第6回(仮称)あかしインクルーシブ条例検討会 全体会 議事概要 場所 明石市役所議会棟2階大会議室 日時 2020年1月29日(水)14:00〜16:30 1開会 2市長挨拶 明石市は、「インクルーシブ」の理念を全庁的にしっかりと受け止めて、できることを広げていこうとしている最中である。市役所だけではなく、関係団体、地域の皆さんとも様々な工夫をしている。この条例は作って終わりではなく、作り方そのものに大変意味がある。そして条例ができた後も大事に育てていきたい。 新年度予算案においても「インクルーシブ」という言葉を使い、「誰一人取り残すことのないまちづくり」をみんなでやっていくというスタンスを、これからの明石のまちづくりの根幹に据えている。もっともこの理念は、まだ全ての市民の皆さんになじみがあるとは言い難い。人によって受け止め方も様々ではあるが、私としてはこの大事な理念を多くの市民の皆さんと共感を持ちながら、まちづくりを進めていきたい。 3この間の経過報告 (座長) 7月に次回検討会が予定されている。議論は今日で全部出し尽くすのではなく、さらに意見を出していただけるチャンスがあるということを踏まえて本日参加いただきたい。 (資料1事務局より説明) (委員) 防災や教育について、障害当事者からの意見をお聞きする活動をしている。具体的には、月1回2時間程度「ミートアップ」と題し、防災について当事者の意見を聴いている。昨年10月に始め、現在は聴覚障害者、車いすユーザー、視覚障害者が集まって、それぞれの困りごとを話し合っている。また、被災したときに、当事者である自分たちができることにも着目している。この活動で出た意見を、市の取組の参考にしてもらえると嬉しい。これから活動も続けながら交流を深めていきたい。 (座長) この段階で、条例に反映できそうな意見はあったか。 (委員) 視覚障害者や車いすユーザーからは、災害時に避難せずに自宅に留まるという意見が多い。その問題をどう解決するのか、条例にフィードバックができるかもしれない。 (座長) 条例素案にも「災害」というテーマがあり、その補強になる良い取組。活動は今後も続くのか。 (委員) 毎月開催している。誰でも参加できるので、ぜひ皆さん参加していただきたい。 (座長) 「インクルーシブ」という言葉の浸透度はいかがか。 (委員) 私の身近な人たちには浸透している気がするが、障害当事者を含む市民全体には、まだまだ知られていないと思う。 (委員) インクルーシブ条例ができるのをとても楽しみに期待している。私は「あかしユニバーサルフットボール連盟」の代表をしており、キーワードは「ごちゃまぜ」。障害のある人もない人も男女問わず、多く人が参加し交流を深めている。 後、希望としては、条例ができあがった後も継続して検討していける組織を作り、障害当事者が積極的に参加して意見が言える場を設けてほしい。 (座長) 私も条例ができた後、これを検証していく体制が大事であると思っている。「インクルーシブ」という言葉の浸透度はいかがか。 (委員) 私自身はよく聞くが、浸透するにはもう少し時間がかかると思う。 (委員) 8月のフォーラムにパネリストとして参加した。障害のある方もない方も一緒に交流するユニバーサル交流会も同時開催されており、それも見に行った。すごく良い取組だと感じた。普段障害者となかなか接する機会のない方々が、障害者と触れ合い、活動を見たり楽しんだりできていた。 私個人の話だが、以前目薬が必要で薬局に行ったときに、店員が私を中国人だと勘違いしたようで、中国語と英語のコミニケーションボードを見せてくれたことがあった。自分は日本人だということを身振りや筆談で何とかやりとりした。障害者差別解消法施行の効果も出てきていると思う。客には様々な人がいることを理解した上で、配慮や準備をしていると感じた。実際に障害者が来ないとわからないこともあると思うが、経験を積み重ねて少しずつ知ってもらえれば、もっとまちは良くなる。ぜひ、これからも皆さんも様々な機会を見つけて参加してほしい。 (座長) 兵庫県の聴覚障害者団体のリーダーとして、ぜひ団体にも広めてほしい。 (委員) バス会社で、毎年、車いすユーザーや視覚障害者に関する研修をしている。バスはあくまで移動手段ではあるが、バスの中で快適に過ごしてもらいたいという思いは強い。ただ振り返ってみると、運転士自身の知識がないという問題があった。騒いだり窓をたたいたりする人への対処方法がわからない運転士が結構いる。そこで、専門家の講師を招き、研修をすることにした。研修から理解につながり、次は行動に移っていく。実際、最近もバス停付近で行き先がわかりにくそうにしている視覚障害者がおり、運転士がバスを降りて案内したことがあった。今後もそういう運転士が増えていくことを願って研修を始めた。自発的に手話の勉強を始めた運転士もいる。そういう様子を見ながら、行動につながっていると感じている。 (座長) 障害別の研修会は、ずっと前から行っているのか。 (委員) 毎年、教育プログラムに入れている。また、明石駅前は大きなターミナルのため、広域的に声をかけて、駅前を出入りする営業所の運転士を対象に研修を受けてもらっている。 (座長) 何人の運転士がいるのか。 (委員) 明石営業所は160人で、付近の営業所も含めると250人以上になる。 (座長) そういう方たちに条例が伝われば良い。 (委員) バス会社としても喜んで移動していただけるようになることを目指す。 (座長) 「インクルーシブ」という言葉は難しいと思うが、普及についてはどう感じるか。 (委員) 私自身明石営業所の代表として、持ち帰って広げるようにしているが、カタカナで意味は少しわかりにくいという印象。 (委員) 神姫バスの取組は非常に良いと思った。加えて警察官への啓発などがまだなら今後の取組の1つとしてお願いしたい。何年も前になるが、パニックを起こして頭をぶつけていた自閉症の方を、警察官が不審者として止めようとし、さらにパニックになり、結局、5人ぐらいの警察官に上に乗られて窒息死してしまった事例が九州であった。また電車の中で精神障害の女性を傘でたたいてしまった芦屋の自閉症の方が、警察に捕まってしまった事例もあった。このときは、支援者が警察に説明したのだが、警察の対応が良く、本人も落ち着つくことができ、起訴されることがなかった。この2つの事例のように命にかかわってくることもある。ぜひ取組の1つとして警察への啓発をしていただけたらありがたい。 (事務局) これまでも特に育成会の取組の中で、警察への対応として、リーフレットを作って渡したということを聞いている。こちらからも、障害者差別相談の中で、警察と何度か話す機会があり、研修の話を持ちかけているが、実施には至っていない。警察でも研修はしていると聞くが、内容を含めて、もう少し話をしていきたい。明石市が皆にとって暮らしやすいまちになるために、市だけでなく皆で頑張っていきたい。 (座長) 差別の本質の1つは無知や無関心。警察を含めてこの条例が浸透するようになってほしい。 4条例素案について(資料2事務局より説明) (座長) 基本的な考え方にある「誰1人取り残さない。」ということが本当にこの内容で実現するだろうか。全部は無理でも、前に進めていくことができるか。委員の皆さんは条例素案についてどう思うか。 (委員) 障害当事者にとって、あらゆる面で参画ができて喜んでいる。特に昨年11月のB-1グランプリ全国大会でもそうだが、計画段階から障害当事者が中に入って、研修を受け、意見を言い、そして迎える側に立って当日大変喜びながらおもてなしができた。これだけ障害当事者が様々な事業に参画できるようになってきたが、まだ消極的な面がある。今後もっと積極的に参加していくことが必要である。 例えば、就労支援の事業所がある地域は、自治会と事業所が連携することで、その事業所で働く障害者が防災訓練に参加することができている。ただ個人の場合、参加する機会がないというよりは、参加に消極的な当事者が多いように感じる。 我々障害者自身も普段から積極的な意見を言える場という内容が、今回の条例素案に入っており喜んでいる。 (座長) これは条例素案なので、まだ補強できる。障害当事者の積極性が必要ということだが、その姿勢を高めていくためにどうしたら良いか。 (委員) 様々なところで話合ってもこれという答えが出てこない。私も障害当事者になって30年たつが、今まで防災訓練に参加したのは1回だけ。総合福祉センターにいたときに、その日が「防災の日」であったため参加したが、それがなければ「しんどいからもういい」とか「危ないから休んでおこう」とか、なかなか前向きではない。B−1も今までだったら参加していなかった。ところが、今回は実行委員会が我々の参加できる環境を作ってくれた。防災訓練についても、障害当事者が参加しやすい雰囲気を作ってほしい。 (座長) 障害者を受け入れる環境づくりも仕組みとしてやってほしいということですね。 (委員) 「インクルーシブ教育」のテーマで、お願いと質問がある。まず素案に書いてあることを具体的に実現してほしいというのがお願い。それから質問だが、研修などもあり教師が大変忙しい状態にある中で、いろいろなことができるのかという不安がある。中核市になり市の権限が増えたことでやりやすくなったことがあるのか。動きがスムーズになるなど期待感がある。その辺をお聞きしたい。 (事務局) この間学校の先生方に話を聞いてきたが、皆さん二言目には、時間があればやりたいが時間がないと言われており、新しい取組をするには人の確保が大切だと実感した。特別支援教育コーディネーターが担任も兼務している。現場の人間同士が細やかに連携していくことも必要。さらに学校や教育委員会とも意見交換して、さらに踏み込んだ形で取組を実施していく体制作りについても相談していきたい。 (委員) 私たちのような知的障害や精神障害の事業所の職員を利用してほしい。育成会がしている体験研修などを利用するなど、連携していければと思っている。 (市長) 次週に市長部局と教育委員会が一緒に進めている総合教育会議を開催する。その会議のメインテーマの1つに「インクルーシブ教育」を位置付けている。 中核市については、様々なテーマがあるが、3点ほど言及する。 まず保健所を設置し、精神衛生、精神保健のテーマを市が所管することができるようになった。昨年7月には「ひきこもり相談支援課」を立ち上げた。 また2千余りの事務権限が県から移譲されたが、その中には食品衛生関係なども多く含まれている。その関係で飲食店を含め多くの事業所と協力しながら、まちづくりをしやすくなった。 児童相談所も設置した。療育手帳の発行はこれまで県の権限であったが、市に移譲されたことにより、より早い段階でスムーズに判定や支援の実際の手続がスタートするようになってきた。このように、中核市に移行したことでできることが増えているし、さらに可能性が高まっている。 (教育長) まず1点目、学校が忙しいので実際に対応できるのかという質問についてだが、条文素案に書かれている内容について、部分的には既に取り組んでいる。日々工夫しながらやっている。運動会も昔に比べればなるべく皆一緒に参加するようになっている。人的な面では、介助員や特別支援教育指導員も、数は十分ではないかもしれないが、配置している。これからは、日常的なルーティン業務も見直しを進めていかなければいけない。学校の教育の質を高める意味でも、これまでやってきたから今まで通りやるということではなく、業務そのものが何のためにあるのか、誰のためにあるのか、どんな方法でどこまでやるのかということをしっかり見直してもらっている。 これから学校における学び方も一斉授業のやり方から、それぞれの子どもの状態に応じた学び方に徐々に変わってくる。すぐにというわけにはいかないが、教育改革の流れで、一人ひとりの個性に合わせた学び方に変わってくる。 また中核市移行により、教育分野で一番大きいのは研修。明石市独自の教育やまちづくりをしっかり理解していただくための研修もできる。学校の先生は、明石市の先生でもあり、明石市の一員でもある。まちづくりの理念をしっかり理解していただくためにも研修が明石市で行えるのは大きい。特に力を入れてやっている。 (市長) 明石市では、インクルーシブ的なテーマについて、研修の日を1日増やして対応している。学校の先生の負担軽減の観点からは、校務支援システム導入のため、年単位で1億円以上かかる費用を新年度予算に計上する。学校の先生の負担軽減だけでなく個々の子どもたちの学びと育ちをしっかり支える個別性に着目して、継続してしっかりデータとして残していく。一人ひとりの子どもの発達障害やアレルギーなどに着目し、それを支援するシステムを作る方向性を打ち出している。こういったことを通じて、より子どもに寄り添ってもらえる体制をとっていきたい。 (事務局) 本日時点の素案としてお示ししたが、これで完璧ではない。7月下旬に再度検討会を開催して、条文の内容を固めたい。それまで半年間あるので、検討会以外の場で事務局に意見をいただくなど様々な方法で委員の皆さんと意見交換をしたい。 (座長) まだまだ意見が出せるので、団体、個人問わず意見を出してほしい。 5当事者参画制度に係る意見交換 (ユニバーサルデザインのまちづくり部会副部会長) 当事者参画制度に係る意見交換に先だって「明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画」について報告する。現在、計画案のパブリックコメント中である。これから市民の意見をお伺いして最終的に年度内に完成させる予定である。とても大事な計画であり、ぜひ条例検討会の委員の皆さんにもパブリックコメントに参画してもらいたい。 国ではバリアフリーに関して行政的には大きく2つの流れがある。1つは、多機能トイレなどの基準に違反すれば罰則を伴う「規制行政」の流れ。規制行政の流れの中には兵庫県の「福祉のまちづくり条例」もある。建築物に関しては、この条例で規制がかかっている。もう1つは世界的に注目されている「計画行政」。これを我が国でも2000年のバリアフリー法改正の際に入れた。内容は、一定のエリアを指定してまちをバリアフリー化する計画を立てること。規制行政に基づく罰則では基準ギリギリのところでしか規制できないが、もっと高いレベルでユニバーサルをめざそうとするもので、行政、市民、事業者それぞれが集まって話し合い、市が責任を持って計画を作るといった仕組みを作ったのが2000年の法改正の特徴だ。それに基づいて明石市では2013年に地区ごとの詳細な基本構想を作っている。 その後国は、バリアフリー法を昨年改正して面白い仕組みを加えた。基本構想まで至らなくてもバリアフリーを促進する計画を立てるというもので、これをバリアフリーマスタープランと呼んでいる。それに基づいて明石市では全国に先駆けて「明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画」を立てる。この実行計画自体が国の法律でいうマスタープランに該当する。 バリアフリー全般、障害当事者全般についてもかなり広げた内容になっている。また災害時の問題にも力を入れた。災害時については防災関連部局だけでなく教育、福祉、土木などあらゆる部局が連携しないとできない。災害時のバリアフリーは普段からやっておかないと突然起こったものに対応できないといった視点を入れて、特に小中学校等を避難所として重視する災害時のバリアフリー対応に力を入れることを計画に記載した。地区ごとの詳細な計画は、次年度以降様々な方の意見を聞きながら改善していく。 (座長) パブリックコメントについてはホームページに公開されているので、ぜひ委員の皆さまにも意見を出していただければと思う。 (資料3事務局より説明) (委員) 意見が3つある。1つは条例の内容。非常によく考えて作られていると思う。ただ良いことは書いてあるが一言で言うとあまり印象に残らない。当事者参画は、わかりやすいことが非常に大切。少し文章が硬い。わかりやすいかと言えばわかりにくい。「インクルーシブ」の言葉自体は日本語にするととても難しいので、私はこれでいいと思う。それよりもそれぞれの項目でわかりやすく印象に残るような小見出しがあると理解しやすい。 あと2つは当事者参画に関するもの。1つは継続することが大切ということ。工事をする前に意見を求められたことはとても良いと思うが、1回きりだとそのとき思った不満とか不便なことを言うだけになってしまう。継続して行えれば不満を言うだけでなく、より建設的な意見を出してもらうことができる。当事者も勉強しながら発言できる。 もう1つは学習の重要性。兵庫県には「チェック&アドバイス制度」があるが、同制度では障害当事者や関係者が必要な知識を得るための学習をする。兵庫県には「福祉のまちづくり条例」がある。勉強した上で発言すると、より建設的で意味のある提案ができると思う。参画する側が勉強する場があれば良い。 (座長) 条例の内容と体裁について、間違いではないが心に響かないという大事なご指摘だ。つまり文章自体がバリアフリーになっていないということでもある。 (事務局) これまでの検討会の中で、座長から、インクルーシブには「わかりやすい」という意味もあるとお話しいただいている。1人がわかりにくいと思うということは、他の人にとっても必ずしもわかりやすくなっていない部分があるということ。条例上の体裁を維持することはもちろん大切だが、わかりやすくするために必要な提案を事務局でも考えたい。 (座長) とても大事なことを提案していただいた。事務局には頑張ってもらうが、委員の皆さんも総力を挙げて、易しい表現を含めて考えてみませんか。完成したときに「さすが明石市の条例は違う。」「こんなにわかりやすい条例ができた。」と言われるようになれば大成功。今の意見を大事にして私達委員も努力するということでどうか。 (事務局) わかりやすくなっていない原因の1つとして、公務員が作っているということもある。現時点の案が事務局の努力の結果ということも事実である。シンプルに「こう表現した方がいいのでは」など、皆さんからできる限りご意見をいただき進めていくのがいいと改めて思った。 (座長) 本質は薄めずに表現表記を工夫する。皆で考えていこう。 (委員) 当事者がモニターやアドバイザーになった場合に陥りがちなのが、自分の障害の事だけを話すということ。私もこの条例検討会や他のユニバーサルに関する様々な会議に参加し、様々な障害種別の方と関わるようになった。その中で個々の障害特性や他の障害種別の方の困りごと、できることなども考えて物事に取り組むことができるようになってきた。障害者が他の障害のことを知ったり、「インクルーシブ」について学んだりすることがとても大切なことだと思う。 あと、同じ障害者であっても中途障害者もいれば先天的な障害者もいる。視覚障害の場合であれば見え方は100人いれば100通りという言い方もする。様々な場で多くの意見を出せると良い。 (座長) どうすれば多くの人の参加を得ることができるか? (委員) 私個人の意見だが、団体の中で物事が進められていくと、これまでのやり方や与えられたものに皆がついていくことが多いように感じる。まず、代表者などリーダーの意識を変えていく研修などから具体的な部分に意識を向け、さらに不満だけでなく、前向きな方向性に意識を変えていくことが良いと思う。 (座長) この条例は行政計画にも一定の影響を与えるものとなるが、それだけでなく団体やリーダーのあり方も問われることになる。とても大事なことだ。 (委員) 兵庫県の「チェック&アドバイス制度」の場には、車いすユーザー、視覚障害者、聴覚障害者が各1名ずついる形が多い。異なる障害種別の方同士で話をするので、回数を重ねるごとに理解が進む面はある。 また、当事者と市が話し合うだけでは進まないところもある。支援者や事業者など幅広く現場の方たちと落ち着いて話し合える場が必要。そしてその場は、当事者だけでなく、バス運転手など現場の方々の要望も聴ける場であると良い。そうすれば、障害者にとっての不便の解消になるだけではなく、多くの人たちが暮らしやすいまちにつながると思う。 (座長) 現場と行政と当事者が会話をする仕組みがあれば、運用にもつながる。 もう1つは当事者の意見を聞くことによっていろんなことがわかるということ。いずれも大事な意見である。 (委員) 制度の運用を広める工夫として、自身の特性などを研修や啓発などの場で訴えていくことはとても良いこと。あと、当事者からの相談を受けるとどうしても既存の制度やサービスの中での調整に終始してしまう。「今はこの制度しかない。この枠内で生活するように」とか「この施設に入るように」など権利侵害につながることもあり得る。リアルな生活の中で何を実現していくべきかを当事者に聞いていくべきであり、様々なニーズを拾い上げていくためにも当事者参画は必要。既存のやり方では決まった生活スタイルを強いていくしかなかったが、5年10年経つと本当にそれでよかったのかと悩むところがある。最初から当事者の意見を拾い上げることを明石市で継続していってもらえればありがたい。 (座長) 既存の制度に障害者を合わせるのではなく、ニーズをいったん出してもらうことが必要。しかしながら相談の最前線では、多くの場合やはり制度ありき。そうすると制度を上回るような意見が出ることもあるが、条例ができた後にどういった取組が有効か。 (委員) 当事者の意見や地域の実態については、アンケートなどを利用して市も把握していると思うが、当事者の個別のニーズを普遍化させていくような場が必要。ニーズを積み上げていく仕組みを当事者が作っていくのが良いと思う。 (座長) この条例が当事者の本音のニーズを出しやすい条例になるかどうかが、ポイントとなる。 (委員) 現在明石市では障害当事者団体「あすく」を立ち上げている。市からの依頼を受けて、積極的に現地に行って意見を出すなどしている。今は条例に先駆けて動いている面もある。私はそう自負している。 (委員) 私の地域では、当事者に来てもらって、障害の内容を皆さんに知ってもらう企画を進めている。1つ目は「福祉サマースクール」といって、30人程度の興味のある方に来てもらって当事者の声を聞いてもらう取組。2つ目は「ボランティア交流会」といって、60人程度のボランティア団体の集まりで3人の障害当事者に話をしてもらう取組。結局興味がなければ「SDGs」も「インクルーシブ」も聞こうという意識にならない。身近にいる人達でもまだまだ意識は低い。当事者の声を聴いて興味を持ってもらい、「インクルーシブ条例」ができた後に広がりを持たせたい。 (オブザーバー) 昨年度、中央体育会館の改修工事において当事者参画による検証を実施した。この検討会や街歩きなどでも当事者との意見交換をする機会があるが、その中で気付きや課題を見つけてしまう。我々では気付くことのできない課題や当事者の困り事がある。良いものを作り上げるには当事者参画が1番効果的である。良い制度にしていきたい。 しかし、新しく仕組みを作っていくには、我々技術職員だけでは難しいところがある。福祉部局に委ねても難しいというのが私の意見だ。継続するには関係部署で連携してやっていかないといけない。 我々技術職員は、基準を定める条例に基づいて設計をし、工事を進めていく。しかし、それだけでは気付かないところがあると感じてもいる。それを解消するために仕組みを作り、関係部署での意見交換や当事者との意見交換をしていく。その際に、逆に行政側の困り事も共有し、知ってもらいながら進めていければ良い。 (委員) 手話を知らない中途失聴難聴者の場合は、当事者である私達が参加を呼び掛けるのに苦労している。「手話言語・障害者コミュニケーション条例」「障害者配慮条例」ができ、そして「インクルーシブ条例」の検討を進める中で、難聴者の会の皆さんに「こういう条例があるから社会へ参加しなさいよ」と呼びかけていく必要があるが、かなりしんどい。障害者名簿があっても個人情報保護の問題があるし、いろいろイベントや集会をしようとパンフレットを配布して広報をしても、なかなか集まってくれない。一人ひとりの中途失聴難聴者は家で過ごしている人も多いと思う。 要約筆記の派遣制度はあるが利用が少ない。私は30代から、ファックス、テレビの字幕、そして要約筆記の派遣を推進する活動をしている。制度化されたが、なかなか要約筆記の需要がない。手話と比べたら10分の1ぐらいしかない。これを中途失聴難聴者に浸透させていくのは大変だと思っている。 (ユニバーサルデザインのまちづくり部会副部会長) 「日本福祉のまちづくり学会」では、長年にわたった研究活動の最重要ポイントの1つが「バリアフリーエキスパートの養成」である。行政が当事者をサポートし、当事者が的確に自身の障害だけでなく、他の障害のことも伝えることができるようにする。バリアフリーに関するエキスパートを養成することによって、当事者参画がスムーズかつ的確にされていく。例えば講習会などをする場合は、学会も連携できる可能性もある。 市民の意識が上がっても仕組みができないと進まない。行政だと熱心な課長が代わると空気がガラッと変わるということが頻繁にある。継続改善をどうやって進めるか、仕組みを検討していきたい。 (ユニバーサルデザインのまちづくり部会部会長) 実質的な当事者参画をどう進めていくべきかについては、ポイントが2つある。オブザーバーからも非常に心強い発言をいただいたが、まず、当事者参画制度が明石の様々な施策や行政にリンクしていく取組になって欲しい。オール明石市として当事者参画を進めていってほしい。2点目は自主的な当事者参画。当事者自身も学び、実際の評価をして提案するといったサイクルに基づく制度が必要。具体的には、他の障害や他の自治体でやっていることも学びながら評価し、提案するということである。このように、自主的な当事者参画が見える仕組みであってほしい。 (心のバリアフリー部会部会長) 建造物の現場の設計担当者と行政と障害当事者との間でうまくやらないと意見が反映されない。できた建物をチェックするスキルを持っている当事者が必要。一方で建物ができるまで一緒に話を聞きながら進めていける当事者も必要。障害当事者も勉強してそれぞれスポットに合った参画をして建設的な意見を言って前向きな仕組みを作っていければ良い。 (市長) まず個々のニーズや思いを受け止め、制度が不十分であれば制度そのものをさらに発展させるという発想に立つ必要がある。意見を聞くだけで終わるのでなく、個別性が高いニーズをしっかり受け止めて、発想していく必要性を特に強く感じた。 今後のことについて手短に説明する。休憩時間に新年度予算についての資料を配らせていただいた。この条例検討の議論はどこに繋がるのかといった観点で聞いていただければと思う。あくまで予算案の考え方なので議会の審議を経てからにはなるが、市長部局の思いとしては「インクルーシブ条例の制定に向けた検討」を重点的な取組と位置付けている。また関連するテーマでは、成年後見制度の活用促進も重点的な取組として条例制定を視野に入れて進めていきたい。本のまちづくりでは「読書バリアフリー条例」の検討を本格的にスタートしていく。さらに、ホームドアの設置促進やバリアフリー化の促進を進めていきたい。 そういった中、明石のまちは好循環の状況にある。数値では91.2%の市民が住みやすいとされている。かねて8割程度だったのが一気に住みやすいと答えていただいている数が増えてきたわけだが、私の思いとしてはまさにインクルーシブ。誰1人排除しない観点からして91.2%だからいいという発想ではなく、100?91.2のむしろ8.8%の方が未だ住みやすいと答えていないことに着目する必要性を感じている。 「SDGs未来安心都市明石」として「いつまでもすべての人にやさしいまちをみんなで」というキャッチコピーを謳っているが、「すべての人=インクルーシブ」としている。「インクルーシブ」の日本語訳については大変悩ましいテーマ。辞書では「包み込む」「包摂」「包括」などだが、決してわかりやすいとは言えない。私の友人は「配慮」という2文字で表す提案をしているが、私自身はどちらかというと「安心」「大丈夫」という表現も切り口の1つと考えている。いずれにしても明石市長としては今進めているインクルーシブ条例づくりのプロセスを、今後のまちづくりにとって当たり前にしていくという思いを持って進めていきたい。 6座長総括 やまゆり園事件の裁判が始まった。優生保護法の被害問題などもある。共通しているのは誤った障害者観だ。誤った障害者観は障害者の置かれている状況からの帰結でもある。このインクルーシブ条例は、誤った障害者観を変える前に障害者の置かれている状況を変えようとするもの。言い換えれば明石市の景観が変わるといった感じ。私達は25名のメンバーがおり、歴史的な局面にいる。非常に大事なこの障害者観と直結する話をしている。もっとわかりやすくといった厳しいコメントをいただいている。一部の人を排除した文書では意味がない。もちろん努力には限界がある。その努力した過程が大事だ。 表現の問題では、かつて「ノーマライゼーション」をどう訳すかで正常化とか常態化とかどうもしっくりこなかった。日本語には限界があるので、そのまま使ってこの言葉をみんなが正しく使うように運動をした。今回も「インクルーシブ」の言葉に込められている意味を私達がどれだけ伝えられるか、すなわち意味を伝える力が私達に問われているのではと思う。市長が「大丈夫、安心」と言われていたが私は大和言葉では「分けない」と表すと思っている。 最後に7月に条例検討会があるが、この間皆さん黙っていてはいけない。市役所内では、「インクルーシブ」から1番遠い部署がどれくらい関心を持てるか、どう受け止めるのかが重要になってくる。団体の所属する方も、ぜひ団体に持ち帰って「インクルーシブ」の理念について広めていこう。