明石市防災会議  ジェンダーと防災に係る 専門委員会議 提言書(案) 〜すべての人が支え合う防災まちづくりの実現に向けて〜 2022年(令和4年)7月 日 目次 はじめに - 1 - 1 設置の趣旨 - 1 - 2 議論内容等 - 2 - 第1章 提言について - 3 - 1提言の考え方 - 3 - 2提言項目 - 3 - 第2章 地域における防災力の強化 - 4 - 1ジェンダー視点を取り入れた多様な主体の地域の防災活動へ参画 - 4 - 2相互扶助しやすい関係の構築 - 5 - 3若い世代の防災意識向上の啓発活動 - 7 - 第3章 ジェンダー平等の視点に立った避難行動及び避難所運営 - 9 - 1災害発生後の情報に関する多様な発信 - 9 - 2避難所開設・運営 - 10 - 3在宅避難者等に対する避難支援 - 11 - 4災害発生期から生活再建期まで段階に応じた相談体制の構築 - 13 - 第4章 市職員が災害対応に安心して取り組める環境構築 - 15 - 1災害対策本部等の組織見直し - 15 - 2子育て、介護等を抱える職員が安心して災害対応にあたれる環境の構築 - 16 - 3日頃からの市役所の取組等 - 17 - 4外部支援の効果的な運用 - 17 - おわりに - 19 - ジェンダーと防災に係る専門委員会議 出席者一覧 - 20 - はじめに 1設置の趣旨  災害はいつでも起こりうる脅威です。兵庫県南部地震による被害を経験した明石市として、将来の災害を見据え、子どもや妊婦、高齢者、障害のある方等を含め、性別・年齢・障害の有無等の多様な観点を踏まえた災害対策をとりまとめていくことが重要です。  また、災害時は、平時のくらしにおける課題が悪化・顕在化する側面もあり、実際、過去の災害では、避難所における女性への役割分担の固定化や性暴力の発生、男性に比べて多い災害関連死等の問題がありました。  明石市では、SDGs未来安心都市・明石として、SDGsの基本原則でもあるジェンダー平等を実現するため、2021年8月より庁内にジェンダー平等プロジェクトチームを立ち上げ議論を重ねてこられました。とりわけ防災の分野においてはジェンダー平等や多様性の観点が重要ではあるものの、これまでジェンダー視点での議論が積極的になされてこなかったと認識しています。  これらの背景を踏まえ、ジェンダーや障害等の多様な視点から求められる対策について明石市防災会議に専門委員を設置し、当該専門委員の会議(以下「専門委員会議」という。)において議論してきました。  この議論の結果を、2022年8月に改訂予定の明石市地域防災計画をはじめとし、各事業等に反映させていただきたいと考え提言します。 2議論内容等 (1)専門委員の選任について  明石市防災会議の委員は条例で規定されていますが、令和3年度の委員構成は、全体で30名中女性は5名と2割に満たない比率であり、女性の参画が課題となっています。今回は、防災・ジェンダーに関する有識者、学校、保健師、地域、学生等から9名の専門委員を選任し、議題に応じ臨時委員を参集しました。 (2)専門委員会議の開催状況   @第1回専門委員会議 令和4年2月2日(水)   A第2回専門委員会議 令和4年3月3日(木)   B第3回専門委員会議 令和4年6月1日(水)   C第4回専門委員会議 令和4年7月8日(金) (3)主な検討内容 @ ジェンダー視点を取り入れた避難所運営 A 10年後の明石市にふさわしい防災・減災対策 B 誰一人として取り残さない生活再建のあり方について C 障害者、要配慮者の防災対策(在宅避難対策のあり方等) D 職員が安心して災害対応にあたることができる環境の構築 (4)障害者・要配慮者の視点からの防災対策ワークショップ  令和4年4月25日(月)に開催。  障害当事者、障害者支援者、大学生、民生委員、市役所職員等32名が参加し、次の3点について意見交換しました。 @ 避難所への避難における問題、解決手段 A 自宅での避難における問題、解決手段 B 避難所生活における問題、解決手段 第1章 提言について 1 提言の考え方  専門委員会議で出された意見等を、@市及び地域の日頃からの取組、A災害時における地域の取組、B災害時における市の取組の3つの区分に再整理し、提言します。3つの区分のすべてにおいて、女性、子ども、高齢者、障害者等の要配慮者を含めた、多様な主体の視点をもって、取りまとめました。   2 提言項目  市及び地域の日頃からの取組では、地域におけるすべての市民の防災力を強化すること、災害時における地域の取組では、ジェンダー視点に立った避難及び避難所運営をすること、災害時における市の取組では、市職員が安心して取り組める環境を作ることが柱となると考え、次の3つを大項目としました。 (1)地域における防災力の強化       (第2章) (2)ジェンダー平等の視点に立った避難行動及び避難所運営  (第3章) (3)市職員が災害対応に安心して取り組める環境構築 (第4章) ※提言の中で「(⇒ 市)」の記号は、明石市地域防災計画に反映してもらいたいこと等、「(⇒ 市、地域)」の記号は、市、校区、自治会、各団体に取り組んでもらいたいこと、「(⇒ 地域)」は校区、自治会、各団体等に取り組んでもらいたいことを示しました。 第2章 地域における防災力の強化     〜誰一人として取り残さない災害対応へ〜      1 ジェンダー視点を取り入れた多様な主体の地域の防災活動へ参画 (1)提言 ◇ 現状、地域の防災活動を担うのは男性が多いが、今後は女性を含む多様な主体が自発的に地域の防災活動に関わりたくなる仕組みを作り、地域防災の担い手を増やす                   (⇒ 地域、市) (2)提言に至った背景等  過去の災害時には、避難所で乳幼児連れの女性や障害のある女性等に対して、必要な配慮が提供されないことにより、様々な問題が発生したことが報告されています。偏った属性による観点からの対策では限界があります。ジェンダーの視点を取り入れた避難所運営計画はもとより、災害現場のリーダーに例えば男女共に充てることで、避難所運営等に関わる職員が的確な指示のもと、女性を含む多様な市民の困りごとに寄り添った対応が可能になります。  特に明石では、市内28校区全てに「まちづくり協議会(以下「まち協」という。)」があり、地域の防災組織としての役割を担っていることから、本枠組みを活用して、地域の防災リーダーを育成していくことが有用です。その際には偏った性ではなく、多様な主体がリーダーとなれるよう、環境整備や育成を行うことが期待されます。  また、まち協や自治会の高齢化や加入率の低下傾向が続く中、若い世代が自発的に地域の防災活動に参加したくなる仕組みづくりも重要です。   2 相互扶助しやすい関係の構築 (1)提言 ◇ 災害時に円滑な近助を達成するため、日頃から隣保の関係構築に努めるとともに、個別避難計画の作成を促進                   (⇒ 市、地域) ◇ 各地域が日頃から防災まちづくりに気軽に取り組めるよう、防災まちづくりハンドブックの作成(⇒ 市、地域) ◇ 上記ハンドブックを活用し、地域での防災まちづくりの活動や多様な主体が参加しやすい防災訓練実施を働きかけ                    (⇒ 市、地域) ◇ 小学校区毎の地域カルテの拡充   (⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等  発災直後においては、近隣の人の安否が確認できなかったり、助けを必要とする方に助けが届かないことが問題となります。日頃から隣近所が顔見せを行い、お互いを知り合うことが大切であり、そのためにはまちづくり協議会や自治会の活動が非常に重要です。  特に障害者や要介護者等にとって、平常時の地域の繋がりは、いざという時の近所同士の助け合いに繋がります。個別避難計画の作成はそのきっかけ作りの面でも非常に有効です。  しかし地域によっては「防災には関心があるがどこから取り組んで良いかわからない」、「まち協と自治会の活動が重複している」という場合もあり、防災まちづくりをどのような観点で取り組むのかという考え方を示したハンドブックの作成が有効です。  特に発災後の避難所には、市や学校の職員、避難者、他自治体からの応援職員、ボランティア等様々な立場の人が集まるものの、それぞれが自分の役割が分からず現場が混乱することが過去の災害でも多く見られました。  避難所は人を収容するのみの施設ではなく災害時に地域拠点となる場所です。避難所を地域と自治体が外部ボランティアも活用しながらどのように運用していくのか、必要機能や役割等の考え方を事前に整理しハンドブックに盛り込んでおくことが有効です。  平時の防災訓練についても、ハンドブックも活用しつつ、乳幼児連れや障害者を含む多様な住民が参加することが理想です。そのためには現場で託児サービスを提供したり、イベント型(消火訓練、炊き出し等)よりも避難所開設やワークショップ実施等の実践型の訓練にするなど、誰もが安心して参加でき、また参加を通じて隣同士の顔が見える関係が築ける場とする工夫が必要です。  また、個別の市民情報は個人情報保護の観点から広く関係者で共有することは難しいものの、地域単位で最低限共有したいデータ (人口構成や避難所情報、要配慮者の人数等)を「地域カルテ」としてまとめ共有しておくことで、各地域での防災対策の議論がしやすくなります。 3 若い世代の防災意識向上の啓発活動 (1)提言 ◇ 子どもの頃から防災を身近な自分ごととして関心を持ってもらえるよう、楽しく分かりやすい教材を活用した防災教育の推進           (⇒ 市、地域) ◇ 若い世代の防災意識を高めるため、参加しやすい地域防災訓練の場を提供し、避難、避難所運営等の活動への参加を促進  (⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等  市民に対する防災意識の啓発としては、防災情報を掲載したハザードマップの全戸配布や、年1回の地域への出前講座に限られており、十分とは言えません。仮に数十年後に大規模災害が発生すると想定した場合、その災害対応を担うのは今の現役世代ではなく、子ども達の世代であり、若い世代含めた防災意識の向上は重要なテーマです。  防災は難しく怖いものと思いがちですが、楽しみながら学び、自分のために活動することで、おのずと若い世代が地域とつながり、地域の一員として必要な存在であると感じられるのではないでしょうか。明石に住んで、地域に愛着を持ち、まちをより良くしたい、という思いが連なることは、ひいては地域の助け合いの力(共助)や防災力の向上につながります。  例えば、楽しく学べる防災教材を活用した防災教育や、若い世代も参加しやすい工夫をした地域防災訓練を行うことで、自然と世代や属性を超えた市民が集まり触れ合い、「自分の育った地域にはこんなに多様な人が住んでいたのか、この人たちのために地域をもっと良くしたい」と感じられると思います。  既に明石市内においては地域の中高生がオリジナルで防災ゲームや防災教材を作成する等、独自の取組みが進められており、これらの取組みとも連携し、地域の防災訓練等に積極的に若者が参加し、地域と共に防災を考える機会を創出することが有用です。 第3章 ジェンダー平等の視点に立った避難行動及び避難所運営 1 災害発生後の情報に関する多様な発信 (1)提言 ◇ 障害者を含む全ての方々が情報を確実に得られる伝達方法の検討(デジタルツール等を含む)    (⇒ 市) ◇ あらゆる避難者が情報を得るため、校区内の集会所等を情報発信拠点となるように努めること (⇒ 市、地域) ◇ 逃げ遅れを回避するため、自らの安全確保後、近隣相互、特に障害者、高齢者への声掛け      (⇒ 地域) (2)提言に至った背景等  聴覚障害者の多くは、豪雨、暴風の音や防災無線が聞こえないため災害の状況を把握しづらく、避難の初動が遅れるケースも少なくありません。また、高齢者の中には、スマートフォン等の扱いが苦手なためインターネットから情報を得られない人もおられ、同様の懸念があります。特に視聴覚障害者を想定した多様な情報伝達方法の確保やデジタルツールの改善には早急に取り組むべきであると考えます。  また、知的障害者や精神障害者にとっては、避難所に避難すること自体ハードルが高く、在宅避難や車中避難にならざるを得ないことが多くなります。また、いざという時に「助けて」と言えない障害者もいるため、校区内の集会所等を活用し、災害や支援に係る情報を自ら得やすい環境を作ることも必要と考えます。  このような環境作りに加え、防災訓練等を活用し、子どもや高齢者、障害者も含め、皆が集い顔見せできる機会を増やすことも、地域住民が相互に連携する関係づくりの一助になります。   2 避難所開設・運営 (1)提言 ◇ 高齢者、子育て世代、障害者を含む全ての避難者がお互いに助け合える避難所運営方法の検討(手引書、ハンドブックの作成)              (⇒ 市) ◇ 外部ボランティアがその場に応じて力を発揮して役割を担っていただくための支援      (⇒ 市、地域) ◇ 避難所運営と学校教育再開のバランスを踏まえた計画の作成                (⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等  東日本大震災では、関連死の約半数が、避難所生活での肉体的・精神的疲労によるものです。これは、トイレのにおい、汚れや怖さ等による体調不良、手洗い不十分等による感染症等の衛生の問題、女性更衣室、授乳室がない環境の問題、おむつ、生理用品の不足等の物資の問題等に起因し、避難所で取り組むべき課題と言えます。また、避難所に子どもの遊び場等、子どもの話を聞いてあげられる場をつくることで、虐待やDVに気づくきっかけとする等、子どもの安全確保のための環境整備も重要です。  これらの避難所の円滑な運営は、市役所職員等一部の人のみで対応できるものではなく、地域やボランティア等多様な方々のサポートにより成り立つもので、そのためには誰でも見やすくわかりやすい避難所手引書の存在が有用です。また発災後の混乱時には分量の多い手引書は読まれづらいことから、最低限必要なポイントをまとめた概要版(ハンドブック)を作成する等、多様な方々が避難所運営に参画できるための工夫が求められます。  また、発災後は多くの外部ボランティアが来ることが想定されますが、その方々がその場に応じて役割を担っていただけるよう、支援して欲しいことを役割として示すことが重要です。  災害も落ち着きを見せてくると、避難所運営と学校教育のバランスが問題となります。学校は一日も早く授業を再開したいところですが、ある程度は避難者の避難所生活を維持することも必要です。従って、避難者の在宅避難も想定したうえで、避難所運営の統廃合、規模縮小等のタイムスケジュールを提示し、学校、避難所ともに認識を共有し、次の行動に移行することが有用であると考えます。   3 在宅避難者等に対する避難支援 (1)提言 ◇ 在宅避難、車中避難者含め支援を必要とする人が、地域や行政に対して声をあげられる仕組みの構築(⇒ 市、地域) ◇ 在宅避難者等が情報交換、物資受領を行うため、近傍の集会所、公園等を一時的な拠点とするように努めること                                       (⇒ 市、地域) ◇ 明石が平常時から実施している各種サービスも活かした災害対応                 (⇒ 市) ◇ より多くの避難行動要支援者を確実に避難させるため、個別避難計画の作成を促進         (⇒ 市) (2)提言に至った背景等  今回実施したワークショップにおける意見等によると、障害者等支援を必要とする方は、在宅避難を選ぶ傾向が比較的強くみられました。理由としては、指定避難所への移動が困難なことや、避難所での集団生活で迷惑をかけてしまうのではないかという心配や遠慮によるものもきかれました。このように在宅避難を選択せざるを得ない避難者を想定すると、在宅避難の長期化に伴う情報や物資の不足は否めません。その際支援が必要であることを近隣等に知ってもらうことで、地域や行政が円滑にサポートすることが可能になります。また避難者は「支援する側」「支援される側」と二元的に分けられるものではなく、個別事項に応じて、支援を必要とする方が時にはサポートする側に回る場合もあり、双方向コミュニケーションに基づく支えあいが大切です。  また、一軒一軒すべての在宅避難者への巡回は困難であるため、在宅場所の近傍(又は自治会)に一時的に避難拠点を設け、情報交換や配分を行う方策やその拠点情報を自治体側が迅速に把握できる仕組みの構築は有効です。  加えて、在宅避難者相互の物品等のシェア、子どもの預かり合い、拠点から自宅等への物資のお届け等ができる環境作りも有用です。また、情報伝達が不十分であることから、スムースに避難できない障害者も想定されるため、近隣の積極的なサポートができる環境の構築も必要です。  明石市では、平常時から、すべての人に優しいまちの実現に向け、様々な施策を実施しています。例えば0歳児の見守り訪問として「おむつ定期便」をコープこうべと連携協力して実施したり、市内28校区全てでこども食堂が開設されています。地域・住民・市役所との接点となっているこのような取組みは平常時だけではなく、災害発生の場面でも活かせるものだと考えています。  また、障害者、要介護者等は避難生活が長期化すると、常備薬の欠乏等やかかりつけ医の長期休診等の問題が出てき得ますので、個別避難計画を整備しておくことが、個別ニーズの見える化にもつながります。   4 災害発生期から生活再建期まで段階に応じた相談体制の構築 (1)提言 ◇ 災害発生後、避難生活初期・中長期、生活再建期の各段階に応じた相談体制と庁内連携ネットワークの構築 (⇒ 市) ◇ 悩みや要望を我慢せず、早めに相談できる仕組みと、孤立を防ぐ取組 (⇒ 市) * 相談員(職員、ボランティア)による避難所等の巡回声掛け(⇒ 市) * 必要な支援が届きにくい在宅避難者、仮設住宅被災者への巡回等の取組 (⇒ 市、地域) * 避難所開設時から子どもの遊び場を設置(⇒ 市) * 生活再建期には雇用創出を促す対策を検討(⇒ 市) (2)提言に至った背景  被災者のニーズや困りごとは、被災直後から生活再建期まで、時間の経過とともに刻々と変化していくため、その時期に対応したきめ細やかな相談を行う支援体制やニーズを取りこぼさないための市役所関係部署内での認識共有が重要です。  また、相談窓口を設けても、事務的な窓口対応では、避難当事者は、なかなか本当の悩み、苦しみ、要望を訴えることできず、自分でギリギリまで我慢することが多くなります。乳幼児の保護者等、妊婦、シングルマザー、DV被害者、高齢者、障害者等は特に配慮が必要です。構えて待つのではなく、相談員自らが声をかけ、「要望を言ってくれることで他の人も助かる」と話しかけると当該者は相談しやすくなります。兵庫県南部地震では、「仮設住宅ケアネット」により仮設住宅の高齢者や障害者を支える取組を行い、この時も、市職員ではない相談員が、直接、各仮設住宅を訪問して、高齢者、障害者のニーズを把握し有効でした。  また、自分の気持ちをうまく表現できない子どももいることから、避難所開設の際は、最初から子どもの遊び場を作っておくことを提案します。子どもが安心して過ごせる空間があることで、虐待やDVに気づくきっかけになるかもしれません。  生活再建の時期には、地域で雇用を創出する取組も検討が必要と考えます。 第4章 市職員が災害対応に安心して取り組める環境構築 1 災害対策本部等の組織見直し (1)提言 ◇ 長期間にわたり効果的な災害対応を行うため、初期混乱期、組織的活動期毎の災害対策本部の組織及び分掌事務を準備                    (⇒ 市) ◇ 適度の休養及び家庭事情への対応に配慮するため、勤務シフト制を導入               (⇒ 市) (2)提言に至った背景等  職員の中には、育児や介護の事情があり、即時にかつ長期に災害対応するのに制約がある職員もいます。特に、明石市における保健師職員は現状すべて女性であり、災害時には育児、介護等の事情を踏まえるとその可動率は7割程度であり、すべての避難所に対し十分に行き渡った支援は困難となると予想されます。  また、児童虐待やDV担当に関する業務は、災害が落ち着いた段階(救急医療対応から生活確保の段階への移行)で増加し、職員に対する負担が大きくなることから、ジェンダー平等の視点で行き届いた災害対応に従事するための態勢作りが求められます。  兵庫県南部地震では、市職員が週末返上で弱音を吐かずに体力・精神力の限界まで頑張ってしまい、実際に職員が倒れてしまうこともあったと伺いました。被災者支援にあたっては、無理をせずに勤務する態勢作りにも配意が必要と考えます。 2 子育て、介護等を抱える職員が安心して災害対応にあたれる環境の構築 (1) 提言 ◇ 災害対応時に子どもを安心して預けられる勤務環境作りに努めること  ・市役所内にキッズルームの施設設置 ・子どもの世話をする職員の配置    (⇒ 市) ◇  子育てや介護等の事情を抱える職員を考慮し、一部シフト制の導入               (⇒ 市) (2)提言に至った背景等  災害発生時、家庭で乳幼児や介護を抱える職員(多くが女性)は、災害時に保育園や医療機関の休業などにより、市役所に出勤して災害対応をできない場合があります。このような状況では、女性を含む多様な属性の職員が積極的に災害対応に当たる機会を失うこととなります。そしてそれが、避難所における女性等多様な避難者への配慮不足につながることが危惧されます。  職員が家庭と災害対応従事を両立するためには、子どもを預けられる環境を整備し、育児を抱える職員が安心して災害対応にあたれる体制としていくことが必要です。 3 日頃からの市役所の取組等 (1)提言 ◇ 多様な視点を踏まえ市職員が災害対応にあたるよう、平素から防災部局を中心として庁内関係部署間の連携を強化する            (⇒ 市) (2)提言に至った背景等    災害時にはジェンダー、子ども、要配慮者等多様な問題が同時に発生することが想定され、これらを想定し平時から庁内の関係部署で必要な対応を進めることが重要です。発災後は、各部署ごとに「援護部」「避難部」「支援部」等合計11のチームに分かれ活動することになりますが、それぞれのチーム間の連携が必要不可欠であり、そのためには平時から防災部局を中心に各部の担当が必要な対応を検討し、災害に備えた準備をしておくことが求められます。 4 外部支援の効果的な運用 (1)提言 ◇ 市職員が効果的かつ健康的に応急対策、復旧を行うための仕組みづくり             (⇒ 市) ◇ 男女共同参画センター間の「相互支援ネット」活用                      (⇒ 市) (2)提言に至った背景等  過去の災害において、他自治体から多くの職員が被災自治体に派遣されるものの、災害対応の中心は被災自治体職員が抱え、結果被災自治体職員が過酷な労働環境に置かれるという実態が確認されています。更に避難所においても、情報が錯綜し、避難者のニーズに当分の間、応えられなかったケースも散見されます。  災害対策本部各部及び避難所における指示系統を明らかにしつつ、被災自治体の職員が健康的に災害対応にあたることで最大限のパフォーマンスを発揮するため、応援職員に担ってほしい役割をあらかじめ災害を想定して整理しておくことが大切です。また、明石市の各校区では、避難所運営を的確に段取りするリーダーを複数設け、混乱時であっても指示が滞ることがない体制をつくっていくことが必要であると思います。  明石市は令和3年度に、災害時において全国の男女共同参画センター同士が支え合う「相互支援ネット」に加入しました。広く相談を受け付け、相談者の気持ちの整理だけでなく、他の関係機関につなぐ等の業務を他自治体と連携し、効果的な支援を得られる努力を継続することが必要です。 おわりに  各会議において各専門委員、臨時委員、事務局の方から、貴重なご意見をいただきました。  特に明石が目指す「誰ひとり取り残さない」まちづくりを進めるためには、多様な主体で議論をすることが重要であり、専門委員会議においても、地域、学校、学生等多様な主体が委員として参加し腹を割った議論を重ねることができました。  また障害者の防災対策について議論した会では、あらかじめ課題を洗い出すために、当事者や学生、地域関係者を交えたワークショップを行うとともに、会当日にも異なる障害種別を持つ当事者(一部関係者)の方々5名に参加いただき議論を行い、多くの前向きなご意見をいただきました。  最後に、明石市は、全ての「人」に「やさしい」まちとして多くの人に選ばれ、人口増、賑わい増加等まちの好循環が広がってきました。住んでいる人々が明石に愛着を持ち、地域をより良くしたという思いは、地域での共助の力、ひいては防災力の強化に繋がっていきます。  みんなで支え合い、助け合えるまちは「やさしいまち」であると同時に「強いまち」です。何かあったときにお互いさまといえるやさしさ・強さが、明石のまちづくりから全国に広がっていくことを期待し、提言を締めくくりたいと思います。 ジェンダーと防災に係る専門委員会議 出席者一覧 区分 氏名 所属 専門委員(座長) 本塚 智貴 明石工業高等専門学校 講師 専門委員 浅野 幸子 「減災と男女共同参画研修推進センター」共同代表 早稲田大学地域社会と危機管理研究所 招聘研究員 湘南医療大学非常勤講師 専門委員 大野 美代子 藤江校区まちづくり協議会 会長 専門委員 古川 薫 明石市立鳥羽小学校 校長 専門委員 木下 千敏志 明石市役所 元理事(総合安全対策担当) 専門委員 真邊 由美子 明石市役所 感染対策局 あかし保健所 保健事業担当課長 専門委員 堀  一葉 兵庫県明石南高等学校  専門委員 杉本 采霞 兵庫県明石南高等学校  専門委員 和田 愛子 兵庫県明石南高等学校  臨時委員 高橋 徹 兵庫県明石南高等学校 元教諭 臨時委員 四方 成之 明石地区手をつなぐ育成会 会長 (ASK会長) 臨時委員 山下 利次 明石市視覚障害者福祉協会 会長 (ASK副会長) 臨時委員 増田 康弘 明石市身体障害者福祉協会 会長 (ASK監事) 臨時委員 岸田 結香 明石ろうあ協会 事務局長 臨時委員  横山 園子 明石ピアポの会 共同代表 - 8 -