資料2 (仮称)あかしインクルーシブ条例 素案  2019年8月開催の前回検討会から半年近くが経過しました。  この間、具体的な施策に結びつく実効性のある条例をめざすため、条例の制定を待たず様々な施策展開を検討し、また個別テーマにつき意見交換を進めてきたところです。  これらの経緯やこれまでの検討会での意見交換を踏まえ、現時点の条文案を素案として再構成しましたので、お示しします。  この内容をベースにした検討を、検討会で今後進めていきます。 目的                                                               この条例は、様々な状況や状態に置かれている市民の多様性が尊重されることで、すべての市民が異なる価値観を認め合うことができ、かつ、誰もが持てる力を発揮できるようなまちづくりを進めるために必要な事項を定めることにより、障害者等その他のすべての市民が大切にされ、誰も取り残されることのないインクルーシブ社会を実現することを目的とします。 基本理念                                                           @ インクルーシブ社会は、障害者等(障害者のほか日常生活や社会生活の様々な場面において支援を必要とする状態にある者をいいます。)が、他の者との平等を基礎として、必要とする支援を受けられることを基本として実現されなければならないものとします。  A インクルーシブ社会は、障害者等が支援される存在としてのみ捉えられるのではなく、その自己決定権が尊重され、その力が地域社会全体によい効果を生み出すために必要であると理解されることを基本として実現されなければならないものとします。  B インクルーシブ社会は、誰もが日常生活や社会生活の様々な場面において支援を必要とする状態になり得るとの認識のもと、障害者等が必要なときに必要な支援を受けられることが、誰もが心から安心して暮らせる社会につながると理解されることを基本として実現されなければならないものとします。  C インクルーシブ社会は、障害者等を含む誰もが、それぞれの置かれた状況に応じて個性を活かし、持てる力を最大限に発揮することを旨として実現されなければならないものとします。 関係者の責務                                                       @市の責務  ア 市は、基本理念にのっとり、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を推進するものとします。  イ 市は、職員に対して研修等を行い、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を推進するために必要な職員一人ひとりのインクルーシブ社会の実現に係る意識の向上を図るものとします。  ウ 市は、総合的かつ計画的にインクルーシブ社会の実現に向けた施策を推進するために、市の関係部局の横断的かつ一体的な連携を促進するものとします。 A市民の責務  ア 市民は、自らがインクルーシブ社会の実現に向けて重要な役割を果たすという認識のもと、基本理念に対する理解を深めるとともに、積極的にインクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進するよう努めなければならないものとします。  イ 市民は、市が実施するインクルーシブ社会の実現に向けた施策に協力するよう努めなければならないものとします。 B事業者の責務  ア 事業者は、自らがソフト及びハードの両面から特にユニバーサルデザインのまちづくりに貢献することができるという認識のもと、基本理念に対する理解を深めるとともに、積極的にインクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進するよう努めなければならないものとします。  イ 事業者は、市が実施するインクルーシブ社会の実現に向けた施策に協力するよう努めなければならないものとします。  ウ 事業者は、市が実施するインクルーシブ社会の実現に向けた施策に協力するよう努めるものとします。 インクルーシブ社会の実現に向けた重要なポイント                         @当事者参画  ア インクルーシブ社会の実現に向けた取組の効果的な実施には、障害者等の参画を得ることの重要性及び有効性が障害者等を含むすべての市民に理解されるとともに、当該理解のもと、様々な立場の障害者等により、当該取組への積極的な参画が行われなければならないものとします。  イ 障害者等の参画は、障害者等の意見を一方的に聴くだけでなく、障害者等との対話を通じ、共にインクルーシブ社会の実現を目指すという姿勢で行われなければならないものとします。  ウ インクルーシブ社会の実現に向けた取組について、障害者等の参画を得た場合は、当該参画に基づく障害者等のニーズを踏まえ、当該取組の検討が行われなければならないものとします。  エ 市は、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を実施する場合は、その過程において、障害者等が参画できる機会の提供を確保するものとします。  オ 市は、インクルーシブ社会の実現に向けた施策を実施した場合は、障害者等の参画を得て、その検証及び評価を行うよう努めなければならないものとします。 A情報の利用  ア インクルーシブ社会の実現には、必要な情報が障害者等に伝わることの重要性が認識され、それが確保されるよう配慮されなければならないものとします。  イ 市は、障害者等が情報の利用について多種多様なニーズを有していることを認識し、当該ニーズを的確に把握し、必要な情報を障害者等に適切に提供するよう努めなければならないものとします。  ウ 市は、障害者等が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるよう、情報伝達手段の確保等に関し、必要な施策を講じなければならないものとします。  エ ウに掲げる必要な施策のうち、手話等コミュニケーション手段(独自言語としての手話、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、平易な表現、代筆及び代読その他日常生活又は社会参加を行う場合に必要とされる補助的及び代替的な手段としての情報及びコミュニケーション支援用具等をいいます。)の推進に関し必要な事項は、制定済の「手話言語・障害者コミュニケーション条例(手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例)」に基づき、促進していきます。 B関係機関等の連携・協力  ア 市、市民、事業者及び関係機関は、相互に協力し、及び連携し、一体となって、インクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進しなければならないものとします。  イ 市は、総合的かつ計画的にインクルーシブ社会の実現に向けた取組を推進するために、市、市民、事業者及び関係機関の連携を促進しなければならないものとします。 各論(個別テーマ)                                                   @インクルーシブ教育の推進  ア すべての子どもたちが、地域の学校で共に学ぶことを基本とし、かつ、安心して学び、自分らしさを発揮できる学校教育(以下「インクルーシブ教育」という。)を実現するには、市、学校、関係機関等の連携のもと、インクルーシブ教育に係る考え方の共有を図るとともに、子どもたちにとって学びやすい環境づくりが図られなければならないものとします。  イ 市は、学校、関係機関等の連携に向けた取組、教職員の理解を深めるための取組その他のインクルーシブ教育を実現するために必要な学校、関係機関等に対する取組を推進するものとします。  ウ 市は、低年齢児の多様性に関する理解が、長期的な観点からインクルーシブ社会の実現には重要であるという認識のもと、すべての子どもが共に過ごす時間を確保することなどを通じて、児童に対して多様性への理解を深める取組を実施するものとします。  エ 市は、すべての子どもたちが、地域の学校で共に学ぶことができる環境及び他の者との平等を基礎として学びの機会について選択肢を持つことができる環境を整えるものとします。  オ 市は、専門性を持つ人的資源を確保するなどイからエまでに記載の取組を推進するために必要な措置を講じるものとします。 A災害時の要配慮者支援  ア 災害発生時に一人でも多くの災害時要配慮者(障害者等のうち災害時に特に配慮を要する者をいいます。以下同じ。)の安全が確保されるためには、平常時における地域住民同士のつながりの重要性が市、市民、事業者、関係機関等に認識されなければならないものとします。  イ 市は、災害発生時において、災害時要配慮者の避難及び避難生活が適切に支援されるよう、地域住民と連携しながら、日頃から地域住民同士が連携協力しやすい環境づくりに努めるものとします。  ウ 市は、イに掲げる取組のほか、災害時要配慮者に対する災害発生時における支援に係る施策を推進するものとします。 B障害者差別解消の取組  ア 市は、合理的配慮の提供(障害者が現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合において、当該障害者が障害者でない者と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、当該障害者の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいいます。以下同じ。)の支援をはじめとする障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進するものとします。  イ 合理的配慮の提供その他の障害を理由とする差別の解消に必要な事項は、制定済の「障害者配慮条例(明石市障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例)」に基づき、促進していきます。 C総合相談支援体制の整備等  ア 市は、障害者等からの相談に総合的に対応することができるよう、関係部局の横断的な連携のもと、市の相談体制を整備するものとします。  イ 市は、アに記載の相談体制の整備においては、適切な相談対応には関係機関及び地域住民の力が必要かつ重要であるという認識のもと、これらの者と連携するものとします。  ウ 市は、障害者等が抱える課題が深刻化する前に当該課題を顕在化させるため、適切な支援を行い、可能な限り障害者等本人自らの力による解決に導くよう努めるものとします。 D福祉人材の育成及び確保  ア 市は、福祉に関する知識又は介護等の技能を有する者(以下「福祉人材」といいます。)の知識及び技能の必要性を認識し、適切に評価するものとします。  イ 市は、継続的な研修の実施等必要な施策の実施により、積極的に福祉人材の養成及び質の向上を図り、並びに福祉人材の確保に関する施策の実施に努めるものとします。 E障害者に対する就労支援   市は、市が雇用する障害者の労働環境を整備するとともに、事業者、関係機関等と相互に連携して、それぞれの障害特性に応じた障害者の適切な就労の機会の確保に努めるものとします。 F地域生活関連施設の整備等  ア 地域生活関連施設(官公署、学校等の公共施設、事業所、事務所等の施設、病院、集会場、物品販売業又はサービス業を営む店舗、宿泊施設、鉄道の駅、道路、公園その他の不特定又は多数の者が利用する施設をいいます。以下同じ。)は、障害者等をはじめすべての市民の尊厳が大切にされ、誰もが分け隔てなく利用できるよう配慮されたものでなければならないものとします。  イ 地域生活関連施設を管理する者は、障害者等をはじめすべての市民が当該施設を安全かつ快適に利用できるよう、当該施設の職員に対する障害者等の理解に係る研修その他の必要な取組を実施するよう努めるものします。  ウ 市は、障害者等及び地域住民のニーズを踏まえて、地域生活関連施設の整備に係る施策及びイに記載の取組を支援する施策の実施に努めるものとします。 G移動手段の確保   市は、障害者等をはじめすべての市民の安全で安心かつ自由な移動を実現するため、切れ目のない移動手段の確保及び整備(移動するために必要な情報の確保及び情報環境の整備を含みます。)に努めるものとします。 H移動等円滑化促進方針及び基本構想との関係   市長は、移動等円滑化促進方針(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第24条の2第1項に規定する移動等円滑化促進方針をいいます。)又は基本構想(同法第25条第1項に規定する基本構想をいいます。)を作成した場合は、これらに従ってユニバーサルデザインのまちづくりを推進しなければならないものとします。 Iユニバーサルツーリズムの促進  ア 市は、障害の有無及び程度、年齢、性別等にかかわらず、誰もが安心して楽しむことができる旅行を実現するための環境の整備に努めるとともに、当該旅行の普及及び促進に努めるものとします。  イ 市は、アに記載の環境の整備並びに普及及び促進に当たっては、様々な分野の関係機関と連携するものとします。