明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例 目次  前文  第1章 総則(第1条―第7条)  第2章 合理的配慮の提供支援及び障害理解の啓発(第8条・第9条)  第3章 障害を理由とする差別の解消   第1節 障害を理由とする差別の禁止(第10条)   第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策(第11条―第14条)   第3節 明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会(第15条)  附則  すべての人は、地域社会で生活する平等の権利を有している。しかし、現実には、障害のある人は、障害のない人に比べて多くの不当な制限を受け、排除されている。  平成18年に、国際連合で障害者の権利に関する条約が採択されたことをきっかけとして、障害者の社会参加の妨げとなっている社会的障壁を社会の責任で取り除き、障害を理由とした差別をなくし、障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する社会を目指すことが国際的に求められるようになった。日本国内においても、障害者基本法が改正され、また障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律が制定されたことで、同条約の理念を具体化する制度が整えられ、平成26年1月に同条約を批准するに至った。  また、私たちのまち明石市も、平成27年4月に、障害のある人がその障害特性に応じたコミュニケーション手段を利用しやすい環境を構築し、もって障害のある人もない人も分け隔てられることなく理解しあい、お互いに一人ひとりの尊厳を大切にして安心して暮らすことができる地域社会を実現することを目的として、手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例を施行した。  しかしながら、明石市においては、保育・教育、就労、医療、移動、生活環境、情報、防災など様々な場面に社会的障壁や差別が存在し、依然として障害のある人の多くにとって社会参加が困難な状態が続いている。そのため、市民、関係者及び関係機関と障害者との相互の理解と協力により、障害のある人とない人とが共に支え合って暮らしていくことのできるまちづくりを、今まで以上に目指す必要がある。  このような状況を踏まえ、障害のある人に対する合理的配慮の提供などに関する理念が市民一人ひとりに根付き、障害を理由とする差別が解消されることにより、障害の有無にかかわらず平等な社会参加の機会が保障され、もって一人ひとりの尊厳と人格、選択と自己決定が大切にされる共生社会が実現されることを目指して、この条例を制定する。    第1章 総則  (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消についての基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし、合理的配慮の提供支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進することにより、障害のある人が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、権利の主体として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加することができる環境を構築し、もって障害のある人とない人とがともに支えあい、活かしあうことができる地域社会を実現することを目的とする。  (基本理念) 第2条 障害を理由とする差別を解消するに当たっては、障害のある人とない人との権利の平等が、最大限尊重されなければならない。 2 共生社会の実現は、障害を、障害のある人だけの問題としてではなく、障害のない人も含めたすべての人の問題として認識し、相互の違いを理解し、その個性と人格とを互いに尊重することを基本として行われなければならない。 3 障害を理由とする差別の解消は、差別する側とされる側がお互いを一方的に非難することにより行われるべきものではなく、ともに協力し合うことによって実現しなければならない。 4 合理的配慮の提供は、障害のある人が、障害のない人と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを基本として行われなければならない。  (定義) 第3条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。  (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。  (2) 社会的障壁 障害者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。  (3) 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすることにより障害者の権利利益を侵害すること又は合理的配慮の提供をしないことをいう。  (4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害者を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付け、その他の障害者に対する不利益的な取扱いをすることをいう。  (5) 合理的配慮の提供 障害者が現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合において、当該障害者が障害者でない者と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、当該障害者の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいう。  (6) 行政機関等 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第2条第3号に規定する行政機関等(市を除く。)をいう。  (7) 事業者 市内において商業その他の事業を行う者(市及び行政機関等を除く。)をいう。  (8) 市民 市内に居住し、又は通勤し、若しくは通学する者をいう。  (市の責務) 第4条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。  (1) 合理的配慮の提供のあり方について積極的に調査及び研究を行うとともに、率先して合理的配慮の提供を行うこと。  (2) 地域社会において、障害者である市民と障害者でない市民が互いに理解し、ともに安心して暮らすことができるようにするため、市民、事業者及び行政機関等が合理的配慮の提供を行うための支援(以下「合理的配慮の提供支援」という。)を行うこと。  (3) 障害を理由とする差別の解消の意義及び基本理念に対する市民の理解を深めるため、市民及び事業者の協力を得て、障害に関する理解(以下「障害理解」という。)に関する取組を行うこと。  (4) 障害を理由とする差別の解消に関する相談を受け、紛争解決に向けて必要な支援を行うこと。  (市民及び事業者の役割) 第5条 市民及び事業者は、基本理念に対する理解を深め、合理的配慮の提供支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する取組の普及及び啓発を、市と協力して取り組むよう努めるものとする。  (障害者計画との関係) 第6条 市長は、障害を理由とする差別の解消に関する施策について、明石市障害者計画(障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項の規定に基づき策定された計画をいう。)に定めるものとする。  (財政上の措置) 第7条 市は、障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるものとする。    第2章 合理的配慮の提供支援及び障害理解の啓発  (合理的配慮の提供支援に関する施策の実施) 第8条 市は、市民、事業者及び行政機関等が合理的配慮の提供を容易に行うことができるよう、合理的配慮の提供支援に関する施策を実施するものとする。  (障害理解に関する施策の実施) 第9条 市は、障害及び障害者に対する市民の理解を深めるため、障害理解に関する研修の実施その他の必要な取組を行うものとする。 2 市は、障害者と障害者でない者との相互理解を深めるため、障害者と障害者でない者が互いに交流することができる機会の提供その他の必要な取組を行うものとする。    第3章 障害を理由とする差別の解消     第1節 障害を理由とする差別の禁止  (障害を理由とする差別の禁止) 第10条 何人も、障害者に対し、障害を理由とする差別をしてはならない。     第2節 障害を理由とする差別を解消するための施策  (相談及び助言等) 第11条 障害者である市民、当該障害者の家族若しくは支援者又は事業者は、市又は市が委託する相談機関(以下「相談機関」という。)に対し、障害を理由とする差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。 2 市又は相談機関は、特定相談を受けたときは、必要に応じて次に掲げる対応をとるものとする。  (1) 特定相談に係る関係者への事情聴取、説明及び助言(以下「助言等」という。)  (2) 関係行政機関への通告、通報その他の通知  (3) あっせんの申立ての支援  (4) 前3号に掲げるもののほか、障害を理由とする差別を解消するために必要な対応 3 特定相談に係る関係者は、正当な理由がある場合を除き、市又は相談機関が助言等を実施することにつき、協力しなければならない。  (あっせんの申立て) 第12条 障害者である市民は、市長に対し、市、行政機関等又は事業者を相手方として、特定相談に係る事案を解決するために必要なあっせんの申立て(以下「あっせんの申立て」という。)をすることができる。 2 障害者である市民の家族又は支援者は、市長に対し、市、行政機関等又は事業者を相手方として、あっせんの申立てをすることができる。ただし、当該あっせんの申立てをすることが当該障害者の意に反することが明らかである場合は、この限りでない。 3 あっせんの申立ては、前条第2項に基づく対応の終了後でなければすることができない。ただし、あっせんの申立てをすることについて緊急の必要性があると市長が認める場合は、この限りでない。 4 あっせんの申立ては、行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令に基づく不服申立ての手続をすることができる行政庁の処分に対しては、することができない。  (あっせん) 第13条 市長は、あっせんの申立てがあったときは、当該あっせんの申立てに係る事案について調査を行い、又は相談機関に必要な調査を行わせることができる。この場合において、調査の対象者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。 2 市長は、前項の調査の結果、あっせんを行うことが適当でないと認める場合を除き、明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会(以下「地域協議会」という。)にあっせんを行うよう求めるものとする。 3 地域協議会は、前項の求めがあったときは、あっせん部会を設置し、あっせんに係る事務を行わせるものとする。  (勧告及び公表等の措置) 第14条 地域協議会は、障害を理由とする差別を行ったとされる者が、あっせん案を受諾せず、又はこれを受諾したにもかかわらずあっせんに従わないときは、その旨を市長へ報告するものとする。 2 市長は、前項の規定による報告があった場合であって、必要があると認めるときは、障害を理由とする差別を行った者に対して、障害を理由とする差別を解消するために必要な対応をするように勧告することができる。 3 市長は、前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の相手方に対してその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。 4 市長は、第2項の規定による勧告を受けた者が、第10条に規定する義務に違反して、正当な理由なく当該勧告に従わなかった場合は、その旨を公表することができる。 5 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、明石市行政手続条例(平成9年条例第1号)に基づき、あらかじめ、当該公表の相手方に対してその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。 6 市長は、第2項及び第4項の措置を取った場合であっても、障害を理由とする差別が解消されないと認めるときは、障害を理由とする差別を解消するために必要な対応をすることができる。     第3節 明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会  (地域協議会) 第15条 市長の附属機関として、地域協議会を置く。 2 地域協議会は、第13条第2項の規定による求めに応じてあっせんを行うほか、次に掲げる事務を行うものとする。  (1) 障害を理由とする差別を解消するために必要な施策について、市長に意見を述べること。  (2) この条例の施行状況の検討及び見直し  (3) その他障害を理由とする差別を解消するために必要な事務 3 地域協議会の委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。  (1) 障害者  (2) 障害を理由とする差別の解消について必要な学識を有する者  (3) 障害者をめぐる法律問題に関して優れた識見を有する者  (4) 社会福祉関係者  (5) 医療関係者  (6) 障害者関係団体の代表者  (7) 事業者の代表者  (8) 関係行政機関の職員  (9) 公募による市民  (10) その他市長が特に必要と認める者 4 地域協議会は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会を兼ねるものとする。 5 前各項に定めるほか、地域協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。    附 則  (施行期日) 1 この条例は、平成28年4月1日から施行する。  (条例の見直し) 2 市長は、この条例の施行後3年を目途として、この条例の施行状況、社会情勢の推移等を勘案し、この条例の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。