  第1回テーマ:障害理解に関する事業者研修からみえてきたこと 〜神姫バスの取組から〜 谷ア 謙治委員(神姫バス明石営業所長)より 1.事業者研修を行うことになったきっかけ 昨年7月、車イスでバスをご利用のお客様から「荷物のように取り扱われ非常に怖い思いをした」との苦情が寄せられ、事実関係を調査すると申し出のとおりでありました。折りしも今年4月から、国においては「障害者差別解消法」の施行、明石市においても「(仮称)明石市障害者差別解消条例」を制定すべく、私自身も条例検討会の構成員に就任したところでありました。接客向上に取組む中で、健常者は勿論のこと、障害者にも気持ち良くバスにご乗車頂く事は、我々事業者に課せられた責務であります。苦情主から「99人の良い運転士がたった1人の運転士のせいで99人の運転士が信用出来なくなる」との言葉があり、当該運転士だけの指導に留めておく訳にはいかないと判断しました。 これまでも弊社で車イスに対する研修を実施していましたが、もう少し踏み込んだ内容にしたいと思い、今回の苦情対応の窓口になって頂いた明石市社会福祉協議会に相談したところ、「一緒にやりましょう」との返事を頂き実施することになりました。 2.相談事案から見えてきた課題 バス運転士の仕事は時間に追われる仕事であり、当時も多数の乗客がいた中で、運転士は早く駅に着きたいと思っていたところに、車イスの乗車があり、対応が乱雑になったと思われる。今後の課題として、我々事業者のみならず、バス利用者の方にも障害に対する理解が深まれば運転士の心理的な負担は軽減されると判断します。 3.研修の概要 研 修 名:車イスのお客様対応研修 実施期間:昨年9月〜今年6月 16回開催 研修時間:約1時間30分/回 参加人数:延べ約130名 共  催:明石市社会福祉協議会 研修内容 ・明石市社会福祉協議会の講師より脊椎損傷と脊髄損傷についての説明 障害の部位による症状の違い、接し方の注意点を学んだ。 ・車イスに乗って体感訓練 障害者(特に車イスの方)の気持ちや不便さを体感。 足が踏ん張れない状態を体感する為に、正座の状態で車イスに乗車し、障害物を避け、段差の登り降りを体験。 4.研修に参加した職員の声 ほとんどの運転士が「正座での車イス乗車をしたことで、障害者の感じている怖さや大変さがよく判った。」と感想に述べている。 【感想文抜粋】 ・同じ車イスの使用者でも、障害の重さが違うことに気付いた ・車イスの乗車体験で障害者の気持ちや怖さ、大変さが分かった ・今後は障害者の身になり、よく観察し、気配り・声掛けで介助していきたい ・車イスの対応は、「介助してあげる」ではなく、「お手伝い」の言葉が出る気持ちが大切 ・講師の方の「車イスに乗る方は、不便ではあるが、不幸ではない」という言葉が心に残った ・「心のバリアフリー」ということを意識して接していきたい 特に、「不幸と不便の違い」は、印象的な言葉で、我々は自然に「お手伝い」が出来るように努めなければならないと感じた。 5.今後の事業者としての業務に活かしたいこと ・障害者は勿論のこと、全てのお客様に対して、『観察』・『声掛け』・『気配り』を大切にし、より良いお客様満足に努めたい。 ・車イスの取り扱いを指導教習する際は、出来るだけ体で感じてもらうことにより理解を深めていきたい。 ・運転士の仕事は時間に追われる仕事であるが、障害者に対する理解をより一層深め、健常者の方にも理解を求める啓発が必要。 今回の事案対応を通じてのポイント 橘田 浩氏(明石市機関相談支援センターセンター長)より 1 なるべく早く対応。遅くなると当事者の気持ちに変化があるし、不安が増大して悪く考えがちになる。そうなると、支援者への疑惑も生じ、手がつけられない状態になる。 2 受付窓口から実行部署への引き継ぎにあたっては、受付窓口がどこに依頼をかけたかを当事者に知らせる。 3 当事者の話を聞くにあたっては、直接会うことが望ましい。場所については、当事者の利便性を考慮する。 4 初期対応は、対象者の障害に通じている職員があたることが望ましい。当事者自身のことがわかってくれているという思いが、以降の流れをスムーズにする。 5 双方が決着点をどこだと考えているかを探る必要がある。 6 障害福祉課から基幹に、神姫バス所長が障害福祉課に説明に来たことを、知らせてくれたことが大きい。このことで、この案件は解決すると直感できた。 7 神姫バス明石営業所トップの方が積極的かつ即座に対応し、事実確認の上、本人に丁寧なお詫びがあったことが最も重要。 8 面談にあたっては、次の2点が肝となる。 @ 本人の気持ちの慰撫(辛い気持ち、不安な思いの受けとめ→所長からのお詫び) A 今後の対策(研修の開催)  これらを踏まえて対応した結果、本人の気持ちも落ち着いた。 9 相談員の立場は、他の相談と立ち位置を変える必要がある? 10 研修にあたっては、次の3点を伝えたかった。 @ 誰もが障害当事者になる可能性があること A 人生をやり直そうとした時に、最初に出会うのが公共交通機関であること B 普通に運行することが、結果として障害者の社会参加に大きく貢献することになること