ジェンダーと防災に係る専門委員会議 第2回(議事要旨) 日時:2022年3月3日(木) 16:00〜18:00 場所:明石市役所本庁舎8階 806AB会議室 議事(要旨) 1. 開会(事務局) 2. 議事1)第1回会議で出た主なご意見 【事務局より資料1の説明】 ジェンダー視点を取り入れた避難所運営 避難所の円滑な運営にはマニュアルが必要だが、マニュアルがあるだけでは動けない。平時からマニュアルに沿った防災訓練等を実施することが大事。性別による固定的な役割分担ではなく、それぞれの特性を生かした防災対策にあたることができる体制が理想である。要配慮者は指定避難所以外の場所に避難することが多いが、外部からの支援が少ないことが問題となる。また、避難所運営では市職員以外の役割が不明確なので、それぞれの役割分担・指揮系統をある程度決めた方が動きやすい。 地域との連携 地域では一人暮らしの高齢者が増えている。各地域での共助の取組みが重要となり、 校区という大きな範囲ではなく隣保での親しい関係性が必要となる。被災者の悩みや困りごとの聞き取りは事務的な相談窓口では難しく、相談員と被災者の信頼関係が必要となる。 市職員が安心して災害対応にあたることができる環境の構築 育児を抱える職員でも災害対応を免除するのではなく、安心して災害対応にあたれるよう子供を安心して預かれる環境整備が必要。被災地には多くの関係者がいることを想定し、指示系統・役割分担の整理が必要となる。 3. 議事2)10年後の明石市にふさわしい防災・減災対策 @ 地域と連携した防災力強化のために (本塚座長)「10年後の明石市にふさわしい防災・減災対策」として、「地域と連携した防災力強化」と「誰一人として取り残さない生活再建の在り方」の2点について議論を進めていく。まずは市役所から現状と課題をお願いしたい。 防災に関する地域との連携について 【木下委員より資料2に沿って説明】 現状明石市役所で取り組んでいることや課題、今後取り組もうと考えていることについて説明。防災に関して連携する地域及び地域の団体等が、それぞれ協力しながら地域を支えてチームワークを組んでいくことが重要。市とまち協・自治会との連携の状況としては、市のホームページやハザードマップの全戸配付などの防災情報の提供、地区防災計画や個別避難計画作成の支援など地域の会合への参加、地域の防災訓練への参加、1年に1度実施している市と地域との協働型訓練の総合防災訓練があるが、市と地域がうまく連携することができていないのが現状。 地域との活動状況として、要配慮者と避難訓練を行い実際に何が問題になるのか検証した。防災に関する地域との連携における課題として、年に一度1時間程度の出前講座だけでは教育効果が薄い。地区防災計画の策定にあたっては、市と地域の連携内容が定まっていないため、今後その部分を明確にする必要がある。避難所運営の計画等では、それぞれの役割が不明確で、市と地域が連携する部分の訓練が不十分である。避難所の運営業務は膨大であるにも関わらず、避難所運営の従事者は数名程度の配置である。避難所を運営する段階になれば、やらなければいけない事項が多くあるため、運営がスムーズになるよう地域の協力を得る必要がある。11月末に避難所の開設・運営を目的に藤江校区で総合防災訓練を予定。今後のマニュアル作成や解決につながっていくように訓練を行っていきたい。 (事務局より「(仮称)あかし地域防災サポーター育成事業」について説明) 「共助」の要である各地域の自主防災組織に地域の実情を把握した防災サポーターを男女ともに増やし、地域防災力の強化を目指すことが目的である。現状、県の防災リーダー講座を受講するためには、三木市にある防災センターまで行かないといけない。明石市内の会場で受講できるのであれば参加しやすいと思う。男女1名ずつまち協から推薦し防災士資格費用を助成する。明石市独自の講座を盛り込む予定。「防災リーダー」だと受講者が負担に感じる場合もあるため、名称を「防災サポーター」にした。 明石南高校での取組み (冒頭でめいなん防災ジュニアリーダーMRDPの紹介動画を視聴) 【めいなん防災ジュニアリーダーより資料3に沿って説明】 (堀委員)2013年度兵庫県教育委員会教育企画課の「中・高生リーダー育成事業」によって活動がスタートした。部活動ではなく有志による自主的な活動で、メンバー21名のうち18名は部活動に所属している。「みんなで楽しく」というのが活動の1番のコンセプトで、地域や小学校でも防災活動をしている。 (杉本委員)活動の一環として行ったオリジナルの避難所運営ゲームでは、問題文を関西弁にし、イラストを全て手書きするなどして親しみを持てるように工夫した。また、小学生向けのタブレット教材を作成し、幼稚園児向けのビデオ作成をして防災教室を行った。コロナ禍で実際の訪問がなかなか実現しなかったが、今後機会があればぜひ訪問をしたい。楽しく防災について学び、今後も活動の幅を広げていきたい。 (和田委員)私の住んでいる地域には高齢者が多いため、災害時には自分が積極的に動かないといけない。そのために防災の知識をつけたいと思い活動を始めた。内輪での活動が多いと思っていたが、実際は他校や地域との交流が多い。今後は被災地や幼稚園への訪問、他校との連携活動もしたい。 小学校区単位の防災組織による避難所運営方法の検討 【本塚座長より資料4の説明】 当校のゼミ生が市内校区ごとの防災の取組みを3年かけてまとめた。避難所の運営は行政だけでなく地域の人にも取り組んでもらいたい。地域防災を担う自主防災組織は自治会単位で結成されているが、避難所の運営は校区単位となる。組織の規模が異なるため自治会単位で避難所運営に取り組むことは難しいと考えられる。明石市は全国的にも特殊で、すべての小学校区に防災組織があるため、避難所の運営がうまくいっているのではないか、と1年目に検証した。過去に災害を経験した、または災害リスクの高い地域は総じて防災意識が高いと考えられるが、決して防災活動に熱心というわけではないと分かった。2年目以降は、そもそもなぜうまくいかないのか、組織の形や地域活動の方向性の違いが影響しているのではないか、と考えた。多くの自治会では毎年役員の入れ替わりがあるため活動の継続が難しい。活動の継続がうまくいっている地域は防災だけ頑張っていこうという独立型防災組織を作っており、役員だけでなく地域の中から自ら率先して手を挙げてやりたい人が動いている。そのため組織が活発になり、防災訓練に関しても避難所運営訓練までできている。 藤江校区まちづくり協議会における防災事業の取組み 【大野委員より資料5に沿って説明】 近年、若い家族の転入によって年齢構成の地域差が現れている。全住民アンケートの結果、防災事業を校区の最優先課題の1つと位置づけ、2021年度より防災事業への取組みを開始した。自治会での自助、共助の体制強化を図ることを重点に校区防災本部を設置する。藤江校区には17自治会あるが、自治会の事情が異なるためそれぞれの自治会防災組織を作るのは難しい。モデル地区で共助の体制づくりを行う。 災害に対する住民の危機感から、全世帯対象に個人情報の提供を依頼したら90%の世帯から提供を受けた。見守りボランティアを募集したところ、22名の申し込みがあった。その中には家族の介護の傍ら、空いた時間でボランティア参加する一方、自分の家のサポートも依頼したいという相互扶助の要望があった。自治会のエリアを9班に分割し、班長を中心にきめ細やかな見守り体制を構築した。見守りの活動としては、要配慮者については日常の見守り活動で安否確認を行っている。乳幼児を抱えた世帯については活動を通じて親しい関係を築き、安心して子育てができる環境づくりに繋がっている。 今後の活動としては、2月に机上訓練を行ったので、3月に小規模避難訓練を予定している。校区防災本部の設置に向けての話し合いでは、明石市の防災事業に関するガイドラインの確認をする、他地区の避難所運営マニュアルを参考に避難所運営を考える、地域住民は公助に期待をするが市職員も被災者になり得るという意見が出た。 (本塚座長)地域により取組み状況にムラがあるが、市役所に求められる役割はどのようなものか。もしくは地域にできる事には何があるか。 (浅野委員)避難所は地域の拠点となる。資料2のP.3(スライド6)を見ての通り、初動対応は地域の人に頑張ってもらわないと難しい。発災直後から3日後までは人の出入りが多く落ち着かない状況になる。P.4(スライド7)の通り、その後避難所の人数がある程度落ち着いたら環境整備が必要になり、時間軸で対応を考えていく必要がある。 東日本大震災発災時に横浜市で避難所を開設した人から聞いた話では、電車が止まってしまい避難所に多くの帰宅困難者がやってきた。最初からすべてを整備するのではなく、来た人から何らかの役割をやってもらう事が必要。訓練時も役割を固定するのではなく、いろんな役をやることで柔軟な対応をすることができる。避難所運営が長期化する中で住民は生活再建をしていかないといけないため、外部のボランティアセンター等との連携を前提にしたほうがいい。住民が関わるところと外部の者が関わるところを切り分けて、徐々に外部に任せられるところは任せていくようにすれば良い。明石市では小学校区ごとに特性や情報をまとめた地域カルテを作成しているが、地域で最低限共有しておきたい情報や要配慮者支援をカルテに盛り込んで情報共有ができると良い。 (本塚座長)相互扶助の関係ができると良い。地域の中だけを見ていると見えてこないことがあるので、ボランティアなどの外部との橋渡しになる存在がいると良い。 (古川委員)めいなん防災ジュニアリーダーからオリジナルのボードゲームを紹介してもらった。今はコロナ禍のため子どもたちが集まってゲームをするができないと伝えると、一人一台持っているiPadでできるクイズを考えてくれた。今後、防災教育で教員を通じて児童・生徒に楽しく伝えていきたい。 (本塚座長)行政・地域・学校はどう役割分担していくべきか。 (大野委員)校区が広いため、指定避難所となる小学校へ避難することが高齢者には難しい。自治会の公民館や集会所、工場などを避難所にして備蓄品を置いてほしいと住民から要望が出ている。避難所は多ければ多いほどいいと思う。 (真邊委員)発災直後は保健師として救護をすることが大事になる。災害発生時、保健師が所属する部署は援護部として要配慮者の対応、医療部として救護の役割がある。時間軸で対応を考えていくという話が出たが、救急医療が落ち着いて生命の危機を救う段階から生活確保の段階に移行する時、必要となるのがジェンダー視点となる。 避難所は普段とは異なり特殊な環境となる。どういう状況になるのか訓練で体験したり、過去の災害時の実際の避難所の様子を映像等で見て参考にすることで、子どもから大人まで色んな立場で自分に何ができるのか考えて学ぶことが良いと思う。 (本塚座長)今は避難所の様々な映像がたくさん手に入る。同じ映像でも、立場によって気になる視点が異なる。学校として協力できるところはどんなことがあるか。 (古川委員)学校の本業は教育である。災害規模によるが、本音としては一日でも早く授業を再開することに専念したい。避難者の生活を確保するとともに子どもたちの教育活動の場を確保したい。職員は他市から通ってくる者も多い。災害対応が落ち着けばまずは自分の家庭を大事にさせた上で、持続可能な教育活動を開始したい。 (本塚座長)お互いの目指すところの時間軸を共有して活動できるといい。 (浅野委員)時間が経つと避難所は閉鎖したり統合しないといけなくなる。学校は子どもたちの教育活動の場であるため、できるだけ早めに次のステップに進まなければならない。避難者の心構えのためには時間軸のスケジュールを早めにアナウンスしていく必要がある。すべてを自分の地域でやることに対しては重荷に思う人もいるため、普段から外部とも地域活動や防災活動をしていくことが重要になる。例えば、子育て支援センター等の専門職とのつながりは災害時に子ども支援の場づくりを行うことにつながる。社協とのつながりは要配慮者対策につながる。避難所の立ち上げや区割りは、学校に近い自治会やPTAに任せるなどでも良い。近年は住宅の耐震化が進んでおり、地震が起きても全壊家屋が減る傾向にある。在宅避難者のための情報集約、支援窓口の一本化をする必要性がある。 (本塚座長)明石市の特色を生かした防災対策が必要である。多様な主体が地域防災に関わってもらうためにはどのような工夫が必要か。 (堀委員)幼稚園教諭を目指すメンバーが多く、今までは子供たちに向けての活動が多かった。高齢者施設とも交流があり、今後は高齢者向けのゲームも作ってみたい。 (大野委員)高齢者にも思いがけない発想があり、色んなアイデアを出している。11月には校区で明石市総合防災訓練を行う予定である。避難所運営の訓練は初めてとなるので、その経験を校区単位から自治会単位に伝えていきたい。 (男女共同参画課 事務職員)明石市出身で今は出身校区とは別の校区に居住しているが、同じ市内でも、住む町によって雰囲気が異なる。2歳の子供がいるが、休日に子供を連れて地域活動に参加する事は正直面倒である。小さい子は車が好きなので、自衛隊や警察、消防の車両が訓練会場に来ていると子育て世帯も参加しやすいと思う。 (本塚座長)活動における引継のコツにはどのようなことがあるか。 (杉本委員)ボランティア活動に興味があった。防災は堅苦しくて難しいイメージがあったが、入ってみたら先輩達がとても明るかったため、楽しく学んでいいのだと思った。私は、将来は保育士になりたい。私たちの世代はまだ大震災の経験がないが、準備をしっかりすることで被害を最小限にすることができる。子供たちにも楽しく学ぶことを伝えていきたい。 (和田委員)防災は難しく怖いものと思っていたが、先輩たちや先生から楽しく学ぶものだと教えてもらった。子どもたちに対しても、防災は怖いものではなくて楽しく学んでいいと伝えていきたい。 (本塚座長)本校の高専防災団のキャッチコピーは「防災って実は楽しい」。楽しみながら自分のために活動することで、繋がりやそれぞれの役割分担が見えてくるのかと思う。 4. A誰一人として取り残さない生活再建のあり方 DV被害・児童虐待の現状と災害時に求められる対応 【事務局より資料6に沿って説明】 ●DV被害など困難を抱える女性への支援の現状 コロナ禍の女性への影響では、女性は非正規雇用の割合が高く雇用が不安定。保育園・幼稚園の休園により女性への育児負担がさらに増した。災害時にも同様の傾向になるのではないかと考えられる。明石市のDV相談件数は、昨年度に対前年度比で1.4倍に増加した。DVの種類と状況には様々あるが、対等なケンカと異なり威圧的支配をされている状況である。DV被害など困難を抱える女性への支援の現状としては、被害者は相談すること自体にハードルを感じている。また、若い世代は軽視されがちで自己責任で片付けられてしまうことが懸念される。信頼できる大人に出会えていないということもあり、復興期から支援に漏れてしまう可能性が高い。平常時から課題を抱えている方は、災害時により一層の困難が予想される。今後は相談者に寄り添う伴走者としての支援が必要であり、支援方法を模索している。 ●児童相談支援の現状と災害時に想定される課題 子どもに関する相談は、児童虐待だけでなく内容は多岐にわたる。関西の中核市初となる明石こどもセンターでは、身近な子育て相談に加え専門的な相談への対応などの業務を併せ持ち、相談受付から家庭復帰後の支援まで一貫して実施している。 児童相談支援は、こどもセンターだけでできるものではない。関係機関や地域の支援主体と連携・協働し最適な支援を進めている。センターには様々な専門職員を配置しており、様々な相談が寄せられる。相談内容としては、障害相談、児童虐待、心理的虐待と続く。災害発生時に予測される事態と支援の方向性については議論の余地がある。 (本塚座長)災害発生時、女性や非正規雇用労働者、子ども等に対して影響が大きい点は、まさに今のコロナ禍でも共通しているように感じる。DVや子ども虐待は災害時に増える傾向があると想定されるが、どのような対策が有効だと考えられるか。 (総合支援担当理事)本市保健師の災害時保健活動ガイドラインでは時間軸を4つのフェイズに分けて動いている。子ども本人に対する支援では、子どもは自分の気持ちをうまく表現ができないので、大人は子供たちが話すことを否定せずに聞いてあげることが大切。そのために、避難所には最初から子どもの遊び場を考えておく必要がある。その中で虐待やDVに気づくきっかけになるかもしれない。被災した保護者は、孤立がストレスを生んで誰にも相談できない状況に置かれる可能性がある。誰も孤立させないためには、情報がすべての人に対して伝わるようすることも大切。兵庫県南部地震時、保健師として仮設住宅を巡回した。明石市では「仮設住宅ケアネット」という組織をつくり、様々な関係機関が連携して仮設住宅などで暮らす高齢者や障害者を支える取り組みを行った。市職員ではない相談員を配置して、市職員に状況報告をする役割を担っていた。個別に被災者を訪問することで被災者ニーズをくみ取って対応することができた。誰も取り残さないためには災害ケースマネジメントが重要となる。明石市では様々なネットワークがあるので、災害時にも活用できたらよい。 (本塚座長)コロナ禍で子どもたちもストレスを抱えているかもしれない。現場で変わったことや気になること、気をつけていることがあれば教えてほしい。 (古川委員)教員がどれだけアンテナを高く上げられるかが大事だと思う。研修をして色々なケースを知ることが大事。どんなケースがあるかを知らないとサインを気づかず見逃してしまう恐れがある。 (真邊委員)コロナ禍で、子供も親もストレスを抱えている。接触ができないため虐待を防ぐ手立てが取りにくい。コロナ禍でさらに今大きな災害が起こったらどうなるか、女性の問題やDVなどさらにアンテナをはる必要がある。 (本塚座長)信頼してもらう関係が必要となる。日頃のそれぞれの業務の中でのつながりによって、災害時にもつながることができ、災害時の生活再建につながればよい。 (浅野委員)災害対策本部機構図は、すぐにではなくても効果的な取り組みのため機構図そのものの見直しが必要だと思う。災害対応も直後や災害が落ち着いてからなど、時間軸の中では直後でも見逃してはいけないところがある。災害後必要な対応として、雇用の喪失が予想される。生活再建のためには地元の人を雇用するなどできることはある。 (堀委員)今日は新しいアイデアを得られた。今後の活動に生かしていきたい。 (本塚座長)本日の議論を踏まえた論点については、次回専門委員会議で資料として事務局より提出してもらうようお願いする。 次の専門委員会までに、こんな活動をした等あればぜひ報告していただきたいと思う。 5. 閉会