資料6 DV被害・児童虐待の現状と災害時に求められる対応について 明石市 男女共同参画課、SDGs推進室 1. DV被害など困難を抱える女性への支援の現状 2. 児童相談支援の現状と災害時に想定される課題 コロナ禍の女性への影響 コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会報告書より抜粋(令和3年4月28日) 女性は非正規雇用の割合が高く、雇用が不安定。飲食サービス業や宿泊業の就業率が高く、影響を受けやすい。(図-3、図-6) 就業者数は、男女とも2020年4月に大幅に減少。特に女性の減少は大木。(男性:35万人、女性:70万人) 年平均では、男女とも24万人の減少となった。2021年2月は、男女とも横ばい。 雇用者数は、男女とも2020年4月に大幅に減少。特に女性の減少幅が大きい。(男性:35万人減、女性74万人減) 年平均では、男性は14万人の減少、女性は17万人の減少となった。2021年2月は、男性は増加、女性は横ばい。 就業者数の図  雇用者数の図 保育園が休園した場合、女性の育児負担が増えたり(図-56)、家庭内感染した場合のケア労働の担い手になりやすい。 ひとり親家庭では、雇用や所得に影響がでて経済的困難が危惧される。 2020年度のDV相談件数は約19万件(対前年度1.6倍の増加) (2)高い非正規雇用比率 災害時(非常時)にも同様の傾向になるのではないか 明石市のDV被害者支援(明石市配偶者暴力相談支援センター) 婦人相談員3名で対応 令和3年度からDV被害避難後の生活再建に向けた支援を充実(関係機関への手続き同行や困りごとへの対応など) 29年度 572 30年度 614 元年度 607 2年度 853 3年度 701 明石市のDV相談件数の推移 ※令和3年度の数値は12月末までの集計 【令和2年度の相談内容の分析】 相談件数は対前年度比1.4倍の増加 安全確保の緊急一時保護は12件 18歳未満の子ども同伴が43% 障害のある方は18%(精神障害が多い) 親族にも頼れない、手持ち金がなく、経済的に自立しにくい方も DVの種類と状況 身体的暴力 殴る、蹴る、物を投げつける 突き飛ばす、髪を引っ張る 経済的暴力 生活費を渡さない(被害者の給料だけで生活費を賄わせる)、外で働くこと嫌がる、借金の強要 →日本社会の男女の経済格差 正規雇用者の給料格差、非正規雇用率の高さからも、男性に比べ経済的自立が難しい 性的暴力 望まない性行為の共用、避妊をしない SNSで写真や動画を流す(と脅す) 心理的暴力、社会的暴力 どなる、おどす(殴るふりや物を投げるふりなども) 人格を否定する暴言(ブス、デブ、役立たず、出来損ないなど)、無視、執拗な説教 監視・行動制限、実家や友人との付き合いを断ち切る →つらい気持ちにさせて、心理的に操作する。被害者は心理的に疲れ、「自分がおかしい」「相手が正しい」と自尊心を奪われていく 子どもを巻き込む、子どもを使った暴力 子どもの前で暴力をふるう、子どもの行動を被害者親の責任にして責める 被害者親の悪口を吹きこむ、侮辱する 対等にやり取りするケンカとは違い、DVは上下の関係で相手にいつも物事の決定権を奪われており、コントロールされている状況です。(威圧的支配) DV被害者の相談事例 事例2 64歳女性 ・九州で生まれ育ち、25歳で結婚。 ずっと殴る、蹴る、暴言などのDVがあった。 ・10年前、近隣の通報から警察経由でシェルター入所。シェルターを出た後は「安全のため」まったくつながりのない地域に住むように言われ、明石市のアパートに引っ越してきた。 ・明石市でも相談に行くようにと言われたが、シェルターで支援員に傷つけられたと感じる経験があり行く気になれなかった。 ・調停は不調で終わってしまい、遠方でもありそのままになっている。 住民票も移していない。 ・清掃の仕事で社会保険に入れてもらっているが、手取りは12万円ほどで生活は苦しい。先の見えない生活に疲れ果て、孤独でやり切れない。 ・こんなことならいっそ夫の家に戻ろうか、夫はこわいが生まれ育った土地で、友人とも会える、と気持ちが揺れ動いている。 この女性が被災したら… ・困難の最大の原因となり得るのは、 「支援者に傷つけられた」という過去の経験。 ・住民票が異動されていないので、行方不明でも把握されないかも ・土地勘や近くに住む知り合いもいないので、生活上の困難はより大きくなる 女性支援に関係する主な部署 女性の悩み相談・男女共同参画推進・・・明石男女共同参画センター DV被害者支援・・・DVセンター ひとり親支援・・・児童福祉課 生活困窮・・・生活福祉課、社会福祉協議会 児童虐待・・・明石こどもセンター 障害者虐待・・・障害福祉課、明石市障害者虐待防止センター 高齢者虐待・・・高齢者総合支援室 精神障害・・・あかし保健所相談支援課 その他の関係先として、警察署、県一時保護所、地方裁判所、弁護士、母子生活支援施設、婦人寮、民間支援団体など 明石男女共同参画センター 体制  男女共同参画推進の拠点として、生涯学習センター等と一体型で指定管理者により運営 相談室 女性の悩み相談(電話・面接) 女性のための法律相談 男性向け電話相談(月一回) 就業相談(男女ともに)ハローワークとの連携 啓発事業 きんもくせいプロジェクト(生理用品配付+相談) エンパワメントや再就職準備セミナー LGBTQ+など多様性理解セミナーなど 広く悩み相談を受け付け、相談者の気持ちの整理だけではなく、DVセンターなどの関係機関へつなぐことも キャリアや適性を一緒に考えたり、応募書類の添削など、きめ細やかな就業支援 生理用品配布時に職員からの声かけで就業相談につながったケースも 令和3年度、災害時において全国の男女共同参画センター同士が支え合う「相互支援ネット」に加入 DV被害など困難を抱える女性への支援の現状 法律 法体制が着尺で、全国的に支援施策が平準化されていない 明石市の体制 令和2年度から正規職員の婦人相談員を配置し体制を強化しているが、余力はない状態 相談者 ・生い立ちや、自身の障害などから相談内容は複雑化、深刻化 自己肯定感が低い、誰にも相談できず立ち行かなくなる 市役所に「相談する」こと自体にハードルを感じている 災害時に想定される課題 発災直後から復興までの各段階において、各市の状況に応じたフレキシブルな国の支援が期待できるか 日常のDV相談対応に加え、避難所や仮設住宅への巡回相談などの体制が不十分 「自分さえ我慢すれば」「こんなことを言ったらわがままと思われる」など、困りごとが表面化しにくい 相談窓口のあり方や運用は、「市役所には相談しにくい」ことを前提としていない 相談者 生活再建に不可欠な「住居を確保すること」と「仕事をして収入を得ること」でつまずいてしまう 若い世代は、信頼して頼ることができる大人と出会えていない DV被害者支援の方向性 逃げる支援は限界、逃げなくてもよい支援を模索している DV被害から逃れてからの生活再建以降の支援も必要 災害時に想定される課題 安全に生活できる住宅支援策、安定的に収入が得られる雇用創出が必要だが、さまざまな課題を抱えた相談者が活用できるものになっているか 若い世代に響くメッセージやツールでないと届かない 若い世代や単身者は、困り感が軽視されがち 多岐にわたる困りごとを整理し、解決まで一緒に考える伴走型支援の必要性が認知されていない 自己責任で片付けられることが懸念 1 DV被害など困難を抱える女性への支援の現状 2 児童相談支援の現状と災害時に想定される課題 児童相談について 子供に関する相談は児童虐待府だけでなく、内容は多岐にわたる 子どもへの虐待 子どもの育児やしつけ 保護者の育児疲れ 子どもの不登校 子どもの性格や行動 子どもの非行 子どもの発達(言葉の遅れなど) 心身の障害…etc 明石こどもセンターの機能 身近な子育て相談などに加え、専門的な相談への対応などの業務を併せもち、相談受付から家庭復帰後の支援まで一貫して実施 明石こどもセンター 相談対応などの支援業務  ●家庭児童相談 ●育児支援 ●要対協議会調整 ●里親支援 など プラス 法律等に基づく業務 ●児童福祉司指導など専門的援助 ●里親委託、施設入所措置 ●療育手帳判定・交付、障害相談 ●立入調査 → ●家庭復帰支援 ●自動擁護施設等退所後支援 明石市の児童相談支援〜基礎自治体のメリットを活かして〜 明石こどもセンター(児童相談所)が中心となり、関係機関や地域の支援主体と連携し、最適な支援を進めている。 市の機関等 →生活福祉担当部署 障害福祉担当部署 発達支援センター 保健所 子育て世代包括支援センター DVセンター 教育委員会 明石こどもセンター(自動相談所)=子ども家庭総合支援拠点 家庭児童相談 支援のコーディネート 心理診断、医学診断等の専門的診断・判定 施設入所措置・里親委託 一時保護 地域の居場所→ 自治会 NPO・ボランティア 子育て応援企業 警察署・少年サポートセンター 児童養護施設・乳児院 地域総合支援センター あかし里親センター あかしこども財団 医療機関 民生児童委員 学校 放課後児童クラブ 保育所・幼稚園 子ども食堂 里親・体験里親 子育て支援センター 市機関等と地域の居場所が連携・協働 明石こどもセンターの人員配置(R2.8.1現在)(政令で定める基準) 児童福祉司・・・20人(12人) 児童心理司・・・8人(6人) 保健師・・・4人(1人) 弁護士・・・4人(弁護士の配置またはこれに準ずる措置) 児童指導員・・・22人(6人) 事務職員、医師、教職員、元警察官、看護師助産師、相談員等・・・14人 ※政令で定める児童福祉司の配置基準は平成31年4月1日改正(人口4万人に1人⇒人口3万人に1人)()内は改正前の配置基準 明石こどもセンターの相談受付・対応の状況 1相談の受付件数 R2 年度 児童虐待648件 養護相談98件 保健相談7件 障害相談881件 非行相談35件 育成相談163件 その他18件 合計1,850件 R1 年度 児童虐待534件 養護相談137件 保健相談6件 障害相談933件 非行相談34件 育成相談240件 その他11件 合計1,895件 2児童虐待相談の対応件数 R2年度 身体的虐待211件 ネグレクト151件 性的虐待1件 心理的虐待312件 合計675件 R1年度 身体的虐待138件 ネグレクト145件 性的虐待5件 心理的虐待321件 合計609件 3児童虐待相談の経路別件数 R2年度 警察等227件33.6% 他自治体146件21.6% 近隣知人126件18.7% 学校等87件12.9% 家族40件5.9% 保育所等19件2.8% 児童委員7件1.0% 親戚6件0.9% 児童本人4件0.6% 医療機関1%0.2% こども園0件0.0% その他12件1.8% 計675件100% R1年度 警察等206件33.9% 他自治体162件14.8% 近隣知人90件26.7% 学校等67件11.0% 家族33件5.4% 保育所等21件3.5% 児童委員5件0.8% 親戚5件0.8% 児童本人2件0.3% 医療機関2%0.3% こども園2件0.3% その他14件2.3% 計609件100% 件数の増加にコロナが影響しているのかは不明 災害発生時に予測される事態と支援の方向性(一例) 以下、予測される事態→子どもが受ける影響→支援の方向性 保護者の死亡→震災孤児・震災遺児がうまれる→震災孤児・震災遺児の早期発見、安心して生活できる場の確保など 要支援児童の情報潜在化→休校や避難所生活によって、関係機関との情報共有が滞り、支援すべき児童に手が届かない→避難所訪問による情報収集、情報提供依頼の広報活動など 子どもにかかる過大なストレス→急激なストレスにより適応障害や解離性症状を引き起こしてしまう→児童心理司の心のケア、医療機関へ繋ぐ支援など 保護者にかかる過大なストレス→避難所生活などで保護者がストレスを強め、育児不安や児童虐待を引き起こしてしまう→児童福祉司によるフォロー中の家庭への優先的支援など 職員の疲弊→通常の業務内容と異なり、業務量も大きくなる可能性が高く心身ともに疲弊する職員がうまれる→ローテーション、他自治体からの応援による疲労回復への配慮など 職を失った一人親の再就職→就職活動をしたいが、子どもの預け先が見つからない→避難所内や近隣で子どもを預かれる環境の整備など