第1回 ジェンダーと防災に係る専門委員会議における主なご意見 ジェンダー視点を取り入れた避難所運営 * 指定避難所の改善が比較的早期にできた主な理由として、「地域防災計画・マニュアル等に規定してある通り取り組んだから」「避難住民のニーズ等を聞き取って取り組んだ」が挙げられている。マニュアルを作成し対応が必要な事項を記載しておくことは重要。[浅野委員] * ただし、マニュアルがあるだけでは動けない。平時からマニュアルに沿った防災訓練等を実施することが大事。[浅野委員] * 炊き出しや古着の改修等、現場の気づきに基づき新しい発案をするのは女性が多い印象。それぞれの特性を活かして防災対策にあたれる体制が理想。[大野委員] * 性別・立場による避難所の問題点は、トイレ・衛生の問題(女性の膀胱炎、仮設トイレが足腰悪くて使えない等)、環境の問題(着替え・授乳室が無い、育児・介護用品の不足等)等多岐に渡るが、要配慮者視点と災害視点は表裏一体と言える。また要配慮者は指定避難所以外の場所に避難することが多いが、指定避難所以外の避難者に対する外部からの支援が少ない。[浅野委員] * 学校側としては、災害が起きたらまず児童・生徒の安全を確保する方に注力し、学校に避難してくる住民のことまで考えが及んでいないのが実情。学校側も避難所運営の当事者として巻き込むにあたり、学校長の立ち位置や市役所・地域・学校のそれぞれの役割分担・指揮系統をある程度決めてもらっていた方が動きやすい。[古川委員] * マニュアルは概して分厚くなりがちだが、作成する前提(考え方)を市職員・地域関係者が共通認識として持っていくことが肝要。[浅野委員、大野委員] * 明石市役所の保健師は現在85名おりすべて女性。うち育児介護等の職員の家庭事情を踏まえると、発災時に実際に動けるのは7割ほどで、この職員で全避難所を対応することは困難。対応の検討が必要。[真邊委員] 地域との連携 * 地域では高齢者の一人暮らしが増えており、各地域で共助の取組みが必要。[大野委員] * 被災者は悩みや困りごとがあっても我慢してため込む傾向がある(介護用・育児用おむつのサイズが小さい、性被害、等)。その悩みを打ち明けてもらうのは、事務的な相談窓口では難しく、相談員と被災者の信頼関係が必要。[浅野委員、古川委員] * 藤江まち協では、自治会の中でお互いが相談しやすい関係を構築するため地域住民のボランティアを募り活動している。校区ではなく隣保で親しい関係性が必要。[大野委員] 市役所職員が安心して災害対応にあたることができる環境の構築 * 自身は家庭に2歳の双子がおり、夫も職場に緊急参集が必要な仕事。仮に災害が発生して職場参集が求められた場合、どのように対応できるのか不安。自身は災害が起きたら市役所職員として現場対応する意識はあるので、「子供を抱える女性だから」という理由で災害対応を免除するのではなく、むしろ子供を安心して預かれる環境を整備して育児を抱える職員でも安心して災害対応にあたれる体制を整備してほしい。[事務局(市役所職員)] * 兵庫県南部地震時、市役所職員として週末返上で家屋調査業務にあたっていたが、精神的にも体力的にも相当張りつめていた。実際、疲労で転倒し長期入院した同僚もいた。被災者支援にあたる立場として公務員は弱音を吐かずに限界まで頑張っているのが実情。[事務局(市役所職員)] * 被災地応援に行くと、被災地の市役所職員が疲弊しながら限界まで頑張っている。被災地応援は、被災者のサポートだけでなく市役所職員のサポートもあっても良いのではないか。[本塚委員] * 周りのサポートを受ける場合、指示系統の確立が必須。各々がリーダーシップを発揮すると、行動が裏目に出て板挟みになることが懸念される。市役所・地域・学校・外部からの応援スタッフなど、多くの関係者が被災地にいることを想定し、指示系統・役割分担の整理が必要。[古川委員] 第2回 ジェンダーと防災に係る専門委員会議における主なご意見 防災に関する地域との連携について * 避難所は人を収容するのみではなく地域の拠点の場。市役所職員で全て対応するのは難しく、地域の人にも役割を持ってもらう必要がある。訓練で役割を固定化するのではなく、多くの役をやってもらうことで柔軟な対応が可能になる。また、発災後3日間の初動期間、3日経過後の落ち着いた段階で求められる役割は異なるため、時間軸で対応を考えていく必要がある。[浅野委員] * 行政・地域・学校の役割分担の中で相互扶助の関係ができると良い。[本塚座長] * 藤江は校区が広いため、高齢者は指定避難所(小学校)への避難が難しく、結果公民館や集会所等に避難する可能性が高いが、このような場所にも備蓄品を配備・配送することはできないか。[大野委員] * 時間軸で対応を考えていくという話が出たが、保健師の役割として、発災直後は救急医療対応、その後生活確保の段階に移行する時、必要となるのがジェンダー視点。また住民に避難所の実際の映像を見ていただく等、当事者目線を持ってもらうことが重要。[真邊委員] * 学校が避難所になることは認識しているものの、学校側の意識はどうしても教育現場の維持・授業再開に行くと思う。[古川委員] * 時間が経つと避難所は統合・閉鎖されることになる。子どもたちの学びの場である学校の教育活動再開のために早く次のステップに進むことは必要であり、避難者もそのスケジュールを認識してもらった方が良い。また全てを自分の地域で抱えるのは限界があり、外部の力を借りることも肝要。子育て支援センター等の専門職や社協、自治会、PTAなど。[浅野委員] * 近年は地震が起きても全壊家屋が減る傾向にあり在宅避難も増えているため、これらの情報発信や支援窓口の一本化も検討した方が良い。[浅野委員] * 今まで明南高校では子供たち向けの活動が多かったが今後高齢者施設向けのゲームや活動も実施ししていきたい。防災は堅苦しいイメージがあったがジュニアリーダーの活動はとにかく明るくワイワイやっている。「楽しく防災」を心がけている。[堀委員、杉本委員] * 楽しく活動している雰囲気は重要。今年11月には藤江校区で明石市総合防災訓練を行う予定だが、楽しく活動していれば自然に周りのメンバーも集まってくる。[大野委員] * 明石高専の防災団のキャッチコピーも「防災って実は楽しい」。楽しみながら自分のために活動することで、繋がりやそれぞれの役割分担が見えてくるのかと思う。[本塚委員] DV被害・児童虐待の現状と災害時に求められる対応 * 災害発生時、女性や非正規雇用労働者、子ども等に対して影響が大きい点は、まさに今のコロナ禍でも共通しているように感じる。DVや子ども虐待は災害時に増える傾向があると想定される。[本塚座長] * 避難した子どもは自分の気持ちをうまく表現できない懸念もある。大人は子供たちが話すことを否定せずに聞くことがまず重要。例えば、避難所には最初から子どもの遊び場を用意するのも一案。その中で虐待やDVに気づくきっかけになるかもしれない。[佐野総合支援担当理事] * また、被災した保護者は、孤立がストレスを生んで誰にも相談できない場合も想定される。誰も取り残さないためには災害ケースマネジメントが重要となる。明石市では様々なネットワークがあるので、災害時にも活用できたらよい。[佐野総合支援担当理事] * 教員がどれだけアンテナを高く上げられるかも大事。そのためには研修等を通じて具体のケースを知ることがサインに気づく一助になると思う。[古川委員] * コロナ禍で、子供も親もストレスを抱えており、また接触ができないため虐待を防ぐ手立てが取りにくい。普段以上にアンテナをはる必要がある。[真邊委員] * 現状明石市の児童虐待やDV担当部局が支援部に割り振られている。発災直後はともかく、災害が落ち着いた段階に市役所職員が効果的に動けるため、災害対策本部機構図は見直しが必要だと思う。[浅野委員] 第3回 ジェンダーと防災に係る専門委員会議における主なご意見 * 防災において、災害弱者といわれる方たちが災害弱者にならないように前向きな議論をお願いしたい。地域の避難訓練だが、車椅子、バギー、どのような経路で移動されるか、どこが障害になるのか検証されない今の防災訓練に疑問が残る。これでは参加する意味はないように感じる。地域によっては避難所での模擬訓練、障害者施設と連携して訓練している自治体もあると聞く。地域の方に存在を知ってもらうことも必要だが、地域格差があること、地域によって訓練内容が違うこともおかしい。親が率先して参加させる努力も必要だと思うが、迷惑や負担になるか、ためらいがあり線引きが難しい。個別避難計画作成が3年前から始まっていると聞いたが初耳だった。災害対策基本法の一部改訂で努力義務になったことを知った。今回、福祉避難所へ多くの施設が登録されたことに感謝したい。災害時にはスムーズな開設と避難を希望する。災害対策は多くの分野を踏まえて議論されることも必要不可欠。よい意見が交わされることを期待する。[肢体不自由児者父母の会 中嶋会長(代読)] * 視覚障害者の観点から、ワークショップの中での1箇所(資料3のP11盲導犬連れなので避難所に行けない)を訂正してほしい。明石市では盲導犬の啓発はかなりされている。店でも断られたことはない。災害時、我々はできないことから考えてしまう。明石市の人口は65歳以上が約3分の1。若者を何らかの形で任意登録して、発信力がある若者にSNSで発信してほしい。災害時、まずは自分ができることを考えることが必要である。[明石市視覚障害者福祉協会 山下会長] * 身体障害があり大久保小学校区の自治会役員をしている。自治会役員に障害当事者は殆どいない。坂もあり、校区が広いので小学校まで避難することが難しい。個別避難計画作成は、明石川の近くに住んでいる方だけでなく、人口の多いところから実施してほしい。自治会によっては高齢者しかいないので助け合いが難しい。スクールガードを9年近くやっている。顔見知りの小学生が増えて、積極的に自治会活動に参加してくれている。その親達も一緒に参加してくれるなどよい循環が生まれている。[明石市身体障害者福祉協会 増田会長] * 災害時要支援者名簿は基本的に療育A判定が対象だが、理解や状況によって異なるため柔軟な対応をお願いしたい。障害の程度は人により様々であり、避難所に行った時のサポートは身近な障害支援者でないと難しいため、避難所生活はハードルが高い。赤ちゃんの声でパニックをおこす子もいるなど、個別の状況の把握がなかなか難しい。東日本大震災時は、避難所でないと物資がもらえない状況だった。今後は在宅避難者の支援をお願いしたい。阪神淡路大震災時、朝から夜まで外で働いていたため地域コミュニティに関われず、積極的に自分から関わっていくことが大事だと感じた。知的障害者は防災訓練に参加することが難しいものの、できるだけ参加したい。[明石地区手をつなぐ育成会 四方会長] * 聴覚障害者は、日常生活の中で工夫すればなんとか自分で生活ができる。災害時は情報が重要だが、自分の力で情報を取ることが難しい(広報車等のアナウンス)。インターネット等も活用した情報発信も積極的に行ってほしい。数年前、地域の防災訓練に夫が初めて参加したが、お客さん扱いされ、気を遣われてしまった。客としてではなく自分にも手伝えることがあるのではないかと気づき、ダンボールベッドを地域の人に教えてもらいながら作った。障害があるから遠慮するのではなく、各自できることがあるので今後も積極的に参加したい。地域の人に存在を知ってもらうことは大事だと思う。[明石ろうあ協会 岸田様] * 精神障害者は、特性として災害時にパニックを起こすことが懸念される。精神障害にも種類がいろいろあるが、引きこもり、身内がいない、発達障害など、いざというときに助けてほしいと言えず、災害時に助けてもらえない懸念がある。民生委員の方には日ごろから精神障害の特性を知ってもらいたい。小学生向けの啓発が大切で、地域との関わり合いがとても大事になってくる。体験型の避難訓練を自分たちで経験することが大事。災害が起きた場合、薬の確保、病院とのつながり、訪問看護師との連携を考えてほしい。デジタルに不慣れな人もいるのでアナログ対応も必要だと思う。精神障害者の特性上、団体生活である避難所生活は難しいと思う。[明石ピアポの会 横山共同代表] * 共助の体制はすでに取り組んでいる。住民の要望としてあった防災対策を最優先課題として自治会単位で取り組んでいるが、校区全体としてできることは殆どない。今崎野地区をモデル地区として月1回集まり、共助の体制づくりを考えている(見守り隊を全住民に募集し現在27名で活動中)。見守り活動の中で心配されるのは、足腰が弱ったというより認知が進んでいる高齢者が一定数いること認知が進むとお互いに助け合えないため、積極的に地域活動に参加してもらうなどして認知にブレーキをかけたい。先月の障害当事者の方々を交えたワークショップに参加して、参加学生たちが地域に愛着を持っているのを実感した。高齢者の要支援者を見つけることも大事だが、世話をしてくれる若者を見つけるのも大切。 [大野委員] * 高校生として、小中学生等に対して、災害時の避難方法や避難所運営でできること等を身につけてもらうことがある。将来起こり得る南海トラフ大地震を考えると、避難所運営は現在の小学生が担うことになるのでは。前回の会議の中にあったが、知識としてだけでなくゲームなどを通じて実感を持ってもらうことが大事今後は、実際に障害者の方々に会って話を聞くことで防災ゲームの見直しをしたい。また、私たち自身も、自治会活動や防災訓練に積極的に参加したり、怪我人の手当や用具の運搬等もサポートできる。[堀委員、和田委員] * 昨年の夏に和歌山市で水道管が破裂して断水した際に、被災者でもある和歌山大学の学生が高齢者宅に水を届けた事例がある。一緒に活動することで会話が生まれてお互いを分かりあえた。対話の重要性を感じた。[本塚座長] * まずは地区のデータの共有が必要。私が関わっている自治体では地区カルテを作成しており、人口動態、要介護者の認定数、避難行動要支援者の数、名簿記載同意者数などを各校区で出している。人数が具体的に分かると議論がしやすい。また、災害時に時間軸で起こる問題はだいたい分かるので、時系列が頭に入っていれば議論が進みやすい。防災訓練の底上げのみでは自治会の負担も増えるので、オリンピック方式で、大きな訓練は4年に1回でも良いと思う。その際、自治体内部や、障害者団体との連携も重要となる。訓練当日の顔合わせでは急に対応できない。事情が分かって訓練につきあってくれる障害当事者を団体から地域へ紹介することも必要だと思う。[浅野委員] * 時間軸の話が出たが、フェーズによって避難所生活で必要な状況やニーズは変わってくる。その中で保健師はどう活動していくか。救える命をどう医療に繋げていくか。避難所の中にいる要支援者をどう見つけて行くかという課題がある。更に医療や心のケア、DMAT、保健医療の活動チームは全国から派遣される組織であるため、情報の共有が大事である。1つ提案があり、個別避難計画作成が進んでいるが、避難するにあたってどこに避難するか、避難するまでの情報に加え、どこの病院がかかりつけか、どんな薬を飲んでいるか避難するにあたって重要な情報なので、避難後でも活用していけたらよい。[真邊委員] * 増田委員のスクールガードの話を聞き、学校側はお世話になるばかりではないと感じた。学校は、教員は日頃からインクルーシブ教育を推進する立場でもあり、保護者世代含め交流し、小さなコミュニティを作ることで災害時に助け合うことができると感じた。障害のある子にとって居心地がいい環境を作るということは、誰にとっても居心地のいい環境であり、避難所設営にあたってそういう精神を発揮してほしい。コミュニティスクールの推進等により、地域に開かれた学校を目指す流れとなっている。子どもだけではなく地域の方々が学校を核として絆を深めコミュニティを作っていくことで、避難所を設営した時に円滑な避難所運営ができると思う。 [古川委員] * 災害はいつどこで起こるか分からない。近年、線状降水帯の発生など突発的な災害が多く発生している。訓練が大事だということが分かったが実践的な体験が必要だと思ったので、現実のシミュレーションに従ってやっていきたい。[明石市視覚障害者福祉協会 山下会長] * 防災訓練は展示的に行われていることが多い。実際的で、本当に必要な訓練を行う必要があるため、ぜひ取り組むべき。また地域を牽引していく人材も大切で、ハブ的な役割が果たせる人を発掘し、育てていくことが重要。地域の中心にいて様々な情報を収集・発信し、人と人、組織と組織を結び付けていくことができるような人、今ここにおられる大野委員のようなタイプの人材を育てていくべき。その意味では、今回参加してくれている明石南高校の3人の生徒さんは将来きっとハブの役割を果たしてくれると思う。会議での結論も大事だが、人の育成やネットワーク作りも、とても大事である。[木下委員] 参考資料 1