題名:明石市防災会議 ジェンダーと防災に係る専門委員会議提言書 サブタイトル:すべての人が支え合うまちづくりの実現に向けて~ 策定日:2022年(令和4年)8月1日   ■はじめに 1.設置の趣旨 災害はいつでも起こりうる脅威です。兵庫県南部地震による被害を経験した明石市として、将来の災害を見据え、子どもや妊婦、高齢者、障害のある方等を含め、性別・年齢・障害の有無等の多様な観点を踏まえた災害対策をとりまとめていくことが重要です。 また、災害時は、平常時のくらしにおける課題が悪化・顕在化する側面もあり、実際、過去の災害では、避難所における女性への役割分担の固定化や性暴力の発生、男性に比べて多い災害関連死等の問題がありました。 明石市では、SDGs未来安心都市・明石として、SDGsの基本原則でもあるジェンダー平等を実現するため、2021年8月より庁内にジェンダー平等プロジェクトチームを立ち上げ議論を重ねてこられました。とりわけ防災の分野においてはジェンダー平等や多様性の観点が重要ではあるものの、これまでジェンダー視点での議論が積極的になされてこなかったと認識しています。 これらの背景を踏まえ、ジェンダーや障害等の多様な視点から求められる対策について明石市防災会議に専門委員を設置し、当該専門委員の会議(以下「専門委員会議」という。)において議論してきました。 この議論の結果を、2022年8月に改訂予定の明石市地域防災計画をはじめとし、各事業等に反映することを提言します。 2.議論内容等 (1)専門委員の選任について 明石市防災会議の委員は条例で規定されていますが、2021年度の委員構成は、全体で30名中女性は5名と2割に満たない比率であり、女性の参画が課題となっています。今回は、防災・ジェンダーに関する有識者、学校、保健師、地域、学生等から9名の専門委員(うち7名が女性)が選任されました。 (2)専門委員会議の開催状況 2022年2月2日開催:第1回専門委員会議での議論内容 ・ジェンダー視点を取り入れた避難所運営 職員が安心して災害対応にあたることができる環境の構築 2022年3月3日開催:第2回専門委員会議での議論内容 ・10年後の明石市にふさわしい防災・減災対策 ・誰一人として取り残さない生活再建のあり方について 2022年4月25日開催:障害当事者を交えたワークショップでは、障害当事者及び支援者、大学生、民生委員、自治会役員、市役所職員等32名が参加し、避難方法、避難所生活、在宅避難について議論しました。 2022年6月1日:第3回専門委員会議での議論内容 障害者、要配慮者の防災対策 2022年7月8日開催:第4回専門委員会議での議論内容 災害時の情報に係るデジタル化 提言書(案)について   ■第1章 提言について 1.提言の考え方 専門委員会議で出された意見等を、①市及び地域の平常時の取組、②災害時における地域の取組、③災害時における市の取組の3つの区分に再整理します。3つの区分のすべてにおいて、女性、子ども、高齢者、障害者等の要配慮者を含めた、多様な主体の視点をもって、取りまとめました。 2.提言項目 本提言においては、以下の3つを大項目とします。 (1)地域における防災力の強化:第2章 (2)ジェンダー平等の視点に立った避難行動及び避難所運営:第3章 (3)市職員が効果的かつ安全に災害対応に取り組める環境構築:第4章 ※提言の中で「(⇒ 市)」の記号は、明石市地域防災計画に反映してもらいたいこと等、「(⇒ 市、地域)」の記号は、市、校区、自治会、各団体に取り組んでもらいたいこと、「(⇒ 地域)」は校区、自治会、各団体等に取り組んでもらいたいことを示しています。   ■第2章 地域における防災力の強化~誰一人として取り残さない災害対応へ~ 1.ジェンダー視点を取り入れた多様な主体の地域の防災活動へ参画 (1)提言 ・地域防災の担い手を増やすため、年齢や性別等を問わず、多様な主体が自発的に地域の防災活動に関わることができる仕組みを作る(⇒ 地域、市) (2)提言に至った背景等 過去の災害時には、避難所で乳幼児連れの女性や障害のある女性等に対して、必要な配慮が提供されないことにより、様々な問題が発生したことが報告されています。避難生活では、生活環境の悪化から、平常時に支援を必要とする人ほど、よりきめ細やかな配慮が必要とされることから、偏った属性による観点からの対策では限界があります。ジェンダーの視点を取り入れた避難所運営マニュアルはもとより、災害現場のリーダーを例えば男女共に充てることで、女性を含む多様な市民の困りごとに寄り添った対応が可能になります。 特に明石市では、市内28校区全てに「まちづくり協議会(以下「まち協」という。)」があり、地域の防災組織としての役割を担っていることから、本枠組みを活用して、地域防災の担い手を育成していくことが有用です。その際には偏った属性ではなく、多様な主体が参画できるよう、環境整備や育成を行うことが期待されます。 また、まち協や自治会役員の高齢化や自治会への加入率の低下傾向が続く中、若い世代が気軽に地域の防災活動に参加したくなる仕組みづくりも重要です。 一方で、防災に対する取組みへの温度感には地域差があり、また関わる主体も、まち協や自治会のみならず、社会福祉協議会や学校、保健師、学生等多岐に渡ります。これら様々な主体が横でつながり、情報交換できる仕組みの構築が有用です。 (3)各委員からの意見 ・地域や福祉関係、学校等の場で防災に取組んでいる方々のネットワーク構築(構成にあたってはジェンダーバランスに配慮) ・上記ネットワークを活かした、明石市防災講座の実施 2.地域共助による支援体制の構築 (1)提言 ・災害時に円滑な近助を達成するため、個別避難計画の作成を促進し、日頃から身近な地域の関係構築に努める(⇒ 市、地域) ・各地域が日頃から防災まちづくりに気軽に取り組めるようなハンドブックの作成(⇒ 市、地域) ・地域での防災まちづくりの活動や多様な主体が参加しやすい防災活動、防災訓練実施を働きかけ(⇒ 市、地域) ・小学校区毎の地域カルテの拡充(⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等 発災直後においては、近隣の人の安否が確認できなかったり、支援を必要とする方に助けが届かないことが問題となります。日頃から隣近所が顔見せを行い、お互いを知り合うことが大切であり、そのためにはまち協や自治会の活動が非常に重要です。 特に要配慮者等にとって、平常時の地域との関係性は、いざという時の近所同士の助け合いに繋がるため、日頃から個別避難計画の作成等を通じて、早急に身近な地域の関係構築に取り組むべきと考えます。また、そもそも避難者は「支援する側」「支援される側」と二元的に分けられるものではなく、場合によっては、支援を必要とする方が時にはサポートする側に回る場合もあり、双方向コミュニケーションに基づく支え合いが大切です。 しかし地域によっては「防災には関心があるがどこから取り組んで良いかわからない」、「まち協と自治会の活動が重複している」という声もあり、防災まちづくりをどのようなことから取り組んでいくのかよいかを示したハンドブックの作成が、地域の防災力を高めるために有効です。 特に発災後の避難所には、市や学校の職員、避難者、他自治体からの応援職員、ボランティア等様々な立場の人が集まるものの、それぞれが自分の役割が分からず現場が混乱することがあります。 避難所は人を収容するのみの施設ではなく災害時に地域拠点となる場所です。避難所を地域と市が外部ボランティアの協力を仰ぎながらどのように運用していくのか、必要機能や役割等の考え方を事前に整理しハンドブックに盛り込んでおくことが有効です。 日頃の防災訓練についても、ハンドブックを活用し、乳幼児連れや障害者を含む多様な住民が気軽に参加できることが理想です。そのためには現場で託児サービスを提供したり、イベント型(消火訓練、炊き出し等)だけでなく避難所開設やワークショップ実施等の実践型の訓練にするなど、誰もが安心して参加でき、また参加を通じて近所でお互いを知る関係が築ける場とする工夫が必要です。 また、防災訓練以外でも、地域行事(お祭りや清掃活動等)をフックにして、多様な住民が気軽に地域活動に参加できる仕組みがあると、将来的に地域防災に関わる住民の裾野が広がります。 また、個別の住民情報は個人情報保護の観点から広く関係者で共有することは難しいものの、地域単位で最低限共有したいデータ (人口構成や避難所情報、要配慮者の人数等)や地域の魅力やまちづくり活動を「地域カルテ」としてまとめ共有しておくことで、各地域での防災対策の議論がしやすくなります。 (3)各委員からの意見 ・地域向け防災ハンドブックの作成(防災訓練の事例や避難所運営の基本等をわかりやすく記載) ・上記ハンドブックを活用した防災訓練のモデル実施 ・小学校区ごとの地域カルテの拡充   3.若い世代の防災意識向上の啓発活動 (1)提言 ・子どもの頃から防災を身近な自分ごととして関心を持ってもらえるよう、楽しく分かりやすい教材を活用した防災教育の推進(⇒ 市、地域) ・若い世代の防災意識を高めるため、参加しやすい地域防災訓練の場を提供し、避難、避難所運営等の活動への参加を促進(⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等 市民に対する防災意識の啓発としては、防災情報を掲載したハザードマップの全戸配付や、年1回の地域への出前講座等が行っているものの、十分とは言えません。数十年後に大規模災害が発生すると想定した場合、その災害対応を担うのは今の現役世代ではなく、子ども達の世代であり、若い世代を含めた防災意識の向上は重要なテーマです。 防災は難しく怖いものと思いがちですが、実は日頃からのあらゆる行動が防災に繋がっていると言えます。また、楽しみながら学び、自分のために活動することで、おのずと若い世代が地域とつながり、地域の一員として必要な存在であると感じられるのではないでしょうか。明石に住んで、地域に愛着を持ち、まちをより良くしたい、という思いが連なることは、ひいては地域の助け合いの力(共助)や防災力の向上につながります。 例えば、楽しく学べる防災教材を活用した防災教育や、若い世代も参加したくなる地域防災訓練を行うことで、若い世代のみならずその親世代も含めて地域の活動に顔を出してくれることが期待されます。そこで、「自分の育った地域にはこんなに多様な人がいたのか、この人たちのために地域をもっと良くしたい」と感じてもらえるような流れを作り出せないでしょうか。 既に明石市内においては地域の高校生がオリジナルで防災ゲームやクイズを作成する等、独自の取組みが進められてきました。さらに各委員(高校生と小学校長)の議論を通じ、ゲームやクイズのデジタル化(タブレット対応)にも高校生自らが現在取り組んでいるところです。明石市も、これらの取組みとも連携し、地域の防災訓練等に積極的に若者が参加し、地域と共に防災を考える機会を創出することが有用です。    (3)各委員からの意見 ・市内学生と連携し、子供向けの防災ワークショップ(イベント)の実施 ・市内小学校と連携し防災教育をモデル的に実施   ■第3章 ジェンダー平等の視点に立った避難行動及び避難所運営 1.災害発生後の情報に関する多様な発信 (1)提言 ・障害者を含むすべての方々が情報を確実に得られる伝達方法の検討(デジタルツール等を含む)(⇒ 市、地域) ・逃げ遅れを回避するため、自らの安全確保後、近隣相互、特に障害者、高齢者への声掛け(⇒ 地域) (2)提言に至った背景等 聴覚障害者の多くは、豪雨、暴風の音や防災無線が聞こえないため災害の状況を把握しづらく、避難の初動が遅れるケースも少なくありません。また、高齢者の中には、スマートフォン等の扱いが苦手なためインターネットから情報を得られない人もおられ、同様の懸念があります。特に視聴覚障害者を想定した多様な情報伝達方法の確保やデジタルツールの改善には早急に取り組むべきであると考えます。 また、知的障害者や精神障害者にとっては、避難所に避難すること自体ハードルが高く、在宅避難や車中避難にならざるを得ないことが多くなります。また、いざという時に「助けて」と言えない障害者もいるため、校区内の集会所等を活用し、災害や支援に係る情報を自ら得やすい環境を作ることも必要です。 このような環境作りに加え、防災訓練等を活用し、子どもや高齢者、障害者も含め、皆が集い顔見せできる機会を増やすことも、地域住民が相互に連携する関係づくりの一助になります。 (3)各委員からの意見 ・市内学生と連携し、防災情報の発信に係るデジタルツールを開発 ・市民が自分の悩みに応じて市役所等に円滑に相談ができるよう、市民相談窓口の体制や相談方法、周知方法の見直し 2.避難所開設・運営 (1)提言 ・高齢者、子育て世代、障害者を含むすべての避難者がお互いに助け合える避難所運営方法の検討(手引書とハンドブックの作成) (⇒ 市) ・外部ボランティアがその場に応じて力を発揮して役割を担ってもらうための支援(⇒ 市、地域) ・避難所運営と学校教育再開のバランスを踏まえた計画の作成(⇒ 市、地域) (2)提言に至った背景等 東日本大震災では、関連死の約半数が、避難所生活での肉体的・精神的疲労によるものでした。これは、避難所の衛生問題、プライバシーが配慮されない等の環境の問題、ジェンダー視点に配慮した物資の問題等に起因し、避難所で取り組むべき課題と考えられます。また、避難所に子どもの遊び場等、子どもの話を聞いてあげられる場をつくることで、虐待やDVに気づくきっかけとする等、子どもの安全確保のための環境整備も重要です。 これらの避難所の円滑な運営は、市役所や学校等の公的機関のみで対応できるものではなく、地域やボランティア等多様な方々のサポートにより成り立つもので、そのためには誰でも見やすくわかりやすい避難所手引書の存在が不可欠です。また発災後の混乱時には分量の多い手引書は読まれづらいことから、最低限必要なポイントをまとめた概要版(ハンドブック)を作成したり、発災後市役所職員の到着を待たずして地域の方が自主的に避難所開設準備ができるよう避難所開設アクションカードを作成しておく等、多様な方々が避難所運営に参画できるための工夫が求められます。 また、発災後は多くの外部ボランティアが全国から来ますが、多様な能力をもつ方々がその場に応じて役割を担ってもらえるよう、支援して欲しいことを役割として示すことが重要です。 災害が落ち着きを見せてきた段階では、各避難所の状況を横串的に評価し必要な対応に繋げるための全避難所のアセスメントの実施や、避難所運営と学校教育のバランスを加味した避難所運営の統廃合、規模縮小等が適切に行われるための計画策定が有効です。 (3)各委員からの意見 ・ 避難所の運営にあたり、ジェンダー視点に配慮した避難所配置(女性更衣室や授乳室等)や物資、衛生環境(トイレや手洗い等)を考慮できる仕組み ・地域向け避難所開設・運営の手引書、ハンドブック、アクションカードの作成(一部第2章 2の再掲) 3.在宅避難者等に対する避難支援 (1)提言 ・在宅避難、車中避難者含め支援を必要とする人が、地域や行政に対して声をあげられる仕組みの構築(⇒ 市、地域) ・在宅避難者等が情報交換、物資受領を行うため、近傍の集会所、公園等を一時的な拠点とするように努めること(⇒ 市、地域) ・明石市が平常時から実施している各種サービスも活かした災害対応(⇒ 市) ・より多くの避難行動要支援者を確実に避難させるため、個別避難計画の作成を促進(⇒ 市) (2)提言に至った背景等 今回実施した障害当事者や学生を交えたワークショップを通じて、障害者等支援を必要とする方は、在宅避難を選ぶ傾向が比較的強くみられました。理由としては、指定避難所への移動が困難なことや、避難所での集団生活で迷惑をかけてしまうのではないかという心配や遠慮によるものも聞かれました。このように在宅避難を選択せざるを得ない避難者を想定すると、在宅避難の長期化に伴う情報や物資の不足は否めません。その際支援が必要であることを近隣等に知ってもらうことで、地域や行政が円滑にサポートすることが可能になります。 そのためには、在宅場所の近傍(自治会館等)に一時的に避難拠点を設け、情報交換や物資の配分を行う方策やその拠点情報を自治体側が迅速に把握できる仕組みの構築、在宅避難者相互の物品等のシェア、子どもの預かり合い、拠点から自宅等への物資のお届け等ができる環境作りも有用です。 明石市では、平常時から、すべての人に優しいまちの実現に向け、様々な施策を実施しています。例えば0歳児の見守り訪問として「おむつ定期便」をコープこうべと連携協力して実施したり、市内28校区全てでこども食堂が開設されています。地域・住民・市役所との接点となっているこのような取組みは平常時だけではなく、発災後の緊急時でも活かせるものだと考えています。 また、要配慮者は避難生活が長期化すると、処方薬の欠乏等やかかりつけ医の長期休診等の問題が出てき得ますので、個別避難計画を整備しておくことが、個別ニーズの見える化にもつながります。 (3)各委員からの意見 ・障害当事者の地域防災訓練への参加を促すため、福祉事業所やケアマネージャー等と連携し、訓練への参加を呼びかけ ・上記機会を捉え、個別避難計画の制度を周知 ・乳幼児連れの保護者の地域防災活動への参加を促すため、おむつ定期便等の仕組みを活用し、各種情報を周知 4.災害発生期から生活再建期まで段階に応じた相談体制の構築 (1)提言 ・災害発生後、避難生活初期・中長期、生活再建期の各段階に応じた相談体制と庁内連携ネットワークの構築(⇒ 市) ・悩みや要望を我慢せず、早めに相談できる仕組みと、孤立を防ぐ取組(⇒ 市、地域) 相談員(職員、ボランティア)による避難所等の巡回声掛け(⇒ 市) 必要な支援が届きにくい在宅避難者、仮設住宅被災者への巡回等の取組(⇒ 市、地域) 避難所開設時から子どもの遊び場を設置(⇒ 市) 生活再建期には雇用創出を促す対策を検討(⇒ 市) (2)提言に至った背景 被災者のニーズや困りごとは、被災直後から生活再建期まで時間の経過とともに刻々と変化していくため、その時期に対応したきめ細やかな相談を行う体制が求められ、そのためには市役所関係部署内は勿論のこと、民間団体等との連携体制を日頃から築いておくことが重要です。 また、相談窓口を設けても、事務的な窓口対応では、避難当事者は、なかなか本当の悩み、苦しみ、要望を訴えられず、自分でギリギリまで我慢することが多くなります。乳幼児の保護者等、妊婦、シングルマザー、DV被害者、高齢者、障害者等は特に配慮が必要です。構えて待つのではなく、相談員自らが声をかけ、「要望を言ってくれることで他の人も助かる」と話しかけると当該者は相談しやすくなります。兵庫県南部地震では、「仮設住宅ケアネット」により仮設住宅の高齢者や障害者を支える取組を行い、この時も、市職員ではない相談員が、直接、各仮設住宅を訪問して、高齢者、障害者のニーズを把握し有効でした。 また、自分の気持ちをうまく表現できない子どももいることから、避難所開設の際は、最初から子どもの遊び場を作っておくことを提案します。子どもが安心して過ごせる空間があることで、虐待やDVに気づくきっかけになることが期待されます。 また、生活再建の時期には、地域で雇用を創出する取組も検討が必要と考えます。 (3)各委員からの意見 ・発災後の市民相談窓口の体制や相談方法、周知方法の見直し(第3章 1.の再掲) ・避難所開設マニュアルに子どもの遊び場(キッズスペース)の配置を盛り込む ・子ども相談やDV相談等について、発災後も円滑に業務が継続できるよう、明石市災害対策本部の体制見直し ■第4章 市職員が効果的かつ安全に災害対応に取り組める環境構築 1.災害対策本部等の組織見直し (1)提言 ・長期間にわたり効果的な災害対応を行うため、初期混乱期、組織的活動期毎の災害対策本部の組織及び分掌事務を準備(⇒ 市) ・職員の家庭事情に配慮しつつ、すべての職員が災害対応に効果的に取り組める環境の構築(⇒ 市) (2)提言に至った背景等 職員の中には、育児や介護の事情があり、即時にかつ長期に災害対応するのに制約がある職員もいます。特に、明石市における保健師職員は現状すべて女性であり、災害時には育児、介護等の事情を踏まえるとその可動率は7割程度であり、すべての避難所に対し十分に行き渡った支援は困難となると予想されます。 また、児童虐待やDV担当に関する業務は、災害が落ち着いた段階(救急医療対応から生活確保の段階への移行)で増加し、職員に対する負担が大きくなることから、ジェンダー平等の視点で行き届いた災害対応に従事するための体制作りが求められます。 兵庫県南部地震では、市職員が週末返上で弱音を吐かずに体力・精神力の限界まで頑張ってしまい、実際に職員が倒れてしまうこともありました。市職員が無理をしすぎず勤務できる体制作りや勤務中の待遇改善(食料の提供等)についても配慮が必要と考えます。 (3)各委員からの意見 ・発災後の災害対応について、職員のシフト制を導入 ・メンタルヘルスを含めた職員の相談対応窓口の設置 2.子育て、介護等を抱える職員が安心して災害対応にあたれる環境の構築 (1)提言 ・災害対応時に子どもを安心して預けられる環境作り(⇒市) ・市職員が災害を自分事として捉えられる仕組みの工夫(⇒市) (2)提言に至った背景等 災害発生時、家庭で乳幼児や介護を抱える職員(多くが女性)は、災害時に保育園や医療機関の休業などにより、市役所に出勤して災害対応をできない場合があります。このような状況では、女性を含む多様な属性の職員が積極的に災害対応に当たる機会を失うこととなります。そしてそれが、避難所における女性等多様な避難者への配慮不足につながることが危惧されます。 職員が家庭と災害対応従事を両立するためには、子どもを預けられる環境を整備し、育児を抱える職員が安心して災害対応にあたれる体制としていくことが必要です。 また、市役所職員にとって、被災自治体へ応援派遣は、実際の避難所運営等に直接関わることで、災害を自分ごととして捉える絶好の機会です。一部署の職員に偏って被災自治体への応援派遣を行うのではなく、なるべく多様な部署の職員を現場に応援派遣することで、各職員が、ジェンダーや障害者の視点からみた災害対策を自分事として考える機会となることを期待します。 (3)各委員からの意見 ・発災後、キッズスペースを市役所内や避難所に設置できる環境の構築 ・職場における職員向け備蓄物資の確保と、各職員の自宅での室内安全の徹底   3.平常時の市役所の取組等 (1)提言 ・多様な視点を踏まえ市職員が災害対応にあたるよう、平素から防災部局を中心として庁内関係部署間の連携を強化する(⇒市) (2)提言に至った背景等 災害時にはジェンダー、子ども、要配慮者等多様な問題が同時に発生することが想定され、これらを想定し日頃から庁内の関係部署で必要な対応を進めることが重要です。発災後は、各部署ごとに「援護部」「避難部」「支援部」等合計11のチームに分かれ活動することになりますが、それぞれのチーム間の連携が必要不可欠であり、そのためには日頃から防災部局を中心に各部の担当が積極的に必要な対応を検討し、災害に備えた準備をしておくことが求められます。 4 外部支援の効果的な運用 (1)提言 ・市職員が効果的かつ安全に応急対策、復旧を行うための仕組みづくり(⇒市) ・男女共同参画センター間の「相互支援ネット」活用(⇒市) (2)提言に至った背景等 過去の災害において、他自治体から多くの職員が被災自治体に派遣されるものの、災害対応の中心は被災自治体職員が抱え、結果被災自治体職員が過酷な労働環境に置かれるという実態が確認されています。更に避難所においても、情報が錯綜し、避難者のニーズに当分の間、応えられなかったケースも散見されます。 災害対策本部各部及び避難所における指示系統を明らかにしつつ、被災自治体の職員が健康的に災害対応にあたることで最大限のパフォーマンスを発揮するため、応援職員に担ってほしい役割をあらかじめ災害を想定して整理しておくことが大切です。また、明石市の各避難所において、避難所運営を的確に段取りするリーダーを複数設け、混乱時であっても指示が滞らない体制をつくっていくことが必要であると思います。 明石市は、2021年度に、災害時において全国の男女共同参画センター同士が支え合う「相互支援ネット」に加入しました。広く相談を受け付け、相談者の気持ちの整理だけでなく、他の関係機関につなぐ等の業務を他自治体と連携し、効果的な支援を得られる努力を継続することが必要です。   ■おわりに 各会議において各専門委員、臨時委員、事務局の方から、貴重なご意見をいただきました。 特に明石市が目指す「誰ひとり取り残さない」まちづくりを進めるためには、多様な主体で議論をすることが重要であり、専門委員会議においても、地域、学校、学生等多様な主体が委員として参加し腹を割った議論を重ねることができました。 また障害者の防災対策について議論した第3回会議では、あらかじめ課題を洗い出すために、当事者や学生、地域関係者を交えたワークショップを行うとともに、会当日にも異なる障害種別を持つ当事者(一部関係者)の方々5名に参加いただき議論を行い、多くの前向きなご意見をいただきました。 最後に、明石市は、「すべての人にやさしいまち」として多くの人に選ばれ、人口増、賑わい増加等まちの好循環が広がっています。住んでいる人々が明石に愛着を持ち、地域をより良くしたという思いは、地域での共助の力、ひいては防災力の強化に繋がっていきます。 みんなで支え合い、助け合えるまちは「やさしいまち」であると同時に「強いまち」です。何かあったときにお互いさまといえるやさしさ・強さが、明石のまちづくりから全国に広がっていくことを期待し、提言を締めくくりたいと思います。   ジェンダーと防災に係る専門委員会議 出席者一覧 ・本塚智貴(座長):明石工業高等専門学校 講師 ・浅野幸子:「減災と男女共同参画研修推進センター」共同代表、早稲田大学地域社会と危機管理研究所招聘研究員、湘南医療大学非常勤講師 ・大野美代子:藤江校区まちづくり協議会 会長 ・古川薫:明石市立鳥羽小学校 校長 ・木下千敏志:明石市役所 元理事(総合安全対策担当) ・真邊由美子:明石市役所 感染対策局 あかし保健所 保健事業担当課長 ・堀一葉:兵庫県明石南高等学校  ・杉本采霞:兵庫県明石南高等学校  ・和田愛子:兵庫県明石南高等学校  ・高橋徹(臨時委員):兵庫県明石南高等学校 元教諭 ・四方成之(臨時委員):明石地区手をつなぐ育成会 会長(ASK会長) ・山下利次(臨時委員):明石市視覚障害者福祉協会 会長(ASK副会長) ・増田康弘:明石市身体障害者福祉協会 会長(ASK監事) ・岸田結香(臨時委員):明石ろうあ協会 事務局長 ・横山園子(臨時委員):明石ピアポの会 共同代表